■2009年10月

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■菊花賞・復習

まさに“乱菊”。
混戦の菊花賞を制したのは、8番人気のスリーロールス。ハナ差の2着には7番人気のフォゲッタブル。上がり馬の2頭が春のクラシック組を封じる結果となった。

今年の菊花賞は、予想が非常に難解であったが、レース結果に対する解釈もなかなか容易ではない。
ひとつのポイントとして考えたいのは、3分3秒5というレースタイム。これは、菊花賞史上3位にあたる速い時計。そのため、従来の菊花賞で多く見られた“スローペースで直線だけの決め手勝負”という決着にはならなかった。言い換えれば、レースの流れに乗れた馬に有利な展開だったということである。
1・2着馬は内枠を利して、早めに好ポジションをキープ。リーチザクラウンの作り出す厳しい流れ(1000m通過:59秒9、2000m通過:2分3秒1)に逆らうことなく、道中でしっかりと折り合いがついていた。「終わってみれば、ダンスインザダーク産駒のワンツー」というスポーツ紙の見出しも目についたが、消耗戦になる流れだったからこそ、産駒特有の“長距離戦での底力”が発揮できたと言えるだろう。仮にこのレースが、スローの瞬発力勝負になっていたとすれば、結果も違っていたはずだ。
逆に、折り合いをつけて直線勝負に持ち込みたい差し馬にとっては、不向きな展開。流れが早くなれば、馬も行きたがる。かと言って、中盤から仕掛けていけば直線での余力がなくなる。実際、レースの中継では、道中行きたがる馬を抑えるシーンが数多く見られた。

もうひとつポイントをあげるとすれば、1・2着馬に騎乗していたジョッキーがどちらも若手だったこと。つまり、馬自身が上がり馬であるのと同時に、騎手もまた“挑戦者”であったわけである。有力馬に騎乗したトップジョッキーたちが折り合いに専念していたのに比べて、浜中騎手と吉田隼騎手には“ひとつでも前に行こう”といった勢いが感じられた。結果として、こうした“策を弄さないガムシャラさ”が、スムーズにレースの流れに乗れた大きな要因であったようにも思える。いずれにしても、この大舞台でハナ差の接戦を演じた騎乗は高く評価できるはず。2人には今後さらなる飛躍を期待したい。

スリーロールスとフォゲッタブルの好走要因については、前述の通り、「好位から流れに乗れたこと」「厳しいスタミナ勝負になったことで血統の特性が発揮できたこと」「折り合いに苦労する有力馬よりものびのびと走れたこと」などが考えられる。ともあれ、3分3秒5の好タイムをマークした2頭には、本格派のステイヤーとしての資質を予感させられる一戦だった。

3着のセイウンワンダーは、道中掛かっていたが、最後はきっちりと伸びて馬券圏内を確保。距離不問の堅実派、安定株と判断してもいいかもしれない。今後、陣営がどのような路線を進ませるか、非常に興味深い。

イコピコ(4着)はあまりに位置取りが後ろすぎた。折り合いに専念したため、直線を向くまで後方での競馬。今回のレースの流れでは、さすがに届かなかったが、それでもメンバー最速の上がりで差し込んできた脚は見応え十分。この先に“楽しみ”を残したと言ってもいいだろう。

1番人気のリーチザクラウンは5着。武豊騎手の「今後もこの馬には折り合いの克服がテーマになる」というコメントの通り、掛かり気味にリキんで走る弱点が浮き彫りになった。ワンペースの速い流れを作ることができても、自身が勝つためには、緩急自在の逃げをうてるようにならなければならないだろう。今後の課題は大きい。

アンライバルドはスタート後に躓く不利があったものの、折り合い面での進歩はまったく見られなかった。一部には“早熟説”も出ているが、距離を短縮したレースでどのような走りをするかに注目したい。

ナカヤマフェスタも期待外れのレース。セントライト記念の時も3コーナーから蛯名騎手が手綱をしごいていたが、もしかしたらレースに集中できない幼い面があるのかもしれない。直線でも手前を替えなかったことから「左回り向き」(蛯名騎手)なのかもしれないが、素質を活かしきれてないようにも思える。

それにしても・・・、
1800mの距離までしか連対実績がなく、1000万を勝ち上がったばかりの馬が勝ってしまうのだから、菊花賞はある意味“怖いレース”である。
『競馬のツボⅢ』の中に「混戦クラシック・最後の1冠は馬柱表の戦績が意味を持たないレース」と書いたが、今年もそれを裏付けるような結果になった(もっとも、レース数の少なさが好走の目安という部分はまったくの“的外れ”でお恥ずかしい限りだが・・・)。
とはいえ、菊花賞というレースそのものには大きな意義があると思う。3000mの特殊な距離であるがゆえに、各馬の適性というものが見えてくるからだ。今回の出走馬の好走・凡走をしっかりと検証して、次に使ってくるレースの向き・不向きについての検討につなげていきたい。



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■菊花賞・結果

2009年10月25日 4回京都6日11R
第70回 菊花賞(GⅠ)
芝・3000m 晴・良

 1着 スリーロールス     浜中    3.03.5
 2着 フォゲッタブル      吉田隼    ハナ
 3着 セイウンワンダー     福永     1+1/4

単勝 1  1920円(8番人気)
馬連 1-3 9410円  馬単 1→3 20140円
3連複 1-3-12 46070円  3連単 1→3→12 316950円



■菊花賞・予習

牡馬クラシック最後の1冠を争うGⅠ・菊花賞。
“ブエナビスタ vs レッドディザイア”という図式が明確だった先週の秋華賞と違って、こちらは混戦模様。前売り(午後4時30分現在)の人気を見ると、単勝では、リーチザクラウン(3.8倍)、イコピコ(5.2倍)、アンライバルド(5.7倍)の三つ巴になっているが、3連複ではこの3頭でも13.5倍と、オッズは割れ気味だ。
言うまでもなく、どの馬にとっても3000mは未知の距離。ここまでの実績も重要だが、伏兵の台頭も考えに入れておいた方がいいかもしれない。

神戸新聞杯では逃げて2着に粘ったリーチザクラウン。2番手でペースを作ったダービーの時もそうだったように、自分の競馬ができれば渋太いタイプだ。今回は他にハナを主張すると思われる馬も見当たらず、展開面では有利と考えていいだろう。春の時点から「菊花賞候補」と言われていた馬。当時の“3強”のうちの2頭(アンライバルド、ロジユニヴァース)がそれぞれ皐月賞とダービーを制した以上、残る1冠は是が非でも手中に収めたいに違いない。
目標にされるのは、言わば“逃げ馬の宿命”であるが、今回のレースも後続の脚をいかに封じ込めるかが勝敗のカギになる。神戸新聞杯の走りから、すでに「逃げ馬として完成の域に達した」という声も上がっているようだが、前走はあくまでトライアルレース。“権利取り”“叩き台”という意味合いが強く、その分、リーチザクラウンへのマークが甘かったという見方もできる。本番では間違いなく前走よりも厳しいマークを受けるはずだ。
緩急をつけた走りで後続に脚を使わせることができるかどうか。直線でさらに突き放すような強い走りができるかどうか。ペースを自在に操れてこそ“強い逃げ馬”の証明。リーチザクラウンにとっては、その力量が試されるレースになるだろう。
不安点は、各新聞紙上でも言われているように、前走で18キロ減っていた馬体重。調教後の計量ではプラス20キロまで戻しているものの、前走が仕上がった状態でのレコード決着2着。気になるのはやはり反動だ。当然ながら、当日の気配には注意が必要だろう。特に、テンションが高さには要注意。ムキになって走れば最後に失速する危険性があるからだ。

前哨戦の神戸新聞杯をレコードタイム(2分24秒2)で制したイコピコ。上がり3Fは33秒7という驚異的な数字をマーク、春の勢力図を一気に塗り替えたと思えるほどの強い勝ち方だった。元来、菊花賞はスローペースから直線を向いて“ヨーイドン”の展開になることが多いため、イコピコの末脚のキレは大きな武器になると考えられる。ゆえに、神戸新聞杯の時と同じように脚を溜めるレース(=決め手勝負のレース)ができるかどうかがこの馬のポイントになりそうだ。
もっとも、神戸新聞杯に関しては、あまりにも“出来過ぎ”のレースだったという感もある。ワンテンポ遅らせた仕掛けと最内から外へ出したコース取り。四位騎手の騎乗はたしかに見事だったが、一方で、“アンライバルドをマークした決め打ち”的な乗り方のようにも見えた。つまり、穿った見方をすれば、ノーマークの人気薄(7番人気)だからこそできた作戦だったということだ。
さらに、この馬に関しては、前走の阪神コースと今回の京都コースの違いについても考えに入れておいた方がいいだろう。コースによって仕掛けのタイミングも変わってくるからである。
3コーナーからの下り坂で勢いがつき馬群全体が加速する京都コース。しかも、直線が平坦であるため、ゴール前に坂のある阪神と違って、先に抜け出した馬が止まりにくい。そのため、直線の末脚勝負では“差して届かず“というケースも起こり得る。神戸新聞杯では仕掛けのタイミングを遅らせたことが直線のキレにつながったが、今回同じ作戦をとっても同じ結果になるとは言い切れない。この点については、四位騎手の乗り方に注目したい。
もう1点、イコピコについて気になる点をあげるならば、戦績にムラがあること。この馬の全成績は〈4.0.1.3〉だが、連勝(および連続連対)は一度もない。8戦のキャリアだけでは判断できないが、安定感という部分ではいくぶん信頼性に欠けるという見方もできる。今回、アッサリ勝たれても決して不思議ではないが、神戸新聞杯の走りだけでこの馬を評価していいものだろうか・・・。

皐月賞馬のアンライバルド。前走・神戸新聞杯では0.7秒差の4着。道中掛かったこともあって、一瞬伸びかけたが最後は失速。不本意なレースに終わった。休み明けを1走使った今回は当然上積みが見込めるし、前走のイレ込みの原因を“久々”と考えれば、巻き返しの可能性も大いにある。
とはいうものの、折り合いに問題があることは、3000mの長距離戦では大きな不安材料であることは確かだ。特に、上り・下りの起伏が多い京都コースでは、道中での脚の使い方が難しく、最後の伸びに影響を及ぼす。前走以上に折り合いを求められるレースになることは間違いない。
陣営は馬のテンションを上げないように、従来の併せ馬から単走へと調教パターンを変える工夫を凝らしたという。しかし、実際のレースでは他馬と競い合って走るのであるから、調教の変化が実戦での効果につながるとは限らない(調教そのものの動きは抜群のようではあるが)。
もちろん、能力の高さは否定できないし、陣営も岩田騎手も馬自身の弱点を補うだけの対策は講じてくるに違いない。どのような作戦を立て、どのような騎乗をするか。極論すれば、この馬が力を発揮できるかどうかは、岩田騎手の腕にかかっていると言ってもいいだろう。

セントライト記念を勝ったナカヤマフェスタ。春は順調さを欠き、ぶっつけで皐月賞を使うなどローテーションに狂いも生じたが、不良馬場のダービーで外から差して4着に入ったことで“非凡な素質”の片鱗を窺わせた。夏を越した後、成長を問われたセントライト記念では、マクり気味に進出して後続を突き放す強い競馬。どこからでも脚を使える自在性が評価され、一躍“菊候補”の有力馬に名を連ねた。
レースセンスの良さに加えて、東スポ2歳Sで見せた並んでも抜かせない渋太さ。混戦になればなるほどアタマひとつ抜け出すタイプのようにも思える。なにより今回は、本番に向けて予定通りにレースを使えたことが、この馬にとって一番のプラス材料だろう。
課題は初の関西への輸送。レースではしっかり走るように見えるが、調教では馬場入りを拒否したり鞍上を振り落とすなど気性面に幼さを見せる馬。長距離輸送と環境の変化がテンションに影響するかもしれない。この馬についても、当日の気配に注意を払った方がいいかもしれない。

2400mの神戸新聞杯で3着に好走したことから、マイラーのイメージを払拭したセイウンワンダー。2歳王者の実力を再確認させられるとともに、本番への期待にもつながった。不良馬場のダービーと稍重だった弥生賞を除けば、すべて馬券圏内という実績。管理する領家調教師も「大崩れしないのがセールスポイント」とコメントしている。
もっとも、3000mのレースで勝ち切るだけの決め手があるかといえば、それは少なからず疑問だ。皐月賞3着は先行馬総崩れの展開で後方から差してきた結果であるし、前走にしても、好スタートから前々で流れに乗って粘り込んだ3着(展開に左右されない強味という見方もできるが)。買い目には押さえておきたい馬ではあるが、後続を突き放したり追い比べで競り勝つような“強さ”のインパクトには欠けるように思える。

神戸新聞杯で2番人気に支持ながら11着に敗れたアントニオバローズ。敗因はノドの炎症とのこと。それゆえ、今回は陣営のトーンも上がってこない(弱気のコメントを鵜呑みにするのは危険だが)。調教では良い動きを見せているが、ノドに弱点を抱えていることは、一気に走り切れる短距離戦ならまだしも、長距離レースではやはり大きなマイナス。単勝人気では思ったよりも上位に支持されているが、積極的に狙うにはリスクの大きい馬という見方が妥当だろう。レース時に雨が降れば、ノドの負担も少しは軽くなるかもしれないが・・・。

前走、古馬混合のGⅢ・朝日CCで2着に入ったブレイクランアウト。重賞で古馬相手に結果を出したことには高い評価を与えていいだろう。春の時点では、NHKマイルCを目標にしていたように、陣営も“マイル向き”と考えていたようだが、ここにきて中・長距離へ路線を変更。実際、マイルよりも1800m以上のレースの方がキレる脚を発揮する馬で、これまでマイル戦では34秒の上がりを切れなかったが、1800m以上では不良馬場のダービーを除けばすべて最速の上がりをマークしている。距離に対応できて、決め手を活かせるようであれば、人気薄でも侮れない1頭だ。
一説には、朝日CCの後、天皇賞・秋へ向かうプランもあったという。にもかかわらず、菊花賞に矛先を変更したということは、距離や相手関係を考えた上での勝算があるからとも推測できる。鞍上はこの秋乗れている藤田騎手。クラシック3冠の王道を進んできた馬ではないが、マークは必要かもしれない。

伏兵の中で気になるのは、前走で力を発揮できなかった2頭。
まず、セントライト記念で1番人気に支持されながら4着に終わったアドマイヤメジャー
レースでは後方から追い込んできたものの、外々を回らされるロスがあって完全に脚を余した形だった。それでも、勝ち馬からは0.2秒差の4着。中山コースで窮屈な競馬になったことが敗因ならば、広い京都コースに替わることで条件は好転するはず。なにより、未勝利から3連勝で勝ち上がってきた戦績は軽視できない。
もう1頭は、神戸新聞杯7着のシェーンヴァルト
『神戸新聞杯・復習』の中でも書いたことだが、レースは出遅れた上に後方で掛かり気味。しかも、直線では内に進路をとったために前が塞がるという消化不良の内容だった。“札幌記念からの始動のため上積みはそれほど期待できないこと”、“道中力んで走るクセがあるため折り合いが問題”など懸念材料も多いが、春のクラシックでもそこそこの競馬をしているだけに、前哨戦の結果だけで見限るのは早いと思われる。鞍上の秋山騎手も今回が2度目の騎乗。2歳重賞の勝ち馬だけに、能力を存分に発揮できるレースを期待したい。

他にも、“アンライバルド・リーチザクラウン・ブエナビスタで決まった伝説の新馬戦”で4着に入り、前走2着馬に4馬身差をつけて1000万クラスを勝ち上がったスリーロールス、父・ダンスインザダーク×母・エアグルーヴの良血馬・フォゲッタブル、春はクラシック候補の1頭と期待され5月の白百合Sではイコピコと着差のない競馬をしたヤマニンウイスカーなど、魅力のある伏兵馬も多くいる。
しかし、これらの馬は必ずしも菊花賞を目標にローテーションが組まれていたわけではない(スリーロールスは9月に2戦、フォゲッタブルは夏に3戦使ってトライアル出走、ヤマニンウイスカーは6月の北海道シリーズで勝ち上がった後休養をとったもののすでに11戦を消化)。古馬相手に勝ち上がってきた勢いは認めるものの、ピークの状態でレースに臨めるかといえば疑問である。
本番で一変する可能性という点では、トライアンフマーチが面白い存在かもしれない。
皐月賞→ダービーを使って夏場を休み、トライアルを叩いて本番という流れはクラシック戦線の基本となるローテーション。母が桜花賞馬のキョウエイマーチということもあって距離適性を疑う声もあるが、マイル路線に転向せずに3冠すべてに出走するのは、陣営(角居厩舎)に期待があるからのことだろう。他馬同様“折り合いがつけば”という条件付きになるが、トライアルを1走使っての上積み、デビューから8戦目という鮮度を考えれば、見せ場以上の走りを見せてくれるかもしれない。



■秋華賞・復習

牝馬クラシック・最後の1冠を手中におさめたのはレッドディザイア。桜花賞、オークスの雪辱を果たし、悲願のGⅠ制覇を成し遂げた。
レッドディザイアの勝因は、ひとことで言えば、「能力を100%発揮できた」ということになるだろう。
このレースに照準を絞ったローテーションと仕上げ。叩き台のローズSではプラス10キロだった馬体重はマイナス14キロまで絞り込まれ、まさに“究極の出来”。懸念された反動もなく、万全の状態でレースに臨むことができたようだ。
レースでの走りも完璧だった。好枠を活かして中団での競馬。道中の速い流れにリズムを崩すこともなく、直線で前が開くと同時にスパート。ブエナビスタの強襲をわずか7センチ退け、先頭でゴール板を通過した。ブエナビスタより早めに動くことは予想できたが、それにしても鮮やかな“抜け出し”。「ブエナを意識した戦法ではなかった」と陣営はコメントしているが、ブエナビスタに勝つためにはこの競馬しかなかったはず。いずれにしても、今回のレッドディザイアに関しては、文句のつけようがない内容。素晴らしい走りを見せてくれたことに感謝したい。

一方、3冠を逃したブエナビスタ。松田博調教師は敗因について「内枠が向かなかった。早めに外に出さないと結局は(前が)詰まる」とコメントしている。『予習』の中で述べた「内枠に入ったことで展開面でのリスクが生まれる」という見解はあながち間違ってはいなかったようだ。
ただし、安藤勝騎手の乗り方を見ると、外へ持ち出そうという考えはなかったのではないかとも思える。道中は中団の後ろでレッドディザイアをマークする走り。相手を1頭に絞り、直線で併せる形で差し切ろうとしたのではないだろうか。結果として、レッドディザイアがスパートをかけた時、ブエナビスタの前が開かなかったため、やや強引に外めのスペースを突こうとしたわけだが、それによってブロードストリートの進路を妨害する形になってしまったということだろう。
それでも、直線で一時は3馬身ついた距離をハナ差まで迫った脚はさすがとしか言いようがない。スポーツ紙を見ても“負けて強しの内容”という評価が多かった。これで2戦続けて勝利を逃したことになるが、そうした中でも「前半の行きっぷりが良くなった」(安藤勝騎手)といった成長も見せている。今回の敗戦でこの馬の評価を下げる必要はないだろう。直線の短いコースで内を突くというこれまでとは異なるレース(もしくは条件が不利なレース)でも、ブエナビスタは“強さ”を見せてくれたと考えたい。

2着に繰り上がったブロードストリートにとっては残念なレースだった。「不利がなければ突き抜けていた」という藤田騎手のコメントの通り、ゴール前は際どい勝負になっていたに違いない。
ブロードストリートに関しては、予想以上の成長を感じた。正直、ローズSに関しては“フロック”と見ていた部分もあったし、走りそのものについても、好位から一瞬の脚しか使えないタイプだと思っていた。しかし、今回は後方から(ゲートの出負けが原因だが)強烈な追い込み。脚質の自在性は成長によって開花したものだろう。どのポジションからでもレースができるならば、今後はさらに楽しみになる。ブエナ・レッドの2強と言われる中に割って入る可能性も高いはずだ。

4着のクーデグレイスは大健闘のレース。1000m通過58秒という速いペースを先行して粘ったのであるから、能力の高い馬と判断していいだろう。今後の課題は、他の馬が行かなかった場合の走り。番手につけて渋太さを発揮するタイプであることはわかったので、違った展開での立ち回りに注目してみたい。

5着には最速の上がり(34秒2)をくり出したミクロコスモスが入った。後方待機で直線は最内を突くというのは武豊騎手の作戦だろう。上位馬とはまだまだ力の差を感じるが、今回のレースでは折り合いもついていたし、この馬なりに成長しているようだ。

終わってみれば、上位人気馬での決着。『予習』で述べたように、“決め手”のある馬が馬券に絡んだ。配当的な妙味はなかったかもしれないが、“順当な結果”(ブエナビスタの降着は残念ではあるが)に落ち着いたことは、むしろ喜ぶべきだろう。
有力馬が能力を発揮して勝つというのが、本来の競馬の姿のはず。そして、スティルインラブ・アドマイヤグルーヴの世代、あるいはウオッカ・ダイワスーカレットの世代がそうだったように、強い馬が常に強い競馬を見せてくれることは、その世代の強さの証明と考えることもできるからだ。
今回の上位馬には、今後の牝馬戦線、そしてGⅠ戦線の中心としての活躍を期待したい。




■秋華賞・結果

2009年10月18日 4回京都4日11R
第14回 秋華賞(GⅠ)
芝・2000m 晴・良

 1着 レッドディザイア     四位   1.58.2
 2着 ブロードストリート    藤田    1+1/4+ハナ
 3着 ブエナビスタ       安藤勝    降着

単勝 5  320円(2番人気)
馬連 5-12 1340円  馬単 5→12 1840円
3連複 3-5-12 640円  3連単 5→12→3 4640円



■秋華賞・予習

ブエナビスタの牝馬3冠達成なるか?
GⅠ・秋華賞。前売り時点での単勝人気は、ブエナビスタ(2.1倍)とレッドディザイア(3.3倍)の2頭に集中。競馬ファンの多くが、「桜花賞、オークスに続く3度目の対戦」に注目していることが数字に表われている。

まずはじめに、レースが行われる「京都芝・内回り・2000m」のポイントを検討しておきたい。
ひとつの特徴として重要と思えるのは、3~4コーナーにかけて馬群全体が加速する流れになりやすいということ。言うまでもなく、下り坂によって勢いがつくからである。
したがって、馬群の前に位置した馬には、直線でトップスピードからもうひと伸びできる脚が必要となり、後方に位置する馬に関しては、3~4コーナーで置かれることなく、さらに先行馬群を一気に差し切れる末脚が求められる。(過去の好走馬を例に取り上げるならば、前者はスティルインラブ、カワカミプリンセス、後者はスイープトウショウ、エアメサイア。)
つまり、ひとことで言うならば、“決め手”が問われるコースということ。直線の短い小回り形態ということから、“先行馬有利”という見方もされているようだが、実際にはそれほど単純ではなく、先行馬、差し馬ともに“プラスアルファの伸び脚”を使えるかどうかが勝負の分かれ目になりそうだ。

牝馬3冠に挑戦するブエナビスタ。前走は別定GⅡ・札幌記念で2着。その直後に“凱旋門賞回避”を表明したことから、このレースの走り(=差して届かず)に対してマイナスイメージが持たれているようだが、普通に考えれば、初の古馬・牡馬混合重賞でクビ差の2着という結果は上出来のはず。むしろ、マツリダゴッホに先に動かれたことで追い出しのタイミングが遅れ、重い洋芝でキレ味がそがれながらも1着馬を追い詰めた走りを高く評価すべきではないだろうか。
今回のレースに関しても、「直線の短いコースはブエナビスタには不向き」との声が多く聞かれるが、前述したように、このコースで求められるのは“決め手”。これまで通りの走りができれば、直線の短さがマイナス要素になるとは思えない。同世代牝馬を相手にした場合の“能力の差”はすでに証明済み。ツメの不安も問題ないのであれば、3冠達成の可能性は高いと言えそうだ。
ただし、ブエナビスタに死角がないわけではない。“これまで通りの走りができれば”という条件を付けた以上、“走りができないケース”というものも考えておかなければならない。
最も気になる点は、2枠3番という内枠に入ったこと。これによって、ブエナビスタにはいくつかの課題が生まれた。
ひとつは外に持ち出すタイミング。一旦後方に下げ、3コーナーを過ぎて馬群が動く時に外目に出して進出するのではないかと思われるが、その時に札幌記念のように他の馬が先に外からマクリ気味に動くと、ブエナビスタはさらに大外に持ち出すことにもなりかねない。
京都内回りコースの4コーナーはカーブがきついため、それでなくても馬は外に振られやすい。大外に持ち出したブエナビスタには、かなりのロスが生じるはずだ。仮にそうなった場合、末脚の決め手だけで差し切ることができるかどうか。先に「直線の短さはマイナス要素にはならない」と書いたが、それはあくまでスムーズに直線に入ることが前提。必要以上にロスが生まれれば、“決め手”を活かしきれないままレースを終えるケースも考えられる。
もうひとつの課題は、直線で外に持ち出せずに内を突いた場合の走り。ここまでブエナビスタは馬群をこじ開けるようにして勝つ競馬をしていない。道中インに包まれたまま直線に入るような展開になった時に、はたして外差しと同じだけの脚を使うことができるのか。
“決め手”そのものは十分通用することは間違いないが、今回内枠に入ったことで、展開面でのリスクが生じやすくなった。ブエナビスタが負けるとすれば、こうした展開のアヤが原因になるではないだろうか。

桜花賞、オークスとブエナビスタの2着に敗れたレッドディザイア。今回こそブエナビスタへの雪辱を果たすのではという期待も大きい。前走はローズS2着だったが、プラス10キロの馬体重が示すように、余裕残しのトライアル仕様。今回は前走とは比べものにならない強い追い切りで、調教後の馬体重計測の段階でマイナス4キロにまで仕上げられている。
この馬も内目の枠(3枠5番)に入ったが、オークスで見せたように、中団から馬群を抜け出してくる競馬が身上。ロスなく運べる内枠は、この馬にとって有利と見ていいはずだ。
ブエナビスタを逆転できる根拠として、専門紙等が上げているのは「馬体の成長」。札幌記念出走時のブエナビスタに対して、陣営自ら「思ったほど成長していない」と語ったのに対して、レッドディザイアは前走のローズSを見る限り、馬体も雰囲気(落ち着きなど)もひと回り大きくなったように思えた。「馬体の成長」がそのまま能力の逆転につながるわけではないが、春と比較した場合のプラス材料と考えることはできるだろう。
不安点を上げるならば、先に記した“調教の強さ”。余裕残しの状態でレコード決着(ローズS)の2着に入ったことで、当然、反動の心配が生まれる。完全に馬体が仕上がっていない状態で激走したのだからなおさらだ。そして、今回の強い調教。馬体そのものは前走以上だとしても、はたして中身はどうなのか。気力は燃え尽きていないか。あるいは、調教によってさらに反動が生まれていないか。
競走馬にとって、強い調教が必ずしもプラスの影響だけをもたらすとは限らない。レースの敗因、特に意味不明の凡走があった時には、「ハードに追いすぎた」「仕上げすぎた」といった陣営のコメントも少なくない。一応、直前の気配には注意を払うようにしたい。

前哨戦のローズSを制したブロードストリート。中団jから馬群を抜け出してきた走りには、この馬のセンスと能力の高さがうかがえた。冒頭で述べた「先行馬に求められる“決め手”」を持ち合わせた馬と評価していいだろう。春の時点から“素質馬”と期待されていたが、夏を越してそれが見事に開花した感もある。
この馬に関しても、気になるのはレコード決着の反動。加えて、上積みがあるかどうかもカギになりそうだ。ローズSの時点では、藤原英厩舎所属の3頭の中では最も評価が低く、調教師自身が「成長に疑問を感じていた」という馬。それがあれだけの走りを見せたのだから、言うなれば100点満点の走りだったということ。今回、前走以上の走りができるかどうか。陣営は「このレースがピークになるように仕上げた」とコメントとしているが・・・。

ローズS4着のミクロコスモス。春のクラシック出走が叶わなかった分、このレースにかける陣営の意気込みも強いはずだ。前走で武豊騎手がレッドディザイアよりも早めに動くレースをしたのは、本番のレースの流れを意識した騎乗にほかならない。
この馬もブエナビスタ同様、展開がポイント。2枠4番の内枠から、どのように外差しの“決め手”を活かすレースができるか。課題であった折り合いも含めて、レースでの立ち回り方が問われる一戦になりそうだ。

桜花賞、オークスともに3着に入ったジェルミナル。前走・ローズSでは好位につけながらも失速して11着の惨敗。本番に不安を残す結果となった。
ただし、アクシデントのために調整が狂い、さらにレース中にも外傷を負ったということで、原因ははっきりしている。ほとんど競馬をしていなかったこともあって回復も早く、今回の調教の初時計も、同厩のブロードストリート、ワイドサファイアよりも1週間近く先にマークしている。
鋭い決め手はないが、レースセンスの高い馬。春の実績を考えれば、今回巻き返しがあっても決して不思議ではない。

ローズSでは勝ったブロードストリートよりも高い評価(3番人気)を受けていたワイドサファイア(9着)。しかし、実戦では見所もなく、直線ではブロードと同じような位置にいながら、馬群を割って伸びてくることはなかった。おそらく、それだけの勝負根性が身についていない、あるいは馬込みが苦手なタイプなのかもしれない。
だとすれば、馬群の外目からスムーズな競馬ができる今回の外枠はこの馬にとって有利のはず。さらに、陣営は馬にやる気を出させるために、調教パターンを坂路に変更。これは、レッドディザイアとハナ差の接戦を演じたエルフィンS以来のことだ。岩田騎手は「強い馬の裏をかくような思い切った競馬をしたい」とコメント。一変の可能性があるかもしれない。

ローズSで3着に粘ったクーデグレイス。短距離実績しかない(=直線で失速する可能性の高い)メモリーパファイアをハナに行かせて番手でマークする競馬で、実質的にはこの馬がペースを握ることのできた展開だった。今回は最内枠のホクトグレインが逃げ宣言。したがって、それをマークする形になるだろう。
問題は番手マークの同型馬との兼ね合い。ヴィーヴァヴォドカ、デリキットピースあたりと競り合うことになった場合、ローズSのように自分のペースでレースを運べるかどうか。他にも、1Fの距離延長や夏場を使った疲労の蓄積なども課題になりそうだ。

上位とは人気の差はあるが、上がり馬のモルガナイトも注目を集めている。
500万、1000万を連勝。しかも、その着差は0.2秒、0.3秒と相手を突き放す強い勝ち方。春はスイートピーSで7着に敗れているが、ここにきての上昇度は魅力。実績馬との対戦でどのような走りを見せてくれるかが楽しみな馬である。
ただし、ローテーションはかなり厳しい。500万勝ちから中1週で1000万勝ち。体重を10キロ減らした上で、今回は中2週でGⅠ。さらに、前2走はいずれも11頭立ての少頭数。斤量も3キロ増。条件的には高いハードルが用意されていると言わざるを得ない。

人気薄で注目したいのはデリキットピース。前哨戦の紫苑Sでは1番人気に支持されたが、休み明けの上、先行馬には厳しい流れに巻き込まれて9着に敗退。もっとも、本番を見据えた上での叩き台と考えれば、見限るのは早いようにも思える。
デビュー2戦目でOP・忘れな草賞を勝った実績から、非凡な素質の持ち主であろうことは窺い知れるし、レース間隔の開いた3戦目のオークスでも6着に踏みとどまっている。特に、忘れな草賞は“強さ”の片鱗を見せる内容で、外差しの決まりやすい馬場で先行して後続を突き放す勝ち方だった(ちなみに、この時の2着はブロードストリート)。今回は大外枠から好ポジションを取れるかどうかがカギになるが、直線で早めに抜け出すような形になれば、馬券圏内への粘り込みがあるかもしれない。

もう1頭上げるならば、紫苑S2着のラインドリーム。6月デビューの馬でキャリアは浅いが、デビュー戦以外はすべて連対という成績。今年の紫苑Sは、メンバーのレベルも低く、時計的にも強調できないが、仮にこの馬が“レースのレベルが上がっても相手なりに走れる(常に上位に顔を出すタイプ)”というタイプならば、大駆けがあっても驚けない。なにより、前が詰まりながらも馬群をこじ開けるように割って連対を確保した紫苑Sの走りには、見るべきものがあった。


最後に、『競馬のツボⅢ』で述べた「クラシック・最後の1冠と出走レース数の相関性」についてふれておきたい。
本の中では「出走レース数が好走のひとつの目安」と書いたが、基本的には、その年のクラシックが混戦の場合(=どの馬にも勝つチャンスがある場合)を前提にしている。トライアルでも目イチの仕上げを施すケースが多く、レース数がそのまま疲労度につながるという見解に基づいているからだ。
今年の場合は、混戦とは言い難く、したがって、『ツボⅢ』の考え方がそのままあてはまるとは限らない。念のため、ご理解いただきたい。




■毎日王冠・復習

昨年と同じようにハナを切り、そして、昨年と同じようにゴール前で差されたウオッカ。
GⅡ・毎日王冠を制したのは、断然人気のウオッカではなく、8歳馬のカンパニーだった。

はじめに、ウオッカの敗因について考えてみたい。
『予習』の中で「昨年の毎日王冠の敗因は、“逃げてレースを引っ張る”というウオッカらしくない競馬をしたこと」と書いたが、今年もまた同じことの繰り返しになってしまった。
なぜ、そうなったのか。
レース後、武豊騎手は「楽なペースの逃げで押し切れると思ったが・・・」とコメントしているが、できることならハナに立ちたくなかったはず。なぜなら、道中で走りに集中させて目標をとらえた後に究極の瞬発力で差し切るレースこそが、ウオッカの能力を最大限発揮できる競馬だからである。
実際、スタートして向正面に入るあたりまでに、武豊騎手は左右を振り返りながら、後方から来る馬の出方を確認していた。しかし、ウオッカの前に出ようとする馬はいない。前に出ればウオッカの“目標”にされるわけだから、それは当然だろう。この時点で、ウオッカには“逃げ切り”しか“勝ちパターン”がなくなった。言い換えれば、“自分の得意としない形でレースを勝たなければならなくなった”ということである。
ウオッカがスタートでハナに立ってしまうのは、他馬よりもスピードが勝っているからに他ならない。つまり、能力が高い(スピードの絶対値が違う)がゆえに、自分の望まない展開(ハナに立つ)になってしまうのだ。
『予習』の中で「どの馬が逃げるかという検討が必要」と書いたが、当然ながら、「ウオッカが逃げる場合」も想定できた。そして、ウオッカが逃げた場合には、昨年のスーパーホーネットのように、ウオッカを目標にする差し馬の台頭も考えられたはずである。
今回のウオッカは“強いウオッカ”ではなかった。道中の走りにも迫力を感じることはできなかった。ただし、その敗因は『予習』で述べたような“年齢”や“衰え”といったものに関係があるとまでは言い切れない。それ以前に、“能力を発揮できない展開”だったからである(もっとも、カンパニーにまったく抵抗できずに1馬身差をつけられた不甲斐なさには釈然としない部分もあるが・・・)。
次走は天皇賞・秋。“叩き2走目の上積み”“斤量減”などウオッカにとって有利な条件が揃う。スポーツ紙の多くも「本番での巻き返しはある」と論評している。あとは、ウオッカより前に行く馬がいるかどうか。すなわち、ウオッカが能力を発揮できる展開になるかどうか。最も注意すべきポイントはその点になるだろう。

勝ったカンパニーにとっては、すべてがうまくいったレースだったに違いない。道中は好位のインで脚を溜める競馬。直線で内ラチ沿いから抜け出すと1完歩ずつ差を詰め、最後は一気に抜き去った。横山典騎手が見せた騎乗は、ウオッカだけに的を絞った乗り方。本人も「展開の読みが当たった」とコメントしている。ウオッカも33秒8の上がりでまとめているが、カンパニーはそれを上回るメンバー最速の33秒0。伸び脚の差は、ハナに立って力み加減だったウオッカと、自分の形に持ち込めたカンパニーの、道中の走りの差がそのまま出たとも考えられる。
さらに、横山典騎手はコメントの中で興味深いことを言っている。それは、「頭数が少なく周りに馬がいなかったので、馬の気持ちを集中させることができた」というもの。『予習』の中で「少頭数が有利に働く馬についての検討も必要」と書いたが、実は、こうした場面にもメリットが生まれたいたことがわかる。
これで通算7度目の重賞制覇。8歳馬ながら、レースで最高の走りを見せてくれたこの馬には、本当に頭が下がる思いである。

3着にはブービー人気(単勝112.9倍)のハイアーゲーム。『予習』で大穴候補に取り上げた馬だが、今回は“見事にハマった”ということだろう。先行する作戦もあるかと思ったが、道中後方で折り合っての直線勝負。最後は少しもたれながらも、上がり33秒2の末脚(カンパニーに次ぐ速さ)で3着に食い込んだ。
マイナス10キロと体が絞れて仕上がっていたこともプラスに働いたが、この馬に関しても、少頭数のために前が詰まったり大外を回るロスがなかったことが好走につながったと見ていいだろう。もちろん、最後の脚を信頼してそれに賭けた木幡騎手の騎乗も見逃せない要素である。

ナムラクレセントはアタマ差の4着。最後はハイアーゲームとの追い比べに屈したが、それでも一旦下がり気味になったところから盛り返す渋太さを見せた。菊花賞3着の実績があるとはいえ、ここではまだ敷居が高いかとも思っていたが、予想以上に地力をつけている印象を持った。
今後の課題は、脚を溜められるようになることだろう。今回のレースでは、前に行こうしたがるのを小牧騎手が抑える場面が多く見られた。若いがゆえに、粗削りな走りになってしまうのだろうが、道中での力の配分を覚えられるようになれば、今後はさらに上を目指せる馬になれるのではないだろうか。

5着のサンライズマックスはマイナス2キロの馬体重で出走。太め感もなく馬体も仕上がっていたようだが、レースでの反応は鈍かった。これは、休み明けが原因なのかもしれない。重賞戦線でも好走できる可能性はあるとは思うが、できれば“強さ”という部分でのインパクトがほしい馬である。

スマイルジャックは3コーナーまで若干掛かり気味の走り。その結果、直線でも伸び切れず7着に沈んだ。折り合い面での課題が残った一戦。現状ではマイル以下の距離で、後方からの末脚に徹する競馬が向いているのかもしれない。

2番人気のヤマニンキングリーはまったく見せ場もなく9着。前走で減った体重が戻っていなかったところをみると、体調面に原因があったのかもしれない。柴山騎手は「レース前にイライラして消耗した。長距離輸送の影響があった」とコメント。前走のマイナス体重の原因もストレスということだし、もしかしたら精神的なリスクがつきまとう馬なのだろうか。一瞬のキレ味は一級品だし、重賞で連対を続けてきたことから“能力のある馬”であることは間違いないはず。仮に、精神面に弱さがあるのだとしたら、なんとしてもその部分を解消して重賞戦線で活躍する1頭になってほしい。

今年の毎日王冠は、「自分の競馬ができた馬」と「できなかった馬」との差がはっきりと結果に表われたレースだった。前者はカンパニーとハイアーゲームであり、後者はウオッカと自分の競馬を確立できていない4歳馬たちである。
ウオッカへの期待が高いレースだっただけに、“ウオッカの相手探し”というテーマが膨れ上がりすぎた感が強い。レースの条件・頭数・展開だけに集中して検討していれば、この結果は決して“波乱”とは言えないはずだ。
そして、別の見方をすれば、まったく力を出せない不向きな展開で、休み明け+57キロにもかかわらず2着に入ったウオッカは、やはり別格の能力を持った馬ということなのだろう。


■毎日王冠・結果

2009年10月11日 4回東京2日11R
第60回 毎日王冠(GⅡ)
芝・1800m 晴・良

 1着 カンパニー       横山典  1.45.3
 2着 ウオッカ         武豊     1
 3着 ハイアーゲーム     木幡     2

単勝 4  1180円(4番人気)
馬連 4-6 460円  馬単 4→6 1890円
3連複 3-4-6 9890円  3連単 4→6→3 56680円

■毎日王冠・予習

秋の東京開幕週、日曜のメインに行われるGⅡ・毎日王冠。天皇賞・秋、あるいはマイルCSの前哨戦として重要な意味を持つ一戦である。
最大の注目は、何と言っても、ここが秋初戦となるウオッカの走りだろう。
GⅠ6勝、獲得賞金10億円超。“現役最強馬”がどのようなパフォーマンスを見せてくれるのか。前売り時点での単勝1.4倍が示すように、競馬ファンの興味は「ウオッカの勝ち方」に集約されているようだ。
東京コースは〈5.2.1.1〉。5勝はすべてGⅠという断然の実績。休み明けに勝ち鞍がないこと(〈0.1.1.0〉)を指摘する声もあるが、状態面を最優先に考え宝塚記念を回避ことからもわかるように、当初から秋の東京開催(毎日王冠→天皇賞・秋→ジャパンカップ)を目標にしてきたのは明らか。実際、調教に関しては、“昨年以上の動き”“これまでの休み明けで一番”といった評価が多い。
スーパーホーネットにアタマ差で敗れた昨年のこのレースにしても、好スタートからハナを切るという、ある意味“ウオッカらしくない競馬”だったことが一番の原因。昨年の結果だけを取り上げて「休み明けだったから」もしくは「マイルより1F長い1800mだったから」という敗因につなげるのは無理がある。条件面に関しての死角は見当たらないと言っていいだろう。
レースの中心・馬券の軸がウオッカであることは間違いない。
それでも、あえて不安点を上げるならば、5歳という年齢だろうか。昨年春に調子を落としたウオッカは秋には本来の姿に復活。ドバイでは結果が残せなかったものの、「今年の春は昨年の秋よりもさらに進化した」(武豊騎手)。
あくまで仮定の話ではあるが、ウオッカという競走馬のピークが今年の春だとしたらどうなるだろうか。走り自体にはっきりと衰えが見てとれないにしても、“休み明け”“牝馬で57キロの斤量”といった影響があってもおかしくない。
一説によると、ある程度年齢を重ねた牝馬は自ら繁殖を意識してそれに見合った体を作り始めるという。これがそのままウオッカにあてはまるというわけではないが、万が一、今回のレースで能力を発揮できずに終わるようなことがあるならば、今後は「ウオッカの競走馬としてのピーク」というものも考えなければならないかもしれない(先にも述べたように、あくまで仮定の話ではあるが・・・)。
いずれにしても、このレースでのウオッカの走りには要注目だ。

専門紙を見る限り、ウオッカの相手候補として、4歳牡馬3頭の名前が上げられている。
前走の札幌記念でブエナビスタを敗ったヤマニンキングリー。近5走はいずれも重賞で連続連対。戦績に安定感があり、4歳にして“本格化”といった印象も強い。さらに成長が見込めるようであれば、ウオッカに先着できるかはともかく、ここでも結果を残せるだろう。
気になるのは脚質。近走の好成績は中京・小倉・中山・札幌と、いずれも直線の短いコース。瞬発力勝負に長けているこの馬向きだったという見方もできる。つまり、府中の長い直線に変わって、どれくらい長く脚を使えるかが課題になるということ。4走前の中山金杯では、藤田騎手が3コーナーから追い通しで2着を確保したが、あの走りは中山の下りを利してのもの。上り坂が続く府中の直線、しかも、前走よりも1キロ増の斤量を背負っての“脚の持続力”が試されることになる。
あとは、前走休み明けで20キロ減った馬体の問題。原因は出張馬房でのイライラによるストレスとのことだが、いずれにしても反動と回復については気になるところだ。当日はプラス体重で出走してくるだろうが、状態に関しては、直前の気配にも注意を払った方がいいかもしれない。

前走、関屋記念を勝ったスマイルジャック。東京実績は〈0.2.2.2〉で、その中にはダービー2着、東京新聞杯3着が含まれている。1800mの距離は〈1.1.2.0〉。レース条件はこの馬向きと見ていいだろう。
問題はレースでの位置取り。前走は後方からの競馬だったが、その理由は「折り合いをつけるため」だった。近3走を見ても4コーナー通過はいずれも10番手以降。今回も折り合い重視で後方からのレースをするとなれば、開幕週の馬場では前に届かないケースも考えられる。かといって、先行策をとれば、折り合いを欠いて直線で失速する危険性もある。それでなくても、確固たる逃げ馬が不在でスローが予想されるレース(=道中の折り合いがポイントになるレース)。鞍上の三浦騎手がこの馬の末脚を活かすためにどのような乗り方をするか。その点もカギになるだろう。

前年の菊花賞3着馬のナムラクレセント。GⅡ・阪神大賞典でも3着に入ったことから「実績面での決して見劣らない」という評価も少なくない。1000万、1600万を連勝している勢いも“買い”の材料。加えて、1000万では逃げ切り(前が有利な新潟・内回り2200m)、1600万では後方からの差し(直線の追い比べに向いている阪神・外回り1800m)というように、自在に脚を使える器用さも見せた。さらに、前走の58キロから1キロ減で出走できるのも有利だ。
ただし、前述の阪神大賞典に関して言えば、有力馬が59キロを背負い、しかも不良馬場という特異なレース。額面通りに“GⅡ3着”という評価ができるかといえば疑問である。むしろ、1600万クラスを勝ち上がってきた馬の昇級戦と捉えた方が無難だろう。
データを参考にしてみると、過去10年において、前走1600万条件を勝ってこのレースで連対した馬は一昨年のチョウサン1頭のみ。勢いと未知の魅力にあふれる馬ではあるが(ウオッカを逆転する可能性もあるという競馬評論家もいる)、『競馬のツボⅢ』の中にも書いた通り、“格と実績”を重んじる別定GⅡでは、このタイプに関してはあまり過信しない方がいいように思われる。

“格と実績”という点を評価するならば8歳馬のカンパニーの名前が上がる。GⅠ戦線でも常に上位にくる馬で、春の走りを見る限りでは年齢的な衰えは感じられない。東京実績は〈0.0.1.9〉と数字的には良くないが、この中にはGⅠで僅差の4着も含まれており、内容的には決して悪いものではない。さらに、先行・差しのいずれの脚も使える自在性も強味。横山典騎手がどのような作戦を立てるか。非常に興味深い。
とはいうものの、8歳の秋を迎えたこの馬に、春以上のパフォーマンスを期待するのは酷かもしれない。心情的には、伸び盛りの4歳馬の“壁”となるような老練なレースを見せてもらいたいのだが・・・。

もう1頭、実績面を基準にするならば『競馬のツボⅢ』で取り上げたアドマイヤフジ(昨年の3着馬)も馬券候補かもしれない。もっとも、長距離主体のGⅠ戦線を使った上で距離短縮の効果があった昨年と違って、今年の春は中距離のGⅡ・GⅢが主戦場。使ってきたレースの“格”が昨年よりも落ちた感は否めない。先行しての粘り込む好走パターンに持ち込めれば力を発揮できるとは思うが、昨年以上の成績を望めるかというと微妙なところだ。

岩田騎手を伴って東上してくるサンライズマックスもヒモ候補の1頭。東京・芝・1800mという条件では、昨年のエプソムC勝ちがある。前走はGⅠの天皇賞・春で0.3秒差の4着。この実績が活かされて、さらに〈2.0.1.1〉という得意の距離への短縮効果がプラスに作用すれば、好走の可能性も大いにある。
この馬の場合、馬体重に注意。近走で好走した時の体重はどれも444キロ。「太りすぎると力が出ない」というステイゴールド産駒の特長(ドリームジャーニーも同様)が、この馬にもあてはまるようだ。その点には注意を払いたい。

古馬との初対決となる3歳馬・マッハヴェロシティ。東京芝は〈0.1.0.3〉だが、青葉賞2着の実績がある。大跳びの走りをする馬だけに、広い東京コース向き。例年よりも質が高いと言われている3歳馬が、どれだけ食らいつけるかという部分には興味があるが、別定GⅡの舞台ではどうだろうか。条件戦では結果を出している馬も多いが、ここでは「まだ敷居が高い」という評価が妥当ではないだろうか。

大穴の食い込みを考えるならば、ハイアーゲーム。東京巧者と呼ばれてから久しいが、昨年のこのレースで最速の上がり(33秒1)をマークしたように、ハマった時のキレ味は一級品。近走は長距離を中心に走っているが、〈3.1.1.2〉の実績のある1800mへの距離短縮が一変する要素になるかもしれない。
あるいは、この馬が逃げるという展開も考えられなくもない。4走前には藤田騎手が騎乗して先行するレースを試みている(結果は0.6秒差の6着)。
前が有利な開幕週に行われるこのレース、カギはやはり“逃げ馬”になるだろう。ハイアーゲームに限らず、“ハナを切って自分のペースで走れる馬”には残り目の可能性もある。「どの馬が逃げるか」ということについて、いくつかの想定の上で検討が必要になるだろう。
さらにもう一点、馬券検討の際に考えておきたいのは「11頭立ての少頭数」が有利に働く馬について。前が詰まったり外を回されたりすると力を出せない馬がいるかどうかの検証も行っておきたい。


京都では、GⅡ・京都大賞典が行われる。
こちらの注目は59キロを背負うGⅠ馬2頭(マイネルキッツ、オウケンブルースリ)のレースぶりだろう。特に、オウケンブルースリは獲得賞金が少ないため、天皇賞・秋、あるいはジャパンカップ出走を目指すならば、ここを勝って賞金と権利を手に入れたいところ。陣営にはおそらく“次走への叩き台”という考えはないはずだ。
他には、昨年と同じローテーションでこのレースに臨むトーホーアランの2連覇達成なるか、香港GⅠ3着の実力馬・ジャガーメイルが重賞勝ち(人馬とも)を手に入れることができるか、といった見所もある。
伏兵では、安藤勝騎手自ら熱心に調教をつけ、距離延長がプラスに働きそうなモンテクリスエス。近走はダートで良績を残しているものの、京都新聞杯勝ちのあるメイショウクオリアの“芝戻り”にも注意したい。
あとは、展開面。テイエムプリキュア、コスモプラチナ、クィーンスプマンテといった逃げ馬が揃ったレース。前がやり合う形になるのか、あるいは、隊列ができて先行馬の残りやすい流れになるのか。このレースもまた、逃げ馬の走りが展開のカギを握っていると考えていいだろう。



■スプリンターズS・復習

わずか1センチの差!
10分を超す長い写真判定の末に確定した結果は、GⅠ・スプリンターズSは“ローレルゲレイロの逃げ切り勝ち”“春秋スプリントGⅠ制覇”だった。
6番人気・単勝13.8倍。春の高松宮記念の勝ち馬でありながら、戦前の評価(人気)が低かった理由としては、「前走(セントウルS)の惨敗」「有力馬に目標にされる展開」「春よりも状態面が落ちているいう陣営のコメントや専門紙の見解」などがあげられる。
にもかかわらず、こうした結果を残すことができたのは、やはり“GⅠ馬の底力”としか言いようがない。自身の勝ちパターン(ハナに立って最後まで後続を封じ込める)を持っていること、そして、実戦で100%の能力を発揮できること。ローレルゲレイロには“GⅠレースを勝つための資質”が備わっていたということである。
『予習』では「藤田騎手の乗り方ひとつにかかっている」と述べたが、スタートから押しまくって先手を取り、最後まで攻め続ける気迫の騎乗はまさに圧巻だった。藤田騎手は「今回は(馬の調子に関して)半信半疑だった」とコメントしているが、“追えるジョッキーとそれに応える馬”という信頼関係がなければ、能力通りの走りはできないはず。人馬一体として“強かった”。これがローレルゲレイロの一番の勝因だったように思える。

2着のビービーガルダンも100%の走りを見せてくれた。ゴール直後は差し切ったようにも見えたが、クビが下がったところが決勝線という“不運”。走破時計はこれまでの持ちタイムを0.5秒更新する1分7秒5。ローレルゲレイロにはハナ差で敗れたものの、3着馬には0.2秒差をつけた。安藤勝騎手が「札幌の洋芝のような力のいる馬場の方が向いている」とコメントしたために、“当日の馬場状態が回復がこの馬にとって不利となった”といった論評も出ているようだが、今回の結果に関しては、むしろ“重い馬場でなくてもトップクラスの走りができる”というプラスの見方をしたい。この馬にとっては、それだけの収穫(=時計への対応)があったレースと言えるはずだ。

3着以降は0.2秒の中に9頭がなだれ込む大混戦。その集団からアタマ差抜け出したのがカノヤザクラ。ゲートの出が悪く、後方からの競馬になったが、その分「ゴチャつかないところを通れた」(小牧騎手)。サマースプリントシリーズが最大の目標だったと考えたために、このレースでは評価を下げたが、展開が向いたとはいえ、直線の差し脚は見事。前残りのレース(最低人気のアイルラヴァゲインも好位に流れに乗れたことで4着)で4コーナー10番手から上がり33秒8の脚を使っての食い込み。この馬なりに力のあることを証明したとみてもいいだろう。

1番人気に支持されたアルティマトゥーレは5着。道中はインの好位に控える競馬。直線では最内を突いて伸びてくるかとも思えたが、1・2着馬を捕らえ切れないまま馬群に沈んだ。
松岡騎手も奥平調教師も敗因については同じことを語っている。それは、「これまでゴチャつくレースを経験していない。キャリア不足」というもの。たしかに、逃げ切り圧勝にしても、外目からの先行(セントウルS)にしても、スムーズに競馬ができた上での結果だった。
“新しいスプリント王の誕生”の期待が高かったために人気になったが、経験値・これまでの勝ち方・ゴチャつきやすい内枠といった要素を検討すれば、信頼性に疑問を持てたかもしれない。今回の負けは、馬券を買う側にとっても、いい勉強材料になったと言えるだろう。

外国馬のシーニックブラストは16着。4コーナーでキンシャサノキセキに寄られて躓く大きな不利があったが、仮にそのロスがなくても、外ではなく中を進んでいたこの馬が馬群を割って伸びてきたかどうかは疑問だ。今回のレースは参考外であることには違いないが、『予習』でも書いたように、中山芝1200m向きの走りはできていなかったように思える。

終わってみれば、春のGⅠ馬と今シーズン重賞で2勝を上げている馬のマッチレース。言うなれば、実績通りの結果。仮にスリープレスナイトが出走していれば、ローレル・ビービー・スリープの三つ巴だったかもしれないと思わせるような内容だった。
3着以降はどの馬が馬券に絡んでもおかしくない団子状態。アーバニティが休み明けでなければ前々で粘り込めたかもしれないし、メンバー最速の上がり(33秒7)をマークしたプレミアムボックスがカノヤザクラの位置で競馬をしていれば外から飛んできたかもしれない。
スプリント路線は今後も“条件や展開次第で上位に来る馬は変わる”という混戦が続きそうだ。


■スプリンターズS・結果

2009年10月4日 4回中山8日11R
第43回 スプリンターズS(GⅠ)
芝・1200m 晴・良

 1着 ローレルゲレイロ     藤田     1.07.5
 2着 ビービーガルダン     安藤勝    ハナ
 3着 カノヤザクラ        小牧太    1+1/4

単勝 13  1380円(6番人気)
馬連 9-13 2140円  馬単 13→9 5630円
3連複 9-12-13 11660円  3連単 13→9→12 66890円

■スプリンターズS・予習

2009年秋のGⅠの初戦を飾るスプリンターズS。
昨年の覇者・スリープレスナイトの回避(=引退)によって、レースは一気に混戦ムードとなった。前売り段階での単勝1番人気は3.8倍。どうやら競馬ファンも、軸馬の選定に頭を悩ませているようだ。
降り続いた雨の影響もあってか、土曜日の競馬を見る限り、芝のレースは4コーナーで先行集団に位置していないと結果につながりにくい。したがって、展開については、当日の馬場の回復度にもよるが、基本的には「前へ行ける馬や3~4コーナーでマクり気味にポジションを上げることのできる馬が有利」と考えた方がいいかもしれない。

個々の出走馬について検討してみよう。

前哨戦のセントウルSを制してこのレースに臨むアルティマトゥーレ。そのセントウルSでは、大外枠から好ダッシュを決めて、道中は番手で折り合う競馬。それまでは“ハナ→逃げ切り”の勝ちパターンが目立っていただけに、脚質の自在性という点でも大きな進歩がうかがえるレースだった。
この馬の場合、とにかく“圧勝”が多い。近6走で4勝を上げているが、その着差は、5馬身・3馬身・2.5馬身・2.5馬身。競り合いの決着になりやすいスプリント戦で、これだけの着差をつけられるということは、“能力の高さを証明する材料”のひとつと考えてもいいだろう。なにより、芝・1200m戦では〈4.1.0.0〉と、一度も連対を外していないのが、最大の魅力であり強味でもある。
問題は、今回のレースでアルティマトゥーレが、その能力を発揮できるかどうかという点。
『セントウルS・復習』のブログでも書いたように、5歳にして10戦しか走っていない理由は、股関節に弱点があり疲れが残りやすい体質をカバーするためにレース間隔を開けて大事に使われてきたからである。今回は中2週で挑むGⅠ。はたして、ベストの状態での走りができるかどうか。中間の調整が“軽め”だったことも少なからず気になる。
あとは、初めての中山コースのこなし方。直線の急坂が問題なのではなく、4コーナーの急なカーブでスムーズな走りをできるかがポイントになるだろう。
今後のスプリント戦線を盛り上げていくためにも、この馬には“強い走り”を見せてほしいとは思うのだが・・・。

昨年の3着馬・ビービーガルダン。この馬も、アルティマトゥーレ同様、以前は“ハナ→逃げ切り”が勝ちパターンだったが、脚質の幅が広がり好位から直線で抜け出す競馬を身につけることができた。ローレルゲレイロの逃げが濃厚な今回、ローレルの後ろにつけてレースを運べれば、この馬の競馬ができるはずだ(おそらくアルティマトゥーレも同じ作戦に出ると思われる)。
中山芝は〈1.1.1.0〉と好相性。休み明けのキーンランドC(1着)を使って、ここに照準を合わせてきたローテーションも強調材料と言えるだろう。
この馬の不安点をあげるならば、時計勝負になった場合(陣営もそのことを意識してか、追い切りの時計はこの馬にしてはかなり速いものになっていた)。しかし、週中に雨が降り続いたことで、本番は高速決着にはなりそうもないようだ。ある意味、運も味方しているようにも思える。
ポイントは先にも述べたように、スタート後に好位をとれるかどうか。惨敗を喫した高松宮記念のように、外々を回って脚を使うような走りにならなければ、馬券に絡んでくる確率はかなり高いのではないだろうか。

オーストラリアのGⅠ3勝馬・シーニックブラスト。外国馬の取捨は対戦歴という基準がないために難しいが、国際レーティングの「122」はスプリンター界では最高の能力を評価された数字であり、その実力は侮れない。加えて、このレースに勝てば、100万ドルのボーナス(馬主+調教師)を手に入るとのこと。勝負気配の高さは言うまでもない。さらに、近2走の59キロ、59.5キロから、斤量が57キロに減ることも有利な材料だ。日本馬に力の差を見せつけて、アッサリ勝ってしまうケースも考えられなくもない。
もっとも、実力のある外国馬だからと言って、その力を発揮できなければ惨敗もあり得る。実際、過去にスプリンターズSを制したサイレントウィットネスやテイクオーバーターゲットと比較してみると、この馬の不安要素も見えてくる。
例えば、サイレントウィットネスとテイクオーバーターゲットは、スプリンターズS以前に日本のレースを経験している。また、2頭とも脚質は先行・押し切り型だった。それに対して、シーニックブラストは日本初参戦。脚質も後方からの差しを得意としている。その他にも、右回りコースの経験がないことを減点材料と評価する専門紙も目についた。
2走前にキングズスタンドS(芝1000m)を勝っているが、このレースでは横に大きく広がった馬群の一番外から伸び脚を見せた。馬群が縦長になりやすい中山の1200mとはまったく異質のレースなのである。
シーニックブラストの走りをくまなく見たわけではないので、明確な判断は下せないが、あくまで“印象”として言うならば、中山芝1200mに向いているようには思えないような気もするが・・・。

3歳牝馬のグランプリエンゼルも人気の一角。古馬との初対戦となった函館SSを勝ち、前走のキーンランドCでも3着(2着馬は降着したが)と健闘。斤量の恩恵があったとはいえ、スプリント戦でしっかりと結果を残せるメドがついた。今回は定量戦になるが、それでも53キロの軽量は有利。前走後はここを目標に、「デビュー以来初めての強い追い切り」(矢作調教師)をこなしたとのこと。3歳馬の成長力を加味すれば、馬券圏内候補の1頭と考えてもいいだろう。
カギになるのは、初の中山コース。平坦な札幌コースでは結果を残せたが、トリッキーなレイアウトで、さらに急坂のある中山で、ベストの走りができるかどうか。この馬にとっては、試金石の一戦に違いない。

高松宮記念以来、6ヶ月ぶりのレースとなるキンシャサノキセキ。昨年のスプリンターズS2着馬だが、それ以後の2走はいずれも2ケタ着順で精彩に欠いた。今回、陣営はイチからの立て直しを図ったということだが、本来の力を発揮できる状態に戻っているならば、〈2.1.0.1〉の中山巧者だけに、好走を期待できる1頭だ。
とはいえ、半年ぶりのレースが、ぶっつけのGⅠというのはどうだろう。“抜けた馬がいない”という見方もされている今回のレースだが、だからと言って、1年間結果の出ていない馬を過信するのは少々危険かもしれない。

春のGⅠ・高松宮記念の勝ち馬・ローレルゲレイロ。前走・セントウルSは休み明けに加えて59キロの斤量が響いて14着だったが、今回は斤量面での条件も好転し、1走叩いた上積みも見込めるはずだ。
この馬に関しては、極端な言い方になるが、藤田騎手の乗り方ひとつにかかっているとみていいだろう。人気の有力馬・アルティマトゥーレとビービーガルダンは好位からの競馬。当然、この馬は目標にされる。後続を封じ込めるような逃げができるかどうか。レース全体の流れを左右する馬だけに、特に“逃げのペース”に注目したい。

単勝7番人気以降には前走重賞で掲示板に載った馬の名前が並んでいる。
トレノジュビリーはキーンランドC5着。5月のテレビ愛知オープンで、芝1200m・1分6秒9の時計をマークしているように、時計勝負を身上とする馬。それゆえ、当日の馬場状態がポイントになりそうだ。キンシャサノキセキから乗り移った岩田騎手が、この馬の瞬発力をどのような形で引き出すか。
セントウルS5着のマルカフェニックスは、夏に2走叩いて状態を上げているとのこと。前走は出遅れて後方からの競馬になったが、それでも5着まで差を詰めてきた。陣営は「今回はゲートを決めて好位で競馬をしたい」とコメント。ポジションを確保できてゴール前が混戦になるような展開になれば、食い込みがあってもおかしくない。
サマースプリントシリーズチャンピオンに輝いたカノヤザクラ(前走はセントウルS4着)。力量的には上位クラスなのかもしれないが、サマースプリントを目標に夏場は目イチの仕上げが続いただけに、ここでの上がり目はさほど期待できないだろう。
6月のCBC賞を制したプレミアムボックス。前走はキーンランドC4着。この馬については、後方一気の脚質に転換したことに注目しておきたい。近2走の上がりはいずれも33秒台(うち1戦は札幌の重い芝でマーク)。直線だけの競馬に徹するとすれば、展開面での不利は否めないが、〈2.2.0.4〉の中山実績があるだけに一応の注意は払っておきたい。

さらに、人気薄を1頭あげるならば、アポロドルチェ
スプリンターズSはレーティング上位5頭に優先出走権が与えられるのだが、スリープレスナイトの回避したために、レーティング6位のこの馬に出走のチャンスが回ってきた(つまり、レーティング=能力評価は高いということ)。近走の戦績は今イチだが、3走前には重馬場のアイビスSDで2着という結果がある。適度に時計がかかる馬場で、しかも、馬群がバラけるような流れが向いているのかもしれない。となれば、今回の大外枠はこの馬には有利。陣営も「内に包まれるのが嫌なので、これはいい枠」と歓迎している。
“中団の外目から差し脚を使える展開になれば”という条件付きではあるが、昨年(5着)以上の激走もあるかもしれない。


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プロフィール

安東裕章

Author:安東裕章
東京都出身。2007年11月に書籍『競馬のツボ』、2008年7月に『競馬のツボ2』、2009年7月に『競馬のツボ3』を発表(いずれも総和社刊)。

このたび、拙著『競馬のツボ』を刊行していただいた出版社・総和社様の勧めもあって、ブログを始めることにしました。
競馬における一番の楽しみは、レースについて考えること。つまり予想です。
このブログを書くことで、自分でも週末のレースに向けてイメージを膨らませる訓練になるかと思います。
競馬について考えることが好きな皆様。レース予想に疲れて気分転換をしたい時など、よろしければフラッと遊びに来てください。

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