■2010年12月

■スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

■1年間ありがとうございました

今年も「競馬のツボ<ブログ版>」にお付き合いいただき、ありがとうございました。
仕事の関係で競馬に参加することができず、ブログを更新できない週もありましたが、終わってみれば「やっぱり競馬は奥が深くて面白いなあ~!」と思える1年でもありました。
来年もできる限りブログを続けていければ・・・と思っています。

それでは皆さま、良いお年をお迎えください。
これからも競馬を楽しんでいきましょう!!


安東 裕章


スポンサーサイト

■有馬記念・復習

2010年の有馬記念を制したのは3歳馬のヴィクトワールピサ。ブエナビスタの猛追をハナ差(わずか2cm!)凌いでグランプリホースの座に輝いた。

ヴィクトワールピサの勝因は“自分でレースを作った”ことだろう。言い換えれば、それはデムーロ騎手の“憎いばかりの”好騎乗によるものである。ポイントはふたつあった。
まず、向正面で果敢に動いたこと。
最初にポジションを上げていったのはルーラーシップだったが、それに続いたヴィクトワールピサは、ハナを奪うかのような勢いで一気に先頭を行くトーセンジョーダンに取り付いた。一瞬、「仕掛けが早いのでは?」と思わせたが、実はこれはデムーロ騎手の作戦。トーセンジョーダンにプレッシャーをかけることによって、馬群の流れを加速させるのが目的だったに違いない。
実際、レース序盤は1000m通過が62秒0の超スロー。先行馬に有利な展開ではあるものの、そのまま楽なペースで進めば、後ろの馬たちも簡単にポジションを上げることができる。つまり、3コーナー手前からの一気の加速は、後続にスパートのタイミングを与えず、追走に脚を使わせるための手段だったということ。ゴールまでの1000mは前半よりも4秒早い58秒1。この急激なラップの落差が、結果的に“ブエナ封じ(=好位に進出させなかったこと)”につながったと言っていいだろう。
もうひとつは、先頭に立つことができる位置にいながら、仕掛けのタイミングを遅らせてさらに脚を溜めたこと。
直線入口で抜け出してもおかしくない手応えでありながら、最後の瞬発力を温存させたことによって、ヴィクトワールピサ自身も34秒6の上がりの脚を使うことができた。仮に、デムーロ騎手が早目先頭から一気に押し切ろうとしたならば、ゴール前でブエナビスタに捉えられていたかもしれない。なんとも冷静な騎乗。レースを引っ張ったのはトーセンジョーダンだが、レースを操ったのは間違いなくヴィクトワールピサ(=デムーロ騎手)だった。
もちろん、馬自身の走りも素晴らしかった。海外遠征で結果を出せなかったために、1ランク落ちの印象を持たれたこともあったが、皐月賞1着・ダービー3着・JC3着という実績に偽りなし。むしろ、海外での経験によって心身ともに成長したという印象もある。改めて、世代のトップクラスと評価すべきだろう。
あえて課題をあげるならば、キレ味勝負になった時の対応。ダービーとJC(いずれも東京コース)は明らかにキレ負けのレース。現時点では、立ち回りの巧さを活かせるある程度時計がかかる馬場向きのようにも思える。

ブエナビスタは33秒8の上がりの脚で追い込んだものの、わずかに届かず2着。そして・・・今回もまた「負けて強し!」のレースだった(いったい何度この言葉が使われるのだろう)。
スミヨン騎手は「位置取りが後ろ過ぎたし、道中でポジションを修正できなかった」とコメント。ブエナビスタにとっては正攻法の競馬だったかもしれないが、展開とコースを味方につけることができなかった。言い方を変えれば、それだけヴィクトワールピサのデムーロ騎手に巧く乗られたということでもある。
とはいうものの、直線入り口では絶望的にも見えた位置から、写真判定の2着にまで追い込んできたのだから、やはりこの馬の能力は“別格”だ。この秋3戦の走りを見ていると、貫禄や風格すら感じられる。今回の敗戦でこの馬の評価を下げる必要もないだろう。「このまま無事にいけば来年もGⅠをいくつか勝つはず」というのが正直な感想でもある。

驚かされたのは3着のトゥザグローリー。
たしかに、近走の内容から“良血の開花”という印象も強かった。しかし、休養明けの10月16日から今回が5戦目で、決して有馬記念が目標という使い方ではなく、前走の中日新聞杯から中1週というローテーション。さすがに余力は残っていないだろうと思い、『予習』での検討対象とはしなかった。
ウィリアムズ騎手の最後まで気を抜かせない乗り方も光ったが、それにしても、恐ろしくタフな馬である。あるいは、ハードな使われ方をしてきたことで成長力が加速したという見方もできるかもしれない。
いずれにしても、「いい意味で予想を裏切られた」というのが実感。強い3歳世代にまた1頭“主役級”が現れたのであれば、来年以降がますます楽しみになる。

4着には、これもまた3歳のペルーサ。
この馬に関しては、結果はともかく多くの収穫があったレースだったと言えるはずだ。
課題とされていたゲートも今回はクリア。さらに、これまでは出遅れで外々を回るレースばかりだったペルーサにとって、好位のインで折り合う競馬を経験したことは大きい。馬込みに慣れていないせいもあって、末脚を発揮することはできなかったようだが、貴重な経験を積んだことは今後のレースに生きてくるのではないだろうか。次走、どのような走りを見せてくれるか注目したい。

逃げたトーセンジョーダンは5着。
前半スローペースに落とすところまでは作戦通りだったかもしれないが、生粋の逃げ馬ではないだけに、緩急をつけて突きはなすようなことまではできなかったようだ。ただし、ヴィクトワールピサに早目にこられて厳しい展開になりながらも、渋太く掲示板を確保したことは評価できるだろう。思っていた以上に底力を感じさせる内容だった。
ブエナビスタと同じ4歳だが、休養期間があるため今回がまだ12戦目。まだまだ良化の余地がありそうだ。強さを確認するためにも、逃げ馬の存在するレースで、本来の好位抜け出しの競馬を見てみたい。

有馬記念というレースは、1年の締めくくりという位置付けではあるが、今年の場合は「先々につながる一戦」「来年が楽しみになる一戦」という印象が強く残った。
その理由は、やはり、3歳馬がいい走りを見せてくれたからだろう。
勝ったヴィクトワールピサは3歳トップクラスの威厳を示してくれたし、3着のトゥザグローリーは将来性に大きな期待を持たせてくれた。ペルーサについては、今後どのように走りの幅が広がっていくかが楽しみであり、ルーラーシップ(6着)のスピード感やエイシンフラッシュ(7着)の最後の脚にも非凡なものを垣間見ることができた。
と同時に、ブエナビスタも走りの真骨頂を見せてくれた。展開やコースに若干左右される面があるとしても、その強さに翳りはなかった。
今回の上位馬たちが来年のGⅠ戦線で再び顔を揃えることを考えただけでも期待に胸が膨らむ。その時には、ローズキングダムも出走してくるだろうし、3冠牝馬のアパパネの参戦もあるだろう。今回はあくまで試走に徹したレッドディザイアにしても、このまま引き下がりはしないはずだ。
外国人ジョッキーの1~3着独占というミソはついたかもしれないが、内容そのものは「翌年の競馬が待ち遠しくなる有馬記念」。いいレースだったと思う。



■有馬記念・結果

2010年12月26日 5回中山8日10R
第55回 有馬記念(GⅠ)
芝・2500m 晴・良

 1着 ヴィクトワールピサ   デムーロ    2.32.6
 2着 ブエナビスタ       スミヨン      ハナ
 3着 トゥザグローリー     ウィリアムズ   クビ

単勝 1  840円(2番人気)
馬連 1-7 550円  馬単 1→7 1640円
3連複 1-7-11 11610円  3連単 1→7→11 60770円



■有馬記念・予習

2010年を締めくくる暮れのグランプリ、GⅠ・有馬記念。
3歳の有力候補・ローズキングダムの取消は非常に残念だが、それでもなかなかの好メンバーが顔を揃えた。
今回のレース、予想において重要なポイントと思われる点は2つある。
ひとつは「展開と脚質」。
確固たる逃げ馬が不在のため、ペースが落ち着くという見方が強い。中山コースの場合、“後方からのマクリ+瞬発力”が決め手となるケースも多いので、必ずしも「前へ行った馬が有利」とは言えないが、スローペースを前提とした上で、「各馬がどのようなポジションでレースを進めるか」「4コーナーでの位置取りによってどれくらいの脚が使えるか」などについては、ある程度想定しておく必要があるだろう。
もうひとつは「余力」。
前走よりも状態面が上がっているかどうかがカギになるわけだが、特に有馬記念の場合は、秋のGⅠを使われてきた馬の出走が多く、激走の反動や上積みの有無が走りに影響することがある。近走のローテーション、連戦による消耗といった点に注意を払い、気になる馬については直前の気配を確認しておいた方がいいかもしれない。

土曜の午後の時点で断然の1番人気に支持されているのはブエナビスタ
前走のジャパンカップは降着となったものの、その内容は他を寄せつけない圧倒的なものだった。すでに“現役最強馬”との呼び声も高く、多くのスポーツ紙が今年の有馬を「ブエナに勝てるのはどの馬か?」といった視点から分析しているのも、言うなれば「順当ならばブエナが勝つ」という評価の裏返しにほかならない。過去16戦して複勝率は100%。抜群の安定感を誇る以上、馬券の中心と考えるのは妥当だろう。
もっとも、ブエナビスタをアタマから狙えるかというと、もう一考必要かもしれない。具体的に言うならば、ブエナビスタがどのポジションで競馬をするかの判断がポイントになりそうだ。
先にも述べたように、今回は逃げ馬不在のレース。スローペースが見込め、しかもポジションを取りやすい4枠7番という枠順。単純に考えれば、「ブエナビスタはある程度前目の位置で競馬をするのではないか」という推測が成り立つ。後方から追い込むレースではリスクが高くなる中山コースならばなおさらだ。
問題は、この“前目の競馬”がブエナビスタにとってベストかどうかである。
ブエナビスタが4コーナーを5番手以内で通過したレースはこれまでに4戦あるが、勝ったのはジャガーメイルとの叩き合いを制した京都記念のみ。昨年の有馬ではドリームジャーニーに交わされ、今年の宝塚ではナカヤマフェスタの急襲に屈している。つまり、好位から抜け出して突きはなすレースが自身の勝ちパターンになっているわけではないということ。実際、秋天もJCも後方からの差し切りだった。
さらに、松田博調教師が興味深い発言をしている。「昨年はノリ(横山典騎手)がアンカツ(安藤勝騎手)と違う乗り方をすることを意識したために先行策に出たが、あれは本来のブエナの競馬ではない」というものだ。受け取り方によっては今回のレースに関して“後方からの競馬”を示唆しているようにも思える。
昨年、ブエナビスタが有馬記念に出走した際、「追い込み脚質が(直線の短い)中山に合うかどうか」というのがひとつの論点になった。そして、横山典騎手の先行策は、2着に敗れたとはいえ結果的には“正解”と評価されたはずである。もし仮に、今回、後方からの競馬をするとなると・・・。
先行した場合の差されるリスク。後方から行った場合の届かないリスク。ブエナビスタはそれらを補って余りある能力の持ち主かもしれないが、はたして「まったく死角がない」とまで言い切れるかどうか。

ジャパンカップ3着のヴィクトワールピサ
5連勝で皐月賞を制し、ダービーも3着。この馬もまた、国内のレースにおいては馬券圏内を外したことがない。
今回は1枠1番という極端な枠に入ったが、コーナーを6回通過する中山芝2500mのコース特性を考えれば、むしろ立ち回りに有利な枠と言えるだろう。もちろん、馬自身も位置取りに左右されない自在性を持っている。したがって、好位のインで脚を溜めて、直線で伸びてくるレースがイメージできる。
問題は余力が残っているかどうか。
秋は海外で2走して、帰国初戦が古馬混合のGⅠ・ジャパンカップ。決して楽なローテーションではない(ナカヤマフェスタのジャパンカップでの走りを見れば、凱旋門賞への海外遠征のダメージを軽く扱うことはできないだろう)。「仕上がりが今イチだった前走よりも状態は良くなっている」という評価も多いが、今イチの状態で3着に好走したからこそ、逆に反動や消耗が気掛かりにもなる。
有力候補の1頭には違いないが、状態面のチェックが必要になりそうだ。

2走前の天皇賞・秋で2着に入ったペルーサ
「3歳馬の中ではトップクラスの能力」と評価されながら、出遅れ癖が解消されずに力を発揮できないレースが目立つ。加えて、今回は7枠14番。「外枠+出遅れ癖」が響いて終始外々を回らされる展開になった場合、直線の短い中山コースでは、いかに末脚がキレたとしても厳しいレースになるだろう。
ただし、この馬に“中山向きの走り”ができるとなれば話は別。つまり、3~4コーナーでマクり気味に進出できるかどうかということだ。
参考例としたいのは、若葉Sとダービーの大マクリ。ダービーの場合は出遅れた分を取り戻すための窮余の策だったが、若葉Sは勝ちに行くためにマクった競馬。青葉賞の勝ち方が鮮烈だったために、直線の長い府中向きというイメージが強いが、若葉Sのマクリもこの馬の強さの表れだったようにも思える。「脚質的に中山は合わない」という意見もあるが、道中でポジションを上げてくるレースをするようならば軽視はできない。
むしろ不安材料として気になるのは、秋以降4戦目となるローテーション。秋天→JCを目標に仕上げられた感もあり、状態面での上積みは望めないかもしれない。この馬も直前の気配に注意したい。

ジャパンカップでは8着に敗れた、ダービー馬のエイシンフラッシュ
結果的には、菊花賞を回避したためにローテーションに狂いが生じた影響が大きかったようだ。当然ながら、今回はJCを使っての上積みが見込める状態。専門紙等による調教の採点もかなり高いようだ。
気になる点は、陣営が“逃げ宣言”をしていること(絶対にハナを奪うといった強いものではないが)。それまでの差しから先行策に転じて結果を出した京成杯を見る限りでは、たしかに脚質的に幅のある馬かもしれない。しかし、仮にこの馬がハナを切ったとして、はたして持ち味が発揮できるのだろうか。自らペースを作るよりも、スローで折り合って最後に末脚で抜け出す方が理想の展開とも思えるのだが・・・。他の馬に行かせて好位差しのレースをするのであれば、有力な1頭。

ダービー以来、6か月の休み明けでGⅢ・鳴尾記念を制したルーラーシップ
まだまだ粗削りな面があるようにも思えるが、伸びしろや可能性といった部分では、3歳馬の中でも特に注目の1頭だ。エイシンフラッシュ同様、叩き2走目の上積みも期待できるだろう。
問題はコースへの対応。
小回りコースの向き・不向きというものもあるが、それ以上に「パワーを必要とする冬場の中山の芝をこなせるかどうか」がカギになるかもしれない。というのも、常に33秒台の上がりをマークしていることは、時計の出る軽い芝が合っているという見方もできるからだ(これはペルーサにもあてはまるのだが・・・)。
未知数の部分が多い馬だけに、驚くような走りを見せてくれるかもしれないが、現時点では「有馬記念を勝つ重厚な走り」というイメージには結びつきにくいところもある。

昨年の有馬を制したドリームジャーニー
〈3.3.1.3〉という実績が示すように、中山は得意のコース。当然、今回は目標のレースである。前走のオールカマーは59キロを背負ってクビ差の2着。馬体の小さな同馬にとって57キロで出走できるのは有利な条件だ。
問題は、当初予定していた秋天を使えなかったこと。昨年と同じ“オールカマー→秋天→有馬”というローテーションに狂いが出たことは誤算だろう。春先も順調さを欠いていただけに、馬自身がレース仕様になりにくくなっているのではないかという懸念もある。
調教の動きそのものは悪くはないということだが、追い切った後の馬体重はプラス24キロの446キロ。この馬にとってのベストは420キロ台であるから、やはり間隔の空いた影響が出ているようだ。当然ながら、当日の馬体重には要注意。
万全の状態ならば有力候補だが、昨年の出来にあるかどうかといえば、少なからず疑問である。

状態面で注目できるのはオウケンブルースリ
長期休養明けの3走目で、陣営の言葉を借りれば「この秋一番の出来」。元値は長距離適性の高い菊花賞馬だけに、軽視は禁物だろう。鞍上が横山典騎手というのも興味深い。昨年自分が騎乗したブエナビスタを相手にどのような作戦を立ててくるか、中山コースをどう克服するかに注目したい。

1枠2番という好枠を引いたネヴァブション
近走では差しの競馬も見せているが、先行して粘り込むレースもできる。例えば、ハナを奪って平均ペースの消耗戦に持ち込むことができれば、あるいは、AJCCの時のような“いかにも中山巧者”といった立ち回りができれば、面白い存在になるかもしれない。

3連勝でGⅠに挑戦するトーセンジョーダン
前走のアルゼンチン共和国杯は57キロを背負いながらレースレコード勝ち。上昇度・本格化という意味では侮れない。いきなりのGⅠで勝ち負けはどうかも、今回のメンバーを相手にどれだけの走りができるか注目したい。

もう1頭あげるならば、「状態面が戻っていれば・・・」という前提付きでフォゲッタブル
前走のステイヤーズSは5着に敗れたが、外々を回ったデムーロ騎手の仕掛けがあまりにも早すぎた感がある。内枠から流れに乗って、ロスのないレース運びができれば、ゴール前で抜け出してくるシーンもイメージできる。早熟と言われるまま終わってほしくない1頭だ。

今年最後の大一番。
手に汗を握るような熱戦と、スッキリとした決着を期待したい。




■年末のブログについて

いつも「競馬のツボ<ブログ版>」にお越しいただき、
ありがとうございます。

都合により(年末進行の仕事の関係で)、
12月12日と19日の2週分のブログは
お休みさせていただきます。
申し訳ありません。
(有馬記念には戻ってきます!)

ともに2歳GⅠが行われますが、
来年のクラシックを見据える意味でも
各馬がどのような走りを見せてくれるのか
注目したいと思っています。

今年も残りあとわずか。
日に日に寒さを増してきました。
みなさま、風邪など召さぬよう、
体調に気をつけてお過ごしください。


安東 裕章

■JCダート・復習

GⅠ・ジャパンカップダートを制したのは、1番人気のトランセンド。勝ち時計は1分48秒9の好タイム。『予習』でも述べた「先手を奪って時計勝負に持ち込む勝ちパターン」で後続を退けて逃げ切った。

トランセンドの勝因は“自分の形に持ち込めたこと”に尽きるかもしれないが、それ以上に特筆すべきはこの馬の“地力強化”だろう。
1000m通過が60秒ジャストの緩みのない流れに加えて、道中は終始バーディバーディにマークされる展開。トランセンドに限らず逃げ馬にとっては厳しいレースだったはずだ。実際、直線でバーディバーディに並ばれた時には、「これまでか・・・」と思ったのも事実。
ところが、そこから相手を突き離し結局は押し切った。ここが以前のトランセンドには見られなかった“強さ”のように思えた。4歳秋を迎えて自身の成長を見せてくれた一戦だったと評価したい。
今後の楽しみといえば、やはりエスポワールシチーとの対戦だろう。ある意味、この2頭は同型馬。自分でレースを作って勝利を手にするタイプである。「今回は相手関係が楽だったレース」という声もあるだけに、ダートトップホースを相手にどれだけの走りができるかに注目だ。

2着も同じく4歳馬のグロリアスノア。
この馬もまた、以前よりも成長著しいところを見せてくれた。
『予習』でもふれた通り、戦前の不安材料は距離。さらに、コーナー2回の東京コースを得意としていることから、コーナーが4回に増えることが走りに影響するのでは?という懸念もあった。
しかし、終わってみれば、メンバー最速の上がりでトランセンドにクビ差の2着。外を回らされるのを嫌って道中のポジションを下げた小林慎騎手の作戦も功を奏したが、若干行きたがる素振りを見せながらもしっかりと脚を溜めることができたのは収穫だろう。予想以上の瞬発力の持ち主という印象を受けた。
陣営いわく、次の大目標は来年のフェブラリーS。武蔵野Sのように内枠に入れば、好位での競馬もできる馬。有力候補の1頭と期待してもいいだろう。

3着は11番人気のアドマイヤスバル。
交流GⅠで経験を積んだ堅実派らしく、混戦に乗じて馬券圏内に突っ込んでくるという“いかにもこの馬らしい”結果を残した。
この馬の強味は、出たなり・相手なりのポジションで競馬ができることだろう。今回は先行勢の後ろにつけたが、枠順やメンバーが変われば先行策もとれる馬。『予習』でも述べたように、勝ち切るだけの凄み・強さは感じられないが、ヒモの1頭としては常にマークが必要なタイプかもしれない。

3歳馬のバーディバーディは大健闘の4着。
速い時計のレースで最後までトランセンドに食い下がった走りは立派。同じように先行したダイシンオレンジやラヴェリータが直線で力尽きたことを考えれば、力量的にも評価できるだろう。昨年の3歳勢と比較すると小粒と言われる現3歳世代だが、こうした馬が頭角を現わしてくると先々が楽しみなる。今後の走りに期待したい。

5着のシルクメビウスにとっては残念なレース。
展開自体は『予習』でも示したように「トランセンドが後続の先行勢を脱落させるレース」になり、シルクメビウスにも十分勝つチャンスはあったと思われる。
しかし、あまりにも大外に膨らみすぎた4コーナー。「下手に乗ってしまった」という田中博騎手のコメント通り、コース取りのロスが痛かった。さらに、向正面で内から外に出して進出した分だけ、最後の脚が甘くなったようにも思える。終わってみれば、最内枠がマイナスに働いたと言えるかもしれない。グロリアスノアが絶妙の仕掛けとコース取りで好走しただけに、余計に惜しまれる一戦だった。

3番人気のキングスエンブレムは9着に敗退。
道中は内々を楽に回っているようにも見えたが、直線に入ると失速。前走のように外に出して盛り返すようなシーンもなかった。
福永騎手は「連戦の疲れがあったかもしれない」と語る一方で、「苦しくなって気ムラな面が出た」ともコメント。『予習』でも取り上げたように、内枠に入って揉まれる競馬になったことの影響があったのかもしれない。今後のカギは精神的な成長という意見もあり、現状では経験を積むことが重要だろう。5歳馬ではあるが、ダートは今回が7戦目で3歳馬のバーディバーディよりも少ない。まだまだ伸びしろはあるはずだ。

キングスエンブレムの兄・ヴァーミリアンは14着。懸念していたように、時計の速い決着では厳しいようだ。衰えという言葉を使わざるを得ないかもしれない。
初ダートのアリゼオはシンガリ負け。スタートが悪く、道中は砂を被るのを嫌いながら口を割る走り。まったく見せ場がなかった。現状ではダートには向いていないと評価すべきだろう。




■JCダート・結果

2010年12月5日 5回阪神2日11R
第11回 ジャパンカップダート(GⅠ)
ダート・1800m 晴・やや重

 1着 トランセンド       藤田    1.48.9
 2着 グロリアスノア     小林慎    クビ
 3着 アドマイヤスバル    小牧太   1+1/4

単勝 3  350円(1番人気)
馬連 3-14 4350円  馬単 3→14 6310円
3連複 3-12-14 20840円  3連単 3→14→12 94860円

■JCダート・予習

秋のダート王決定戦、GⅠ・ジャパンカップダート。
もっとも、今年は外国馬の参戦がなく、日本のトップホースであるエスポワールシチーも不出走ということで、メンバー的に小粒な印象は拭えない。それゆえ、どの馬にもチャンスのある混戦模様。買い目の絞り方が難しい一戦になりそうだ。

土曜の夕方の時点で人気を分け合っているのは、昨年“ダート最強世代”と呼ばれた現4歳馬の2頭。
まず、前走・みやこSで逃げ切り勝ちをおさめたトランセンド
平均的に速い脚を使えるタイプで、過去に2回レコードをマークしていることからもわかるように、「先手を奪って時計勝負に持ち込む」のがこの馬の勝ちパターン。今回は同型馬が見当たらず、内枠を引き当てたこともあって、条件はかなり有利とも思える。
ただし、単騎逃げが見込める分、他からのマークはきつくなるはず。どの馬にもチャンスがあり、ましてGⅠのタイトルがかかっているとなれば、楽には逃がしてくれないだろう。ハナを奪うことができても、道中プレッシャーをかけ続けられると逃げ馬は苦しくなる。トランセンドに関しては、「自分の形に持ち込めるかどうか」はもちろんのこと、「どの馬がトランセンドを捕まえに行くか(=その馬にトランセンドを失速させるだけの力があるか)」が重要なカギになるだろう。

人気のもう1頭は昨年の2着馬・シルクメビウス
前走のJBCクラシックは4着とはいえ勝ち馬から1.8秒差の大敗。ただし、これについては「久々に加えて、初の競馬場に前日入厩したため馬がパニックになった」という理由が示されている。今回は〈2.1.0.0〉と得意の阪神コース。輸送距離も短くなり、1走叩いた上積みも見込めるはずだ。
あとは展開。後ろから行く馬だけに先行勢が楽な流れになると不利は否めない。ひとつのビジョンとして考えられるのは、トランセンドの速いペースを追いかけた先行・好位勢が次々に脱落し、1頭になったトランセンドをゴール前で差し切るというもの。そういう意味では、シルクメビウスの好走は、トランセンドのレース運び次第とも言えるかもしれない。

前走・みやこSでトランセンドに0.2秒差まで詰め寄ったキングスエンブレムも人気の一角。
ヴァーミリアンの半弟ということで、早くから注目を集めていたが、今秋になってようやくその素質を開花させた感がある。近走の勢いや昇り調子、伸びしろといった点では、今回のメンバーでは一番に違いない。
この馬の場合、1枠2番に入ったことから、前走の走りをどのように評価するかがポイントになるかもしれない。というのも、レースでは“砂を被って嫌がる一面”を見せたからだ。
「前走は経験の浅さが弱点となったレースで、内枠に入った今回も同じような状況に陥りやすい」と判断するか、あるいは、「前走、揉まれる競馬を経験したことはプラス。内枠でも今回は行きっぷりが違うはず」と考えるか。

言い方は悪いが、GⅢと大差ない顔ぶれとなった今回のレース。その中で、実績だけを評価すれば、間違いなくトップと呼べるヴァーミリアン
この馬に関しては、言うまでもなく、全盛期の力があるかどうかの判断に尽きるだろう。
年明けの川崎記念を制してはいるものの、中央のダートでの勝ち鞍は2年前のフェブラリーSまで遡らなければならない。JBCクラシックを叩いて臨んだ昨年の当レースも8着に敗退。サクセスブロッケンがレコード勝ちした昨年のフェブラリーSで大きく差をつけられたように、中央の速い決着にはついていけなくなったという見方もできる。まして、今回は帝王賞以来の休み明け。メンバー的には楽とはいえ、底力だけで勝負になるだろうかという不安は拭えない。

今回初ダートとなるアリゼオ
3歳で古馬混合GⅡの毎日王冠を制したのだから、能力的には高く評価できるとはいうものの、ダートで力を発揮できるかといえば、正直、半信半疑である。
たしかに、血統的な背景(ダート勝ち馬を多く輩出しているシンボリクリスエス産駒であり、カネヒキリと同じ母父・フジキセキ)があり、520キロを超す大型の馬体は“ダート向き”かもしれない。しかし、それはあくまで“過去のダートで好走した馬”と同じ特徴を持っているに過ぎないだけで、ダートで好走できるという裏付けにはならないはずだ。
とはいうものの、アリゼオがこのレースにおいて、重要なカギを握る1頭であることには異論はない。
陣営がなぜアリゼオをダート路線に参戦させたか。それは、芝のレースでは弱点となる“掛かり癖”をプラスにできると判断したからではないだろうか。すなわち、先行力を活かせるということである。
となれば、トランセンドにとっては厄介な存在になる。「どの馬がトランセンドを捕まえに行くか」がひとつのポイントと述べたが、アリゼオがその役目を担う可能性も考えておきたい。

伏兵陣にも馬券的に要注意の馬が多い。

ラヴェリータは前走のJBCクラシックで8着に敗れているが、陣営によれば「砂質の違いが走りに影響した」とのこと。2走前のハンデ戦・シリウスSではキングスエンブレムに0.1秒差の2着。着差もさることながら、牝馬に56.5キロの斤量というハンデキャッパーの評価も見逃せない。

ダイシンオレンジは前走・みやこSで11着と大敗。得意とする京都コースだっただけに案外な結果だが、敗因は明らかな調整不足。というよりも、当初から今回のレースが目標だったという見方が濃厚だ。阪神は京都ほどの実績はないが、1800mのダート戦では〈6.2.2.3〉という数字。軽視は禁物かもしれない。

グロリアスノアは休み明けの前走・武蔵野Sを快勝。3歳時には人気のシルウメビウスの好敵手でもあっただけに、能力的に遜色はない。ただし、ベストは1400~1600m。距離をこなせるかどうかがカギ。

アドマイヤスバルは交流GⅠも含めて近11走掲示板を外していない堅実派。勝ち切るだけの凄みには欠けるが、立ち回りひとつで馬券圏内に入ってくる可能性は捨て切れない。

その他、人気薄で突然好走するダイショウジェットや、叩き3走目で春先の調子が戻っていれば侮れない3歳馬のバーディバーディ、大外枠に入ったことで折り合い面での不安が増したものの南部杯ではエスポワールシチーに先着したオーロマイスターなども気になる存在だが、それよりも不気味に思えるのがマルカシェンク
初ダートの前走・武蔵野Sでは5着ながらメンバー最速の上がり。出遅れ癖のある馬なので展開に左右される面は否めないが、常にあの脚を使えるようならば、シルクメビウスと併せるような形で突っ込んできても驚けないだろう。




カレンダー

11 | 2010/12 | 01
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -

カテゴリ

プロフィール

安東裕章

Author:安東裕章
東京都出身。2007年11月に書籍『競馬のツボ』、2008年7月に『競馬のツボ2』、2009年7月に『競馬のツボ3』を発表(いずれも総和社刊)。

このたび、拙著『競馬のツボ』を刊行していただいた出版社・総和社様の勧めもあって、ブログを始めることにしました。
競馬における一番の楽しみは、レースについて考えること。つまり予想です。
このブログを書くことで、自分でも週末のレースに向けてイメージを膨らませる訓練になるかと思います。
競馬について考えることが好きな皆様。レース予想に疲れて気分転換をしたい時など、よろしければフラッと遊びに来てください。

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。