FC2ブログ
■2010年10月

■スプリンターズS・復習

秋のGⅠ開幕戦・スプリンターズSを制したのは、香港馬のウルトラファンタジーだった。
「グリーンバーディーよりも実績面で見劣る」「来日初戦」「同型の日本馬との兼ね合い」などの理由から、10番人気(単勝29.3倍)の低評価に甘んじていたが、終わってみれば“楽な逃走劇”。最後はダッシャーゴーゴー(4着降着)がハナ差まで詰め寄ったものの、「いとも簡単に勝たれてしまった」というのが正直な感想だ。

ウルトラファンタジーの勝因は、難なく先手を取れたことに尽きるだろう。スピードの違いを見せつけるかのようなスタートダッシュで、いきなり2馬身以上の差。ペースダウンの際にはローレルゲレイロに頭ひとつリードを許したが、再びハナを奪い返すとそのまま直線へ。脱落する他の先行馬を尻目にゴールへ向けてさらに加速、そのまま後続を振り切った。
もっとも、ウルトラファンタジーの快足ぶりは評価するとしても、それ以上に残念に思えたのが“日本馬(特に先行馬)の不甲斐なさ”。スタートの速さについていけなかったヘッドライナー、一度は先頭に立ちながら主導権を奪えなかったローレルゲレイロ、好位で勝ち馬をマークしながら何もできずに後退したビービーガルダン。底力の違いがあるのかもしれないが、「みすみす逃がした」といった印象は拭えない。前半3Fの通過が33秒3という緩いペースだっただけになおさらである。

繰り上がりの2着はキンシャサノキセキ。
出遅れもあって外々を回らされる展開。4コーナーでは6番手までポジションを上げてきたが、大外にしか進路を取れず、0.2秒差まで詰め寄るのがやっとだった。着順だけを見れば無難な結果と言えるかもしれないが、春に続いてスプリント王を狙った馬としては物足りない内容だ。
四位騎手は「久々の分、道中で掛かるところがあった」とコメント。『予習』でふれたように、やはり取消の影響があったようだ。最後の伸びが今イチだったのもそのあたりが原因なのだろう。
GⅠ馬として、ぶっつけ本番でも“なんとか格好をつけた”レースかもしれないが、1回使ったことで本来の“鋭さ”が戻るかどうか。内を突いたダッシャーゴーゴー(3歳)、サンカルロ(4歳)の末脚が目立っていた分、7歳というこの馬の年齢が若干気になる走りでもあった。

3着は直線で不利を受けたサンカルロ。
ラチ沿いをロスなく進んで最内を突くという理想的なレース運び。それだけに、追い出しと同時に前をカットされたのは痛かった。スムーズならば際どい勝負になっていただろう。もちろん、体勢を立て直して再び伸びてきた勝負根性は大いに評価できる。
1200m戦はまだ2回目だが、いずれもGⅠで好勝負。脚質的に展開に左右される部分もあるが、GⅢあたりなら一気に突き抜けてもおかしくないキレ味だろう。まだまだ成長が見込める4歳馬。かつてのデュランダルのように、“自分の競馬をすれば勝ち負けできる馬”になれるようならば、この先が楽しみだ。

進路妨害のために4着降着となったダッシャーゴーゴー。
セントウルSのレースぶり(自分から動いて早め先頭)が印象的であり、1枠2番という枠順もあって、好位につける競馬をするかと思っていたが、道中は後方から。直線では内に切れ込んで、メンバー最速の33秒5の上がりでウルトラファンタジーを追い詰めた。正直、それほどキレるというイメージがなかったので、今回の走りは驚きである。
GⅠの常連が軒並み“らしくない走り”をした中での好走だったため、能力で古馬をねじ伏せたという強烈なイメージにはつながりにくいが、それでも3歳にしてこれだけの結果を出したことは大いに評価できるはず。粗削りな部分も多い点についても、「まだまだ奥がありそうな3歳馬」と前向きに考えていいだろう。
今後、この馬がどのようなレースを見せてくれるのか。脚質や勝ちパターンがどのように決定されていくのか。成長過程そのものが楽しみな1頭だ。

5着は4歳牝馬のワンカラット。
道中は5~6番手の位置。「いつ抜け出してくるか」と注目していたが、今回はサマーシリーズで見せてくれたような“一気の加速”はなかった。
藤岡佑騎手は「GⅠで1分7秒台の決着になった時にはもう一段ギアが必要」とコメントしたが、まさにその通りだろう。『予習』の中でも「時計勝負になった場合」を不安材料として指摘したが、時計に対応できるというのは、レースの流れが速くなるのに比例して加速力も上がるということ。今回のワンカラットは、レースの流れに乗ることはできても、そこから加速するまでには至らなかったようだ。
もっとも、GⅠの流れを経験できたことは大きな収穫。これをステップにしてさらなる飛躍を期待したい。

1番人気のグリーンバーディーは7着。
『予習』では「脚質的に中山・芝・1200m向きかどうか」「スタート後のポジションに注目」といった内容を述べたが、懸念していた通り、後方からの競馬になり前を捌けないままレースを終えた。
展開が不向きだった面もあるし、枠順もスムーズに運べる外寄りの方がよかったかもしれない。ただ、今回の1番人気については、競馬ファンがこの馬の強さを買い被り過ぎたようにも思える。セントウルSのレースぶりはたしかに強いものだった。しかし、コースが替わり、メンバーが強化されれば、同じ競馬をしても好走できるとは限らない。「好位につけて前走と同じ脚が使えれば」という条件付きの有力馬だったのではないだろうか。

4番人気のビービーガルダンは10着。
安藤勝騎手は「内に包まれる形になって自分の競馬ができなかった」とコメント。外枠からスムーズに行った方が結果が出ていることは、『予習』の中でもふれたが、それにしても絶好と思えるポジションにいながらズルズルと後退した走りはどうしたものか。インに入ると力を発揮できないのは事実としても、馬自身に漲るものが欠けていたようにも思える。

ビービーガルダンと同じく釈然としない走りを見せたローレルゲレイロ(14着)。
先にも述べたように、一度はウルトラファンタジーより前に出ながら主導権を握ることができなかった。
藤田騎手は「ゲートを出ても前へ行こうとする感じがなかった」とコメント。状態面が万全でなかったとしか思えない発言である。あるいは、『予習』で指摘したように、今年の上半期の使われ方がなんらかの影響をおよぼしていたのかもしれない。

今回の結果を受けて、日本スプリント界のレベルの低さを指摘する声も出ている。たしかに、日本開催のスプリントGⅠで自国の馬がアッサリ負けるのは、正直残念でならない。
もっとも、救いがないわけではない。3歳馬・4歳馬がGⅠの掲示板に名を連ねたことは、今後に向けて明るい兆しと受け止めることもできる。いずれにしても、強いスプリンターの出現を心待ちにしたい。



スポンサーサイト



■スプリンターズS・結果

2010年10月3日 4回中山8日11R
第44回 スプリンターズS(GⅠ)
芝・1200m 晴・良

 1着 ウルトラファンタジー   ライ       1.07.4
 2着 キンシャサノキセキ    四位       ハナ+1+1/4
 3着 サンカルロ          吉田豊      2/4

単勝 7  2930円(10番人気)
馬連 7-14 9900円  馬単 7→14 22400円
3連複 3-7-14 50860円  3連単 7→14→3 358410円


カレンダー

09 | 2010/10 | 11
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31 - - - - - -

カテゴリ

プロフィール

安東裕章

Author:安東裕章
東京都出身。2007年11月に書籍『競馬のツボ』、2008年7月に『競馬のツボ2』、2009年7月に『競馬のツボ3』を発表(いずれも総和社刊)。

このたび、拙著『競馬のツボ』を刊行していただいた出版社・総和社様の勧めもあって、ブログを始めることにしました。
競馬における一番の楽しみは、レースについて考えること。つまり予想です。
このブログを書くことで、自分でも週末のレースに向けてイメージを膨らませる訓練になるかと思います。
競馬について考えることが好きな皆様。レース予想に疲れて気分転換をしたい時など、よろしければフラッと遊びに来てください。

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QRコード