■2009年11月

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■ジャパンカップ・結果

2009年11月29日 5回東京8日10R
第29回 ジャパンカップ(GⅠ)
芝・2400m 曇・良

 1着 ウオッカ           ルメール   2.22.4
 2着 オウケンブルースリ    内田博     ハナ
 3着 レッドディザイア       四位      1+1/2

単勝 5  360円(1番人気)
馬連 5-10 1020円  馬単 5→10 2020円
3連複 5-6-10 2460円  3連単 5→10→6 11690円

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■ジャパンカップ・予習

外国馬5頭を含むフルゲート18頭。ダービー馬・ロジユニヴァースの回避は残念だったが、それでも国際GⅠ・ジャパンカップにふさわしい豪華なメンバーが揃った。

前売りでの単勝1番人気はウオッカ(3.8倍)。ただし、これまでのように、“絶対の1番人気”というわけではない。この馬をどのように評価すればよいか。今回のレースにおけるひとつのポイントになりそうだ。

まず、考えてみたいのは「近走の内容」。
カンパニーに並ぶことなくアッサリ交わされた毎日王冠。そして、上がり32秒9の脚は使ったものの2着馬・スクリーンヒーローを差し切れなかった天皇賞・秋。この2走の走りから、ウオッカに関して“衰え”“下降線”という判断を下した競馬評論家も少なくない。実際、「以前のウオッカならば・・・」と思わせるシーンが2戦続いたことはたしかである。
しかし、全力を出し切って負けたのかといえば、そうとは言い切れない。いずれも、ウオッカの得意とする“好位で流れに乗って脚を溜めるレース”ではなかったことも事実。2走前の毎日王冠は逃げての2着。前走の天皇賞・秋は後方からの競馬で3着。さらに、スローペースに泣かされたという見方もできる。
今回、ウオッカを見直すとするならば、「好位のポジションで競馬ができるか」「速い流れになるかどうか」の2点がカギになるだろう。その意味では、3枠5番はポジションを取りやすい枠順であり、逃げ馬・リーチザクラウンが作り出す緩急のつかない流れは、ウオッカ向きとも思えるのだが・・・。

次に「距離」の問題。
天皇賞・秋の時点で、特に目立った評論家の意見は、「マイラー色が濃くなったウオッカは、JCではなくここが目標」というものだった。以前より瞬発力を発揮できる距離が短くなり、折り合いに課題が出てきたため、距離が伸びるのはマイナスという考え方である。そして、その考えは、昨年のジャパンカップで3着に敗退したことがひとつの基準になっている。
もっとも、昨年のこのレースは過去5年で最も遅い2分25秒5の決着で、当然ながら、ペースもスローだった。ウオッカの折り合い面での課題は「距離」にあると考えられがちだが、実際は「ペース」がカギなのではないだろうか。事実、昨年のJCよりも1秒早い2分24秒5でダービーを制している。「2400mに距離が伸びる今回は不向き」と判断するのではなく、「どういう流れの2400m戦になるのか」という検討が必要だろう。

最後に「乗り替わり」について。
今回、鞍上は武豊騎手からルメール騎手に変更となった。その経緯については不透明な部分も多いが、憶測を述べても意味がないのでここでは省くことにする。
ルメール騎手への乗り替わりについては、「プラス効果がある」という見方が多いようだ。たしかに、ここ2走の武豊騎手の乗り方を見ていると、“大事に乗り過ぎている”という感もある。気分良く走らそう、能力を最大限引き出そう、という気持ちはわかるのだが、“逃げ”や“後方での折り合い重視”という作戦は逆効果だったようにも思える。
ルメール騎手といえば、テン乗りでリトルアマポーラを優勝に導いた昨年のエリザベス女王杯が頭に浮かぶ。あの時と同じように、先入観を持たずに馬の気のままに走らせるレースができれば、ウオッカの能力を発揮させることは可能なはずだ。

いずれにしても、この馬の“取捨”のポイントは「ペース」と「位置取り」にあると考えたい。具体的に言うならば、“1000m通過が58~59秒台のペースで、ポジションは5・6番手のイン”というのが理想的だろう。
リーチザクラウンが逃げ宣言をしているが、エイシンデピュティとの兼ね合いはどうなるのか(最内枠を利して岩田騎手のアサクサキングスが大逃げを打つ可能性もある)。さらに、予報通りに午後から雨が降った場合、展開はどのように変わるのか。いくつかのシチュエーションを踏まえた上での検討が必要になりそうだ。


昨年の菊花賞馬・オーケンブルースリ。春の阪神大賞典で脚元に不安が出た後は、夏を全休して調整に充て、京都大賞典で復活V。「このレースを大目標にしてきた」という陣営の言葉通り、叩き3戦目を照準とした出走になる。昨年のJCは菊花賞でピークを迎えた後のレースだったが、それでも0.3秒差の5着。それと比較すれば、今回のローテーションは大きな強調材料と考えてもいいだろう。
前走は距離不足の天皇賞・秋。出遅れの上、スローな展開となったため、0.8秒差の4着に敗れたが、“叩き台”と割り切れば度外視できる。
ただし、“叩き台”にしては、マイナス8キロで出走した前走の馬体は仕上がり過ぎていた感もある。調教後の馬体重はプラス10キロまで戻っているが、復帰から今回のレースまでの間に、多少なりとも調整の狂いがあったのかもしれない。一応、注意しておきたい。
長くいい脚を使えるタイプだけに、府中の2400mは絶好の舞台とも思えるが、問題は雨で馬場が渋った場合。陣営も「良馬場で走らせたい」とコメントしているが、脚元に不安を抱えた馬に力を要する馬場は明らかにマイナス(状態が回復していたとしても、馬自身が臆病になるケースもあるという)。この馬に限ったことではないが、直前の馬場状態にはチェックが必要だろう。

ここ3年、連対実績のない外国馬だが、今年はK・ジョージとBCターフ(連覇)を制したコンデュイットが参戦する。過去にシングスピール、ビルサドスキーを送り込んできたスタウト師の管理馬で、GⅠ4勝の実績。2000m以上での最低着順は凱旋門賞の4着。左回りコースに限れば4戦4勝。侮れない1頭であることは言うまでもない。実際、この馬に◎印を打っている競馬記者も多い。
すでに、日本(ビッグレッドファーム)で種牡馬になることが決定しているが、その価値を上げるためにも、ここは“顔見せ”ではなく“目イチの勝負気配”と考えた方がいいだろう。
不安点をあげるならば、ローテーション。フランスの凱旋門賞から中3週でアメリカのBCターフ、さらに中2週で日本への遠征。BCターフからのローテーションは過去に好走例も多いし、来日後の調教を見る限り心配はいらないようにも思えるが、輸送続きによる“見えない疲労”は、やはり不安材料として取り上げておきたい。

昨年の勝ち馬・スクリーンヒーロー。前走の天皇賞・秋は4カ月の休み明けに加えて、“距離不足”“本番(JC)への叩き台”という評価があったため、7番人気の支持にとどまったが、内枠から好位で流れに乗る絶妙のレース運びで2着に食い込んだ。ローテーション的にも、夏を使って勝ち上がってきた昨年よりも、叩き2走目の今回の方が強調できる。
順当に上積みを見込めるならば、今回も有力馬の1頭であることは間違いないし、鞍上に昨年と同じデムーロ騎手を配したことはプラス。しかし、得意ではない条件のレースで好走した時ほど“反動”も生まれやすい。直前の気配には注意が必要だ。
あとは、大外枠から流れに乗れるかどうか。ウオッカの項でも書いたが、昨年のJCはスローペースで先行馬有利の展開。昨年、8枠16番からポジションをキープできたのも、スタートしてから各馬が出方を探り合い、生粋の逃げ馬ではないネヴァブションが押し出されるようにハナに立つような緩いレース展開だったからにほかならない。1コーナーまでに好位に付けること。それが好走の条件になるだろう。

3歳牝馬のレッドディザイアも人気の一角になっている。デビューから6戦すべて連対。“強い世代”と言われる今年の3歳牝馬の中で、ブエナビスタとトップ争いを繰り広げたこの馬の実力は高く評価できる。
なにより、53キロの斤量は他馬と比較して有利。オークスで見せたような、馬群から早めに抜け出し後続に差をつける競馬ができれば、馬券圏内に入ってきてもおかしくない。
問題は体調面。マイナス14キロで出走した秋華賞はギリギリの仕上げ。エリザベス女王杯回避は体調が戻らなかったためであることは、陣営もはっきりとコメントしている。中5週の間隔を取ったことで回復は進んだに違いないが、再びピークの状態まで戻っているかは疑問。調教後の体重もプラス2キロで、輸送を考えれば、前走よりもマイナス体重での出走になるかもしれない。条件も枠順もプラス材料とは思えるが、激走の後だけに慎重に検討したい。

ウオッカの取捨と同様に、このレースを考える上でのポイントと思えるのが、リーチザクラウン。ひとことで言えば、この馬を“強い逃げ馬”と考えていいのか、ということである。
たしかに、自分のペースでレースを作れた時は、好走する可能性が高い。菊花賞の走りも、スピードの持続力という点では評価できる内容だった。
ただし、後続に脚を使わせて最後に突き離すという競馬は、まだまだ完成されていない。古馬との初対決となる今回のレースは、当然ながら、この馬にとっての試金石になるだろう。はたして武豊騎手はどのような作戦をとるのだろうか。
さらに気になるのは、この馬のテンションに関すること。橋口調教師は「当日はテンションを高めないように、返し馬でジョッキーを乗せる」とコメントしているが、となれば、東京・芝・2400mの“スタンド前発走”は気掛かりな材料だ(歓声が近いために馬が興奮しやすい)。
リーチザクラウンが残る展開、あるいは、リーチザクラウンが沈む展開。買い目を決めるにあたっては、そのあたりの見極めが重要になりそうだ。

人気のないところでは、春の天皇賞馬・マイネルキッツに注意を払っておきたい。
春天の後の宝塚記念は、いかにも「ピークは前走でした」という内容。前走の京都大賞典は休み明けの叩き台。使われつつ良くなるタイプだけに一変とまではいかないかもしれないが、今回は斤量2キロ減。中団のインから直線で抜け出してくる“この馬のパターン”にハマれば、食い込みがあってもおかしくない。
あとは、外国馬のシンティロ
今回参戦する外国馬の中では最も格下に見られているが、新聞の調教欄に載っている“軽めに追い切り”の前日に、実は東京芝コースで10Fの追い切りを行っている点に注目。このあたりの陣営の“やる気”は少々不気味だ。
さらに、前走60キロを背負って走っているのはこの馬だけ。馬体重(調教後)は454キロと出走馬の中では最も軽い馬だけに、3キロの斤量減は有利に働くだろう。

あとは、当日の馬場状態。予想以上に渋るようならば、先行馬の残り目も頭に入れておいた方がいいかもしれない。
中でも、坂路で49秒台の調教時計を出したエイシンデピュティは要注意。長欠明けの3戦目。休養前の宝塚記念では重馬場を逃げ切っている。(もっとも、不良馬場のダービーで2着に入ったリーチザクラウンとの“行った・行った”で、「GⅠ3週連続の前残り」という結果になると、さすがに笑えないが・・・)

ともあれ、今週こそ、「これぞGⅠレース」という好勝負を期待したい。



■マイルCS・復習

天皇賞・秋に続くGⅠ連覇。
マイルチャンピオンシップは、カンパニーの“最高のラストラン”という形で幕を閉じた。

レースは前半の800mを47秒2で通過(後半は46秒0)。前半のラップの方が速かった近年のこのレースと比較しても、かなりのスローペースだった。
『予習』の中で、カンパニーについて、「思わぬ乱ペースになった場合、道中で脚をためる競馬ができない危険性もある」という旨を述べたが、淡々とした流れになったことで、カンパニーは自分の競馬に徹することができた。
内枠を活かして中団のインをキープ。直線を向いて追い出すと、前を行くマイネルファルケをゴール前できっちり捕らえた。横山典騎手がムチを入れたのは仕掛けの時だけ。後はほとんど持ったままでゴール手前では手綱を緩めるほどの余裕の勝利。格の違いを見せつける、まさに“横綱相撲”だった。
それにしても、今秋のカンパニーの走りは“見事”としか言いようがない。好走するたびに、衰えによる反動が不安視されたが、その都度8歳馬という年齢をまったく感じさせない“強い走り”を見せてくれた。ただただ、頭が下がるばかりである。
「おつかれさま」「ありがとう」
父親と同じように、強い勝ちパターンを持った“カンパニー2世”の登場を心待ちにしたい。

2着には14番人気の伏兵・マイネルファルケが逃げ粘った。
単騎逃げが見込めるメンバー構成に加え、雨の影響で差し馬のキレが鈍ったことなど、展開に恵まれた部分も大きいが、絶妙のペース配分で後続を封じた和田騎手の騎乗とそれに応えた馬自身の走りは、十分に評価できるものだろう。
前週のエリザベス女王杯の結果から、「(今週は)簡単に逃げることはできないだろう」と思い、『予習』ではこの馬を取り上げなかったが、「自分の形に持ち込んだ時の逃げ馬は渋太い」ということを改めて痛感させられた。2週続けて同じ反省をしなければならないというのは、はなはだ情けない結果である。

3着は外国馬のサプレザ。
ペリエ騎手は「外枠に入ったことで勝ち馬よりもコースロスがあった」とコメントし、コレ調教師は「雨が降った影響があった」と語っている。最後は中を突いて伸びてきただけに、条件やコンディションが有利に働いていれば、際どい勝負になっていたかもしれない。スタートから好位を取るために若干掛かり気味の走りになったようだが、レースの走りそのものは、戦前の評価以上に“なかなかいい馬だな”と思わせる内容だった。

4着のキャプテントゥーレには不満が残る。
一番の疑問は、マイネルファルケの番手に控え、直線で射程圏に捕らえながら外側へ進路を取ったことだ。
川田騎手のコメントによれば、「馬場のいい所を通らせるというレース前の指示通り」ということだが、馬体を併せる形にしていれば直線で伸びを欠くことはなかったのではないだろうか(実際、川田騎手も「併せた方がよかった」と述べている)。外目に出した後、馬がフラついたのは、集中力が切れたからだろう。スムーズに流れに乗って、脚も残していたように見えただけに、残念な結果である。

それ以上に残念に思えたのは、アブソリュート(5着)とスマイルジャック(6着)。
アブソリュートはメンバー最速の上がり・33秒0で突っ込んできたが、位置取りがあまりに後方すぎた。カンパニーが動くのを見てから仕掛けても勝てるわけがない。田中勝騎手も「もう少し前で競馬がしたかった」とコメントしているが、もっと積極的な競馬をしてほしかったというのが正直な気持ちだ。
スマイルジャックも同様。距離短縮で折り合いもついていたし、内を突いてきた直線の走りにも進歩は窺える。しかし、後方13番手からの追い込みでは“勝ち負け”には加わることはできない。「前が開かなかった」(三浦騎手)とのことだが、馬群が壁になることはフルゲートのマイル戦ならば想定できたはず。
アブソリュートもスマイルジャックも、外目の枠を引いたために後方からの競馬になったわけではない。折り合いを重視して末脚にかける作戦が間違っているとは思わないが、好位を取って果敢に攻めていくレース(言い換えれば、カンパニーを負かしにいくレース)を見せてほしかった。

雨に泣かされた・・・ザレマ、スズカコーズウェイ、マルカシェンク。
枠順が外過ぎた・・・サンカルロ、ライブコンサート。
経験が足りない・・・フィフスペトル、ストロングガルーダ。
距離が合わない・・・トレノジュビリー、サンダルフォン。

陣営はそれぞれ敗因を分析している。
しかし、「これがGⅠの戦いなのか?」という物足りなさが残ったのも事実。
カンパニーの強さは別格としても、オープン勝ちすらなかったマイネルファルケが2着に逃げ粘るというのはどうなのだろうか。
「2週続けてファンに失望を与えるレースが行われた」と、辛口の意見を述べる評論家も少なくない。
マイル戦線の中心となる強い馬が現われることを願うばかりである。

最後に自分自身の反省を・・・。
この2週は“読み”がすべて裏目になった。
手に汗を握るような好勝負を期待したために、自分の望むレース展開に固執しすぎたのが原因だろう。
大逃げのクィーンスプマンテも、単騎逃げのマイネルファルケも、後続の差し馬の力量を判断して展開を検討していれば、押さえておかなければならない穴馬だったはずだ。
しかし、ゴール前の息詰まる接戦(=好勝負)を期待して、それを前提に展開を予想すると、人気薄の逃げ馬が残るシーンは見えてこない。
“好レースを期待する気持ちは持ち続けていたいが、気持ちに流されすぎると間違った予想になる”ということ。
しっかりと肝に銘じておきたい。


■マイルCS・結果

2009年11月22日 5回京都6日11R
第26回 マイルチャンピオンシップ(GⅠ)
芝・1600m 小雨・良

 1着 カンパニー       横山典    1.33.2
 2着 マイネルファルケ    和田      1+1/4
 3着 サプレザ          ペリエ     クビ

単勝 4  230円(1番人気)
馬連 4-13 6690円  馬単 4→13 9640円
3連複 4-13-15 20730円  3連単 4→13→15 106680円


■マイルCS・予習

秋のマイル王決定戦、GⅠ・マイルチャンピオンシップ。
もっとも、今年の場合、安田記念の1~3着馬(ウオッカ・ディープスカイ・ファリダット)も、昨年の連対馬(ブルーメンブラット・スーパーホーネット)も不在。メンバー的には“小粒”といった印象が強い。ゆえに、どの馬にも上位にくるチャンスがありそうな混戦模様。馬券の検討はなかなか容易ではない。

前売り1番人気は、今回が引退レースとなるカンパニー(単勝2.6倍)。これまでの実績からも、毎日王冠→天皇賞・秋を連勝中の現在の勢いからも、メンバーの中では頭ひとつ抜けた存在と考えていいだろう。
枠順も近2走と同じく、ロスなく好位につけやすい内枠。調教の動きもよく、「前走のデキを維持」という陣営のコメントの通り、中2週が続いた激走の反動を心配する必要はなさそうだ(一応、直前の気配には注意を払った方がいいかもしれないが・・・)。
不安点をあげるならば、レースの流れが速くなった時の走り。
カンパニーは今年6戦して、うち4戦で連対(3勝2着1回)しているが、いずれもスローペースのレース。逆に4着に終わった2戦(安田記念・宝塚記念)はハイペースの展開だった。安田記念は4コーナー14番手から大外に出して届かずの競馬、宝塚記念は4コーナーで先頭に立ったものの直線で交わされた。
注目したいのは、上がりの数字。連対を果たしたスローペースの4戦は32秒9(9番手から差し切った天皇賞・秋)~34秒9(先行して突きはなした中山記念)の脚を使っているが、敗れたハイペースの2戦は35秒台に落ち込んでいる。つまり、カンパニーという馬は、緩い流れに乗りながら道中脚を溜めて、最後に瞬発力を発揮するレースが得意ということである。
今回は、マイネルファルケが逃げてキャプテントゥーレが番手に続く隊列が予想されるため、それほど速い流れにはなりそうもないが、他馬が競りかけたり後続が早めに動くような展開になると、思わぬ“乱ペース”になるかもしれない。カンパニーがレースの中心馬であることは間違いないだろうが、“取りこぼし”の危険性も頭に入れておきたい。

キャプテントゥーレは、今回と同じ京都・芝・1600mで行われるデイリー杯2歳Sの勝ち馬。戦歴においては2000m戦(皐月賞、朝日CC)での勝ち鞍が光るが、距離短縮がマイナスになるとは思えない。前走の天皇賞・秋は、道中マツリダゴッホとの並走が続き、プレッシャーをかけられ続けたため直線で失速したが、今回は同型馬も少なく、展開面ではかなり有利になった(自分のペースで進めるようになった)と言えるだろう。
もっとも、この馬の場合、中間は天皇賞・秋の疲れが取れず、追い切り後まで出否を迷った経緯がある。はたして、万全の状態での出走なのかどうか。
さらに、先週のエリザベス女王杯で逃げ馬にみすみす勝たれてしまったことから、各ジョッキーに“先行馬マーク”の意識が強くなることも推測される(それゆえ、カンパニーが得意としない速いペースになる可能性も考えられるのだが・・・)。
今回は目標にされるレース。自分の勝ちパターンに持ち込むことができるかどうか。実績面では上位の評価を与えてもかまわないだろうが、過信は禁物だろう。

夏の関屋記念を制したスマイルジャック。毎日王冠と天皇賞・秋は折り合い面の不安を抱えながらのレースだったため、適距離ともいえるマイルに戻ったことは大きなプラス材料だ。
問題は、フルゲート18頭の馬群をいかにさばけるかだろう。3着に食い込んだ春のマイラーズCは10頭立ての少頭数、関屋記念は後方から馬群の外へ出す決め手勝負だった。馬群を割って伸びてきたわけではない。
陣営もそのあたりを意識して、調教では馬の間を抜ける走りを試みていた。あとは、鞍上の三浦騎手がどのような乗り方をするか。馬混みにひるむことなく、末脚のキレを発揮できることが、好走の条件になりそうだ。

前走で富士Sを勝ったアブソリュート。1600m戦では〈5.0.0.2〉の実績を持つマイル巧者である。
もっとも、左回りコース〈6.1.1.3〉に対して、右回りコース〈1.0.1.2〉という数字は気掛かりだし、初の京都コース、デビュー以来2度目の関西遠征も不安材料と考えられる。
加えて、前走の富士Sはレベルそのものが疑問。出走18頭が1秒以内にひしめく混戦であり、勝ち時計の1分33秒3はその前週の500万クラスより0.5秒も劣る平凡なものだった。今回、結果を出すことができれば、マイル戦線の中心馬になれる可能性も見えてくるかもしれないが・・・。

同じく富士S2着のマルカシェンク。スタートが悪く、後方からの競馬を強いられるため結果を出せずにいたが、前走は外枠に入ったこともあり、大外一気の“決めうち”で連に絡んだ。
今回は2枠3番。後方から外へ持ち出すロスが生じるため、陣営も「参ったな」とコメント。京都・外回りコース特有の、直線で空いたインへ飛び込む競馬ができれば活路が見出せるかもしれないが、脚質的には有利な枠とは言えないだろう。

9月の京成杯AHで、牡馬相手にマイル重賞を制覇したザレマ。牝馬だからといって侮れない1頭だ。近走の内容だけを見れば、カンパニーに次ぐ充実ぶりが窺える。好位から抜け出す競馬ができることも強味。調教の状態も良く、追い切りではJC出走予定のオウケンブルースリを圧倒する動きを見せた。
ポイントは前に馬を置いて脚を溜める競馬ができるかどうかだろう。前走(冨士S)のように壁を作らずに外を回ると、行きたがる癖が出るという。インの3~4番手につけるのがベストポジションだろう。
あとは、陣営も公言しているように、馬場が渋った場合にはパフォーマンスが落ちる。雨予報の出ている今回、当日の天候、馬場状態にも注意が必要だ。

休み明け3走目となるスズカコーズウェイ。前走のスワンS(0.4秒差・5着)は間隔が開いた上に8キロの馬体増。今回は調教後の計量でマイナス2キロであるから、しっかりと絞ってきているようだ。
斤量が58キロから57キロになるのも、この馬にとっては好材料。連勝で京王杯SCを制した時が57キロで、それ以後は58キロで着外続き。斤量泣きするタイプなのかもしれない。
短距離志向が強くなった感もあるが、〈4.2.3.3〉の実績が示すように、元々はマイルを主戦場にしていた馬。時計の速い決着になると厳しいかもしれないが、別定GⅡ(京王杯SC)勝ちの実力を発揮できれば、巻き返しがあってもおかしくない。

今回、3歳馬は3頭出走するが、いずれも休み明けを叩いて2戦目となる。
マイル重賞(ニュージーランドT)に勝ち鞍のあるサンカルロ、休み前に連勝でラジオNIKKEI賞を制したストロングガルーダ、朝日杯FS2着のフィフスペトル。古馬相手のGⅠでどれくらいの走りができるか注目したい。
3頭の中で、最も勝負気配を感じるのはフィフスペトル。関東の加藤征厩舎の所属馬だが、除外対象であったにもかかわらず1週前登録の時点でルメール騎手(朝日杯FS2着時の鞍上)を確保。さらに、他の2頭が富士Sを使ったのに対して、この馬は京都に遠征してスワンSを走らせている。輸送を経験させるためだ。皐月賞の時もダービーの時も、「本質はマイラーなので距離が長い」と言われた馬だけに、名手・ルメール騎手の手綱さばきにも期待がかかる。

京都・芝・1600mの適性を、数字だけで検討するならば、ヒカルオオゾラ(京都芝〈3.0.0.1〉、1600m〈4.2.0.2〉)とライブコンサート(京都芝〈1.0.2.0〉、1600m〈5.3.3.6〉)の戦績が光る。
もっとも、ヒカルオオゾラはスミヨン騎手を鞍上に迎えたとはいえ、実際には次週のキャピタルSが目標。追い切りが1本だけという調整過程に不安が残る。
ライブコンサートにしても、安田記念の5着という成績が取り沙汰されすぎている感もあり、近走の走りを見る限りでは強調材料に乏しい(ただし、今秋のGⅠ戦線で今イチの岩田騎手が外目から一発を狙ってくると怖いのだが)。

外国馬2頭に関しては、サプレザの方が評価が高いようだ(単勝3番人気)。先行して粘ったり、後方から伸びたり、自在性を発揮できる脚質も魅力だが、鞍上がペリエ騎手というのも人気につながっているのだろう。
馬場適性についてはなんとも言えないが(サプレザに関しては日本の硬い馬場に向いているという評価も多い)、今回出走する日本馬のレベルを考えると、軽視できない存在かもしれない。

最後にもう1頭、気になる馬をあげるならばサンダルフォン
『セントウルS・復習』でも書いたことだが、同レース後の「テンにもたつくタイプなので、もう少し距離があってもいいかもしれない」という四位騎手のコメントが興味深い。
夏からの連戦による疲労を指摘する声もあるが、前走・スプリンターS(0.3秒差・7着)の後はここを目標に短期放牧。今回、大外枠に入ったことで、末脚勝負に徹することもできる。あくまで展開次第という注文はつくが、メンバー中4位の持ち時計(1分32秒7・4走前)があることからも、一応のマークはしておきたい。


■エリザベス女王杯・復習

3連単154万円の大波乱!
GⅠ・エリザベス女王杯は、11番人気のクィーンスプマンテと12番人気のテイエムプリキュアの2頭による“行った・行った”の決着。1番人気のブエナビスタは上がり3F・32秒9の鬼脚で追い込んだが3着に終わった。

有力馬に決め手の差し脚がある場合、人気薄の逃げ馬の前残りに注意することは、馬券を検討する際の“鉄則”である。しかし、GⅠという大舞台で現実にこのようなレースが行われるとは、正直、予想できなかった(予想したくなかったと言った方がいいかもしれない)。牝馬の最高峰を決定するにふさわしい“直線の攻防”や“追い比べ”を期待していたファンにとっては、なんとも後味の悪い結果。“展開のアヤ”と言ってしまえば、それまでではあるが・・・。

もちろん、だからと言って、1・2着馬にケチをつけるつもりはない。能力を発揮できたからこそ結果がついてきたことは間違いない。

クィーンスプマンテの勝因をあげるならば、絶妙なペース配分ということになるだろう。1000mの通過が60秒5の楽なペース。3コーナーへの上りで加速を始めると、坂の下りではさらに後続集団を突きはなし、一時は20馬身近いリードを奪った。これでは後ろは届かない。
デビュー4年目で初のGⅠ勝利を手に入れた田中博騎手の騎乗も評価できる。最も得意な形に持ち込んで、馬の力を信じて最後まで追い続けた。レース内容とは関係なく、若さあふれる迷いのない乗り方には、清々しさを感じることができた。この勝利を今後の糧にしてほしい。
さらに、このレースに向けての陣営の仕上げも特筆すべきだろう。早めに栗東に入厩させて現地での調整。関東・小島茂厩舎は、この調整方法で昨年の秋華賞(ブラックエンブレム)を勝利している。「逃げ切れるはずがない」という先入観が強かったために、こうした陣営の工夫(しかも過去に好走例のある)をさほど気にとめなかったのも事実。反省材料である。

2着のテイエムプリキュアは2番手で競馬ができたことが好走につながった。“ハナ・2番手”という隊列がしっかりとできたために、無理に競り合うこともなく、両馬とも息を入れながら走ることができた。言い換えれば、2頭がワン・ツー・フィニィッシュできた一番の理由は、テイエムプリキュアがハナにこだわらなかった(クィーンスプマンテに先に行かせて自分の競馬に徹した)からだとも考えられる。これについては、ベテランの熊沢騎手の技術を誉めるべきだろう。

ブエナビスタは2着にクビ差届かなかったが、それでも結果的には、この馬の能力の高さを証明する形になった。
後続集団から最初に動いたのはカワカミプリンセス。続いてブエナビスタ。どちらも本来よりも早めの仕掛けであり、それゆえ、余分な脚を使うことになった。カワカミプリンセスは早く動いた分だけ直線で伸びを欠き9着に終わったが、ブエナビスタは直線でさらに伸びた。道中で予定外の動きがあったにもかかわらず、上がり3Fは32秒9。4着のシャラナヤに3馬身半の差をつけたのだから驚きである。
安藤勝騎手も松田博調教師も「あれ以上早めには動けなかった」とレース後にコメントを残している。後方の馬群全体が早めにペースを上げて、先行2頭を直線で射程圏に捕らえる展開になっていれば、ぶっち切りの勝利だったのではないだろうか。

今回のレースを見て、「後ろがだらしない」「なんで前を捕まえにいかないんだ」と思ったファンも多いはずだ。しかし、実際にレースで騎乗したジョッキーは、先行2頭に離されていることに気がつかなかったようである。

「3コーナーを回り切るまで前が見えなくて、直線に入って見た途端、間に合わないと思った」(ブエナビスタ・安藤勝騎手)
「直線に向くまでさらに前に馬がいるなんてわからなかった」(メイショウベルーガ・池添騎手)
「直線で前が開いた時には上位2頭ははるかに前にいた」(ブロードストリート・藤田騎手)

そして、離れた3番手を追走していたリトルアマポーラのスミヨン騎手は次のようにコメントしている。

「まさか前の2頭があんなに離して逃げるとは思わなかった。ペースを崩したくなかったので、なかなか動けなかった」

今回の結果に対しては、いろいろな意見が出ている。特に、ペースを上げずに離されたリトルアマポーラには批判が集中しているようだ(日本の競馬や出走馬の脚質に熟知していないスミヨン騎手を責めるのは可哀想ではあるが)。それについて、当ブログで細かく言及するつもりはないが、レース後に思い出した過去のエピソードを書き加えておきたい。

2007年2月11日に行われた東京10R・調布特別。
このレースはコパノスイジンとエイシンサリヴァンの“行った・行った”で決着(吉田兄弟のワンツー)し、3着馬は4馬身差をつけられた。展開は今回のエリザベス女王杯とまったく同じものだった。
レース後、ある中堅騎手が騎乗したジョッキーを集めて一喝したという。
「こんなレースをファンに見せて恥ずかしくないのか!」


我々競馬ファンが望むレース。
それは、「それぞれの馬が能力をいかんなく発揮する好勝負」である。


■エリザベス女王杯・結果

2009年11月15日 5回京都4日11R
第34回 エリザベス女王杯(GⅠ)
芝・2200m 晴・良

 1着 クィーンスプマンテ     田中博    2.13.6
 2着 テイエムプリキュア     熊沢      1+1/2
 3着 ブエナビスタ          安藤勝     クビ

単勝 7  7710円(11番人気)
馬連 7-11 102030円  馬単 7→11 250910円
3連複 7-11-16 157480円  3連単 7→11→16 1545760円


■エリザベス女王杯・予習

秋の牝馬No.1を決定するGⅠ・エリザベス女王杯。
近年は“伸び盛りの3歳馬”対“歴戦の古馬”という構図が強く見られ、結果としては3歳馬の勝利(2006年・フサイチパンドラ、2007年・ダイワスカーレット、2008年・リトルアマポーラ)が目立っている。その理由は、「2キロの斤量差が大きい」というのが一般的な見解。秋華賞に出走した3歳牝馬にとって、1キロの斤量減になることも少なからず影響があるのだろう。
今年のレースに関しても、「3歳馬が有利」という声が多い。“レベルが高い”と言われる今年の3歳牝馬がどういうレースを見せてくれるのか。あるいは、経験豊富な古馬が壁となって立ちはだかるのか。興味深い一戦になりそうだ。

前売り段階で1番人気に支持されているブエナビスタ(単勝1.8倍)。牝馬3冠のかかった前走・秋華賞ではレッドディザイアに先着された上に降着という結果に終わったが、直線の追い上げで見せた末脚のキレは圧巻。この馬の能力を改めて証明した一戦だったと考えていいだろう。
前走は直線の短い内回りコースで内枠に入ったことから、脚質的に不利な部分もあったが、今回は外回りコースの外枠。条件は大きく好転した。安藤勝騎手も迷うことなく“外差し”を狙ってくるはずだし、ツメに不安のあった前走よりも調整は順調とのこと。よほどの不利やアクシデントがない限り、直線一気で突き抜けてくる可能性は高いと思われる。
デビューしてからここまで複勝率10割(8戦)。今回も馬券の中心と考えるのが順当だろう。

前売り2番人気は同じく3歳馬のブロードストリート(単勝7.9倍)。前走・秋華賞では4コーナーでブエナビイスタに前を塞がれる不利があったが、「あれがなければ突き抜けていた」という藤田騎手のコメントの通り、最後の直線での伸び脚には勢いがあった。
秋2戦の充実ぶりは見事で、特に、馬群の中から抜け出してくる瞬発力はこの馬の強味。前走は出遅れがあって後ろからの競馬になったが、どのポジションからでも立ち回れる器用さも備えている。
もっとも、こうした器用さが裏目に出るケースもある。馬混みを苦にしないために、結果的に窮屈なポジションでの競馬になってしまうことがあるからだ(それゆえ、不利も受けやすい)。
したがって、この馬の場合、いかにスムーズにレースができるかがカギになるだろう。藤田騎手の位置取りに注目したい。

桜花賞、オークスで3着に入ったジェルミナル。前走は0.6秒差の6着の敗れたが、陣営のコメントによれば「外枠で流れに乗れなかった」とのこと。今回、念願の内枠を引いた(陣営談)ことで、決め手不足をカバーする走りを見せてくれるかもしれない。
休養明けの2戦は結果が出ていないが、内々をロスなく立ち回れるレースができるようであれば、春の実績からも侮れない1頭。“叩かれて良くなるタイプ”“調教状態も大幅に良化”といった情報も聞こえている。人気は下降気味だが軽視は禁物だ。

前走・秋華賞で最速の上がり(34秒2)を記録したミクロコスモス。ブエナビスタ同様、決め手で勝負する馬なので、今回の外枠(7枠15番)は歓迎だろう。鞍上は武豊騎手。ブエナビスタをマークするレースに徹することも予想できる。
もっとも、元来、折り合いに不安のある馬。距離が伸びることで折り合いを欠き、道中掛かり気味で力んだ走りになるようであれば、末脚のキレが鈍るというケースもあるだろう。

先にも述べたように、今年の3歳牝馬は“レベルが高い”と言われているが、気になる点もある。
それは、秋華賞を制したレッドディザイアがこのレースを回避してジャパンカップへの参戦を表明したことだ。
古馬牡馬混合のGⅠを経験させたいというのが表向きの理由とされているようだが、秋華賞のレース後に、陣営は「次走もブエナビスタと同じレースに出て勝負をしたい」と語っていたはず。
つまり、あくまで推測ではあるが、“中3週のエリザベス女王杯を目標とした場合、体調が回復するメドが立たないのではないか”という見方もできるのだ。言い換えれば、レコード決着となったローズSと1分58秒2の好時計となった秋華賞の激走の疲れが思った以上にあったために、レッドディザイアはローテーションを変えざるを得なかったということである。
3歳馬に関しての不安点は、秋2戦の激走による消耗。特に、ローズSと秋華賞で好走したブロードストリートについては、直前の状態などに注意したい。

次に古馬について。
ポイントとなるのは、前哨戦となった府中牝馬Sの内容だ。
レコード決着となったこのレースは、典型的な先行激化の展開となり、4コーナーで後方に位置していた馬たちで決着した。
競馬評論家の多くは、「(府中牝馬Sは)展開に恵まれて馬券に絡んだ差し馬よりも、先行して厳しい流れに巻き込まれながらも上位に残った馬を評価するべき」という意見を述べているが、競馬ファンも同様の考え方をしているらしく、府中牝馬Sの着順とエリザベス女王杯の単勝人気には“逆転現象”が起きている。

昨年の覇者・リトルアマポーラ。休み明けの前走・府中牝馬Sは5着。好位から追走したものの最後は差し馬に屈した。叩き2走目となる今回は上積みが見込めるし、鞍上に名手・スミヨン騎手を配したこともプラスと考えていいだろう。昨年のように、好位からスムーズに流れに乗り、直線で後続を突きはなすような競馬ができれば、上位に食い込んでくる可能性は高い。
ただし、この馬の場合、“強さ”という点では、いくぶん強調材料に欠けるように思える。昨年のレースにしても、ルメール騎手のレース運びの巧さは際立っていたが、馬自身に他馬を圧倒するだけのインパクトがあったかと言えば疑問だ。実際、その後のレースでは見せ場さえ作れず、“GⅠ馬”という称号には程遠い競馬が続いている。「前年の勝ち馬+外国人騎手」というイメージだけで“買い”と判断するのは危険だろう。

6歳馬のカワカミプリンセス。昨年のエリザベス女王杯は2着。前走の府中牝馬Sでは4コーナーで先頭に立ったものの、そこから伸び切れずに6着に終わっている。もっとも、速いペースに加えて、大外枠から好位に取り付くまでに脚を使ったことが敗因とわかっている。
ピークは過ぎたという声も上がっているが、骨折による長期休養があったため、これまでに走ったレースは16戦と少ない(同じ6歳馬のテイエムプリキュアの約半分)。春先には牡馬混合の別定GⅡ(京都記念、大阪杯)での好走もあり、まだまだ衰えは感じられない。
「前走は力んで走っていた」という判断から、陣営は中間にプール調教を併用するなど工夫を凝らしている。その効果もあって、直前の追い切りではリラックスした走りを取り戻したとのこと。
勢いのある3歳馬との力関係についてはなんとも言えないが、実績No.1のこの馬が、古馬の意地を見せてくれるかもしれない。

府中牝馬Sをレコードタイムで制したムードインディゴ。“展開に恵まれた”という見方が強いせいか、前売りでは8番人気・単勝23.3倍と評価は低い。たしかに、それ以前の戦績を振り返ると、前走がフロックであったと考えられなくもない。
もっとも、だからと言って、軽視はできないだろう。3歳時の昨年秋にはローズS、秋華賞で連続2着。この季節に調子を上げてくるタイプかもしれない。続くエリザベス女王杯では0.8秒差の6着だったが、陣営の話では「口内炎ができて本調子ではなかった」とのこと。今回、外枠に入ったことで、ブエナビスタと同じく末脚に賭ける競馬に徹しやすい。連続好走はないとは言い切れないはずだ。

夏の条件戦を勝ち上がってきたメイショウベルーガ。上がり馬という視点で見れば面白い存在であるし、牡馬混合のレースで付けてきた力を発揮することができれば、今後の牝馬重賞戦線でも活躍が期待できる可能性も見えてくる。
勢いや充実度といった点では、“買い”の要素もあるが、問題はローテーション。8月以降すでに5戦。上積みは見込めないだろうし、逆に連戦の疲労も気になる。

取捨選択が難しいのが、外国馬のシャラナヤ。前走の仏GⅠ・オペラ賞は後方から一気の差し切り勝ちだったが、一方で、4走前には逃げ切り勝ちもあり、自在に脚を使えるタイプと判断できる。国際レーティングはウオッカと1ポイント差の高い数字で評価されており、その点では実力馬と見てもいいだろう。
鞍上は日本の競馬を熟知しているルメール騎手(現地では同馬の調教をつけているとのこと)。ならば、コースやペースの違いで戸惑うこともないはずだ。
ポイントは、日本の馬場に対する適性。この馬はここまで3勝を上げているが、いずれもロンシャン競馬場でのレース。ロンシャンといえば、ディープインパクトが凱旋門賞に渡仏した際、関係者が「芝が長く重い」とコメントしていたことが思い出される。少なくとも、京都の軽い芝とは性質が違うはずだ。来日後は軽めの調整に終始していたことにも「?」が付く。とはいえ、ルメール騎手が母国のGⅠ馬に乗る以上、マークは必要かもしれない。

最後に展開について。
テイエムプリキュアとクィーンスプマンテがレースを引っ張る形が予想されるが、序盤は各馬が折り合いに専念するため、流れそのものはそれほど速くはならないだろう。
ひとつのモデルケースと考えてみたいのは、先日の菊花賞。有力馬が決め手勝負に出るとわかっている場合は、好位から先にスパートできる馬には注意したい。エリザベス女王杯におけるスリーロールスとフォゲッタブルはどの馬か。“ブエナビスタの相手探し”という観点からも、ブエナビスタよりも前に位置して先に動ける馬、すなわち、レッドディザイアタイプの馬を狙うことが、買い目のポイントになるだろう。


■今週末のブログについて

競馬のツボ<ブログ版>にお越しいただき、ありがとうございます。

今回、事情があって更新が遅れてしまったことをお詫びいたします。
さらに、誠に勝手ではありますが、
今週末のブログにつきましても、
1週だけ休載させていただくことをお許しください。
申し訳ありません。

一応、今週末(日曜)の重賞についての簡単に書いておきたいと思います(枠順発表前ですが)。

●アルゼンチン共和国杯
ジャガーメイル、スマートギア、トウショウウェイヴが人気になりそうです。中でも、ジャガーメイルはここを勝って初重賞制覇を成し遂げ、ジャパンカップに駒を進めたいでしょう。スミヨン騎手の手綱さばきにも注目です。
他に気になる馬はアーネストリー。昨年の終わりから今年の春にかけて頭角を現してきましたが、心身の成長が能力についていっていない印象がありました。夏を越してどれくらい馬が変わってきたか。今後の重賞戦線で活躍できるかどうかを占う意味でも注目してみたいと思います。
もう1頭あげるならばトーセンキャプテン。東京実績は<0.0.0.4>と良くないですが、近走は別定GⅡでもそこそこの内容。鞍上がルメール騎手というのも魅力です。ハンデ57キロを、実力が評価された証拠と考えれば、侮れないでしょう。

●ファンタジーS
良血・ラナンキュラス、函館2歳S勝ちのステラリードが人気を分けそうですが、2歳牝馬のレースだけに思わぬ伏兵の台頭もあるかもしれません。
牡馬混合のGⅡ・デイリー杯2歳Sで5着に入ったラブグランデー、同じく6着のタガノエリザベート(上がりは33秒8)、さらに、タガノの主戦だった安藤勝騎手が騎乗する同厩(松田博厩舎)のベストクルーズなどが気になります。馬券的には難しいレースになりそうですね。


残念ながら、今週は競馬に参加することができそうにありませんが、
来週のエリザベス女王杯には、復帰いたします。
よろしくお願い申し上げます。


安東 裕章

■天皇賞(秋)・復習

JRA史上初となる8歳馬のGⅠ勝利!
天皇賞・秋を制したのは5番人気のカンパニーだった。

勝ち時計は昨年のレコードと並ぶ1分57秒2。上がり3Fは32秒9。数字においても素晴らしい結果であるが、そのレースぶりも見事のひとこと。道中は中団のインで脚を溜め、直線では先行集団の外へ。先に動き出したスクリーンヒーローと馬体を併せると、最後は1+3/4馬身差をつけて振り切った。
馬群の外へ出すタイミングと目標馬(スクリーンヒーロー)に照準を合わせた仕掛け。すべては、横山典騎手の完璧な騎乗によって生まれたもの。素晴らしいとしか言いようがない。『予習』では「内枠に入ったことが不利になるのでは?」という見解を述べたが、結果はまったくの逆。ロスなく走れる“内枠の利”を最大限活かして、馬の能力を100%発揮させた乗り方だった。
もちろん、鞍上の指示に走りで応えたカンパニーにも賞賛を送りたい。某競馬評論家は「これまでの競馬の年令的な概念を覆す勝利」とコメントしていたが、8歳という年齢を超越した走りには頭が下がるばかりである。「大切に使っていけば馬は応えてくれる」という横山典騎手の言葉も実に印象的。今後、どれだけ競走馬生活が送れるかはわからないが、これからも無事で、我々競馬ファンを唸らせるようなレースを見せてほしい。

2着は昨年のJC馬・スクリーンヒーロー。休み明けでプラス12キロの馬体重だったが、仕上がりそのものはよかったようだ(パドック解説では評価が低かったが)。東京芝実績〈2.1.0.2〉に加え、昨年もこの時期から調子を上げてきたことを考えれば、軽視できない1頭ではあったが、「ジャパンカップが目標」がはっきりとしている分、積極的には狙えないところがあった。
好走要因は、内枠からスムーズに流れに乗れたこと。そして、ブリンカー効果だろう(もっとも、ブリンカーに関しては、JCを見据えた上での“試着”のように思えたのだが・・・)。いずれにしても、昨年の秋を彷佛させるような“行きっぷりの良さ”が目立った。
反動もなく、順当に1走叩いた上積みが見込めるのであれば、次走のジャパンカップでも有力馬の1頭になるはず。この馬が勢いを取り戻したことは喜ばしいことである。

連覇が期待され、1番人気に支持されたウオッカは3着。
カンパニーと並ぶ最速の上がり(32秒9)で、2000mを1分57秒5で走破した馬に対して、“衰え”という言葉を使うのは失礼かもしれない。しかし、少なくとも、ファンが期待した“強いウオッカ”の姿を見ることはできなかった。
道中は前走とは違って後方に待機。武豊騎手はペースが遅くなると判断して折り合いを重視したのだろう。それ自体は正解だったと思われる。
ただし、そのために仕掛けが後手にまわったことは敗因のひとつに違いない。カンパニーは“ここしかないというタイミング”で外に持ち出したが、その後ろにいたウオッカが動こうとした時には先行集団が壁。結果、先に“自分から動いた”2頭を捕らえることができなかった。
ウオッカは自分から動けなくなったようにも思えた。“衰え”を見出すとすればこの部分だろう。展開に左右されると力を出せなくなる・・・。安田記念のように、“前が壁になっても強引にこじあけて前にいる馬を差し切る”というレースは、もはや期待できないのかもしれない。
さらに、馬体が離れていたとはいえ、2着のスクリーンヒーローを差せなかったという現実。馬券圏内に入るだけの能力のポテンシャルは残されているだろうが、闘争心や気迫といったものには明らかに翳りが出てきたように見えた。
「完敗です」と言った武豊騎手。「負けさせてばかりではかわいそう」と言った角居調教師。“引退”という言葉を連想させるコメントが並んだ。今後の動向に注目したい。

戦前に“ウオッカの逆転候補”と言われていたオウケンブルースリとシンゲンは、それぞれ4・5着。ただし、3着のウオッカからは3馬身の差がついた。
それでも、オウケンブルースリは実績のない2000mでは上々の結果で次走のジャパンカップにつながる内容だったと思えるし、シンゲンにしても初のGⅠで掲示板に載ったのであるから、合格点を与えてもいいだろう(シンゲンについては後日骨折が判明)。
この2頭の鞍上だった内田博騎手と藤田騎手、さらに6着に入ったドリームジャーニーの池添騎手は、いずれも「ペースが落ち着きすぎた」とコメントしている。たしかに、レコードタイの決着でも、1000m通過は昨年より1秒遅いペース。上がりの速い競馬になったことが、各馬の得手・不得手に影響したことは間違いない(瞬発力で勝るカンパニー向きの流れだったということでもある)。
加えて、当週からBコース使用になったために、芝の状態は内が有利。1~3着はいずれも直線で内を突いた馬である。長い末脚を使って外から差してくるタイプには厳しい条件だったはずだ。
逆に考えれば、先行して粘れなかった馬たちについては、少なからず評価を下げた方がいいかもしれない。エイシンデピュティは“復活途上”、キャプテントゥーレは“経験不足”、マツリダゴッホは“東京不向き”ということになるだろう。

8歳馬・カンパニーの勝利は素晴らしかった。ただし、レースそのものについては、枠順や適性の差がそのまま結果につながった感もあり、今ひとつ内容に欠ける一戦だったようにも思える。



■総和社よりお知らせ

競馬のツボ<ブログ版>にご来訪いただき、
ありがとうございます。

週明けのブログについてですが、
日曜日に安東裕章氏のご親族に不幸があったため、
更新が遅れます。

ご質問等も寄せられているようですが、
なにとぞ、よろしくお願い申し上げます。


総和社


■天皇賞(秋)・結果

2009年11月1日 4回東京8日11R
第140回 天皇賞・秋(GⅠ)
芝・2000m 晴・良

 1着 カンパニー        横山典    1.57.2
 2着 スクリーンヒーロー   北村宏     1+3/4
 3着 ウオッカ           武豊      クビ

単勝 3  1150円(5番人気)
馬連 2-3 16490円  馬単 3→2 29270円
3連複 2-3-7 9970円  3連単 3→2→7 102110円


■天皇賞(秋)・予習

GⅠ馬9頭を含むフルゲート18頭が顔を揃えた天皇賞・秋。
このレースの検討に際しては、2つのポイントを着眼点として考えてみたい。
ひとつは、“勝負気配”。つまり、出走各馬にとって、天皇賞・秋が目標のレースかどうかということである。
秋のGⅠ・中長距離路線は“天皇賞・秋→ジャパンカップ→有馬記念”が王道のローテーションと呼ばれているが、距離・コース適性を考えて、天皇賞・秋よりもJC・有馬を目標にする馬も少なくない。実際、今回の出走馬にも、先のジャパンカップ・有馬記念を目標にしている馬(もしくは、ジャパンカップ・有馬記念の方が条件的に能力を発揮できる馬)が見受けられる。目標が先にある馬は馬券の対象外と決めつけることは危険だが、「JCでも有馬でもなく天皇賞・秋が目標」という“勝負気配”は重視すべき材料だろう。
もうひとつは、“時計勝負への対応”。
近年の天皇賞・秋は、2005年の2分0秒1(勝ち馬・ヘブンリーロマンス)を除けば、1分57~58秒台で決着している。傾向としては、スローの直線勝負ではなく、厳しい流れから最後の瞬発力の競い合いになる形が多い。加えて、芝のレースは今週から仮柵を移動して状態の良いBコースで行われる。おそらく、例年通りの速いタイムになるはずだ。となれば、要求されるものは“レースの流れに乗れるスピードと瞬発力”。ひとつの基準として頭に入れておきたい。

前売り1番人気は、昨年の優勝馬・ウオッカ(単勝2.4倍)。秋天連覇に加えて、シンボリルドルフ、ディープインパクト、テイエムオペラオーに並ぶGⅠ7勝に挑む一戦となる。
ウオッカの実績については、今さら言うまでもない。GⅠ6勝のうち5勝が東京コース(東京芝実績は〈5.3.1.1〉)。前哨戦の毎日王冠ではカンパニーに差されて2着に敗れたが、前に目標を置けない逃げのレースをしたために本来の走りができなかったことが敗因と考えられる。休み明けを叩いた上積みと1キロの斤量減。条件が好転する今回、昨年と同じように、本番でしっかりと結果を出す可能性は高い。
“本質的にはマイラー”という専門家の評価からもわかるように、目標は先のジャパンカップではなく秋天であることは明確。ここは落とせない一戦と言ってもいいだろう。
もっとも、週中のスポーツ紙を見ると、ウオッカの“衰え”を指摘する声も少なくない。毎日王冠の負け方があまりに無抵抗だったためだ。
たしかに、1000m通過が60秒という楽なペースで逃げながら押し切れなかった内容は不甲斐ない。しかし、あのレースでウオッカが全力を出して負けたとも考えづらい。武豊騎手の乗り方にケチをつけるつもりはないが、“逃げ”という作戦そのものがウオッカの能力を発揮できない状況に追いやったようにも思える。「前を捕らえにいく」「馬群をこじあける」といった闘争心に火が付かないままレースを終えたのではないだろうか。
仮に、毎日王冠が「好位追走から前を捕らえられずに負けた」「追い比べの展開で相手に突き放された」といった負け方であれば、闘争心そのものに“衰え”が見えたとも考えられ、深刻に捉えるべきだろう。そうではなく、ウオッカらしくないレースをしたことが敗因と考えれば、前走の負けについてはさほど気にする必要はないように思える。今回は逃げではなく自分のレースに徹するはず。能力通りの走りができれば、ここでは一枚上の存在。いろいろと不安要素も取り上げられているが、レースの中心はやはりこの馬であると考えたい。
ウオッカの不安点をあげるならば、“衰え”ではなく、予想に反してスローペースになった時の走り。
昨年のドバイ遠征以降、ウオッカの国内の戦績は〈4.3.1.0〉だが、勝った4レースは前半3Fが33秒4から35秒2、対して2着以下になった4レースは35秒7以上のタイム。逃げた毎日王冠でもそうだったが、ウオッカはスローペースになると掛かり気味に力んで走るクセが目立つ。レコード決着となった昨年の天皇賞・秋のように緩みのない流れになれば、ウオッカにとって走りやすい状況が出来上がるが、先行馬が残れるようなペースに落ち着いた場合には、100%の能力を発揮できないケースもあるかもしれない。
どの馬が逃げて、どのような流れになるか。ウオッカの取捨を考えるにあたっては、展開面についての慎重な検討が必要だろう。

前売り2番人気に支持されているシンゲン。東京芝実績〈6.0.0.2〉の府中巧者で、勝ち数ではウオッカを凌いでいる。陣営はかなり以前から秋天出走を意識したコメントを残していたし、主戦の藤田騎手も6月のエプソムCを勝った時点で「秋天が目標」と明言した。
前走は中山・オールカマーで3着だったが、これは結果云々よりもローテーションを重視した出走。間隔を空けて使った方が良いタイプだけに、中2週となる毎日王冠ではなくオールカマーで1走叩いたと考えるのが正解だろう。言いかえれば、“天皇賞・秋が目標”という陣営の強い姿勢の表われでもある。芝2000mの持ちタイムはメンバー1の1分56秒9。数字の上では時計勝負に対応できるという判断が成り立つ。
スポーツ紙・専門紙でも、この馬を“ウオッカの逆転候補”として推す声が多い。あとは、相手関係。適性も高く、“勝負気配”も申し分ないが、現状では実績面で他馬に大きく劣る。GⅠとなればこれまで戦ってきた相手とはレベルが違うし、場内の雰囲気も大きく異なる。好走の条件はひとつ。強豪の中で揉まれても“自分の競馬ができること”だろう。

シンゲンと並んで“ウオッカの逆転候補”と見られているのが、休み明けの京都大賞典を勝ったオウケンブルースリ。59キロの斤量を背負いながら差し切ったレースぶりは見事で、春先に判明した脚元の不安も解消されたと考えていい内容だった。
今回1キロ減となる斤量は有利。東京芝実績は〈0.0.0.1〉だが、その一戦も3歳時に出走したジャパンカップで0.3秒差の5着であるから、コース適性を気にする必要はないだろう。
問題は距離。菊花賞勝ちも含めて良績は長距離に集中している。音無調教師も「距離は長い方がいい。ジャパンカップ向き」とコメント。長くいい脚を使うタイプで府中向きと思えるだけに軽視はできないが、速い流れの時計勝負を前提に考えた場合、若干の不利は否めないだろう。差し脚のキレで勝負するためには、前半、レースの流れに乗れるかどうかがカギになる。

春のグランプリ・宝塚記念を制したドリームジャーニー。今年に入ってからの充実ぶりは素晴らしく、完全に“本格化”したと見ることができる。
この馬の弱点は左回りコースが苦手なこと。主戦の池添騎手も「左回りだとモタれるので修正しながら走らなければならない」と語っている。本格化した今ならばそれも克服できるかもしれないが、馬自身の走りは小回り向きのピッチ走法で一瞬の脚で勝負するタイプ。府中向きでないことは確かだ。
実績面ならばウオッカに次ぐ有力候補だが、「最大の目標は有馬、もしくは暮れの香港」という陣営の発言もある。能力は認めるが、今回の条件では多少の割引が必要かもしれない。

前走の毎日王冠でウオッカを敗ったカンパニー。8歳馬ながら衰えも見られず、ここでも侮れない存在だ。レコード決着となった昨年の天皇賞・秋でも、ハナ・クビ・ハナ差の4着。さらに、馬体重を戻すことを優先していた昨年と違って、今年は調整過程も順調。元来、マイル路線で活躍していた馬だけに、“時計勝負”はむしろ歓迎だろう。
もっとも、前走の勝利に関しては、この馬に有利な条件がすべて揃ったという見方もできる。特に、少頭数のレースがこの馬の勝因につながったことは、『毎日王冠・復習』の中でも書いた通り。今回はフルゲートの上、枠順も内の3番。インから抜け出すには理想的な枠かもしれないが、反面、前が詰まったり包まれたりするリスクも高い。前走のようにスムーズなレースができるかどうかは疑問である。道中の位置取りがポイント。横山典騎手の乗り方に注目したい。

昨年の皐月賞馬・キャプテントゥーレ。骨折で1年以上休んだが、夏の関屋記念で復帰(4着)。叩き2走目となる前走の朝日CCを勝って、復活を印象づけた。皐月賞の時は逃げ切りだったが、前走は好位に付けて抜け出す競馬。それも、ゴール前では2着のブレイクランアウトを差し返す脚を見せるなど、内容のある勝ち方だった。陣営いわく、「ここが目標で先のことは考えていない」。当然、目イチの仕上げで臨んでくるに違いない。
今回の課題は、初コースとなる直線の長い府中で同じ競馬ができるかどうかだろう。先行馬だけに自分のペースで行けるかということもカギになるはずだ。加えて、相手関係も一気に強力になる。この馬にとっては、試金石の一戦。ここで好走できれば、今後の中距離戦線での主役になる可能性も見えてくるはずだ。

前走、得意の中山でオールカマーを勝ったマツリダゴッホ。昨年末からスランプが続いていたが、横山典騎手の気分良く走らせる逃げが功を奏して、久々に結果を残すことができた。
とはいえ、今回も同じようなレースができるかどうかは疑問。昨年のジャパンカップでは4着と健闘したが、東京コースでは〈0.0.0.3〉。小回りの中山で自分のペースで走れれば能力を発揮する馬という見方が妥当のように思われる。
陣営も一度は「オールカマーの後は有馬へ直行」とコメントしていた。今回の出走は、自身が最も得意とする暮れの大舞台へ向けてのローテーションのつなぎと考えた方がいいかもしれない。

宝塚記念2着以来、4カ月の休み明けとなるサクラメガワンダー。前述のドリームジャーニー同様、この馬も今年に入って“本格化”が顕著な1頭である。
東京芝実績は〈0.0.0.6〉。数字だけを見ると手を出しにくい。しかし、この馬の場合は、中山実績も〈0.0.0.2〉であり、要するに、関東への輸送が苦手だったということだ。ドリームジャーニーの場合は、走法そのものが府中に不向きとも思えるが、サクラメガワンダーはそうではない。したがって、“本格化”によって心身ともにタフになり、輸送をクリアできるようであれば、実績のない東京コースでも好走できる可能性はある(実際、昨年の天皇賞・秋では0.3秒差の6着と健闘)。
今秋は、ジャパンカップ→有馬記念のローテーションが予定されているとのことだが、これまでの実績から見て距離が伸びて良いタイプのようには思えない。むしろ、ここが勝負と考えた方がいいのではないだろうか。
となれば、問題は仕上がり。鉄砲実績は〈2.1.0.3〉と悪くないが、苦手としていた輸送がある上にぶっつけでGⅠというのは、やはりリスクが高い。狙うとするならば、直前の状態をしっかりと確認した方がいいかもしれない。

他にも、スクリーンヒーローアサクサキングスといったGⅠ馬が出走するが、この2頭はいずれも休み明け。距離適性を考えても、ここを叩いてジャパンカップが目標という見方が正解のように思える(仮柵を移動した馬場を考えると、内枠の先行馬は有利には違いないが)。
GⅠ馬で気をつけたいのはエイシンデュピティ。1年3カ月の休養の後、前走オールカマーを使ってここに出走してきた。どこまで状態が回復しているかがカギになるだろうが、22キロ増えた馬体重も調教後にはマイナス12キロと順調に絞れているし、少なくとも“勝負気配”に関しては、スクリーン、アサクサよりも上と見てもいいだろう(「脚元に不安があるだけに1戦1戦が勝負」という陣営のコメントもひとつの裏付け)。鞍上は大井の戸崎圭騎手。外枠に入った不利はあるものの、先手を取ってペースを握る走りができれば、粘り込みがあるかもしれない。

人気薄で気になる馬は2頭。
まず、エアシェイディ。昨年は0.1秒差の5着。東京実績も〈4.4.0.4〉と高い。大外枠に入った今回は末脚勝負に徹すると予想できるが、流れに乗ってハマれば食い込みがあってもおかしくない。
もう1頭は、ヤマニンキングリー。前走の毎日王冠では2番人気に支持されながら大敗を喫したが、一番の敗因は長距離輸送によるイレ込み。2走前の札幌記念で20キロ減った馬体重も戻っていなかったことから、万全の体調でなかったと考えられる。それゆえ、前走では府中向きの長くいい脚を使えるかどうかも判断できなかった。
今回は調教後の軽量でプラス20キロの数字。イレ込みを考慮して輸送も1日早めたという。当日の気配次第ではあるが、万全の状態でレースを走ることができれば、想像以上の脚を使うかもしれない。4歳になってから4戦連続重賞連対、2000m実績〈3.2.1.0〉が“買い”の要素に見える。


競馬史上に残る一戦と言われた昨年の天皇賞・秋。今年も“名勝負”を期待したい。



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プロフィール

安東裕章

Author:安東裕章
東京都出身。2007年11月に書籍『競馬のツボ』、2008年7月に『競馬のツボ2』、2009年7月に『競馬のツボ3』を発表(いずれも総和社刊)。

このたび、拙著『競馬のツボ』を刊行していただいた出版社・総和社様の勧めもあって、ブログを始めることにしました。
競馬における一番の楽しみは、レースについて考えること。つまり予想です。
このブログを書くことで、自分でも週末のレースに向けてイメージを膨らませる訓練になるかと思います。
競馬について考えることが好きな皆様。レース予想に疲れて気分転換をしたい時など、よろしければフラッと遊びに来てください。

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