■2010年10月

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■ブログ休載のお知らせ(泣)

競馬のツボ<ブログ版>にお越しいただきありがとうございます。
大変申し訳ありませんが、10月31日と11月7日の2週分のブログをお休みさせていただきます。
今年は週末直前になってから急な仕事が入ることが多くなってしまって・・・。
楽しみにしていただいている皆様には本当に申し訳なく思っています。
(私自身も競馬に参加できなくて残念です)

天皇賞・秋は台風の影響で天気と馬場状態が問題になりそうです。
実力通りならばブエナビスタが中心とは思うのですが・・・。

皆様のご健闘をお祈りします!
すみませんが、よろしくお願いいたします。


安東 裕章
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■菊花賞・復習

牡馬クラシック最後の1冠・菊花賞を制したのは、7番人気の伏兵ビッグウィーク。

レースはコスモラピュタが先導して1000m通過が61秒0。中間の1000mが64秒5。後続を大きく離してからスローに落とす“巧みな逃げ”だったと言えるだろう。こうした流れになると、一団馬群の中にいる馬は仕掛けのタイミングが難しくなる。逃げ馬をつかまえるために早めに動き出せば、その分脚を使うことになり、最後に後ろから差される結果を招きやすくなるからだ。
まして、菊花賞の3000mは未知の距離。どの馬も、できるだけ脚を温存しようとした分、動くに動けないレース展開になってしまった。
そんな中、3コーナー過ぎの下り坂から果敢にスパートをかけたのがビッグウィーク。川田騎手の積極策=攻めの騎乗が、結果として勝利につながったと評価していいはずだ。
ローズキングダムを封じ込むための一か八かの早仕掛け(川田騎手は「バクチだったかも知れない」とコメント)。直線だけの競馬になれば、瞬発力で負けるとわかっていたからこそのロングスパート。神戸新聞杯の敗戦がしっかりと糧になっていたということだろう。
昨年の菊花賞は、浜中騎手と吉田隼騎手による“ひとつでも前に行こう”という若さと勢いのワンツーだった。そして、今年もまた“思いきりの良さ”が勝利をもたらした。展開を見れば「前が残って当然」のレースだったかもしれない。しかし、先行するだけで勝てるレースなど存在しない。後続に抜かれない競馬ができなければ、前へ行っても勝つことはできない。今回はそのことを改めて教えられたような気がする。
川田騎手の素晴らしい騎乗と、鞍上の意を汲んで最後まで真剣に走り抜いたビッグウィークに敬意を表したい。

届かなかったローズキングダム。
武豊騎手は「4コーナーで仕掛けた時に内にもたれたのが誤算」とコメントしているが、仮にスムーズに追い出せたとしてもあの位置(10番手)から差し切れたかどうか。ビッグウィークが完璧な“動き方”をしただけに、個人的には「やはり直線だけの競馬に賭けたのか・・・」という残念な気持ちもある。あるいは、『予習』の中でふれたように、この馬はロングスパートには向いていない脚質なのかもしれない。
もちろん、最後に見せた伸び脚は素晴らしかったし、世代のトップクラスにいる馬という評価は変わらない。ただ、この馬に求めたいのは、朝日杯の時に見せてくれた“凄みのある走り”。スローで折り合って瞬発力でキレるというワンパターンの馬になってほしくないのだが・・・。
3000mの長距離では、折り合い重視になるためこの馬の持ち味がいかせないという意見もある。次走の走りに注目したい。

3着には13番人気のビートブラックが入った。
ビッグウィークの後をついて行った結果という見方もできなくはないが、1000万を勝ち上がったばかりでこの結果は大健闘と言えるだろう。すぐに好位に付けられたスタートの良さも先行型としての強味。最後もパタッと止まっているわけではないので、ステイヤーとしての資質も十分ありそうだ。あとは追って伸びるタイプに成長できるかどうか。なんとなくトウカイトリックとかぶる部分もあるような気がするのだが・・・。
個人的な反省をするならば、道中3・4番手という位置取りにこの馬がいるという予想ができなかったこと。『予習』の中で「注目馬」として名前をあげた、トレイルブレイザー、シルクオールディー、ゲシュタルトは、すべて“先行して流れ込める3・4番手候補”と考えていただけに、同じく先行できるこの馬を軽視したのは失敗だった。

4着は内を突いたレーヴドリアン。
最後方から大外へ持ち出す競馬をするかと思っていたが、最内の好位で折り合いよくレースを運んでいた。前走の神戸新聞杯でもマクリ気味に進出する走りをしていたが、鞍上が福永騎手に変わっていろいろと新境地を開発している感もある。
外々を大きく回って勢いをつけた方が当然キレ味が増すので、内を回った今回は伸びも今イチだったが、脚質にこだわらない方が将来的に馬自身のためになるかもしれない。その意味では収穫のあったレースと言えるだろう。

逃げたコスモラピュタが5着。
最後は力つきたものの、絶妙のペース配分でレースを作った。スピードで押し切るというよりも、主導権を握らせるとイヤなタイプの逃げ馬だろう。単騎が見込めるレースでは要注意。ひとクセもふたクセもありそうな感じでこの先が楽しみな1頭だ。

2番人気のトウカイメロディは6着。
レース運びそのものは良かったと思うのだが、北海道で見せたような突き抜けてくる走りではなかった。序盤の位置取りが中団後ろになったため、3コーナー手前から動いた分、反応が鈍くなったのかもしれない。
あるいは、馬場に先入れしたことからもわかるように、輸送や環境の変化が状態面(特にメンタル面)に影響を及ぼしたということも考えられる。いずれにしても、本来の走りではなかったことは確かだろう。
今回は初の関西圏での競馬。これを経験したことが成長につながればいいはずだ。当然、この1戦だけでは見限れない。

ヒルノダムール(7着)も動けなかった。
『予習』の中で「最内枠となれば“道中包まれて動くに動けない”という状況も想定される」と書いたが、その心配通りになってしまったようだ。外目の枠に入って序盤からローズキングダムをマークするようなレースをしていれば、違っていたかもしれない。
ただ、他馬に前に入られたとはいえ、直線入り口で後方にいたローズキングダムより下げたのは不可解。併せ馬の形にしようとしたのかもしれないが、できれば馬群を割って追い込んでくる姿を見たかった。

4番人気のクォークスターはメンバー最速の33秒5の上がりを見せたが9着まで。
今回のような流れでは、当然ながら、最後方からの競馬では届かない。藤岡佑騎手は「2000mの方が持ち味の末脚を発揮できる」とコメントしているが、やはり速い流れにならないと難しいようだ。現時点では、この馬の狙いどころはペース次第という印象。

春の有力馬が不在だった今年の菊花賞。
メンバー的に物足りない分、内容で・・・と期待していたのだが、残念ながら今ひとつ胸に響くものがなかった。
「ローズキングダム・1強」と言われた以上、残りの馬はローズキングダムに勝負を挑む馬でいてほしかった。
そして、ローズキングダムには「1強」にふさわしい他馬を寄せつけない強さを見せてほしかった。
だからこそ、素晴らしい走りを見せてくれたビッグウィークと川田騎手には感謝したい。



■菊花賞・結果

2010年10月24日 5回京都6日11R
第71回 菊花賞(GⅠ)
芝・3000m 小雨・良

 1着 ビッグウィーク     川田    3.06.1
 2着 ローズキングダム   武豊    1+1/4
 3着 ビートブラック      幸      クビ

単勝 6  2320円(7番人気)
馬連 6-10 2170円  馬単 6→10 7440円
3連複 6-10-12 46410円  3連単 6→10→12 338840円



■菊花賞・予習

牡馬クラシック最終戦のGⅠ・菊花賞。
ダービー馬・エイシンフラッシュ、皐月賞馬・ヴィクトワールピサに加え、ペルーサ、アリゼオ、ルーラーシップといった春の実績馬たちが軒並み不在。「アパパネの3冠」という明確なテーマがあり、春の有力馬の多くが顔を揃えた先週の秋華賞に比べると、いささか“駒不足”といった印象は免れない。
土曜午後の時点で、人気は「ローズキングダム・1強」という構図。夏の上がり馬たちがその牙城を崩せるかかどうかが最大の見所になりそうだ。

前哨戦の神戸新聞杯でダービー馬・エイシンフラッシュを下したローズキングダム
昨年暮れの朝日杯FSでGⅠ勝ち。スプリングSと皐月賞では人気に応える結果を残せなかったが、ダービーではクビ差の2着。今回のメンバーでは抜けた実績を誇っている。
春先には馬体減という不安材料を抱えていたが、前走の神戸新聞杯はプラス22キロで出走。見た目に太め感もなく走りにキレがあったことから、素直に“成長分”と見なしていいだろう。もちろん、好材料である。
エイシンフラッシュが出走していれば、お互いが牽制し合うために「仕掛けどころが難しくなるのでは?」とも考えられたが、そのあたりの駆け引きを必要としなくなったことで、展開面でもかなり楽になったように思える。
もっとも、ローズキングダムにも課題はある。
ダービーと神戸新聞杯。この2戦はいずれも“超”のつくスローペースで、言わば、究極の瞬発力勝負だった。菊花賞というレースも直線だけの競馬になる傾向が強いが、京都の長距離の場合、基本的に馬群が動き出すのは3コーナーの下り坂。つまり、“一瞬のキレ味”よりも“長くいい脚”をより要求される。ロングスパートをかけて、さらに直線で伸びる走りが理想的なのだ。
例えば、2008年の勝ち馬・オーケンブルースリは3コーナーを10番手で通過しながら4コーナーでは2番手、2006年のソングオブウインドも3コーナー16番手から直線入り口では8番手までポジションを上げていた。はたして、ローズキングダムにそのような脚の使い方ができるかどうか。あるいは、好位・先行勢で決着した(イコピコの末脚が不発に終わった)昨年の菊花賞のように、平均ペースの緩みのない流れになった場合、どれだけの脚が使えるのか。
加えて、土曜になって突然発表された当日の雨予報。「皐月賞でもわかるように渋った馬場はよくない」と橋口調教師が公言している通り、馬場状態によっては能力を発揮できないケースもあるかもしれない。

皐月賞でローズキングダムに先着したヒルノダムール
ダービーでは3番人気に支持されながら9着。スローペースで外々を回らされる展開になり、決め手をいかせなかったのが敗因だが、「輸送が苦手」という弱点についても陣営自ら指摘している。前哨戦に札幌記念を選択したのも、滞在効果によって馬体減りを極力おさえる目的があったようだ。
今回は輸送が短く、2戦2勝の実績がある京都コース。力を発揮できる条件は整ったと見ることもできる。古馬との対戦となった札幌記念では0.5秒差の4着。出遅れて4コーナー10番手からの追い上げだったが、前残りの展開を考えれば、合格点を与えられる内容とも言えるだろう(古馬との斤量差を考えると少々不満ではあるが)。
問題はフルゲート18頭の1枠1番という枠順。
3000mの距離を考えると、枠順の有利・不利はないようにも思えるが、最内枠となれば“道中包まれて動くに動けない”という状況も想定される。これまでの走りを見る限りでは、ヒルノダムールは外差しを得意とする馬。となれば、道中スムーズに外へ出せるか、あるいは、ラチ沿いをロスなく回ってインを突けるかが課題になるだろう。このところ若干精彩を欠いているようにも思える藤田騎手だが、今回はファンを唸らせるような騎乗を期待したい。

ヒルノダムールと同じく1枠に入ったレーヴドリアン
強靱な末脚の持ち主だけに、クラシック戦線でもそのキレ味が期待されたのだが、皐月賞とダービーでは不発に終わっている。今回は実績〈1.1.1.0〉の京都コース。松田博調教師は「坂の下りを利用する走りをする馬」とコメントしているが、加えて、平坦で広い直線はこの馬の持ち味を存分に発揮できる舞台と考えられる。枠順に関しても、最後方に下がって競馬をする馬なので、別段問題はないはずだ。
さらに、前走騎乗した福永騎手はレース後に「動かない馬だと思っていたが、自分からハミをとって走ろうとした」とコメント。ひと夏越して、精神的に前向きさが出てきたという解釈もできる。
展開に左右される点は否めないし、折り合い面に不安のある馬ではあるが、ハマった時の破壊力はヒルノダムール以上かもしれない。

トライアルのセントライト記念を圧巻の差し脚で制したクォークスター
近3走、メンバー最速の上がりを使っているように、この馬の末脚も強力だ。今年のセントライト記念はタイム的にも評価が高く、権利を獲ったクォークスターとアロマカフェは、ラジオNIKKEI賞でも連対を分け合ったいただけに軽視はできない。
クォークスターについては、5戦連続連対中という安定感も強調材料。さらに、追い込みだけではなく前でも競馬ができる点も買われているようだ。
課題は、スローになった時にどのような走りをするかだろう。
ヤマニンエルフが逃げてハイペースになったセントライト記念に代表されるように、近3走のメンバー最速の上がりはいずれも平均ペース以上。末脚を発揮しやすい流れだった。4・5走前はスローペースでも連対を果しているが、この時は中団より前での競馬。位置取りが違っている。
今回の2枠3番という枠順をいかすとすれば、好位につけるのが妥当とも思われるが、そのポジションからレースを運んで自慢の末脚を発揮することができるだろうか。あるいは、後方に下げたとして、スローの流れで折り合いのつくレースができるだろうか。セントライト記念の印象が強いだけに、違う流れへの対応がカギになりそうだ。

セントライト記念3着のアロマカフェ
着順は3着だが、レースの流れを考えた場合、勝ったクォークスターよりも強い競馬をしたという意見もある。
この馬の強味をひとことで言えば、ラジオNIKKEI賞で見せたような“自分から動ける自在性”だろう。キレる脚がない分、好位にスッと付けられる器用さがあり、トータルでは大崩れしないタイプという判断もできる。
今回は外枠に入ったことがポイントになりそうだ。
先にも述べたように、3000mの距離では枠順の有利・不利はないものの、先行馬にとっての外枠は少なからず影響がある。スタートから最初の3コーナーまでの距離が短いため、外々を回らされたまま下り坂に入るリスクが生まれるからだ。実際、先行勢で決まった昨年の1・2着馬は、スリーロールスが1枠1番、フォゲッタブルが2枠3番という内枠だった。アロマカフェにとっては、スタート後の位置取りが一番の課題だろう。

今回、一番の上がり馬として注目されているのがトウカイメロディ
北海道で古馬相手に3連勝を飾ったが、その内容も見事だった。好位から前をマークして直線で抜け出す正攻法の競馬。特に前2走は、実績馬のホクトスルタンを斤量差が縮まりながらも連続して退けたところに、この馬の地力の高さが垣間見れる。2200m以上で4勝(うち2勝は2600m)という豊富な距離経験と実績。今回も自分の形で競馬ができれば、圏内の可能性は十分にあるだろう。
ただし、不安材料もある。それは初の関西への長距離輸送。
過去10年の菊花賞のデータを見ると、トウカイメロディのように春のクラシックに出走していない上がり馬が6回勝っている(今回、この馬が人気になっている理由のひとつでもあるのだが)。しかし、6頭のうち関東馬はマンハッタンカフェの1頭だけで、残りはすべて関西馬だった。
長距離輸送の有無が好走のポイントであることは、先週の秋華賞の上位3頭がいずれも栗東に入厩した関東馬であったことからもわかる。まして、菊花賞は3000m。長距離輸送を行った上でさらにスタミナ勝負で結果を出すためには、相当の素質と体力が必要なはずだ。
トウカイメロディは古馬相手に3連勝したが、北海道で追い切りを行う滞在競馬だった。この馬には福島や新潟への転戦経験もない。陣営もそのあたりを考慮して21日に栗東入りをさせているが、当週の長距離輸送がどう影響するか。力を出せる状態にあるかどうかが好走のカギになるかもしれない。

伏兵陣にも注目馬が何頭かいる。
神戸新聞杯3着のビッグウィーク
首の使い方が下手な走りをする馬に見えたので、距離的にどうかと思っていたが、前走は直線で一旦後方に退きそうになりながらも再び盛りかえす勝負根性を見せた。先行タイプなので3枠6番は理想的。京都も〈0.3.0.0〉と好相性。距離をこなせれば残り目があるかもしれない。
逃げ残りという展開ならば、おそらくハナを切るであろうコスモラピュタ
2200m以上では〈1.2.0.2〉という豊富な距離経験が魅力だ。自分のペースに持ち込んでどこまでという感もあるが、1000万を勝ったばかりとはいえ連勝中の勢いは侮れない。
神戸新聞杯で4番人気(10着)に支持されたシルクオールディー
北海道で力を付けた上がり馬。前走は北海道帰りということで態勢が整っていなかったとのことだが、道中のポジションが下がっていったことからもわかるようにチグハグな競馬だった。
2200m以上では〈3.1.1.1〉。スタミナ比べになるような展開になれば、頭角を現わしてきそうだ。巻き返しに期待。
上がり目という点ではトレイルブレイザー
昨年9月の新馬戦を勝った後、6ヶ月の休養があったため、デビューから6戦しか走っていない。鮮度ではナンバー1。
前走は重馬場の中山・2500mを3番手からメンバー最速の上がりで勝利。賞金加算のためのレースながら、キッチリと結果を出した。能力の比較が難しいが経験以上の成長力があるとすれば怖い存在。長くいい脚を使えるという印象はある。
最後に、ゲシュタルト
京都新聞杯の勝ち馬でありダービー4着の実績がありながら低評価。前走のセントライト記念があまりの負け過ぎだったためだろう。
牝馬のオウケンサクラと同じく、春にきついローテーションを使った馬なので、1走叩いただけでの一変は期待できないかもしれないが、底力を考えると不気味な1頭だ。




■秋華賞・復習

史上3頭目の偉業達成!
GⅠ・秋華賞は1番人気のアパパネが完勝。スティルインラブ以来、7年ぶりに3冠牝馬が誕生した。

それにしても、強い競馬だった。
道中は中団の後ろで折り合い、外目を気分良さそうに追走。3コーナーの下り坂から進出し、直線では大外から一気に伸びた。着差こそ4分の3馬身だが、他馬との力の差を見せつけるかのような余裕の走り。まさに“馬群を尻目に”という言葉通りのゴールシーンだった。
『予習』で述べた不安要素も、終わってみればすべてプラス材料としての逆の解釈が成り立つ。
夏場に放牧に出さずに多くの追い切りを消化したのは、それだけの負荷をかけても耐えられる強靱な身体の証明だった。プラス24キロはまぎれもなく成長分。そして、ローズS4着に関しても、負けてダメージが残るような弱い馬ではないからこそ、陣営は「合格」とコメントできたのだろう。春先のレースで、今回のような“圧倒的な強さ”を感じなかったとはいえ、この馬の実力を少々見くびり過ぎていたかもしれない(この点は大いに反省である)。
次走はエリザベス女王杯。ブエナビスタ、レッドディザイアは参戦しないということなので、楽しみは先延ばしになるが、古馬や牡馬の一線級との対決を心待ちにしたい。

2着のアニメイトバイオは状態面が懸念されたものの、今回もこの馬らしい瞬発力を見せてくれた。完璧な競馬だったと言ってもいいだろう。なにより、馬群を割って突き抜けてるくる“勝負根性”が素晴らしい。距離に関して融通が利くのも大きな武器だ。
馬体の維持という点を考えると、あまり無理な使い方はしてほしくないのだが、今後もアパパネの好敵手として競い合う存在になってほしい。

3着はアプリコットフィズ。
好位の内で我慢の競馬ができていたが、レース前の発汗や行きたがるような走りにはまだまだ粗削りな感がある。それでも、直線での伸び脚を見ると、パタッと止まった桜花賞の頃よりもかなりの成長がうかがえる。
経験を積んで落ち着きが出てくれば、さらに力を発揮できるようになるだろう。アーネストリーのように、スピードに乗りながら脚を溜めることができればベスト。期待したい。

ワイルドラズベリーは外から追い込んで4着。
終始アパパネをマークするような位置取りだったが、最後は突き離されてしまった。もう少しキレる印象があった馬なので、あるいは距離が長いのかもしれない(折り合いはついていたが)。ローズSで2着になり「実力差を縮めた」と評価されたが、今回もこの馬の走りはできていたように思える。個人的にはエ女杯よりも、スワンSやマイルCSでの走りを見てみたい。

5着のレディアルバローザは最内枠をいかしたロスのないレースをした。
直線でもラチ沿いから伸びてきて見せ場十分。ただし、距離はもう少し短い方が良さそうだ。今回は枠順と内回りコースという条件が有利に働いた感もある。立ち回りは巧いと思うが、もう少しこの馬ならでは特長が欲しいところ。

アグネスワルツ(9着)とオウケンサクラ(11着)は、それぞれ自分のレースができていたようにも見えたが、結果には結びつかなかった。春先の調子に戻るまでの良化途上なのかもしれない。
ショウリュウムーン(16着)は前走に続いての不利。四位騎手は「この前と同じ乗り方をした騎手の責任」とコメントしているが、桜花賞での佐藤哲騎手の外への出し方(直線)を見ると、馬込みが苦手なタイプなのだろうか。
3番人気のサンテミリオンは大きな出遅れ。道中もまったく覇気の走りだった。あまりの負け方に敗因は何とも言えないが、とりあえず次走の変わり身に期待するしかないだろう。

今年の秋華賞は、上位馬が100%の力を発揮できた一戦だったと思う。
アニメイトバイオの後藤騎手もアプリコットフィズの武豊騎手も「この馬の力は出せた」とコメントしている。だからこそ、アパパネの強さがひときわ輝いて見えたのだろう。
3冠牝馬誕生にふさわしい好レースだった。



■秋華賞・結果

2010年10月17日 5回京都4日11R
第15回 秋華賞(GⅠ)
芝・2000m 晴・良

 1着 アパパネ        蛯名   1.58.4
 2着 アニメイトバイオ    後藤    3/4
 3着 アプリコットフィズ    武豊    1/2

単勝 15  230円(1番人気)
馬連 10-15 1420円  馬単 15→10 1990円
3連複 4-10-15 3250円  3連単 15→10→4 12550円



■秋華賞・予習

牝馬クラシック最後の1冠、GⅠ・秋華賞。

注目はやはり、牝馬3冠の偉業達成を狙うアパパネだ。
GⅠ3勝を含む5勝は、言うまでもなくメンバー中トップの実績。前走のローズSは0.2秒差の4着に敗れたが、“叩き台の前哨戦”と割り切れば、この馬の評価を落とす必要はないだろう。実際、前走の馬体重はプラス24キロの余裕残し。陣営も「トライアルとしては合格の走り」とコメントしており、結果に関してはある程度納得している様子。ならば、「1走使った今回こそ」と考えるのが妥当な見解かもしれない。
とはいうものの、気になるのは“前走の負け方”だ。
今回、アパパネに◎印を打った専門紙の記者は「先行勢が総崩れになったレースで、好位から一旦は先頭に立ち3着馬にハナ差の4着に粘ったことは、“負けてなお強し”の内容だった」と前走を分析・評価している。たしかにそういう見方もできるだろう。しかし、好位から先頭に立つという“勝ちパターン”に持ち込みながら負けたことを、はたして“負けてなお強し”と言えるのだろうか。並の馬ならばともかく、春の2冠を制した馬の負け方としては釈然としない。
そもそも疑問と思えるのが、ローズSの調整過程である。
『ローズS・復習』にも書いたように、アパパネはオークス以降放牧に出さずに美浦で調整し、中間は他馬よりもはるかに多い12本の追い切りを消化していた。にもかかわらず、なぜプラス24キロの余裕残しだったのだろうか。穿った見方をすれば、本番を見据えた意図的な余裕残しではなく、“調整ミス”だったのではないかとも思えるのである。
アパパネはローズS前まで6戦連続で連対(5勝2着1回)していた。そういう馬に対して、陣営が「負けてもいい」というような仕上げをするとは思えない。敗戦のダメージが馬に与える影響を考えればリスクが高すぎるからだ。結果として4着に敗れたアパパネにどれだけのダメージが残ったか。これが、今回の一番の不安要ではないだろうか。
前走後も引き続いて栗東で調整。しかし、これまでの坂路調教とは違い、今回は初めてコースで追い切りを行っている。前走を“調整ミス”と仮定するならば、こうした“変化”も気になる材料だ。

前走、古馬混合の牝馬重賞・クイーンSを勝ったアプリコットフィズ
古馬牝馬のレベルは低いと言われているが、出走14頭中7頭が重賞勝ち馬というメンバーを相手に勝利を収めたことは評価できるだろう。2着のプロヴィナージュがその後牡馬混合の重賞(朝日CC、京都大賞典)で好走していることも、レースそのものの価値を高めている。
春先はまだ成長途上の印象があったが、専門家の意見によれば、体が丸みを帯びパワーアップしているとのこと。今回は輸送を考慮して早めに栗東に入厩。順調な仕上がりを見せているようだ。
もっとも、クイーンS勝ちに関しては、展開と古馬との斤量差に恵まれたという感もある。
開幕週の馬場に加えて、1000m通過・60秒4というスローペース(前日の1000万クラスより0.4秒遅かった)。先行脚質のこの馬にとっては有利な条件だったことは間違いない。この一戦だけで成長度を評価できるかというと、少々早計のような気がする。
同世代のトップクラスとの対戦は桜花賞・5着とオークス・6着のみ。いずれも接戦ではなく完敗だった。春の時点での実力差がどこまで縮まっているかがカギになるだろう。

クイーンS組では、勝ったアプリコットフィズよりも5着のショウリュウムーンを高く評価する声もある。
先行有利の展開で、直線で前が壁になる不利がありながら0.3秒差。能力の片鱗を印象づけたという見方もされている。
春の実績に関してもアプリコットフィズより優っている。チューリップ賞ではアパパネを破り、先行馬で決着した桜花賞でも直線で外に持ち出す手間がありながら0.2秒差の4着まで追い込んできた。先行して失速したオークス(17着)は本来の脚質とは違う走りだったので参考外と考えてもいいだろう。
問題は、京都の内回り2000mがこの馬向きのコースかどうかという点。
秋華賞に限って言えば、4コーナー10番手以降の馬でも馬券に絡んでいるが、基本的には息の入れやすい先行馬が有利のコース。内枠に入ったこともあり、直線でどれだけ馬群を捌けるか。四位騎手の騎乗がポイントになるかもしれない。

前哨戦のローズSを制したアニメイトバイオ
『ローズS・復習』にも書いたように、一番の勝因は後藤騎手の好騎乗だったが、それにしても見事な瞬発力だった。京王杯2歳S2着やオークス4着の走りも参考にすれば、溜めればキレる馬であることは間違いないだろう。
ローズSが先行馬総崩れのレースだっただけに、展開に恵まれた勝利という声も上がっているようだが、元値は“阪神JFの2着馬”。能力的にも軽視はできないはずだ。
ただし、状態面に関しては若干の不安がある。
前走は休み明けでも増減ゼロの馬体重。完璧な仕上がりだったと考えれば、上積みに疑問が残るし、反動にも注意が必要だ。今回、追い切り後の計測でも体重に変動なし。調教内容も軽く、馬体が薄くなったという専門家の意見もある。直前の気配に注意が必要だろう。

ローズS2着のワイルドラズベリー
道中は後方で我慢して、メンバー最速の上がりで大外から伸びてきた。折り合いに課題のあった馬だけに、“本番につながる結果”という評価を得たことにも納得できる。春の実績を考えれば、一線級との力差を縮める成長を見せたレースとも言えるだろう。
今回は実績〈2.1.0.0〉と得意の京都コース。白百合Sや前走のように脚を溜める競馬ができれば、一気に突っ込んでくる可能性も大きい。
問題は枠順(8枠17番)。
折り合いに難のある馬にとって、前に壁を作りにくい外枠は掛かりやすくなるため不利。さらに、このレースのようにスタンド前から発走する場合、観客側の馬はテンションが上がりやすいとも言われている(この点は7枠15番のアパパネにとっても不安要素になるかもしれない)。
道中、どのようなポジションでレースを運び、直線でどのようなコース取りをするか。池添騎手の作戦に注目したい。

ローズS3着のエーシンリターンズ
距離の長かったオークスを除けば、春先から常に結果を残している。いわゆる“レース巧者”と呼べる馬だろう。
前走は後方で折り合いをつけるレースに徹したが、好位から抜け出す競馬もできる馬。京都の内回りコースも無難にこなせる器用さを持ち合わせていそうだ。
この馬の場合、馬券には絡むものの、勝ち切るだけの“ひと押し”が足りない。混戦で浮上してくるタイプといった印象だ。人気よりも着順が上になるということは、有力馬が脱落しているためであり、逆に言えば、有力馬がその通りの結果を残せば、出番のない馬という受け取り方もできる。
戦績だけを見れば、安定感のある馬のようにも見えるが、この馬の取捨に関しては、人気馬が力を発揮できないという推理が前提になるかもしれない。

オークスからぶっつけでの出走になるサンテミリオン
これまでの成績は、オークス勝ちも含めて〈4.0.1.0〉。実力上位であることは言うまでもない。
とはいえ、問題はやはり、休み明けでGⅠというローテーションだろう。
過去10年で、オークスからぶっつけ本番で秋華賞を制した馬には、テイエムオーシャンとカワカミプリンセスの2頭がいるが、サンテミリオンも同等に扱うことができるかどうか。アパパネをはじめ、他の有力馬を相手に、底力だけで勝てるレースなのかといった判断が必要になりそうだ。
テイエム、カワカミとの大きな違いは関東馬であること。事前に栗東に入厩しているわけではないので、直前の長距離輸送をクリアしなければならない。休み明けよりもむしろこのことの方が気になるのだが・・・。
買い目を絞るにあたっては、最も取捨選択の難しい馬かもしれない。

今回のレース、展開のカギを握るとも思えるのがアグネスワルツ
前走(ローズS)は番手に控える競馬をしたが、まったくいいところがなく7着に敗退。本番を見据えた上で、あえて控えたのかもしれないが、『復習』にも書いた通り、個人的には「ハナを切るのがベスト」のように思える。
その意味で、今回、同型のトゥニーポートとスマートシルエットが抽選除外になったことは大きい。陣営も示唆しているように、思い切った逃げを見せてくれるのではないだろうか。当然、粘り込みも十分に考えられる。
もっとも、結果を出すためには、春の状態に戻っていることが前提だ。
前走は休養前よりプラス12キロでの出走だったが、今回の調教後の計測ではさらにプラス16キロ。1週前に坂路で自己ベストの時計をマークしていることから、状態面は良化しているとの見方もされているが、体重増をそのまま成長分と考えていいのだろうか。1走叩いた上積みがあり順調に仕上がっていれば、巻き返しがあってもおかしくない馬だが、直前の状態には注意する必要があるだろう。

アグネスワルツ同様、ローズSで人気を裏切ったオウケンサクラ
陣営も「使い込んで良くなるタイプ」と認めているだけに、1走叩いた今回は変わってくるだろう。前走時には序盤からハミを噛んで力んだということで、今回はハミ吊りを着用しないとのこと。実は、この馬具の変更は春と同じ状態に戻すことであり、前走がそれまでと違った工夫をしていたというのが事実のようだ。となれば、変わり身の可能性もさらに大きいと考えてもいいかもしれない。
この馬も状態面がカギだろう。
春先の使い詰めによる疲労が休養でどこまで回復したのか。前走の走りを見ると、完全にリフレッシュされたとは思えない部分もあるのだが・・・。
アグネスワルツもオウケンサクラも巻き返しが期待できる馬ではあるが、前走が“差し馬向きの展開”という理由だけでは納得できない負け方にも見えたので、レース直前の状態面をチェックした上で判断した方がいいかもしれない。

有力馬に割って入る可能性のある馬はいるだろうか。
1枠に入った2頭、レディアルバローザベストクルーズは、春のクラシックトライアルでの好走歴(ベストクルーズには阪神JF3着の実績)があるものの、1400~1600mに良績が集中していることからもわかるように、距離が課題になりそうだ。内枠を利して脚を溜める競馬ができれば、インから伸びてくる可能性もないとは言えないが・・・。
むしろ、有力馬と対戦していない別路線組の方が面白い存在かもしれない。
まず、トライアルの紫苑Sを勝ったディアアレトゥーサ
データでは紫苑S組は秋華賞で結果を残していないが、今年は時計的にも水準が高いという評価もある。夏場に古馬相手に連対を続け、“上がり馬”としての魅力も十分だ。
4走前にフローラSを取り消しているが、東京実績のある馬なので、出走していればオークスの権利を取れていた可能性もある。仮にフローラSでサンテミリオンと好勝負を演じていれば、評価はまったく変わっていただろう。フラワーCでは同世代相手に6着に敗れているがものの、夏場の実戦で鍛えられたことが大きなプラスになっていれば、好走を期待できるかもしれない。
もう1頭あげるならば、レインボーダリア
こちらは北海道シリーズで力を付けてきた“上がり馬”。札幌で3戦走った上に中1週で関西遠征というのは厳しい条件に違いないが、他馬とはまったく異なる臨戦過程というのが逆に不気味でもある。



■毎日王冠・復習

1着・アリゼオ、2着・エイシンアポロン。
GⅡ・毎日王冠は3歳馬のワンツーで決着した。

レースはシルポートが先手を奪い、1000m通過が58秒9。予想していた通り、平均的な緩みのないペースとなった。
勝ったアリゼオは中団のインで我慢の競馬。「行き脚がつかなかったので無理に出さなかった」(福永騎手)とのことだが、向正面では掛かり気味の仕草を見せたものの、3コーナー過ぎからはリズムよく脚を溜める走り。最後は内をすくうような形でエイシンアポロンをハナ差交わした。
はじめから“控える競馬”を試みようとしたわけではなかったようだが、前へ行かなくても結果を残せたことは大収穫。課題だった折り合い面での成長がうかがえる内容と評価していいだろう。
福永騎手は「逃げで勝ったこともあるし、馬が若いので脚質を決めつけない方がいい」とコメント。流れに応じて自在性のある走りができるようになるまでには、まだまだ経験を積む必要があるだろうが、今後が楽しみになったことは事実。さらなる成長を期待したい。

2着のエイシンアポロンは好スタートから先団での競馬。休養効果のせいか見るからに素軽い走り。距離がどうかと思っていたが、弥生賞の時のように内々をロスなく回り、最後まで脚色が鈍らなかった。
岡田調教師は「前々で競馬をした方がいいことがわかったのは収穫」とコメント。流れに乗ることを重視して、差し脚質にこだわらなかったことも好走の一因と考えていいだろう。
「惜しい」と思ったのは、直線で逃げるシルポートに馬体を併せにいったこと。シルポートが失速したために、結果として1頭抜け出す形になり、アリゼオの目標になってしまったようだ。
蛯名騎手は「2000mまではこなせる」とコメントしているが、スピードの乗り方を見るとやはり“マイル向き”かも。距離が延びた場合は枠順に注意。皐月賞の時のように、外目の枠から外々を回らされて距離損のうまれる展開になると厳しいように思える。
アリゼオと比較すると、現時点ではこの馬の方が完成度が高い印象。古馬混合のマイル重賞ならば、わりと早い段階で結果を出してくれるかもしれない。

3着はGⅡ3勝の実績を持つネヴァブション。
『予習』で書いたように、最内枠をいかして先行するかと思っていたが、意外にも後方待機策。長距離の先行馬だけに、1800mではスタート直後のスピードについていけなかったのかもしれない。
とはいえ、直線では最内に入って上がり34秒4の追い込み。見事な伸び脚を見せてくれた。
休み明け、距離不足といった不利な条件で、しかも本来の競馬と違う展開になりながらも馬券圏内に入ってきたのは、やはり「格と実績がモノを言った」と見るべきだろう(適鞍ではない条件で好走した反動が若干不安ではあるが・・・)。

1~5番人気馬が馬券に絡めなかったために、配当的には波乱となった一戦だが、「人気薄の激走」というよりも「上位人気馬が揃って凡走」という印象の方が強い。アリゼオとエイシンアポロンの成長は認めるにしても、「力でねじ伏せたレース」とまでは言えないように思える。当然ながら、人気馬の敗因を検証する必要があるだろう。

1番人気のペルーサはダービーに続いて痛恨の出遅れ。最後はメンバー最速の脚(34秒3)で追い上げてきたものの、勝ち馬に0.5秒差をつけられ掲示板に載るのがやっとだった。
評価は2つに分かれるだろう。
「ゲートさえまともに出ていれば勝ち負けだった」という評価と「出遅れがなかったとしても上位にこれたかどうか」という評価。後者については、「ゲートの出も含めてその馬の強さと考える」「仮に出遅れても結果を出すのが強い馬」という意見も含まれる。
『予習』を読んだ方はおわかりだと思うが、当ブログはペルーサの強さに関しては懐疑的である。潜在的な能力は評価できるにしても、“常に力を発揮できる”という意味での強さについては疑問を持っていた。
正直なところ、個人的には、今回出走してきた3頭の3歳馬の中で、もっとも評価していなかったのがペルーサだった(その一方で、強い競馬を見せてくれることをもっとも期待していた馬でもあるのだが・・・)。アリゼオとエイシンアポロンには、重賞戦線でローズキングダムやヴィクトワールピサと戦って揉まれてきた“経験値”という強味があるからである。
今回のレースで「さすがデビューから4連勝しただけのことはある」と思わせてくれる部分があれば、見方も変わっただろう。しかし、残念ながら、それは次走への持ち越しになったようだ。多くの競馬ファンが期待している逸材だけに、レースでも力を発揮できるよう、素質を開花させてほしい。

唯一のGⅠ馬・ショウワモダンは9着に惨敗。
一気の頂点まで昇りつめた反動と言ってしまえばそれまでだが、春のピーク時の出来には戻っていなかったようだ。杉浦調教師も後藤騎手もそのあたりは認めている。
2年ぶりに休養をとったことからもわかるように、元来、使われて使われて良くなるタイプ。次走についても、多少は変わってくるだろうが、一変まではどうだろうか。
休み明けで59キロは厳しい条件には違いなかったが、得意の重馬場(発表は稍重)で見せ場のひとつもなかったことは、さすがに“負け過ぎ”の感がある。

逃げたシルポートは注文通りの競馬に持ち込めたが、残り2Fで力尽きた。
1000m通過が58秒9というタイムは、2着に入ったエプソムCの時と同じ。決して無理なペースではない。酒井騎手は「まだ良化途上なのかもしれない」とコメントしているが、この馬もショウワモダンと同じくピークのあとに休養に入った馬。1走叩いただけでは調子が戻らなかったかもしれない。
あるいは、前走で距離の長いオールカマーを走って、中1週で再度関東遠征というローテーションが厳しかったのか。
それにしても・・・、この馬はなぜ内ラチ沿いを走らなかったのだろうか。1~3着馬はいずれも空いたインを突いた馬。エプソムCの時もキャプテンベガに潜り込まれたが(もっともあの時は内が荒れていたが)、もしかしたら、クセのある走りをする馬なのかもしれない。

スマイルジャックとアドマイヤメジャーは、シルポートをマークする形で先行策をとったが、結果的に、前へ行った分だけ脚を溜められず末脚が鈍ったように思える。
スマイルジャックの三浦騎手は「1800mよりマイルがベスト」とコメント。マイル戦の速い流れで後方で脚を溜める競馬の方が向いているようだ。もっとも、折り合いに関しては不安を見せなかったレース。気性的に大人になった印象もある。
アドマイヤメジャーは悪い馬場がこたえたようだが、重賞戦線で活躍するにはもう少し経験を積んだ方がいいかもしれない。まだまだ迫力不足の感があった。




■毎日王冠・結果

2010年10月10日 4回東京2日11R
第61回 毎日王冠(GⅡ)
芝・1800m 晴・やや重

 1着 アリゼオ        福永    1.46.4
 2着 エイシンアポロン   蛯名     ハナ
 3着 ネヴァブション     田中勝   1+1/2
単勝 4  1580円(6番人気)
馬連 3-4 7680円  馬単 4→3 15970円
3連複 1-3-4 40990円  3連単 4→3→1 315200円



■毎日王冠・予習

秋の東京開催、開幕週に行われるGⅡ・毎日王冠。
10頭立ての少頭数ではあるが、GⅠの前哨戦という意味からも注目の一戦である。

3連勝でGⅠ・安田記念を制したショウワモダン
6歳春にして“本格化”。その裏付けは、2走前と前走(安田記念)で時計勝負をクリアした点にある。さらに、差し脚に転じて結果を出せたことも、ここ2戦での大きな収穫。流れに対応できる走りを身につけたと評価していいだろう。
東京芝は7戦して4勝の実績。今回と同条件の1800m戦においては、2走前のメイSで今回と同じ59キロを背負って2着馬(シルポート)に0.3秒差をつけて快勝している。土曜から降り続く雨で馬場が悪くようならば、元来の“道悪巧者”ぶりを存分に発揮できそうだ。
問題は仕上がり。
鉄砲実績は〈2.1.0.2〉と決して悪い数字ではないが、今回は目標を先に置いた使い出しになるはず。陣営は天皇賞・秋を視野に入れているとのことだが、実績のない2000mのレースを目標にしているならば、なおさら“本番を想定した試走”になるかもしれない。
3ヶ月以上間隔が空くのは2年ぶりであり、連勝で一気に頂点まで昇り詰めた後の休養だったことから、どこまでピーク時の状態に戻っているかが気になるところだ。
別定GⅡにGⅠ馬が出走してくれば、休み明けでもそれ相当の結果を残すことが多い。しかし、ショウワモダンの場合、GⅠ出走経験は安田記念のみ。昨年の毎日王冠1・2着馬=カンパニー・ウオッカのように、GⅠで常に上位にくるほどの経験・実績を積んでいるわけではない。そのあたり、GⅠ馬としての“格”をどう評価すべきか。この馬の底力が試されるレースと言えるかもしれない。

今年の毎日王冠は3歳馬の参戦が話題を呼んでいる。
中でも、ダービーで2番人気(6着)に支持されたペルーサは注目の1頭。
ダービーは出遅れが響いたうえ、超スローの流れで馬群が固まったために外を回って追い上げる不利な展開。それでも0.5秒差の6着まで食い込んできたのだから、この馬の能力の高さは示したという見方もできる。
秋の目標は3歳クラシックの菊花賞ではなく天皇賞・秋。となれば、初の古馬混合戦でそれなりの結果を出しておきたいところだろう。
この馬に関しては、これまでのレース経験をどう判断するかがポイントかもしれない。言い換えれば、ペルーサの強さをどのように評価するかということである。
デビューから4連勝という実績は、たしかに“偉業”には違いないが、ダービーという大目標から逆算したローテーションだからこそ成り立ったとも考えられる。もし仮に、陣営が極度に嫌った“馬場の荒れた中山のレース”に出走していたら、どのような結果になっていただろうか。
当ブログでは、『ダービー・予習』の中で、ペルーサについて「(全馬が目イチの仕上げで臨む)皐月賞を走っていないことが“経験値”という点で劣る」という指摘をした。藤沢和厩舎ならではの“英才教育”を否定するつもりはまったくないが、春のクラシック戦線で“揉まれながら強くなった馬”とは言えないだろう。
まして今回は、初の1800m戦であり、雨が降り続けば初の道悪レースという条件にもなる。圧倒的な強さを見せつけて天皇賞・秋に駒を進める可能性も十分あるだろうが、一方で、単勝1番人気(前日売り)に支持されるだけの信頼性があるかといえば、少々疑問である。

皐月賞トライアルのスプリングSを勝ったアリゼオ
今回のレースと同じ東京・芝・1800mで行われた共同通信杯では1番人気に支持された(着差なし3着)。前走のダービーは13着に敗れたが、陣営によれば「距離が長かった」とのこと。実績のある1800mならば、見直せる要素はあるはずだ。
この馬の課題は気性面。
春先までは折り合いに苦労するレースが目立ち、スプリングSも“気分良く行かせる”ことを重視した横山典騎手の好騎乗によるものだった(逃げ切り勝ち)。「ひと夏越して落ち着きが出た」という陣営のコメントはあるものの、休み明けは特に馬が掛かりやすくなる傾向が強い。東京・芝・1800mは直線部分が多いので、なおさら脚を溜めるのが難しい。このあたりは、テン乗りの福永騎手の乗り方に注目したい。
折り合いに不安があるので、脚を溜める上がりの勝負よりも先行粘り込みの方が持ち味を発揮できそうなタイプ。その意味では、道悪は歓迎かもしれない。

昨年暮れの朝日杯で2着に入ったエイシンアポロン
弥生賞では内をロスなく回れたために2000mの距離でも2着に健闘したが、基本的にはマイラーの印象が強い。前走のNHKマイルCは9着。これは皐月賞からのきついローテーションが影響したようだ。夏場を休んでリフレッシュした今回、どのような走りを見せてくれるか。3歳時の重賞勝ちがないために、ペルーサ、アリゼオよりも斤量が1キロ軽いのは有利だろう。
問題は距離。
1800mでは1勝しているが、これは小回りの小倉コースでの実績。コーナー通過が2回の東京・芝・1800mは地力勝負になりやすく、ごまかしはきかない。
陣営は「このレースの結果によって秋のローテーションを決定する」とコメント。距離をこなせれば秋天を含めた中距離路線、ダメならばマイル路線という考え方であるのならば、“実験的な試走”の要素も強い。軽視はできないが、他馬と比較すれば不安材料が目立つように思える。

休み明け2走目となる逃げ馬のシルポート
前走のオールカマーは距離が長く、このレースへの叩き台だったことは明確。1800mでは〈3.4.0.1〉の実績があり、コーナー2回のコース形態に限れば〈3.3.0.0〉とすべて連対している。重馬場は〈2.0.0.0〉。スローに落とす逃げではなく、緩みのないペースを作る馬なので、先手を取れば差し馬の追撃を振り切れる渋太さを持っている。仮に、人気どころの差し馬たちが“次を見据えたレース”に徹して、末脚を温存するような競馬をするならば、マイペースの逃げ切りがあっても驚けないだろう。
あとは、他の先行馬との兼ね合い。
開幕週で重馬場という条件になれば、前に行ける脚のある馬はポジションを取りにくるはず。休み明けのアリゼオが掛かり気味に競り合ってきた場合や、最内枠のネヴァブションが出し抜けにハナを奪おうとした場合は要注意。この馬にとってベストの条件と思えるだけに、自分のペースに持ち込めるかどうかがカギになるはずだ。

前走、安田記念で3着に入ったスマイルジャック
“対・ショウワモダン”という捉え方をするならば、同斤量から2キロ差がついた今回は有利と言えるだろう。
もっとも、安田記念の3着は、恵まれた結果という感もある。出遅れで後方からの競馬になったことで前に壁ができて折り合いがつき、直線で空いたインに潜り込めたからだ。
今回は10頭立ての少頭数。11頭立てだった昨年のレースでも折り合いに苦労していたように、前に壁を作りにくい状況では行きたがる気性が災いする。
東京芝実績は〈0.2.3.5〉だが、古馬になってからは〈0.0.2.5〉。ダービー2着の実績があるために、東京を得意としているような印象を受けるが、実際はそれほどでもないと考えた方が無難かもしれない。
ただし、この馬に好走の可能性がないというわけではない。重馬場になることによって、道中の折り合いが重要となる極端な上がり勝負にならないケースも考えられるからだ。実際、陣営も「雨が降った方がいいかも」とコメントしている。ある程度前の位置でレースをすれば、これまでとは違った競馬で活路を見出す余地もある。

前走、朝日CCで3着に入ったアドマイヤメジャー
3歳の夏には3連勝、セントライト記念では1番人気に支持され“素質馬”と評されていた。秋には活躍できなかったものの、今年は休み明けを連勝して前走重賞初挑戦で3着。前が残る展開ながら、メンバー最速の上がりで追い込んできた内容が評価されている。順調に使われてきた強味と4歳秋の成長度も強調材料と言えるだろう。自在性のある脚質なので、前々での競馬もできるはずだ。
もっとも、実績面ではまだまだ格下感が否めない。
2・3走前の連勝にしても、1600万条件での降級によるものであるし、前走3着も9頭立てで相手関係も楽だった。むしろ、初の東京コース、初の1800m、セントライト記念以来の2度目の関東遠征といった不安要素も目立つ。今後、重賞戦線で戦っていけるかどうかの試金石になる一戦だろう。

一般的なセオリーでいえば、開幕週でしかも重馬場という条件では前へ行く馬が有利。加えて、別定GⅡは“格”がモノを言う部分が大きい。となれば、最内枠で先行力がある実績馬のネヴァブションも侮れない。
この馬にしてみれば距離は短いし、陣営のコメントも「叩き良化型なので今回は割引」といたって弱気ではあるが、差し馬が不発に終わるという展開に沿えば無視できない1頭だ。

函館記念を制したマイネルスターリー
前走の札幌記念は出遅れのため後方からの競馬になったが、前に行ける脚もあるので要注意。ただし、道中マクリ気味にポジションを上げていくレースぶりを見ると、コーナーの多い小回りコース向きのようにも思えるが・・・。

個人的には、前売り最低人気のトウショウウェイヴが面白そうにも思える。
重賞実績がないため、別定GⅡはたしかに敷居が高い。鞍上に中舘騎手ではなく吉田豊騎手を配してきた以上、前に行く競馬は考えにくいわけだから、展開的にも不向きと考えるのが普通だろう。
しかし、少頭数のレースでは、差し馬も馬場のいいところを通って食い込んでくる可能性がある。昨年のこのレース(11頭立て)で3着に入ったハイアーゲームはその典型だ。
トウショウウェイヴの東京芝実績は〈6.4.1.4〉。不安材料が多くてもこの数字は無視できない。問題は馬場状態であるが、重実績は〈0.1.0.2〉と数字は悪いが、東京コースに限れば、稍重で2着、重で2着という結果。展開次第の面があり、後方ままで終わるかもしれないが、一応マークしておきたい。


京都で行われるGⅡ・京都大賞典も興味深い一戦。
久々のオウケンブルースリがどのような走りを見せてくれるか。昨年は休み明けでも1着となったが、ジャパンカップに出走するためには勝たなくてはならない一戦だった。今年は出走可能なこともあって余裕残しの仕上げという声も多いが・・・。
春のレースは不本意な結果で終わったフォゲッタブルにも注目。昨年秋の出来にどこまで戻っているかがポイントだろう。
順調度から言えば、メイショウベルーガとプロヴィナージュの牝馬2頭。ヨーイドンの競馬になればメイショウベルーガだが、早め先頭のプロヴィナージュが一気に押し切る可能性もある。
前走の新潟記念(6着)でケチをつけた感のあるスマートギアだが、昨年の2着馬。オウケン、ベルーガと併せて追い込んでくるようなら、馬券圏内も見えてくる。
個人的に気になるのはベストメンバー。ケガのために休み休みでしか使えなかった馬が、今回は中3週。3歳時には将来を期待されていた馬だけに、その走りに注目したい。



■スプリンターズS・復習

秋のGⅠ開幕戦・スプリンターズSを制したのは、香港馬のウルトラファンタジーだった。
「グリーンバーディーよりも実績面で見劣る」「来日初戦」「同型の日本馬との兼ね合い」などの理由から、10番人気(単勝29.3倍)の低評価に甘んじていたが、終わってみれば“楽な逃走劇”。最後はダッシャーゴーゴー(4着降着)がハナ差まで詰め寄ったものの、「いとも簡単に勝たれてしまった」というのが正直な感想だ。

ウルトラファンタジーの勝因は、難なく先手を取れたことに尽きるだろう。スピードの違いを見せつけるかのようなスタートダッシュで、いきなり2馬身以上の差。ペースダウンの際にはローレルゲレイロに頭ひとつリードを許したが、再びハナを奪い返すとそのまま直線へ。脱落する他の先行馬を尻目にゴールへ向けてさらに加速、そのまま後続を振り切った。
もっとも、ウルトラファンタジーの快足ぶりは評価するとしても、それ以上に残念に思えたのが“日本馬(特に先行馬)の不甲斐なさ”。スタートの速さについていけなかったヘッドライナー、一度は先頭に立ちながら主導権を奪えなかったローレルゲレイロ、好位で勝ち馬をマークしながら何もできずに後退したビービーガルダン。底力の違いがあるのかもしれないが、「みすみす逃がした」といった印象は拭えない。前半3Fの通過が33秒3という緩いペースだっただけになおさらである。

繰り上がりの2着はキンシャサノキセキ。
出遅れもあって外々を回らされる展開。4コーナーでは6番手までポジションを上げてきたが、大外にしか進路を取れず、0.2秒差まで詰め寄るのがやっとだった。着順だけを見れば無難な結果と言えるかもしれないが、春に続いてスプリント王を狙った馬としては物足りない内容だ。
四位騎手は「久々の分、道中で掛かるところがあった」とコメント。『予習』でふれたように、やはり取消の影響があったようだ。最後の伸びが今イチだったのもそのあたりが原因なのだろう。
GⅠ馬として、ぶっつけ本番でも“なんとか格好をつけた”レースかもしれないが、1回使ったことで本来の“鋭さ”が戻るかどうか。内を突いたダッシャーゴーゴー(3歳)、サンカルロ(4歳)の末脚が目立っていた分、7歳というこの馬の年齢が若干気になる走りでもあった。

3着は直線で不利を受けたサンカルロ。
ラチ沿いをロスなく進んで最内を突くという理想的なレース運び。それだけに、追い出しと同時に前をカットされたのは痛かった。スムーズならば際どい勝負になっていただろう。もちろん、体勢を立て直して再び伸びてきた勝負根性は大いに評価できる。
1200m戦はまだ2回目だが、いずれもGⅠで好勝負。脚質的に展開に左右される部分もあるが、GⅢあたりなら一気に突き抜けてもおかしくないキレ味だろう。まだまだ成長が見込める4歳馬。かつてのデュランダルのように、“自分の競馬をすれば勝ち負けできる馬”になれるようならば、この先が楽しみだ。

進路妨害のために4着降着となったダッシャーゴーゴー。
セントウルSのレースぶり(自分から動いて早め先頭)が印象的であり、1枠2番という枠順もあって、好位につける競馬をするかと思っていたが、道中は後方から。直線では内に切れ込んで、メンバー最速の33秒5の上がりでウルトラファンタジーを追い詰めた。正直、それほどキレるというイメージがなかったので、今回の走りは驚きである。
GⅠの常連が軒並み“らしくない走り”をした中での好走だったため、能力で古馬をねじ伏せたという強烈なイメージにはつながりにくいが、それでも3歳にしてこれだけの結果を出したことは大いに評価できるはず。粗削りな部分も多い点についても、「まだまだ奥がありそうな3歳馬」と前向きに考えていいだろう。
今後、この馬がどのようなレースを見せてくれるのか。脚質や勝ちパターンがどのように決定されていくのか。成長過程そのものが楽しみな1頭だ。

5着は4歳牝馬のワンカラット。
道中は5~6番手の位置。「いつ抜け出してくるか」と注目していたが、今回はサマーシリーズで見せてくれたような“一気の加速”はなかった。
藤岡佑騎手は「GⅠで1分7秒台の決着になった時にはもう一段ギアが必要」とコメントしたが、まさにその通りだろう。『予習』の中でも「時計勝負になった場合」を不安材料として指摘したが、時計に対応できるというのは、レースの流れが速くなるのに比例して加速力も上がるということ。今回のワンカラットは、レースの流れに乗ることはできても、そこから加速するまでには至らなかったようだ。
もっとも、GⅠの流れを経験できたことは大きな収穫。これをステップにしてさらなる飛躍を期待したい。

1番人気のグリーンバーディーは7着。
『予習』では「脚質的に中山・芝・1200m向きかどうか」「スタート後のポジションに注目」といった内容を述べたが、懸念していた通り、後方からの競馬になり前を捌けないままレースを終えた。
展開が不向きだった面もあるし、枠順もスムーズに運べる外寄りの方がよかったかもしれない。ただ、今回の1番人気については、競馬ファンがこの馬の強さを買い被り過ぎたようにも思える。セントウルSのレースぶりはたしかに強いものだった。しかし、コースが替わり、メンバーが強化されれば、同じ競馬をしても好走できるとは限らない。「好位につけて前走と同じ脚が使えれば」という条件付きの有力馬だったのではないだろうか。

4番人気のビービーガルダンは10着。
安藤勝騎手は「内に包まれる形になって自分の競馬ができなかった」とコメント。外枠からスムーズに行った方が結果が出ていることは、『予習』の中でもふれたが、それにしても絶好と思えるポジションにいながらズルズルと後退した走りはどうしたものか。インに入ると力を発揮できないのは事実としても、馬自身に漲るものが欠けていたようにも思える。

ビービーガルダンと同じく釈然としない走りを見せたローレルゲレイロ(14着)。
先にも述べたように、一度はウルトラファンタジーより前に出ながら主導権を握ることができなかった。
藤田騎手は「ゲートを出ても前へ行こうとする感じがなかった」とコメント。状態面が万全でなかったとしか思えない発言である。あるいは、『予習』で指摘したように、今年の上半期の使われ方がなんらかの影響をおよぼしていたのかもしれない。

今回の結果を受けて、日本スプリント界のレベルの低さを指摘する声も出ている。たしかに、日本開催のスプリントGⅠで自国の馬がアッサリ負けるのは、正直残念でならない。
もっとも、救いがないわけではない。3歳馬・4歳馬がGⅠの掲示板に名を連ねたことは、今後に向けて明るい兆しと受け止めることもできる。いずれにしても、強いスプリンターの出現を心待ちにしたい。



■スプリンターズS・結果

2010年10月3日 4回中山8日11R
第44回 スプリンターズS(GⅠ)
芝・1200m 晴・良

 1着 ウルトラファンタジー   ライ       1.07.4
 2着 キンシャサノキセキ    四位       ハナ+1+1/4
 3着 サンカルロ          吉田豊      2/4

単勝 7  2930円(10番人気)
馬連 7-14 9900円  馬単 7→14 22400円
3連複 3-7-14 50860円  3連単 7→14→3 358410円


■スプリンターズS・予習

いよいよ秋のGⅠシリーズが開幕!
初戦となるスプリンターズSには、フルゲート16頭が出走。秋のスプリント王が決定する。

前日売り1番人気に支持されているのは、香港馬のグリーンバーディー
前走のセントウルSは2着。勝ったダッシャーゴーゴーにはクビ差およばなかったが、最内枠で道中は動けず、実質、直線残り100mだけの競馬。メンバー最速の33秒4の上がりの脚は圧巻で、むしろこの馬の強さが際立って見えたレースでもあった。
「4ヶ月の休み明けで59キロの斤量」から「叩き2走目で57キロ」と、条件が断然有利になる今回、優勝候補の筆頭と見なされているのは、ある意味妥当かもしれない。
もっとも、セントウルSのパフォーマンス=後方からの末脚勝負が、中山・芝・1200mに向いているかというと、必ずしもそうとは言い切れない。基本的には“先行馬有利”のコースだからだ。
『セントウルS・復習』の中でも書いたように、スプリンターズSを制した外国馬(2005年のサイレントウィットネス、2006年のテイクオーバーターゲット)はいずれも逃げ・先行タイプだった。グリーンバーディーの来日前のレースを確認すると、好位からの競馬もしているが、少頭数のレースで後方の位置取りが目立つ。このあたりをどう判断すべきだろうか。
もちろん、「前走は枠順のせいもあって後方からのレースになった」という見方もできる。しかし、だとすれば、「前走はこの馬本来の走りをしていない」ということでもある。つまり、今回のスプリンターズSに関しては、グリーンバーディーがどのようなポジションからどのような競馬をするかは“未知数”ということ。香港GⅠ馬の“格と能力の違い”を見せつけた前走ではあったが、“走りのスタイル”に関しては参考にならないようにも思える(陣営は「臨機応変なレースができる馬」とコメントしているが・・・)。
3枠6番は“好位に付けて直線で突きはなす競馬”をする馬にとっては絶好の枠。グリーンバーディーが一体どのような競馬を見せてくれるのか。注目はスタート後のポジションだろう。

春のGⅠ・高松宮記念を制したキンシャサノキセキ
昨年秋のスワンSから4連勝中という戦績が示す通り、短距離馬としての充実期を迎えた感がある。
昨年のスプリンターズSは、道中で後ろの馬に乗りかかれる不利を受けて大敗したが、一昨年は2着。中山・芝・1200mには〈2.1.0.2〉の実績を持っている。仮に、今回のレースを「香港馬vs日本馬」という構図で考えるならば、やはりこの馬を日本勢の大将格と見なすべきだろう。
問題は、出走予定だったセントウルSが取消になり、休み明けのぶっつけ本番になったこと。
取消理由となった疝痛については、翌週からすぐに調教を行えたように軽い症状だったのかもしれないが、予定していたローテーションが狂ったことは事実。陣営は「前哨戦を使えなかった影響はない」とコメントしているが、たとえ“万全”であっても、1走使っていた方が“より万全”であったに違いない。
7枠14番という枠順も考え方によっては微妙。位置取りに関係なく競馬のできる馬ではあるが、どちらかと言えば、好位から抜け出すレースを得意とする馬。先行馬が揃った今回のレースで馬群全体の流れが速くなった場合、後方から外々を回らされる展開になることも考えられる。常に33秒台の脚を使えるといったタイプではないだけに、大外一気の競馬はどうだろうか。今回は、いかにレースの流れに乗れるかがカギであり、だからこそ、「休み明けのぶっつけ」の影響(例えば、掛かり気味になって道中で消耗するなど)が多少なりとも気になる。

昨年、春・秋のスプリント王に輝いたローレルゲレイロ
前走のキーンランドCは、スタートで痛恨の出遅れ。休養明けで58キロの斤量の影響もあって8着に敗れた。やはり、ハナを切ってマイペースの逃げに持ち込むのが、この馬にとってベストだろう。
昨年のスプリンターズS勝ちはセントウルS14着の巻き返し。そのため、1走叩けば変わるというイメージがあり、その点を強く押す評論家も少なくない。しかし、今年の場合、昨年とは大きな違いがある。それは、年明けから1戦しか日本の芝を走っていないということ。
昨年の春は高松宮記念を目標にしていたが、今年の目標はドバイであり、そのために(オールウエザーコースの対策として)ダートのフェブラリーSにも出走している。
スプリンターズSを基準に考えれば、休み明けに1走使って本番という、いたって順当な使われ方ではあるが、上半期はこれまでに経験したことのないローテーションだった。このあたりの影響はどうなのだろうか。
加えて今回は、ヘッドライナーやウルトラファンタジーといったハナを主張したい馬が出走する。昨年のように、スンナリとマイペースに持ち込むことができるだろうか。能力の高さは否定できないが、今回は状態面と展開面が課題になるレースになりそうだ。

スプリント界の新星という呼び声も高い、4歳牝馬のワンカラット
函館SS、キーンランドCを連勝し、サマースプリント王の座を獲得。レースの内容も優秀で、ほとんど持ったままの状態で直線で先頭に立ち、そこから後続を突き離す強い競馬。3歳時のマイル戦では末脚のキレを武器とする馬のようにも思えたが、距離短縮によって正攻法の走りの素質を開花させたようだ。勢いという点では最も魅力的な馬であり、今回期待したい1頭であることは間違いない。
課題と思われるのは、時計勝負になった場合。
CBC賞3着は荒れた稍重馬場、北海道の2戦は重い洋芝。前3走は“時計がかかる”という条件下での好走だった。週中の雨で馬場が少々荒れたとはいえ、土曜日に行われた1000万条件の芝・1200mの勝ち時計は1分7秒9。このまま天気が保てば、レースは1分7秒台前半の勝負が見込めそうだ。北海道の2戦を見る限りでは、スピードで劣るようには思えないが、馬群全体の流れが速くなった時に同じような競馬ができるかどうか。ある意味、今後の試金石となる一戦。GⅠの大舞台でどのような走りを見せてくれるか、注目したい。

昨年の2着馬・ビービーガルダン
前走のキーンランドCは、最内枠のために道中包まれる展開になり力を出し切れなかったというのが一般的な見解のようだ。たしかに、この馬の場合、近走に限れば“真ん中よりも外の枠”の方が結果を出している。要は、スムーズな競馬できるかどうかがポイントなのだろう。
今回は3枠5番。陣営はもう少し外寄りが欲しかったようだが、外から被せられるような展開にならなければ、好位置をキープできる枠順とも思える。斤量減も加味すれば巻き返しも十分あり得るだろう。
気になるのは、枠順よりもローテーション。
『函館スプリントS・予習』の中でも触れたことだが、ビービーガルダンは夏の北海道シリーズを連勝してスプリンターズSへ駒を進めた(本格化と言われた)一昨年(3着)は別として、「休養→1走叩く→GⅠ本番」というのがこれまでのパターンだった。つまり、昨年のスプリンターズS(2着)や今年の高松宮記念(2着)の時よりも、今回は1走多く走っているのである。ローテーションというものは、陣営が馬の調子を判断して決めるものであるから、今回は「叩き3走目が本番」がベストなのかもしれないが、前走の馬体重がマイナス6キロと仕上がっていただけに、少々気になる材料だ。

セントウルSを制したダッシャーゴーゴー
人気の面では2着馬のグリーンバーディーに水を開けられているが、これはセントウルSのレベル自体が評価されていないからかもしれない。たしかに、時計も平凡で、メンバー的にも低調ではあった。今回はGⅠということで、相手も一気に強くなる。経験の少ない3歳馬にとっては厳しい戦いかもしれない。
ただし、前走の結果に価値がないということではない。「北九州記念は不利が原因で大敗した」ということを、レースによって証明してみせたし、自分から動いた積極的な競馬も十分評価できる。
「GⅠの敷居は高いだろう」というのは、「GⅠでは自分の競馬をさせてもらえないだろう」という意味だが、それではダッシャーゴーゴーにとっての“自分の競馬”とはどういうものだろうか。後方から伸びたCBC賞、マクり気味に進出したセントウルS。この馬の魅力は“自分の競馬”が完成していないところかもしれない。つまり、レースの流れに対応できれば、これまでになかった走りを見せてくれる可能性もあるということ。GⅠの壁に阻まれるかもしれないが、“もしかしたら”と思わせる要素も捨て難い。

春の高松宮記念で4着に入ったサンカルロ
前走の京成杯AHは5着。自身が休み明けの上に、前残りのレースだったことを考えれば、後方から差を詰めての0.2秒差は上々の内容だろう。1走叩いて本番は予定通り。初の1200m戦だった高松宮記念では0.1秒差。折り合いを気にしなくてすむこの距離は向いているのかもしれない。
問題は脚質。後方からの競馬では、どうしても展開に左右されやすい。春の阪急杯の時に見せたような中団からのレースがベストかもしれないが、逆に末脚のキレが鈍るような気もする。外に出すのか、あるいは、ラチ沿いをロスなく回ってインに切れ込むのか。このあたりは、馬の走りを熟知している主戦の吉田豊騎手の騎乗に注目したい。

今回のレースのポイントは、展開をどのように読むかだろう。
文中でも述べたように、ローレルゲレイロ、ヘッドライナー、ウルトラファンタジーといった“逃げたい馬”が揃った。これらの馬が競り合う形になるか、隊列を作る形になるかで結果も変わってくるはずだ。
前へ行った馬がそのまま残ると判断すれば、ヘッドライナー、ウルトラファンタジーの粘り込みにも注意が必要。当然、ローレルゲレイロも候補の1頭だろう。
逃げ馬が潰れて好位のグループが台頭する場合には、ワンカラット、ビービーガルダンが有力。位置取り次第ではキンシャサノキセキもこのグループに加わるだろうし、枠順を考えるとグリーンバーディー、ダッシャーゴーゴーも好位でレースをするかもしれない。
極端なペースになって差し・追込馬向きの流れになれば、サンカルロをはじめ、プレミアムボックス、マルカフェニックスといった末脚勝負の後方待機組にも出番がありそうだ。
穴候補としては、そうした展開に左右されない自在性のある馬を考えてみたい。
好位からの競馬が持ち味だが、後ろからでも33秒台の脚を使えるジェイケイセラヴィ。もう1頭あげるならば、昨年の4着馬でダートとはいえ近走の内容が優秀なアイルラヴァゲイン

まずは、GⅠ初戦にふさわしい熱戦を期待したい。




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安東裕章

Author:安東裕章
東京都出身。2007年11月に書籍『競馬のツボ』、2008年7月に『競馬のツボ2』、2009年7月に『競馬のツボ3』を発表(いずれも総和社刊)。

このたび、拙著『競馬のツボ』を刊行していただいた出版社・総和社様の勧めもあって、ブログを始めることにしました。
競馬における一番の楽しみは、レースについて考えること。つまり予想です。
このブログを書くことで、自分でも週末のレースに向けてイメージを膨らませる訓練になるかと思います。
競馬について考えることが好きな皆様。レース予想に疲れて気分転換をしたい時など、よろしければフラッと遊びに来てください。

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