■2009年12月

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■一年の御礼

今年1年、当ブログにおつきあいいただき、
ありがとうございました。
また、『競馬のツボ』をご購入いただいた方にも、
心より御礼を申し上げます。

まだまだ未熟で勉強中の身ではありますが、
これからも、より競馬を楽しむために、
予習・復習を続けていきたいと思っています。

来年もよろしくお願い申し上げます。
皆様、良いお年をお迎えください。


安東 裕章
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■有馬記念・復習

2009年の競馬の総決算、GⅠ・有馬記念は、2番人気のドリームジャーニーが勝ち、夏の宝塚記念に続いてグランプリ連覇を成し遂げた。

レースは逃げ馬・リーチザクラウンの先導によって、1000m通過・58秒台のハイペース。しかも、最後の4コーナーにかけて、馬群が一斉に動き出したこともあって、先行馬には厳しい流れになった。
勝ち馬のドリームジャーニーにしてみれば、これは理想的な展開。道中後方で脚をため、3~4コーナーからマクリ気味に7~8番手まで進出すると、直線で先に抜け出したブエナビスタとの追い比べを制した。
差し馬に有利な流れになったとはいえ、この馬の能力を如何なく発揮した“強い勝ち方”。『予習』では「馬体重の軽さが気になる材料」と述べたが、小柄な馬でも積んでいるエンジンが違ったということ。グランプリホースの名にふさわしい走りだった。
天皇賞・秋の後、このレースを目標に仕上げた陣営の狙いも見事だし、馬の能力を信じて無理にポジションを上げずに後方で我慢した池添騎手の騎乗も光る。100点満点のレースだったと言っていいだろう。
5歳にして本格化。明け6歳となる来年もさらなる活躍を期待したい。

ブエナビスタはこれまでの追い込みから一変して好位につける競馬。道中は流れに戸惑ったのか、若干硬い走りのようにも見えた。しかし、激しい流れのために先行勢が総崩れになった中、早めの抜け出しから2着を確保したのだから、この馬の能力の高さを改めて知らしめる結果と言えるだろう。
“自分の好走パターン”で結果を出した1・3着馬とは違って、これまでにない形でレースを運んだブエナビスタ。脚質が広がったことによって、来年以降、“新しい可能性”を期待できるのではないだろうか。
横山典騎手の乗り方も正解だったと思われる。「正攻法(好位抜け出し)の勝負ではなく末脚を活かした方がよかったのではないか?」といった声もあるようだが、どこからでも競馬ができる能力を発見できたことだけでも、この一戦は意義のあるものだったと考えたい。

3着は8歳馬のエアシェイディ。
「ドリームジャーニーを目標にしてレースを運んだ」という後藤騎手のコメントの通り、“注文通りにハマった結果”ではあるが、最後にキッチリと馬券圏内を確保するあたりは、さすが“歴戦の兵(つわもの)”である。
天皇賞・秋→ジャパンカップと使ったローテーションは、年齢的に過酷かとも思えたのだが、これについては誤った判断だった。この馬の場合、一気に状態が上がるのではなく、レースを使うことによって調子を整えていくのだろう。週中のスポーツ紙に掲載されていた「この秋で最高の出来」という陣営のコメントも、決してリップサービスではなかったということだ。
それにしても、GⅠを連勝して花道を飾ったカンパニーといい、このエアシェイディといい、衰えを見せない高齢馬の走りには本当に頭が下がる。一戦でも多く、我々にその雄姿を見せ続けてほしい。

4着は3歳馬のファゲッタブル。
この馬もブエナビスタ同様、来年以降が楽しみな走りを見せてくれた。
大外枠に入ったため、好位をキープすることはできなかったが、中団後方で折り合って3コーナー過ぎから進出。最後は力尽きて脚が止まったものの、流れに対応できる自在性と評判通りの“大物感”の片鱗を窺わせた。
来年の中長距離戦線でも中心になり得る器の持ち主。できることなら、しっかりと休養をとって、今後の活躍に備えてほしい。

3番人気のマツリダゴッホは7着に敗退。引退レースを飾ることはできなかった。
3コーナーからマクって4角先頭は、この馬の“勝ちパターン”ではあったが、直線半ばで失速。プラス12キロの太め残りが原因とも思われるが、それ以上に「ピークは終わっていた」という印象が強い。
『予習』では、「オールカマーの逃げ切り勝ちは“特効薬”」と述べたが、“復活”に結び付くだけの効き目はなかったようである。

逃げたリーチザクラウンは13着。「一生懸命走り過ぎる」という武豊騎手のコメントが表わすように、今回もまたワンペースの走りしかできなかった。来年はマイル戦線に戦いの場を求めるとのこと。“スピードで一気に押し切るマイル戦”に活路を見出せるかどうかは未知数だが、気性に難のある現時点での“距離短縮”は正解に違いない。
それは、15着に敗れたアンライバルドにも言えることだろう。ここ数戦と比べると折り合いがつき流れに乗っているようでもあったが、最後の止まり方を見ると「距離が長すぎる」のは明らか。皐月賞で発揮したキレ味を活かすには、マイルから2000mまでが許容範囲ではないだろうか。

今年の有馬記念をひとことで言うならば、“見所の多いレース”。
ブエナビスタがどのような競馬をするか。リーチザクラウンの逃げによってどのようなペースになるか。期待される3歳馬たちにこれまでと違った走りができるかどうか。予想をするだけでも興味の尽きない一戦だった。
そして、実際のレースは、来年以降にさまざまな期待を抱かせてくれる内容だったと思う。上位馬ははっきりと能力の高さを示してくれたし、下位の馬に関しても、今後の方向性を考えさせてくれる走りを見せてくれた。
勝ち時計の2分30秒0は、史上2位の好時計。レベルの高い一戦でもあった。
納得のできる結果。今回の有馬は、“来年につながる好レース”と評価しても言いすぎではないはずだ。



■有馬記念・結果

2009年12月27日 5回中山8日10R
第54回 有馬記念(GⅠ)
芝・2500m 晴・良

 1着 ドリームジャーニー    池添   2.30.0
 2着 ブエナビスタ        横山典   1/2
 3着 エアシェイディ        後藤     4

単勝 9  400円(2番人気)
馬連 2-9 740円  馬単 9→2 1510円
3連複 2-6-9 5460円  3連単 9→2→6 18890円

■有馬記念・予習

2009年を締めくくるグランプリ・有馬記念。
天皇賞・秋とジャパンカップの1~3着馬が出走しないために、「メンバー的には小粒」とも言われているが、それでもGⅠ馬10頭を含むフルゲート16頭の顔ぶれはなかなかのもの。熱戦を期待できそうだ。
もっとも、ウオッカ、オウケンブルースリ、レッドディザイア、ロジユニヴァースといった、レースの“核”として考えることのできる馬たちが回避したことによって、「どの馬にもチャンスがある」という見方がされているのも事実。「例年にない大混戦」と報じるスポーツ紙も多く、馬券的には難解なレースと言わざるを得ない。

今年の有馬記念の特徴のひとつは、過去10年で最も多い7頭の3歳馬が出走してきたこと。芝・ダートを問わず“レベルが高い”と評された今年の3歳馬。当然ながら、馬券の対象として慎重に検討する必要があるだろう。
3歳馬の取捨を考える場合、古馬との力関係ももちろんだが、それ以上に“有馬記念が行われる中山・芝・2500m”への適性の有無がポイントになると思われる。スタートから最初の3コーナーまでの近さ。コーナーを6回通過するコース形態。急坂のある最後の短い直線。独特のトリッキーなコースで、その馬が能力を発揮できるかどうかを、しっかり見極めるようにしたい。

前売り段階で1番人気に支持されているのは、3歳牝馬のブエナビスタ(単勝3.7倍)。
桜花賞、オークスを制し、クラシック3冠のかかった秋華賞でも着差なしの2着(結果は3着降着)。3歳牝馬戦線のみならず、今年の競馬界を代表する1頭として、素晴らしい走りを見せてくれた。
デビューから9戦して1度も複勝圏を外していない安定した成績。春先には「女ディープ」とまで称された能力の高さ。古馬牡馬よりも4キロ軽い53キロの斤量で出走できるアドバンテージ。さらに、クラシック戦線でしのぎを削りあったレッドディザイアがジャパンカップで3着に入ったことによって、ブエナビスタが古馬混合GⅠでも十分にわたりあえる裏付けができたとも見られている。
問題は、この馬の“脚質”。
秋以降の3戦、勝ち切れない競馬が続いたことに関して、「運がなかった」と結論づける評論家もいるようだが、はたしてそれだけだろうか。
短い直線を外から追い込んで届かなかった札幌記念。内枠から外へ持ち出せずに仕掛けのタイミングが狂った秋華賞。早めに動けなかったために先行馬に逃げ切りを許したエリザベス女王杯。厳しい言い方にはなるが、この3戦は、ブエナビスタの“脚質の弱点”がはっきりと示されたレースだったとも言えるだろう。つまり、春の一連のレースで見せた“後方から追い込み”だけでは勝てない条件があることがわかったのである。
今回、この馬にとって初コースとなる中山は、直線が短く後方からの追い込みが届きにくい。しかも、「外めをのびのびと走らせたかった」という陣営の希望に反する1枠2番。条件のみを取り上げて考えた場合、中山・芝・2500mはブエナビスタのこれまでの走りには向いているとは言えない。
ただし、だからこそ注目したいのが、騎手の乗り替わりである。
今回、鞍上は主戦の安藤勝騎手から横山典騎手への変更となった。オーナーサイドの意向ということだが、今年乗れていたジョッキーに中山コースの克服を託したことは容易に想像できる。
横山典騎手で思い出すのは、追い込み一辺倒だったカンパニーに騎乗して先行策で勝った2008年の中山記念(開幕週で差し馬は不利と言われたレースだった)。騎乗馬の脚質をも自在に操れる“名人”が、ブエナビスタをどのような形で勝利に導こうとするのか。“後方から追い込んでくるブエナビスタ”というこれまでの固定観念で予想を組み立てると、痛い目にあうかもしれない。

3歳牡馬は、菊花賞の上位5頭が揃って参戦する。今年の菊花賞は史上3位となる優秀な時計だけに、軽視は禁物だろう。
予想の上で注意したいのは“余力”。菊花賞でピークに仕上げられた馬が、有馬でも力を出せる状態にあるかどうか。そのあたりを慎重に判断したい。

まず、菊花賞を制したスリーロールス
好位で折り合いがつき、最後まで脚色が鈍らなかった走りは見事だった。ある意味、持続力を要求される有馬記念向きとも思える。
条件戦を勝ち上がって菊花賞を制し、そのまま有馬へ直行する流れは、2001年の勝ち馬・マンハッタンカフェと同じローテーション。夏場の前に4カ月の休養があった点も似ている。
ただし、マンハッタンカフェが夏場に札幌・芝・2600mの小回り長距離レースを使ったのに対し、スリーロールスは京都・阪神・新潟といった広いコースしか走っていない。しかも、レース距離は2000mまでである。
鞍上の浜中騎手の中山騎乗経験の少なさも加味すれば、この馬の小回りコースへの適性という部分に不安要素が見出せる。さらに、菊花賞は、1800m戦の1000万勝ちから、一気に距離を延長しての激走だった。当然、反動も大きかったはず。「直前の追い切りが軽い」というスポーツ紙の評価もあり、状態面が万全かどうかも気になる。
もうひとつ不安材料をあげるならば、レース間隔。この馬は新馬戦を含めて休み明けは3戦3着外。“叩かれて結果を出すタイプ”のようにも思えるため、今回菊花賞から2カ月空いた影響も懸念される要素ではある。

菊花賞2着のフォゲッタブル
前走、GⅡ・ステイヤーズSを勝ち、古馬混合の重賞戦線でも能力が通用することを証明した。
この馬に関しては、使い詰めのローテーションが気になる。春先に3カ月の休養があったとはいえ、その後は半年で8レースのペース。1月デビューから数えれば、今回の有馬は12戦目になる。
菊花賞→ステイヤーズS→有馬記念というローテーションでは、1998年にテイエムオペラオーが3着に入っているが、オペラオーの場合は春のダービーの後4カ月の休養を取っていた。
「使われ続けたことによって良血(ダンスインザダーク×エアグルーヴ)が開花した」という意見もあるが、連戦による消耗と疲労が心配だ(調教では抜群の動きを見せているが)。使い詰めの上に、3600mのステイヤーズSに出走した影響がなければいいのだが・・・。
もうひとつ、大外枠に入ったこともマイナス材料だろう。先にも述べたように、中山・芝・2500mは最初のコーナーまでの距離が短い。好位で競馬をしたい馬にとっては、ポジション取りが難しく、道中で6回もコーナーを通過するために外々を回らされ続けるリスクが高い。フォゲッタブルはどちらかと言えば前々で流れに乗りたい馬。ルメール騎手がどのような位置取りでレースを運ぶかがカギになりそうだ。

スリーロールスとフォゲッタブルに関しては、菊花賞の走りや血統から、長距離適性の高さはうかがえる。ただし、菊花賞の好走は、内枠を利して好位をキープできたことに因る部分も大きい。
逃げ・先行馬が多い今回のレース、これまでとは違った位置取りからでも“強いレース”ができるかどうか。そういう意味では、この2頭にとっては試金石の一戦と言えるだろう。

菊花賞3着のセイウンワンダー
折り合いに欠きながらも、最後はきっちりと馬券圏内を確保したように、どういう展開になっても最後の脚を使えるタイプである。堅実性という点では1・2着馬以上かもしれないし、実際、「菊花賞で一番強い競馬をしたのはこの馬」という評価もあった。
春のクラシックを走り、夏場を休養に充て、トライアル→菊花賞→有馬記念というローテーション。これは、2003年の2着・リンカーン、3着・ゼンノロブロイ、そして2005年の2着・ディープインパクトと同じで、有馬に参戦する3歳馬の“王道”のローテと言えるかもしれない。
中山コースには、朝日杯優勝、皐月賞3着という実績があり、近2走を見る限り、距離に対しての不安もない。
とはいうものの、課題はやはり折り合い。そのため、アタリのいい福永騎手から剛腕・藤田騎手への乗り替わりを不安視する声もある。さらに、7枠14番という枠順も、前に馬を置きづらく外々で掛かりやすい。事実、神戸新聞杯(11番)の時も菊花賞(12番)の時も、陣営は「もっと内目の枠がほしかった」とコメントしている。
今回の有馬記念は「騎手の乗り替わりがポイント」とも言われているが、この馬に関しても、藤田騎手がどのように走りをコントロールするかが注目点になるだろう。

菊花賞では2番人気に支持されながら4着に敗れたイコピコ
四位騎手が折り合いを重視したため、後方からの競馬になり“差して届かず”の結果。前走の鳴尾記念では、好位からレースを進めたが、今度は追い比べで負けての4着。この2戦を見る限りでは、脚の使いどころの難しい馬という印象が強い。
500万勝ち以降の成績は1着か4着。ハマった時には強い競馬をするという見方もできるだろう。
今回の鞍上は内田博騎手。6枠11番という枠順を考えると、後方で脚を溜める競馬になると思われるが、中山の場合、直線入り口で先団に取りつく走りをしなければ、差しが届きにくい。小回り中山向きの“マクリ気味の進出”ができるかどうか。この馬の器用さが試される一戦だ。

菊花賞は逃げて5着のリーチザクラウン
この馬については、毎回同じことを書くことになるが、緩急をつけて最後に後続を突きはなす“強い逃げ”が打てるかどうかがポイントだろう。
その点、コーナーを6回通過する中山・芝・2500mは、息が入りやすく、この馬向きの条件と言えるかもしれない。レコード決着となった神戸新聞杯や時計の優秀だった菊花賞の結果からわかるように、スピード能力そのものは高い馬。もう一皮むければ、単なるペースメーカーから脱却できるとも思えるのだが・・・。
ローテーションに関しては、菊花賞のあとにジャパンカップを使った影響が気がかりだ(これについてはジャパンカップを除外となり鳴尾記念に出走したイコピコも同様)。古馬混合のGⅠを走った経験値も大きいかもしれないが、激走の連続による消耗の方が心配である。

菊花賞では15着に大敗した皐月賞馬のアンライバルドも出走する。
その菊花賞、最初のコーナーで躓いたあとは、折り合いを欠いて掛かりっぱなしの競馬。「距離は2000mまで」という陣営のコメントもあり、今回の有馬記念も距離克服が課題になりそうだ。
ただし、最内枠に入ったことは、プラス材料と見ることができる。前に壁を作ってインで我慢する競馬ができる可能性があるからだ。もとより、中山は2戦2勝の得意コース。あくまで“うまく折り合えたら”という前提の上ではあるが、直線まで脚を溜める走りができれば、内を割って差してくるシーンがあるかもしれない。名手・デムーロ騎手の手綱さばきに注目したい。

古馬の中で最も上位人気を得ているのは、宝塚記念に続いてグランプリ制覇を狙うドリームジャーニー(2番人気・単勝4.8倍)。
今年はGⅠ・宝塚記念勝ちをはじめ、出走した7回の重賞うち5回馬券に絡み、5歳にして“本格化”という評価を得ている。前走の天皇賞・秋は6着に終わったが、左回りは走らない馬なので、ある意味“予定通りの敗戦”。陣営も早くから「最大目標は有馬記念」と公言していた。
中山コースの実績は〈2.2.1.3〉。小回り向きのピッチ走法とマクリ気味に進出できる脚が良績につながっていると考えられる。昨年の有馬は4着だったが、スケールアップした今年はさらに上位の結果も期待できそうだ。
もっとも、不安材料がないわけではない。それは、馬体重。
ステイゴールド産駒特有といわれる小柄な体のため、この馬の体重は420キロ台。暮れの中山開催の芝は、パワーが必要とされると言われており、実際、過去10年の有馬記念優勝馬の平均体重はほぼ500キロに近い。決して非力というわけではないが、2500m戦での持続力という点では、若干見劣りがするようにも思える。
かと言って、この馬自身の体重が増えても好走にはつながらない。年明けのAJCCでは430キロ台で出走したが、まったくキレ味を発揮できずに8着に敗れている(もちろん、陣営も「太かった」と敗因を認めていた)。
近走の走りやレース条件を考えれば、軸とも思える馬ではあるが、勝ち切れるかどうかとなると“絶対”とまでは言い切れないだろう。

今回の有馬が引退レースと言われているマツリダゴッホ
〈8.1.1.2〉の実績が示す通りの“中山巧者”であり、一昨年の勝ち馬でもある。「馬自身が中山での勝ち方を知っている」という陣営の言葉通り、好位からマクリ気味に進出し、4コーナー先頭で押し切るという“勝ちパターン”を持っていることが強味だ。
この馬の取捨選択に関しては、近走の成績をどう判断するかがポイントになるだろう。具体的に言うならば、2走前のオールカマー勝ちを、この馬の復活と評価できるかどうかである。というのも、オールカマーの勝ち方(=逃げ切り)は、必ずしもこの馬の“勝ちパターン”ではなかったからだ。
この時の鞍上・横山典騎手は、レース後、「馬を気持ち良く走らせることだけ考えた」とコメントしている。穿った見方をすれば、この時の逃げ切りは“特効薬”でもあったわけだ。横山典騎手は、ロジユニヴァースで弥生賞を逃げ切った時にも同じコメントを残している。そして、後になってわかったことは、弥生賞のロジユニヴァースは決して万全の出来ではなかったということだ(それが皐月賞の惨敗まで尾を引いたという)。
マツリダゴッホが、好位からマクって直線で押し切る競馬で勝ったのであれば、“中山巧者の復活”と見ることもできただろう。しかし、そうではなかったところに一抹の不安を感じる。
2走前のオールカマーを除けば、この馬は昨年の秋以降一度も馬券に絡んでいない。主戦の蛯名騎手に戻った今回、マツリダゴッホは自分の“勝ちパターン”で勝負するはず。横山典騎手の“特効薬”にどれだけの効き目があったかは、おそらくその時にわかるだろう。

春の天皇賞馬・マイネルキッツ
休み明けの近2走、見所のない競馬が続いたが、この馬の得意とする好位で流れに乗るレースができなかったことが敗因だ。その意味では、今回の2枠4番は絶好の枠順と思える。最初のコーナーまでの間に好位のインを奪えれば、春天の時に見せたロスのない好位差しの走りを期待できるかもしれない。
中山コースには勝ち鞍はないが、芝・2500mのコースは、この馬が長距離適性を見出した日経賞と同じ舞台。元々はローカルの小回りコースを得意としていただけに、直線の長かった前2走(京都・東京)よりはこの馬向きと言えるはずだ。
問題は乗り替わり。主戦の松岡騎手が騎乗停止になったため、鞍上は三浦騎手へ変更となったが、陣営もはっきりと「松岡に乗ってほしかった」と発言している。これは、三浦騎手の技術云々ではなく、この馬に乗り続けて長距離適性を発見した松岡騎手の方が、中山・芝・2500mの“こなし方”に長けているからにほかならない。もちろん、GⅠ馬に騎乗することになった三浦騎手の奮起も大いに期待したいが・・・。
もう1点、不安要素をあげるならば、ここ2走、スタート後の位置取りが極端に悪くなっていること。たとえ、絶好の枠順であっても、行き脚がつかなければ、外から次々に被せられて、おのずとポジションは後退する。近走の走りそのものにも、春先の覇気が感じられなかっただけに、6歳という年齢が影響しているのかもしれない。

同じ6歳でも、目下の充実度という点から注目したいのがミヤビランベリ
GⅠ初出走ということで、実績面では見劣るものの、自身は今年重賞3勝。馬券圏外になったのは、休み明けの新潟大賞典と太め残りの札幌記念。すなわち、敗因が明確なレースだけである。
昨年まではハンデ重賞を軽い斤量で好走するイメージが強かったが、今年はトップハンデでアルゼンチン共和国杯を制するなど、オペラハウス産駒ならではの遅咲きの成長力を如何なく発揮している。粘り強い走りは長距離の消耗戦向き。枠順もポジションを取りやすい内枠に入った。
あとは、展開がどうなるかだろう。
この馬は逃げ切り勝ちもあるが、番手でも好位でもレースを運べる。ポジションは、リーチザクラウンにハナを譲ってその後ろになると思われるが、その場合、リーチザクラウンがどういう逃げを打つかによって、この馬の走りも変わってくるはずだ。
予想以上にハイペースになれば、道中脚を使わされて失速し、後方からの馬に交わされる危険性もある。逆に、スローな展開になれば、仕掛けのタイミングがポイントになるだろう。
この馬の取捨に限らず、展開とペースに関しては、いくつかのパターンを想定して考えた方がいいかもしれない。

コース実績を基準にすると、伊藤正厩舎の2頭も不気味な存在だ。
エアシェイディは昨年の3着馬。8歳馬になるが、GⅠでも掲示板を確保する力量の持ち主。昨年のように、先行馬が崩れて差し・追込馬が台頭する展開になれば、馬券圏内に食い込んできても不思議ではない。
ただし、昨年は天皇賞・秋から直行したローテーション。今年は間にジャパンカップを挟んでいるので、体調がどこまで維持されているかにも注意を払う必要があるだろう。
ネヴァブションは休み明けにジャパンカップを使っての参戦。得意のコースで叩き2戦目での変わり身があってもおかしくない。もっとも、8枠15番はこの馬にはマイナス。外枠が原因で後方からの競馬を強いられるようであれば、キレる脚がないだけに厳しい展開になるかもしれない。

最後に展開について。
近年の有馬記念の結果を参考データとして見てみると、基本的には4コーナーで5番手以内の馬が馬券に絡んでいる。
これについては、何度も述べたように、コーナーを6回通過するコース形態が、先行馬に有利な流れを生み出すからだろう。
ただし、今年の場合、例年よりも“前に行きたい馬”が多い。したがって、普通に考えればペースが速くなることも予想される。前が激しく競り合ったり、後続馬群が早めに動くような展開になれば、昨年のように差し馬が後方から突っ込んでくるケースも十分考えられる。
ごくあたりまえのことではあるが、予想の際には各馬について“どのような流れになっても対応できる柔軟性があるかどうか”を検討するようにした方がいいだろう。

こうしてブログに記してみると、改めて今年の有馬記念が“混戦”であることがわかる。
もう一度ポイントをまとめてみると、

●小回り長距離コースの適性があるかどうか
 (中山向きのマクリ進出ができるかどうか)
●最初のコーナーまでに自分のポジションを取れるかどうか
●このレースを目標にしていたかどうか
●秋のGⅠを使った馬は“余力”が残っているかどうか
●逃げ馬(リーチ)のペースが、その馬の走りに向いているかどうか
●騎手の乗り替わりによる影響があるかどうか
 (プラスの要素になるか、マイナスの要素になるか)
●近走の走りに強調材料があるかどうか
●戦績の良い馬の場合、今回の条件でも同じ能力を出せるかどうか
●戦績の悪い馬の場合、一変の可能性があるかどうか

以上の点について、自分なりに納得がいくまで検討してみたい。


■朝日杯FS・復習

バラ一族悲願のGⅠ制覇!
2歳王者決定戦・朝日杯FSは、1番人気に支持されたローズキングダムの“完勝”で幕を閉じた。

それにしても強い勝ち方だった。
好位置をキープできるスタートのダッシュ力。道中で脚を溜められる折り合いの良さ。追い出すと同時に反応できる瞬発力と後続を突きはなす加速力。2歳の暮れの時点で、この完成度は驚きである。
懸念されていた“マイルの流れへの対応”も難なくクリア。440キロ台の小柄な馬体のため、見た目の迫力にはいくぶん欠けるものの、それを補って余りある“センスの良さ”が光るレースだった。
朝日杯については、「マイラー系が好走するため春のクラシックにはつながらない」という通説がある。しかし、今年の場合はあてはまらないだろう。どんな流れにも対応できる“脚質の自在性”と、好位から抜け出して差し切る“正攻法の走り”。ダービー馬のキングカメハメハとオークス首差2着のローズバドという血統を持ち出すまでもなく、距離が伸びることの関しての不安は感じられない。実際、橋口調教師は「最終目標はダービー」と公言しているし、一部のスポーツ紙には「皐月賞当確!」という見出しまで躍っている。
いずれにしても、今回のレースでクラシックの有力候補が現われたことは、我々競馬ファンにとっては嬉しいかぎり。今後、どのような走りを見せてくれるのか、楽しみが膨らむばかりである。

2着は2番人気のエイシンアポロン。「完璧なレースができた」という池添騎手のコメントの通り、能力を発揮した上での2着と言っていいだろう。
スタートでポジションを取りにいっても掛かるところはなかったし、好位の外側に付けて直線で抜け出す形も理想的だった。最後はローズキングダムのキレ味に屈したが、3着馬に2馬身差をつけたのだから、この馬の能力の高さは十分評価できるはずだ。
もっとも、クラシック戦線で活躍できるタイプかというと、少なからず疑問である。脚を溜めて瞬発力で勝負する形ではなく、速い流れに乗って好位から抜け出す方が力を発揮できる馬。距離が伸びるほどスローの上がり勝負になりやすい昨今のレース形態を考えれば、現時点ではマイル戦線に活躍の場を求めた方が賢明のように思える。

3着のダイワバーバリアンは、内枠を活かした巧いレース運びが好走に結びついた。前に馬を置いて、好位のインで脚を溜める作戦。この馬もまた、理想的な競馬ができたと言えるだろう。
重賞勝ちのある1・2着馬には大きく水を開けられたが、これは“完成度の違い”によるもの。まだまだ走りに堅さがあるし、追い出してから加速するまでの反応も鋭くない。今回、ソエの悩みが解消されたのであれば、中間の調教や仕上げもハードになり、馬の成長にもつながるはず。そういう意味では、今後に期待したい1頭だ。

4着には12番人気のガルボが入った。2枠3番という枠順に恵まれた部分も大きいが、未勝利戦勝ちからGⅠに挑戦ということを考えれば大健闘だろう。特に、最後の伸び脚には非凡なものさえ感じた。次走、自己条件を圧勝して、クラシックのトライアルでも結果を出せるようならば、本番で台頭してくる可能性もあるかもしれない。
吉田隼騎手は「まだ揉まれ弱い面がある」とコメント。ダイワバーバリアンの後ろに付けながら、さらに離れた外側に持ち出す形になったのはそのためだろう。この馬についても、今後どのように成長するかが楽しみだ。

5着のニシノメイゲツは大外枠が響いた。向正面からマクってくるかとも思ったが、結局は後方まま。折り合い重視の直線勝負だったのかもしれないが、今回のレースの流れでは厳しかった。
とはいえ、もっとも不利な枠順からでも掲示板を確保した結果には、ある程度の評価はできる。少なくとも“中山巧者”であることは間違いないだろう。

ダイワバーバリアンやガルボと同様、今後の成長を期待したいのは、6着のキングレオポルド。道中、掛かり気味に走ったせいもあって、直線では伸びを欠いたが、速さそのものはまったく見劣りしなかった。今後、経験を積んでいけば、マイルでもスプリントでも通用するスピード馬になれるかもしれない。

3番人気で14着に敗れたトーセンファントム。『予習』の中でも指摘したように、後方からマクっていけるかどうかがカギに思えたが、内田騎手がポジションを上げようとすると引っ掛かるチグハグな競馬。道中、スムーズさを欠いたためか、直線で追い出してもまったく伸びなかった。
「あそこまで止まるかなあ」と案じていたところ、レース後に故障が判明。「今回のレースでは“消し”だが、直線が長く広いコースでは見直せる」と判断していたのだが・・・。素質の高さが評価されていた馬だけに残念でならない。

先にも述べたように、今回のレースではクラシックの有力候補が現われた。言い換えれば、“能力の比較基準になる馬”が現われたということである。
今週末のラジオNIKKEI杯2歳Sにも、素質馬と評されている馬が登場する予定だが、“ローズキングダムと戦ったしたらどうだろうか”という見方もできるようになる。
と、同時に、今回ローズキングダムに敗れた馬たちが、今後そのようにその差を縮めていくかという興味も生まれてくる。
先週の阪神JFの時と同じ結びになるが、これから一戦一戦が目の離せないレースが続きそうだ。





■朝日杯FS・結果

2009年12月20日 5回中山6日11R
第61回 朝日杯フューチュリティS(GⅠ)
芝・1600m 晴・良

 1着 ローズキングダム   小牧   1.34.0
 2着 エイシンアポロン     池添   1+1/4
 3着 ダイワバーバリアン   蛯名   2

単勝 8  230円(1番人気)
馬連 8-12 590円  馬単 8→12 980円
3連複 2-8-12 1820円  3連単 8→12→2 6720円

■朝日杯FS・予習

2歳王者の栄誉を手にするのはどの馬か? フルゲート16頭が揃ったGⅠ・朝日杯FS。
はじめに、過去5年の傾向を確認してみたい。特徴は2つある。
まず「実績」。
馬券に絡んだ15頭のうち、13頭が前走で重賞を走っている。その内訳は、東京スポーツ杯2歳Sが5頭、京王杯2歳Sが3頭、デイリー杯2歳Sが3頭、札幌2歳Sが2頭。そして、その13頭中11頭が3着以内の結果を残している(残り2頭も4着、5着)。
したがって、データ的には「重賞で上位に入った実績馬が中心」という見方が成り立つだろう(もちろん、あくまで“過去5年の傾向”ではあるが)。ちなみに、重賞を走らなかった2頭は、ともに前走1番人気で1着だった。
もうひとつの特徴は「枠順」。
言うまでもなく、中山・芝・1600mは、そのコース形態から“内枠有利”。過去5年で3着以内に入った15頭を見てみても、2ケタ馬番で馬券に絡んだ馬は3頭しかいない。特に、13番以降の7~8枠は、いわば“壊滅状態”で、過去10年まで遡っても、2000年のネイティブハート(14番)、2001年のスターエルドラード(13番)、2003年のメイショウボーラー(15番)の3頭を数えるのみである。
これについては、「走りが完成されていない2歳馬にとって、1コーナーで外に振られて道中も外々を回らされる不利は、古馬以上に結果に影響しやすい」と考えることもできる。実際、土曜日の中山9Rに行われた2歳500万下のひいらぎ賞(芝・1600m)では、1番人気に支持されたディオーサが、7枠13番から外を回って直線に向いたものの坂の途中で失速。勝ったのは内で脚を溜めた1枠2番のギンザボナンザだった。“外枠に入った馬は消し”という短絡的な判断はできないが、枠順の有利・不利は検討項目から外せない材料であることは間違いない。

前売り1番人気は、東京スポーツ杯2歳Sを勝ったローズキングダム(単勝2.5倍)。
デビューから2連勝。父・キングカメハメハ、母・ローズバドという“バラ一族”の良血馬である。この馬の強味は、好位置から瞬発力を発揮できること。つまり、前へ行けるスピードとキレを兼ね備えていることだ。
加えて“勝負根性”も光る。東スポ杯で最後までトーセンファントムを抜かせなかった走りは、いわゆる“抜かせない強さ”。着差(アタマ差)以上に内容が評価されているのはそのためだろう。
枠順は4枠8番。外を回らされることもなく、内に包まれるリスクも少ない好枠を引いた。内の先行馬を見ながら追走し直線で抜け出すという、この馬の得意とするレースパターンに持ち込むことができれば、人気に応えることはできそうだ。
問題はペース。中山の芝コースは2コーナーから下り坂が続くため、流れが速くなりやすい。前走の東スポ杯は、1000m61秒1というスローペースだったため、好位→抜け出しの競馬でも脚が残っていたが、今回、追走に予想以上に脚を使わされるようだと、最後のキレが鈍るかもしれない。
マイル戦の経験がなく、陣営も「距離はもっと長い方がいいかもしれない」とコメント。京都・1800m、東京・1800mという、ゆったりとした流れが生まれやすいコースから、窮屈な中山・1600mへ舞台が変わることがどう影響するか。トリッキーなコースだけに、“正攻法の強さ”が通用しないケースがあることも頭に入れておいた方がいいだろう。

東京スポーツ杯2歳Sでは、33秒4の末脚でローズキングダムを追い詰めたトーセンファントム
スローペースの上がりの競馬になったとはいえ、この馬の瞬発力は特筆すべきもの。前述の通り、中山マイルは流れが速くなりやすい。道中うまく脚を溜めることができれば、一気の差し切りも期待できる。鞍上が騎乗実績〈2.0.0.0〉の内田騎手に戻るのもプラス材料だ。
ただし、今回は8枠15番。そのため、後方から外を回って直線勝負という形になる可能性が高い。となれば、課題はマクリ気味に進出できるかどうかだろう。直線の短い中山コースでは、3~4コーナーから加速を開始しなければ、差しが届かないケースが多いからだ。
トーセンファントムのデビューから3戦の通過順位を見てみると、4→3→2、10→11→10、14→11→12。ポジションを上げながら直線を向くというレースを経験していない。“中山コース向き”の走りができるかどうか。内田騎手の乗り方がカギになりそうだ。

東スポ杯組からはもう1頭、ニシノメイゲツが出走する。
その東スポ杯は、スローペースだったために若干掛かり気味の走り。先行して6着に粘りはしたが、1・2着馬には大きく水を開けられた結果だった。
この馬の“買い”の材料は、中山・芝・1600m〈2.0.0.0〉のコース実績だろう。特に、2走前の0P・芙蓉Sでは、外々を回らされた上での差し切り勝ち。1頭だけ次元の違う脚のようにも見えた。
とはいえ、大外16番の不利は否めない。本来、好位からレースをしたいこの馬にしてみれば、ポジションを取りにいくために序盤から脚を使わなければならないからだ。父・デュランダルということで、後方一気にかける競馬を試みるかもしれないが、いずれにしても、道中の位置取りがポイントになりそうだ。

このように、前走で東スポ杯を使った馬には、脚質や枠順に不安要素を見つけることもできるのだが、だからと言って、東スポ杯のレベル自体が低かったというわけではない。
その証拠に、同レースで着順の悪かった馬たちも、次走で良い成績を残している。
5着のダイワアセットは500万・葉牡丹賞3着、9着のスペースアークは葉牡丹賞4着、10着のレッドバリオスは500万2着、11着のアイウォントユーは500万・エリカ賞2着、12着のヤングアットハートは葉牡丹賞2着、14着のオルレアンノオトメはOP・中京2歳Sで2着、といった具合である。
したがって、同世代における能力比較をした場合、東スポ杯出走組はレベルが高かったと考えることもできるだろう。

レースのレベルに関して言うならば、京王杯2歳Sも高く評価されている。
稍重馬場ながら、勝ち時計は歴代3位の1分22秒0と優秀だった。このレースの2着馬・アニメイトバイオが先週の阪神JFで2着に入ったことも、ひとつの裏付けと考えていいだろう。
その京王杯2歳Sを勝ったエイシンアポロン
2走前にはデイリー杯で2着に入り、実績ではトップという見方もある。本来は先行型だが、前走で差す競馬ができたのは大きな収穫。近2走でハイペースのレースを経験していることも強調できる材料だ。枠順は6枠12番。もう少し内目の方がよかったようにも思えるが、不利とまでは言えない枠順だろう。
あとは、この馬向きの流れになるかどうか。4コーナーで馬群が固まって、直線の瞬発力勝負になると、東スポ杯の1・2着馬に比べて分が悪い。ある程度の流れになって、しかも決め手勝負という展開が望ましい。

京王杯2歳Sからは、他にダッシャーゴーゴーキョウエイアシュラの2頭が参戦。
ダッシャーゴーゴーには小倉2歳S2着、キョウエイアシュラには函館2歳S2着の実績があり、ともにスピードを身上とする、いわば“スプリンタータイプ”である。
2頭に共通する不安材料は、マイルの距離経験がないこと。速い流れには対応できるだろうが、最後まで脚が持つかどうかは未知数だ。特に、キョウエイアシュラの場合、7枠14番に入ったことで、外を回るロスが生まれる危険性も高い。
対して、ダッシャーゴーゴーは、内枠を引いたことがプラスに作用するかもしれない。前に馬を置いてインをロスなく回れば距離の克服も可能。京王杯では1番人気に支持された馬。稍重馬場が原因で最後の伸びを欠いたという見方をすれば、良馬場の今回は巻き返しがあっても不思議ではない。

前走、デイリー杯2歳Sを使ったフローライゼ
新馬戦は逃げ切り勝ち、2戦目の新潟2歳Sでは後方からの追い込みで2着と、どこからでも競馬ができる自在性を持ち合わせている。
ただし、前走はまったく見せ場もなく0.9秒差の9着。負け方が悪い。さらに、今回は2ヶ月の間隔が空いたことで、調整面での不安もある。実際、追い切りに関しては辛口の評価が多い。
一変の可能性がないとは言えないが、東スポ杯・京王杯組と比較すると、有力視するまでには至らない。

前走、500万クラスのベコニア賞でレコード勝ちをおさめたキングレオポルド
好位からスッと抜け出す脚があり、後続を突きはなす加速力が光った(上がり3Fは33秒8)。中山マイルは新馬勝ちの舞台。コースを経験している強味もある。なにより、デビューから3戦連続で1600mを使って、そのたびにタイムを大きく短縮しているところに、マイラーとしての資質を感じる。今回の3枠6番も絶好枠だ。
不安点をあげるならば、荒削りな部分だろう。勝ったベコニア賞にしても、前半は折り合いを欠いて掛かり気味だったし、直線で抜け出しからも左右にヨレながら走っていた。
前々のポジションを取りに行きたい馬につられて引っ掛かるようだと、道中の消耗が激しくなり直線で失速する。鞍上のベテラン・柴田善騎手がどのように馬をなだめるか。重賞出走経験のないキャリアの浅さが悪い方に出なければいいのだか・・・。

前走500万を勝ってここに駒を進めてきたダイワバーバリアン
2走前はデイリー杯で4着。デイリー杯→500万勝ちという臨戦過程は、2005年の2着馬・スーパーホーネットと同じである。1枠2番という枠順について、陣営は「前に壁を作って内で脚を溜めることができる」と歓迎ムード。先行力のある馬が内枠に入ったということで、やはりマークは必要だろう。
この馬の場合、新聞各紙でも報じられているように、ソエが治っているかどうかがポイントだ。痛みがあった時は、頭を上げて走るのを嫌がっていたという。中間、放牧先で治療を行ったことで痛みはなくそうだが、まったく影響がないと言い切れるのかどうか。
一応、直前の気配(=返し馬で頭の低い走りをしているかどうか)には、注意を払った方がいいかもしれない。

今回のレース、正直なところ、人気薄の出番はなさそうにも思えるのだが、あえて名前をあげるならば次の3頭。
まず、最内の逃げ馬・バトルシュリイマン
前走、同じ中山マイルで逃げ切り勝ち。1分35秒1という時計は強調できるものではないが、今回、枠順の利を活かしての思い切った逃げができれば、残り目があるかもしれない。
次に、堅実さという観点から、2枠3番に入ったヒットジャポット
デビューから5戦、掲示板を外していない安定感と、前走で差しの競馬で勝ったことで脚質が広がった点が“買い”の要素にも思える。
最後に、5枠10番のツルマルジュピター
2走前には京王杯2歳Sの3着。クリスマスローズSを挟んだことでローテーションはきつくなったが、そのクリスマスローズSで番手の競馬ができたことは大きい。1600mは3走前のいちょうSで12着に敗れているが、陣営によれば「左回りだとモタれる」とのこと。スタートを決めて好位をキープできれば、好走の可能性があるかもしれない。

最後に、このレースのポイントだが、ひとつの基準として、出走各馬の走りを見て「距離が伸びた方がいいタイプ」なのか、「広いコース(あるいは直線の長いコース)の方がいいタイプ」なのか、「マイルがベスト」なのかといった“適性”を考えるようにしたい。
つまり、春のクラシックを念頭に置いた“レースの見方”が必要ということである。
そういう意味でも、すでにクラシック級という声も聞こえるローズキングダムとトーセンファントムの走りには特に注目したい。
はたして、この2頭は“マイルGⅠ向き”の走りができるのか。それとも、単なる通過点に過ぎないと思えるほどの“大物の走り”を見せてくれるのか。
興味の尽きない一戦である。



■阪神JF・復習

2歳女王の栄冠に輝いたのは、関東馬のアパパネ。2着にも関東馬のアニメイトバイオが入り、5年ぶりの関東馬のワンツーフィニッシュとなった。

今回のレースのポイントは“コース取り”。
勝ったアパパネは大外枠の不利が懸念されたが、道中は中団で折り合いをつけて追走。空いた内の潜り込むと、直線は外ではなくインから抜け出し、追いすがるアニメイトバイオを半馬身差をつけて振り切った。
言うまでもなく、これは蛯名騎手の好騎乗である。
内の空いたスペースで脚を溜めた道中の進み方と、混雑する外ではなく直線でインに進路を取った判断。馬群がバラけたという“運”も味方したが、アパパネの能力を存分に発揮させた乗り方だった。ゲート入りを嫌った時点で、「これは引っ掛かるかもしれないな」と思っていただけに、直線で内から先頭に躍り出た時には、思わず「うまい!」と叫んでしまった。
騎手の技術もさることながら、陣営の力も大きな勝因だったと言えるだろう。
2週間前に栗東入りして調整するやり方によって、直前の長距離輸送や環境の変化によって生じるリスクを回避することができた。昨年の2着馬・ダノンベルベール、今年の春天を制したマイネルキッツ、そして今回のアパパネ。いわゆる“栗東留学”によって関西圏のレースで結果を出せたのは、国枝厩舎に“厩舎力(=厩舎の持つノウハウ)”があったからと言わざるを得ない。
いずれにしても、アパパネは今回のレースで、“臨機応変に脚を使える自在性”を見せてくれた。言い換えれば、それは“騎手の意のままに動ける自在性”でもある。2歳の暮れの時点で、これだけの走りができるということは、来春のクラシックが楽しみな逸材であることは間違いない。気性面にはまだまだ課題があるようだが、この先、順調に成長してもらいたい馬である。

2着はアニメイトバイオ。この馬も現時点での能力を発揮できたと考えていいだろう。不安材料だった長距離輸送をクリアできたのも大きな収穫だ。
好位につけて直線で伸びてくるレースぶりには好感が持てるし、アパパネに突き離されそうにながらも食らいついていく“勝負根性”も目立っていた。前走の京王杯2歳Sでは、出遅れながらも最後まであきらめずに追い込む走りを見せたように、この馬はかなりの“精神的な強さ”を備えているように思える。
陣営によれば、「成長過程に合わせて鍛えているので、厳しい仕上げはしていない」とのこと。今後、馬が成長して、ハードな追い切りができるようになれば、これまで以上に研ぎすまされた走りが期待できるかもしれない。

3着のベストクルーズは、この馬の持ち味である“レース巧者ぶり”をいかんなく発揮した。
安藤勝騎手も「レースがうまくて、確実に上位に来てくれる」とコメント。難を言えば、『予習』でも述べたように、“強さ”のインパクトに欠ける点だろう。
ともあれ、どんな展開になっても馬券圏内を外さないのは立派である。安藤勝騎手は「オークス向き」と公言したが、春のクラシックでもノーマークにはできない1頭のようだ。

良血馬・ラナンキュラスは4着。戦前、矢作調教師は「完成するのはまだまだ先」と語っていたが、今回のレースでも、鍛えられた力ではなく素質だけで走っているような印象が強かった。
それでも、落ち着きのなかった前走のファンタジーSよりもしっかりした雰囲気があったし、直線の伸びにも鋭さが加わっていたように思える。
今後の課題は、やはり経験だろう。揉まれる競馬や激しい流れを克服していくことができれば、いずれは今とは別馬のような“強さ”を発揮する姿を見ることができるかもしれない。

1番人気のシンメイフジは5着。大きな出遅れが響いた。
3カ月の休み明けでも、しっかり調整できていたので問題なかったかもしれないが、今回のようなアクシデント(出遅れ)があると、それだけで馬自身がレースに戸惑ってしまうのかもしれない。
4コーナーで馬群が内に密集せず、外に広がったことも、この馬にとっては不利だった。最後はそれなりに伸びてきてはいるものの、できればもっとスムーズに直線を向きたかったのではないだろうか。
今回のレースに関しては、力負けではなく、不完全燃焼といった感がある。

メンバー最速の上がり34秒0の末脚をくりだしたタガノエリザベートは6着。
シンメイフジと併せ馬の形で伸びてきたが、大外へ持ち出した分のロスが内を突いた上位馬との差になったようだ。さらに、前後半のタイムがほとんど同じという、ゆったりとした流れも不向きだったかもしれない。
川田騎手によれば「坂の下りで勢いつけながら追走した前走(ファンタジーS)とは走りが違った」とのこと。『ツボ』の本の中でもふれたことではあるが、同じ外回りコースでも、下り坂のある京都とそうではない阪神とでは、馬の走りに求められるものが違うということだろう。

終わってみれば、1~6番人気に支持された馬が、順番こそ違えど、1~6着に入るという結果になった。
ただし、今回の着順は、展開や条件次第で変わる可能性も十分ある。
馬群がもっと凝縮される展開だったならば、アパパネが行き場をなくしていたかもしれないし、内が荒れて外が伸びる馬場状態だったならば、シンメイフジとタガノエリザベートの追い込みが届いていたかもしれない。
上位4頭が“センスのいい馬”と評されることからもわかるように、今回のレースは、各馬の力量よりも“立ち回りの巧さ”が結果につながったレースと見ることもできるだろう(内を突いた馬が勝ち、外へ出した馬が負けたということ)。
だからと言って、今年の阪神JFが凡戦だったということではない。
昨年のブエナビスタのように、抜けた存在の馬はいなかったが、それは逆に「群雄割拠の世代」を意味するものでもあり、今後の成りゆきが非常に興味深いものになった。
各馬がどのように成長するか、走りがどのように変化するか。
来春の桜花賞に向けて、一戦一戦が目の離せないレースになりそうだ。



■阪神JF・結果

2009年12月13日 5回阪神4日11R
第61回 阪神ジュベナイルフィリーズ(GⅠ)
芝・1600m 曇・良

 1着 アパパネ         蛯名    1.34.9
 2着 アニメイトバイオ     内田博    1/2
 3着 ベストクルーズ      安藤勝    3/4

単勝 18  460円(2番人気)
馬連 6-18 2050円  馬単 18→6 3710円
3連複 6-15-18 5980円  3連単 18→6→15 27670円

■阪神JF・予習

暮れの2歳女王決定戦・阪神ジュベナイルフィリーズ。
重賞勝ち馬4頭を含むフルゲート18頭。キャリアが浅く能力比較の難しい2歳GⅠということもあって、人気も割れ気味。大混戦と言っても差し支えないだろう。
阪神競馬場が改装された2006年以降の3年間の傾向を見ると、連対馬6頭のうち5頭が前走で1600m以上の距離で連対を果たしている。過去3年の勝ち馬は、ウオッカ、トールポピー、ブエナビスタと、いずれも末脚の決め手を持つ馬。直線の追い比べになりやすい阪神・芝・外回りコースの形態を考えれば、“マイル以上の距離”での好走歴の有無は、ひとつの判断基準と見なしていいかもしれない。
もうひとつ特徴をあげるならば、1勝馬が好成績を上げていること。昨年の勝ち馬・ブエネビスタも抽選をクリアして出走が叶った1勝馬だった。過去の戦績やクラス実績だけはではなく、近走の内容にも注意が必要ということだ。

前売り段階で1番人気に支持されているのは、夏の新潟2歳Sの勝ち馬・シンメイフジ(単勝4.3倍)。
その新潟2歳S(新潟・芝・1600m)は、上がり3F・32秒9の脚で4コーナー最後方から一気の差し切り。圧巻の勝利だった。
前走後はここを目標に調整。専門紙・スポーツ紙による調教の採点も高く、当初から予定であるのならば、“3カ月の休み明け”に関してはさほど不安視する必要はないだろう。実際、昨年の朝日杯FSを制したセイウンワンダーも新潟2歳Sから直行するローテーション(新潟2歳Sの勝ち方も同じ大外一気で鞍上も同じ岩田騎手)だった。
8枠16番という枠順も、外目から末脚で勝負するこの馬にとってはむしろ好材料。阪神・外回りコースの決め手勝負になる展開になれば、十分に持ち味を発揮できるはずだ。
問題は馬場の回復状態。午後から再び雨が降り出した土曜日、10Rに行われた六甲アイランドS(芝・1400m・小雨・良)のレースの上がりは35秒7。出走馬18頭中、上がり35秒台を切った馬は1頭もいなかった。「シンメイフジの上がり32秒9は時計の速い新潟の馬場でマークしたもの」ということを頭に置いた上で、時計の出る馬場かどうか、あるいは、決め手を活かせる馬場かどうかといった判断が必要になるだろう。

前走、500万クラスの赤松賞(東京・芝・1600m)をレコードタイムで制したアパパネ
大外枠から外々を回らされる展開だったが、直線で抜け出すと一気に後続を突きはなす強い勝ち方だった。東京の芝・1600m戦は未勝利戦でも経験しているが、その時の時計を1秒4縮めたことも立派。走りや気性の成長分が数字に表われたと見てもいいだろう。今回は早めに栗東入りして調整。このレースへ向けての陣営の勝負気配も高い。
不安点をあげるならば枠順。大外枠は前走でも経験しているが、陣営は「できれば内枠が欲しかった」とコメント。“大外は前に馬を置けないために掛かりやすくなる”というリスクを考えた上での発言である。
まして、阪神コースは東京よりもカーブが急なため、外に振られることが多い。後方からの競馬を決め込むならば別だが、中団の好位置でレースを運びたいこの馬にとっては、少なからずマイナスの影響があるかもしれない。鞍上の蛯名騎手がどのようなポジションを取るかがカギになりそうだ。
あとは、前走レコード勝ちの反動にも一応の注意を払っておいた方がいいかもしれない(直前の状態など)。

前哨戦のファンタジーS(京都・芝・1400m)を最後方から差し切ったタガノエリザベート
この馬の末脚も侮れない。シンメイフジと同様、阪神・外回りコース向きの脚質と考えていいだろう。1600mは2走前のデイリー杯2歳Sで経験済みだ。
もっとも、決め手勝負の馬だけに、展開に左右されるリスクは高い。陣営のコメントも「前が残ったら仕方ない」と“末脚勝負”を匂わせている。前走に関して言えば、人気薄だったからこそできた“一か八か大駆け”という見方もできる。道中で前走と同じように脚を溜めることができるかどうか。鞍上の川田騎手が勝ちを意識して仕掛けどころが早くなるようなことがあると、伸びを欠くケースも考えられる。

タガノエリザベートが勝ったファンタジーSで1番人気に支持されたラナンキュラス
結果は4着に敗れたが、今回も上位人気になっている。“スペシャルウィーク×ファレノプシス”という血統も魅力だが、「前走で揉まれる競馬を経験したことが今回の巻き返しにつながる」という点も人気の理由だろう。
ただし、1600mに関しては未経験。血統がそのまま反映されればクリアできる距離には違いないが、過大な評価を与えるのは危険だろう。事実、厩舎サイドも「本格化するのはまだまだ先」とコメントしている。新馬戦、りんどう賞では“素質の高い走り”を見せてくれただけに、ノーマークにはできないと思うが・・・。

ファンタジーSで2着に入ったベストクルーズ
堅実性といった部分では、前述の2頭(タガノエリザベート、ラナンキュラス)よりも上という評価もできるだろう。松田博調教師も「安定感ならば(同厩の)タガノより上」と公言している。好位に付けてゴールまでしっかりと脚を使える走り。決め手勝負の馬が不発に終わる可能性も視野に入れるならば、こうしたタイプの馬は押さえておいた方がいいかもしれない。
もっとも、GⅠを勝ち切れるかというと、少なからず疑問だ。“強さ”のインパクトに欠ける点は否めない。単勝8番人気という低い評価も、そのあたりに理由があるのだろう。

前走、牡馬混合のGⅡ・京王杯2歳S(東京・芝・1400m)で2着に入ったアニメイトバイオ
出遅れて後方からの競馬になりながらも、最後方から驚異的な追い上げ(稍重馬場で上がり34秒0)を見せて連対を確保。2走前のサフラン賞(同じく東京・芝・1400m)はレコード勝ちで、この時は中団からの抜け出しだった。
この2戦の走りから、アニメイトバイオには「どんな競馬にも対応できる勝負根性のある馬」という印象を持つことができる。1600mも経験済み。今回、鞍上を内田博騎手に変更したことも、陣営の勝負気配の表われと見ることもできるだろう。
問題は、初の関西輸送。国枝厩舎がアパパネを早めに栗東入りさせたことでもわかるように、幼い2歳馬にとって環境の変化は“心身に与える影響”のリスクが伴う。直前の気配、状態面には注意を払いたい。

新馬戦勝ちから抽選をクリアして出走してきたタガノパルムドール
2年前の2着馬・レーヴダムールもこのパターンで好走した。新馬戦の内容も決して悪くない。京都・芝・1600mで1分34秒4。ただし、このレースが内回りコースで行われたもので、長い直線を活かした競馬だったとまでは言えないが・・・。
この馬の場合、本来の予定であった京都・白菊賞(11月29日)を除外されたことがポイントになりそうだ。順調に調整されての出走かどうか。調教後の計量ではマイナス12キロの馬体重。デビュー戦の体がいくぶん緩かったとはいえ、少々気になる材料だ。

函館2歳Sの勝ち馬・ステラリードと小倉2歳Sを制したジュエルオブナイルもここに駒を進めてきた。
ただし、重賞実績はあるものの、今回に関しては強調材料は乏しいようだ。
ステラリードは休み明けとなった前走・ファンタジーSで6着(2番人気)。1走叩いた上積みは期待できるかもしれないが、距離未経験は不安材料だ。
ジュエルオブナイルは3カ月の休み明け。デビューから3戦はいずれも小倉の芝1200m戦で、この馬も距離克服が課題になるだろう。

レース展開についてだが、これはなかなか読みづらい。
内枠を引いたジュエルオブナイルあたりが逃げるようにも思えるが、絶対にハナを主張するという馬が見当たらない。となれば、ペースはそれほど速くはならないだろう。
仮にスローペースと考えた場合、直線の瞬発力勝負になるスローなのか、前が残るスローなのかが予想のカギになりそうだ。
“差し有利”ならば、人気薄でもタガノガルーダが面白そうだ。
前走・白菊賞(京都・芝・内回り1600m)では、後方13番手からの追い込みで、メンバー最速の上がり34秒5の末脚を発揮して4着。外回りコースに変わって直線の長くなるのはプラス材料と考えていいだろう。シンメイフジ、タガノエリザベートといった末脚のキレで勝負する馬たちと“連れて上がってくる”展開も考えられる。
逆に“前が有利”ならば、グローリーステップが気になる。
関東馬だが、抽選を通る前から栗東入りして調整されている。デビューからレース距離を伸ばして前走にマイル戦を経験。1.1秒差の6着という結果から、距離の壁という見方もされているが、加藤征調教師によれば「初の関西輸送の影響があった」とのこと。そのまま栗東に居残った今回は状態が違うはずだ。
2走前のサフラン賞はアニメイトバイオにクビ差の2着。つまり、レコード決着と同タイムということ。決め手が身上の有力馬が目立つ中、好位からレースを進める脚質に注目したい。

過去3年の勝ち馬は、いずれも春の牝馬クラシックを制している。
今年もこのメンバーの中から、クラシックの有力候補が現われるかもしれない。
今後を占う意味でも目が離せない一戦。好レースを期待したい。


■ジャパンカップダート・復習

3馬身半差の圧勝!
GⅠジャパンカップダートは、1番人気のエスポワールシチーが堂々の逃げ切り勝ち。GⅠ3連勝を飾った。

レースのポイントとなったのは1コーナー。
最初の直線でハナを切ったのは外国馬のティズウェイだったが、エスポワールシチーはコーナーワークを利して先頭へ。マイペースに持ち込むと、まったく危なげのない走りを見せ、直線では後続を一気に突きはなした。
佐藤哲騎手は「逃げる作戦はゲートを出てから決めた」と語っていたが、「できれば逃げたくない」というのが“本音”だったようだ。『予習』の中でもふれたように、目標にされるリスクを避けたいがゆえに、陣営は“ティズウェイに行かして好位から差す競馬”がベストと考えていたフシがある。実際、追い切りの走りも“終い重点”。明らかに差す競馬を意識したものだった。
それでも、あえて逃げの作戦に出たのは、1コーナーまでの他馬の出方(=無理な競り合いを仕掛けてくるかどうか)を見て、佐藤哲騎手が「逃げた方が勝つチャンスが大きい」と瞬時に判断したからに違いない。そして、結果的には、この“一瞬の判断”が、エスポワールシチーの最大の勝因であったようにも思える。
事実、ハナに立ったエスポワールシチーに競りかけてくる馬はいなかった。他のジョッキーたちにしてみれば、強い逃げ馬と競り合えば共倒れになることも、道中で必要以上に脚を使えば直線で失速することもわかっている。向正面でマコトスパルビエロが2番手まで進出してきたが、それ以上被せることはしなかったのもそのためだろう。
先行激化のハイペースも予想されたレースだったが、終わってみれば淡々と流れた平均ペース。勝ち時計の1分49秒9は昨年のレースよりも0.6秒遅かった。にもかかわらず、先行勢の残る競馬にならなかったのは、エスポワールシチーが後続に息を入れさせない“絶妙な逃げ”を打ったからだろう。言い換えれば、後続に余力を残させない走りだったということ。すなわち、“強い逃げ馬”の証明である。
今後は、海外遠征(ドバイ)も視野に入れて調整されるという。まだまだ伸びしろがありそうな4歳馬。今後の活躍を大いに期待したい。

2着に入ったのは、3歳馬のシルクメビウス。最後は上がり36秒9の末脚で伸びてきた。
勝ち馬に3馬身半の差をつけられたものの、この馬の力は十分に発揮できたと見ていいだろう。「もう少し速いペースになってくれていれば・・・」と領家調教師は悔やんだが、道中行きたがることもなく脚を溜める競馬ができたことは大きな収穫。“末脚のキレ”という武器を完全にモノにしたという印象だ。
今後の課題を述べるならば、展開に左右されない走りができるかどうかだろう。今回のレースは、言うならば、逃げ馬以外は前が崩れた展開。スローペースで前が有利な流れになった時に、好位から同じような脚を使えるようになれば申し分ない。いずれにしても、今後が楽しみな3歳馬である。

3着には同じく3歳のゴールデンチケットが入った(12番人気(単勝42.7倍)の人気薄であったために3連単は13万馬券となった)。
『予習』では「ダートに限れば〈2.1.2.0〉」という数字を提示したが、近2走は古馬混合戦のダートで馬券に絡む結果を残していたのだから、もう少し高い評価を与えてもよかったかもしれない。しかも、2走前のシリウスS(ハンデGⅢ)では、今回3番人気に支持されたワンダーアキュートよりも重い斤量を背負わされているのだ。JRAのハンデキャッパーは、少なくともその時点では「ワンダーアキュートよりも能力が上」と評価していたわけである(このあたりに注目しなかったことは大きな反省材料)。
とはいえ、好走の理由は、やはりルメール騎手のペースの判断と手綱さばきだろう。これまでの先行策ではなく、一転して差しの競馬。理屈としてはわかっていても、実際に馬にその走りをさせることができるのは、トップジョッキーの技術以外なにものでもない。“先行・差し兼用”“芝・ダート兼用”となれば、なかなか面白い存在。クセ者の森厩舎が今後どのような使い方をしてくるのか興味深い。

4着はサクセスブロッケン。終始エスポワールシチーをマークする位置でレースを進め、4コーナーから直線を向いたところでは、射程圏に捕らえたかのようにも見えたが、最後は力尽きた格好だ。
内田騎手は「春のデキにはなく、まだ復調途上の段階」とコメントしたが、やはり状態面が完全ではなかったということなのだろう。
とは言うものの、道中におけるこの馬ならではのスピードに乗った走りには見応えがあった。来年のフェブラリーSには、ぜひとも万全の状態で出走してきてほしい。

5着にはアドマイヤスバル。この馬の場合、5戦連続での連対実績はあったものの、一線級との対決が続いたわけではなく、加えて、前走は1400mのJBCスプリントを走ったこともあって、『予習』では取り上げなかった。
勝浦騎手自身も「この相手にこれだけやれるんだから力をつけている」と驚いた様子だったが、一線級との対戦でなくても常に結果を残せるというのは、いわゆる“相手なりに走れる馬”なのかもしれない。このタイプは、能力の判断が難しいが、人気や実績に関わらず一応のマークが必要ということだろう。

3歳馬で最も人気となった(3番人気)ワンダーアキュートは6着。残念ながら掲示板にも載れなかったが、外々を回らされる不利な展開の中で、この着順に踏みとどまったと考えれば、むしろ健闘の部類に入るだろう。
もっとも、自分から仕掛けていけなかったのは減点材料。多少の調子落ちがあったのかもしれないが、直線を向くまでにエスポワールシチーに迫る脚を見たかった。

2番人気の支持を受け、GⅠ9勝目を狙ったヴァーミリアンは8着。この結果については、石坂調教師も武豊騎手も落胆を隠せないようだ。両者の口からは「原因がわからない」という重いコメント。早急に敗因を究明する必要があるだろう。
『予習』では、「時計的に対応できるかどうか」という不安要素を取り上げたが、レースタイムもペースそのものも、この馬にとって決して厳しいものではなかったはずだ。にもかかわらず、4コーナーの出口でエスポワールシチーがペースを上げ、一斉に馬群が動いた時に、ヴァーミリアンは“置かれた”状態になった。スピードの変化に対応できなかったという点においては、「この馬の“速力”に問題がある」という見方もあながち的外れではなかったかもしれない。
それにしても、負け方が深刻である。不利があって仕掛けが遅れたのではなく、仕掛けても反応が鈍い。これは、明らかに“衰え”の症状である。
はたして、復活はあるのか。今後の動向に注目したい。

終わってみれば、エスポワールシチーの強さだけが際立ったレース。
レースの内容はともあれ、“強い王者”が誕生したという結果は、喜ぶべきことだろう。
さらに、注目の3歳馬も2・3着と健闘した。今回出走した馬以外にも、シルクメビウスらと好勝負をくり広げた馬が何頭もいる。
“ヴァーミリアンの敗北”によって、世代交代は完了したとも言われているが、それはすなわち“4歳対3歳”の世代闘争の幕開けでもある。
層が厚く、実力伯仲と呼ばれるダート戦線。今後の戦いから目が離せなくなりそうだ。



■ジャパンカップダート・結果

2009年12月6日 5回阪神2日11R
第10回 ジャパンカップダート(GⅠ)
ダート・1800m 晴・良

 1着 エスポワールシチー   佐藤哲   1.49.9
 2着 シルクメビウス       田中博    3+1/2
 3着 ゴールデンチケット     ルメール  1+1/4

単勝 1  310円(1番人気)
馬連 1-12 1940円  馬単 1→12 3160円
3連複 1-9-12 32660円  3連単 1→12→9 131960円

■ジャパンカップダート・予習

秋のダート頂上決戦・GⅠジャパンカップダート。
前売り1番人気はエスポワールシチー(3.3倍)。
5カ月の休みを挟んで現在3連勝中。特に、前走の交流GⅠ・南部杯は、2着のサクセスブロッケンに0.7秒差をつける圧倒的な逃げ切り勝ちで、4歳秋を迎えて“充実”“本格化”を感じさせる内容だった。
フェブラリーSや南部杯の走りから「逃げ馬」というイメージが強いが、番手の競馬(3走前のマーチS)やマクリ差し(2走前のかしわ記念)も可能。脚質に自在性があることもこの馬の強味だ。
ダート戦はここまで〈7.1.0.1〉(唯一の着外はフェブラリーSの4着)。1800mの距離実績は〈2.1.0.0〉。数字的にも十分強調できる。
前走から2カ月の間隔が空いたことを不安視する声もあるが、陣営によれば「JCダートを目標にピークに仕上げるために、JBCクラシック(11月3日開催)はパスした」とのこと。ローテーションに関しては、さほど気にする必要はないだろう。
問題は、最内枠に入ったこと。
コース形態を基準にすれば、1枠1番は“絶好枠”と言えるだろう。阪神・ダート・1800mのコースは1コーナーまでの距離が短い。したがって、ロスなく好位を取りたい先行馬にとっては、内枠の方が断然有利になる。実際、最内枠に入ったことでエスポワールシチーを本命にしたという競馬記者もいるほどだ。
しかし、一方で、最内枠に入ったために“ハナを切らざるを得ない”状況になったことも確か(過去に3番枠より内に入ったのは4回あるが、いずれも“逃げ”の作戦に出ている)。単騎逃げが見込めるメンバーならば、それでもかまわないが、今回は“前へ行きたい馬(好位に付けたい馬)”が多く揃ったレース(しかも、そのいずれもが有力馬である)。
番手からのマークも厳しくなるだろうし、同型の出方次第では無理な競り合いを強いられるおそれもある。番手に控えて他馬を行かせる作戦もあるだろうが、外から次々と被された場合には、内にいる分だけポジションが悪くなるリスクも生じる。
つまり、今回のように先行馬の多いレースでは、内枠を利してハナを切ることが必ずしも得策ではないという考え方もできるのだ。事実、エスポワールシチーを管理する安達調教師は「できれば(前で競馬をしたいと宣言している)外国馬より外の枠が欲しかった」とコメントしている。“内の逃げ馬をマークして外から仕掛ける”というのは、好位先行馬が勝つための常套手段。脚質に自在性があるだけに、そういう競馬をしたかったというのが陣営の本音だろう。
もちろん、エスポワールシチーがハナを切って、そのまま逃げ切ってしまうケースも十分考えられる。現在の充実ぶりからすれば、その可能性は高いかもしれない。ただし、ここまで書いてきたように、スポーツ紙や専門紙の記者が言うほど、今回の最内枠が有利であるとは思えない。

GⅠ8勝の実績を持つ7歳馬のヴァーミリアン
昨年のこのレースでは3着に敗れ、フェブラリーSも6着。その時点では“衰え”の声も聞こえてきた。しかし、その後は放牧で立て直し、6月の帝王賞を完勝。前走・JBCクラシックでは堂々の3連覇を成し遂げた。
実績に関しては、言うまでもなく、ナンバー1の存在ではあるが、この馬に関しては不安要素も目立つ。
まず、時計的な問題。ヴァーミリアンの場合、地方交流戦では圧倒的な強さを見せるが、ここ最近の中央の高速決着では分が悪い。昨年のJCダートでは直線で伸びを欠き、レコード決着となった今年のフェブラリーSでは追走するのがやっとの状態。しかも、いずれのレースとも、自己の持ち時計を更新しての結果である(言い換えれば、それまで以上のタイムを出しながら負けたということ)。
先行馬が揃った今回のレースは、緩みないペースと速い決着が予想される。はたして、この馬の“速力”が対応できるかどうか。
もうひとつは、ローテーションと馬体重の関係。近2走はいずれも4カ月の休み明けで勝利を飾っているが、馬体重に注目すると減り続けていることがわかる。休み明けを“目イチの仕上げ”で使ったと考えることもできるだろう。今回、中4週でのレースで、これがどのように影響するか。馬体減が必ずしもマイナスというわけではないが、少々気になる材料だ。

フェブラリーSをレコード勝ちで制したサクセスブロッケン
スピード自慢の快速馬だけに、速い流れになるのは、この馬にとって歓迎だろう。
もっとも、前走の武蔵野S10着はあまりにも負け過ぎ。陣営は「59キロの斤量が響いた」とコメントしているが、本来の予定であったJBCクラシックを除外された影響もあったようだ。
心配なのは、馬自身のダメージ。大敗した次のレースで巻き返すケースもあるが、59キロを背負ってハイペースのレースを先行したのであるから、消耗はかなり大きいはず(精神的にも)。
しかも、除外されたJBCクラシックの代わりに武蔵野Sを使ったのであるならば、その時点では“たとえ斤量を背負うことになっても、本番までにもう1走使わなければならない”程度の出来にしかなかったという見方もできる。つまり、サクセスブロッケンは復調途上で“予定外”のダメージを負ったわけである。
今回、斤量が2キロ減ることは有利に違いないが、それ以上に回復度が気になる。

ヴァーミリアンが勝ったJBCクラシックでアタマ差の2着に粘ったマコトスパルビエロ
安藤勝騎手の騎乗で4戦連続連対中。安定感という点では狙える1頭だ。
馬場差があるとはいえ、1800mの持ち時計・1分48秒1はメンバー中トップ(ワンダースピードも同じ時計)。阪神ダートも〈1.0.1.0〉という結果を残している。
あとは、道中の位置取りだろう。1枠の先行2頭を見る形で好位を進むことができれば、この馬の好走パターンになるだろうが、好位を主張したい馬が次々と押し寄せ出入りの激しい競馬になると、道中での消耗によって直線で伸びを欠くことにもなりかねない(もっとも、これについては先行馬全般に言えることではあるが・・・)。

JBCクラシック3着のワンダースピード
遅咲きの7歳馬だが、「GⅠを狙える最後のチャンス」と、陣営の期待度は高い。
ただし、中間の調整で、フレグモーネを発症して休んだ点は割引(陣営は「影響なし」と語っているが)。休み明け2走の走りが、休養以前に比べてもうひとつピリッとしていないところも気になる。
とはいえ、1800m戦では6勝という実績の持ち主。あっさり“消し”というわけにはいかないだろうが・・・。

同じ7歳馬でも、昨年の2着馬・メイショウトウコンは面白い存在かもしれない。
この馬の弱点は“輸送が苦手なこと”。前哨戦でいい走りをしながら、東京で行われるダートGⅠで結果を出せなかったのは、そのためだと言われている。昨年からJCダートが阪神開催に変更になったが、輸送の少ない関西圏内のレースになった途端に2着となった。
加えて、冬場に調子を上げるタイプ。関西圏で冬場のダートという条件に限れば〈2.2.1.0〉の実績を持つ。夏場を休みに充て、JBCクラシック(4着)を使って本番というローテーションは、陣営の思惑通りだろう。
ただし、後ろから行ってマクリ気味に進出するのが好走パターンだけに、展開に左右される面は否めない。先行馬が隊列を作って、落ち着いた流れになった場合は届かないケースも考えられる。
さらに、この馬も休み明けの前走で馬体重を減らしている(9キロ減)。直前の気配や状態面での注意は必要だろう。

今年のダート戦線は“強い3歳馬”を抜きにしては語れない。
このレースにも、5頭が出走してきた。

古馬混合のダート戦を3連勝中のワンダーアキュート
前走の武蔵野Sでは先行馬が脱落する中、2着に0.3秒差の逃げ切り勝ち。非凡な能力を見せつける結果だった。今回は〈3.0.0.1〉と得意としている阪神コース。人気の一角(3番人気)に支持されるのも当然だろう。
もっとも、今回に関しては不安点もある。
まず、大外枠。先にも述べたように、1コーナーまでの距離が短い阪神・ダート・1800m戦では、外枠よりも内枠の方が好位を取りやすい。無理に押し上げていったり、最後まで外々を回らされる展開になると、脚を使わされて失速するケースも考えられる。
さらに、夏場から休みなく走っている点も懸念材料。激走が続くとどこかで疲労のピークを迎えるというのは、同じ3歳のトランセンドの例でもわかる。まして、前走は輸送があったとはいえ、マイナス14キロの馬体重での激走。調教後の計量ではプラス18キロと戻してはいるが、蓄積された疲労と前走の反動が心配だ。

8月のレパードSの後、ひと息入れ、武蔵野S→トパーズSと短い間隔を使ってきたシルクメビウス
当然ながら、中間の調整は軽目だが、叩き3走目の上積みは見込めそうだ。
前走のトパーズSでは、上がり3F・36秒6の脚を使い、2着馬に0.8秒差をつける圧勝。ハマった時の末脚のキレは強豪の古馬相手のGⅠでも侮れない。差し馬が台頭する展開を想定するならば、買い目から外せない1頭だろう。

前走、JBCスプリントを制したスーニ。1800mの距離は長いと思われがちだが、3歳限定戦とはいえ、2戦2連対の実績がある。距離適性が明確に決定していない3歳馬だけに、軽視は禁物だ。
ただし、1800mのGⅠに出走するにあたって、近2走で1200mと1400mを使った臨戦過程は、少なからず疑問ではあるが・・・。

唯一の牝馬・ラヴェリータ。前走の武蔵野Sは、直線の追い込みだけで5着。以前は前々の競馬をしていただけに、この末脚には正直驚かされた。
近6走を確認してみると3勝3着外。しかし、3着外のうち2走は芝のレースで、あとのひとつは芝からスタートした武蔵野S。つまり、芝の部分がなければ3戦3勝であり、今回のレースがダートコースからのスタートということを考えると、激走の可能性がないとは言えない。あとは、1800mの距離(〈0.0.0.2〉がどうかだろう。

ダートに限れば〈2.1.2.0〉というゴールデンチケット。この馬の場合は、同型の先行馬との兼ね合い、力関係がカギになりそうだ。ルメール騎手がどのように仕掛けていくかに注目したい。


今回のレースも、予想のポイントになるのは「展開」だろう。
“快速自慢”の先行馬が揃った上に、外国馬のティズウェイも“逃げたい宣言”をしている。
前を重視するか、後ろを重視するかが、予想の分岐点になりそうだが、武蔵野Sのように、逃げ馬が残って2・3着が差し馬というケースも考えられる。あるいは、差し・差しで決まって逃げ馬が3着に残るという可能性もある。
加えて、世代間の“力の差”というものも、検討しなければならない。
正直言って、難解なレース。と同時に、目が離せない一戦でもある。




■ジャパンカップ・復習

史上初の牝馬7冠。そして、ジャパンカップ史上初となる日本牝馬の勝利。
壮絶な激戦をわずか2cm差で制したのは、世紀の名牝・ウオッカだった。

レースは2コーナー手前で先頭に立ったリーチザクラウンがペースを握り、1000mの通過が59秒0。
『予習』の中で、ウオッカの好走条件について、「“1000m通過が58~59秒台のペースで、ポジションは5・6番手のイン”が理想的」と書いたが、まさにその通り(コース取りがインではなく外目ではあったが)の展開になった。
さらに、前半の1200mが1分11秒2、後半もまったく同じ1分11秒2という緩みのない流れによって、課題の“折り合い”も克服することができた。
能力を発揮できる条件が揃ったレース。ウオッカは勝つべくして勝ったと言ってもいいだろう。
ルメール騎手の騎乗も大きな勝因となった。
ウオッカのコーナー通過順位を確認すると、「5→3→4→5」となっている。注目すべきは“4コーナーでポジションが下がっていること”。これは、ルメール騎手が他馬の動き出しよりもワンテンポ遅らせて仕掛けたからであり、結果的に、その“一瞬の溜め”が最後の踏ん張りにつながったと考えられる。
角居調教師は今回の乗り替わりについて、「“ウオッカは掛かる馬”というイメージを持っていないジョッキーに乗ってもらいたかった」とタネを明かしたが、それにしても見事な騎乗。道中のポジションと折り合い、4コーナーでの溜め、瞬時に馬群を抜け出すタイミング。いずれをとっても、一流ジョッキーの技術が光っていた。
レース後、鼻出血が判明したため、規定により有馬記念への出走はできなくなった。「今回のジャパンカップがラストランになるのでは」という観測記事も多い。もし、本当に引退ということになるのであれば、最後の最後まで劇的な感動を与えてくれたウオッカに向けて、どれだけの感謝の言葉を並べればいいのかわからない。
数々の記録を打ち立て、永遠の記憶に残る走りを見せてくれたウオッカ。
今はまだ、ジャパンカップの激走に対してだけ「ありがとう」と言うに留めたい。

惜しくも2着に敗れたオウケンブルースリ。メンバー最速の上がり34秒1の末脚を見せた直線の追い込みは実に素晴らしかった。改めて“能力の高い馬”であることが確認できたし、今後の中長距離戦線の中心となる1頭として、これまで以上に期待が高まった。
残念だったのは、道中で外に出せずに、4コーナーで一旦下げてから大外に持ち出す展開になったこと。音無調教師は内田騎手の乗り方に関して「馬の力を信じてインを突いてほしかった」と語ったというが、たしかにそれも一理ある。内に包まれたり前が詰まったりするリスクは、ある意味、差し・追込馬の宿命。この馬の今後の課題は、どのような位置取りからでも突き抜けてくる“強さ”を備えることだろう。
次走は有馬記念という見方が強い。今回の府中とは反対に、コースが狭く、直線が短く急坂のある中山で、どのような走りを見せてくれるのか。注目したい。

3着は3歳牝馬のレッドディザイア。53キロという斤量の恩恵があったとはいえ、この結果は大いに評価できる。今年の3歳牝馬のレベルの高さを証明したと同時に、この馬自身の底力を十分に示したレースだった。春のオークスは2分26秒1で走破したが、今回はその時計を3.5秒も縮めたのだから驚きだ。今後に大きな期待を寄せられる内容だった。
秋華賞よりもさらにマイナス2キロでの出走となった今回、体調面がなによりの不安ではあったが、馬体そのものはしっかり仕上がっていた。言うまでもなく、これは厩舎の力だろう。この松永幹厩舎をはじめ、本田厩舎、村山厩舎など、ついこの間まで騎手として活躍していた若手の調教師が台頭してきたことは頼もしい限り。競馬界にとっても明るい話題であるに違いない。

外国馬のコンデュイットは4着。最後は内から差を詰めてきてはいるものの、前評判に比べると今イチの印象だった。
ムーア騎手は「スタートも悪く、いつもの反応ではなかった。強行軍の疲れがあったのかもしれない」とコメント。やはり、本来の走りではなかったのだろう。
馬自身のコンディションが敗因であるとすれば、多頭数による高速レースという条件も、この馬には厳しかったはずだ。「時計的にも通用する」というのが戦前の評判ではあったが、前走のBCターフ(芝・2400m・2分23秒7)は7頭立ての少頭数。まわりの馬からプレッシャーを受けながらの淀みのないレースは、疲れの残った体にダメージを与えたかもしれない。

5着には最内を突いたエアシェイディが入った。先日引退したカンパニーと同期の8歳馬だが、真面目に一生懸命走る姿には本当に頭が下がる。
次走はおそらく有馬記念。昨年3着に入った得意の条件だけに、まだまだ侮れない存在だ。

連覇を目指したスクリーンヒーロー(4番人気)は13着に敗れた。
『予習』では「1コーナーまでに好位に付けられることが好走の条件」と書いたが、コーナー通過順位は「8→9→6→5」。昨年よりも3秒1速い勝ち時計となった今回の流れでは、やはり大外枠が不利だったようだ。外々を回らされて道中はなし崩しに脚を使わされる競馬になっては厳しい。
とはいえ、自分の好走パターンを持っている馬。「スローな流れが見込めて、内枠からスムーズに好位をキープできる」という条件が揃った時に、改めて狙ってみたい。

逃げたリーチザクラウンは、直線で失速して9着。馬そのものは落ち着きがあり、精神的な成長を窺わせてはいたが、走りに関しては課題が残った。
先にも述べたように、今回のレースは前半の1200mが1分11秒2、後半もまったく同じ1分11秒2という緩みのない流れ。この厳しいラップは、リーチザクラウンだからこそ刻めるものなのだが、自分自身が残れないようではまったく意味がなくなってしまう。
緩急をつけた逃げを打てるようになるか、あるいは、これまで以上のスピードで大逃げを試みるか。いずれにしても、後続に脚を使わせて最後に突き離すという競馬ができなければ、単なるペースメーカーで終わってしまうだろう。
武豊騎手は「この距離でも少し長いのかもしれない」とコメント。今後、どのような使われ方をするのか、注目していきたい。


今回のジャパンカップについて、「今年度のベストレース」という声も多く上がっている。
2分22秒4という歴代3位のタイムも素晴らしいが、それ以上に中身のある、“競馬ファンが納得できる一戦”だったと思う。
その一番の理由は、出走馬が力の限りを尽くしたからに違いない。
ウオッカも、オウケンブルースリも、レッドディザイアも、現状で持てる力をフルに発揮したように見えた。
だからこそ、レースに感動することができた。
今後も、このような“名勝負”と呼ばれるレースに出会えることを、心より願うばかりである。


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プロフィール

安東裕章

Author:安東裕章
東京都出身。2007年11月に書籍『競馬のツボ』、2008年7月に『競馬のツボ2』、2009年7月に『競馬のツボ3』を発表(いずれも総和社刊)。

このたび、拙著『競馬のツボ』を刊行していただいた出版社・総和社様の勧めもあって、ブログを始めることにしました。
競馬における一番の楽しみは、レースについて考えること。つまり予想です。
このブログを書くことで、自分でも週末のレースに向けてイメージを膨らませる訓練になるかと思います。
競馬について考えることが好きな皆様。レース予想に疲れて気分転換をしたい時など、よろしければフラッと遊びに来てください。

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