■2012年05月

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■ダービー・短評

第79回日本ダービー。3歳馬7572頭の頂点に輝いたのは3番人気のディープブリランテでした。

レースは逃げるゼロスをトーセンホマレボシがマークする形で、1000m通過が59秒1。先週のオークスと同じく、高速馬場での流れの速い展開になりました。
勝ったディープブリランテは離れた4番手で絶好の位置取り。ペースが速かったこともあって、懸念されていた折り合いも完璧にクリア。直線を向いて追い出されると坂上で先頭に。最後は脚が上がって一杯一杯でしたが、外目から追い込んだフェノーメノをハナ差凌いで、ダービー馬の栄冠を手に入れました。

『展望ブログ』には、ディープブリランテの予想のポイントとして「一度は先頭に立ちながら最後は差し馬に屈する負け方を改善できるかどうか。岩田ジョッキーの騎乗に注目」と書きましたが、今回の勝因は「改善」ではなく、“自分の競馬をすれば負けない”という「信念」だったかもしれません。
岩田騎手は「この世代で一番強い馬と信じていたので、ダービーの大舞台でそれを証明できて嬉しい」とコメント。騎乗停止中に付きっきりで馬と接し続けた本番までのプロセスを考えると、まさに“人馬一体”の勝利と言えるでしょう。悲願のダービージョッキーに輝き、男泣きを見せた岩田騎手。“自分の馬を信じる”という強く揺るぎない心意気に、拍手を送りたいと思います。
展開的には、前が止まらない高速馬場がこの馬に有利に働いたという見方もできるでしょう。しかし、今回のような緩みのない流れは、馬の底力が試されるもの。不利や紛れに乗じたのではなく、能力を発揮した上での勝利として、高く評価できると思います。

ハナ差の2着には5番人気のフェノーメノ。あと50mあれば間違いなく逆転していたとも思える本当に惜しい結果でした。
レース内容も完璧に見えました。『展望ブログ』には「末脚勝負を挑んだ場合、もっとキレる馬に勝てるか?」と書きましたが、有力な差し馬よりも前のポジションから早目の追い出し。あとは前を捉えるだけという理想的な競馬だったと思います。
青葉賞馬は皐月賞上位組と比較した場合、経験値の点でどうしても見劣りするのですが、それを考えるとこの馬の能力はかなりのもの。同距離・同コースで結果を残しているアドバンテージや〈3.0.0.0〉の東京適性があったとはいえ、初GⅠで一線級相手にあれだけの走りを見せてくれたことは評価できるでしょう。
秋は天皇賞・ジャパンカップを視野に入れているとのこと。菊花賞へ向かう有力馬たちよりも早く古馬一線級と対戦することになれば、今度は逆に経験値の点でも強調材料が増えるに違いありません。今後に期待したいと思います。

3着はトーセンホマレボシ。
レコード勝ちの中2週ということで、状態面の不安がありましたが、ウィリアムズ騎手いわく「前走よりもさらに良くなっていた」とのこと。持ち味であるスピードの持続力を存分に発揮したレースを見せてくれました。3コーナー過ぎからムチが入り、さすがに最後は力尽きた感もありますが、ペースを考えれば立派な内容。“強い先行馬”としての評価はさらに高まったと思います。
今後の課題をあげるならば、ハナを主張する馬がいない場合、どれだけ自分でレースを組み立てられるかという点。今回とは逆に番手からマークされるケースも含めて、この先の走りに注目したいと思います。

1番人気のワールドエースは4着、2番人気のゴールドシップは5着。
ともに最速の上がり(33秒8)で最後は突っ込んできましたが、3着争いまででした。
両馬の敗因をひとことで言うならば、高速馬場の速い流れのために、自分の競馬ができなかったことでしょう。
後方から大外一気の競馬で持ち味を発揮してきたワールドエースにとっては、厳しい条件下でのレース。福永騎手は「もう少し前に付けたかった」とコメントしていますが、ジョッキーが“後ろからでは届かない馬場”とわかっている以上、通常より前の位置での競馬にならざるを得ませんでした。後ろか前かではなく、道中で進出する走りができればいいのですが、そのあたりの器用さに欠けているところが、現時点でのこの馬の弱点かもしれません。
ゴールドシップは位置取りが後ろ過ぎたのが誤算。前が止まらない馬場とわかっていても、ワールドエースよりも後ろのポジションになったのは、テンのペースが速くて流れに乗れなかったからでしょう。好位から抜け出した共同通信杯は超スローでタイムも平凡でした。スピードの乗り方がこの馬の今後の課題のように思えます。

勝ち時計の2分23秒8はダービー史上3番目の記録。ゴール前の大接戦も含めて、レベルの高い見応えのあるレースだったと思います。
もっとも、前が止まらない高速馬場が結果に影響した点は否めません。能力を発揮できる条件かどうかで、掲示板に載った5頭の着順は変わる可能性がありそうです(硬い馬場でも0.3秒差の6着に健闘したコスモオオゾラを入れてもいいでしょう)。
1~3着馬は自分の競馬ができた馬。4・5着はできなかった馬。となれば、どんな条件下でも能力を発揮できるようになることが、それぞれの馬にとっての“成長”と言えるのではないでしょうか。
夏を越して秋を迎えた時、各馬が“成長した姿”を見せてくれることを楽しみにしたいと思います。


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■ダービー・展望

3歳馬の頂点を競い合う、競馬の祭典・第79回日本ダービー。
戦前の下馬評は皐月賞1・2着馬の“2強対決”。土曜午後の時点での前売り単勝オッズも、この2頭が抜けた支持を集めています。

皐月賞を制したゴールドシップ
デビュー以来すべて連対という安定感に加え、位置取りにこだわらず競馬ができる自在性・適応力に高い評価を与えられると思います。東京では共同通信杯勝ちの実績があり、この時の走りを見る限りでは、仕掛けてからの反応は若干鈍いものの、追えば追うほど伸びる印象。府中の長い直線向きとも言えるでしょう。
個人的には“死角の見当たらない馬”のようにも思えますが、あえて不安材料をあげるならば、ローテーションを加味した状態面。
北海道の滞在競馬で臨んだコスモス賞→札幌2歳Sを除けば、今回の中5週はこれまでで最も短い間隔。しかも、前走は馬場の悪い内目を突いた激走。いくら道悪巧者とはいえ、少なからずダメージがあったと推測できます。
共同通信杯から皐月賞へのローテーションに関しても、「ダービーからの逆算」という一部意見もありますが、マイナス8キロでの出走を考えると一概には決めつけられないのでは? あるいは、間隔を開けて仕上げていくタイプとも考えられます。
いずれにしても、この馬も含めて“道悪のハイペースを走った皐月賞組”については、直前の気配をチェックした方がいいかもしれません。

皐月賞2着のワールドエース
スタート後に落馬寸前のアクシデントがあり、4コーナーでは大外に持ち出す競馬。それでも、直線だけで13頭を抜き去った末脚は見事で、「これが東京コースなら・・・」と思わせる内容でした。前売りの段階でゴールドシップを抑えて1番人気に支持されているのも、条件替わりが大きなプラス材料と考えられているからでしょう。たしかに、良馬場の決め手勝負になれば、ゴールドシップを上回るキレ味がイメージできます。
ただし、この馬についても“反動”の懸念はあります。
それまでスローの瞬発力勝負しか経験していなかった馬が、馬場のいい外目を通ったとはいえ、道悪のハイペースで激走。しかも、前走は初の長距離輸送での競馬でした。レース後にどれだけのダメージが残ったかというのは、やはり気掛かりな部分です。
さらに、もうひとつ不安材料をあげるならば、この馬向きの展開になるかどうかということ。
ワールドエースの末脚の脅威は、言うまでもなく、他のジョッキーや調教師も知るところです。となれば、末脚を封じる作戦をたてる陣営があっても不思議ではありません。後方から大外一気というパターンを不発に終わらせるために、ゴールドシップ、ディープブリランテ、トーセンホマレボシといった“力のある先行集団”がどのような競馬をするか(実際、ゴールドシップの須貝調教師は「今回は自分で競馬を作ることになるかもしれない」とコメントしています)。このあたりは、今回のレースの大きな見所になると思います。

皐月賞3着のディープブリランテ
連対率100%の上記2頭には及ばないものの、この馬もデビュー以来4着以下はなし。勝ち切れないイメージはありますが、常に能力の高さを証明する競馬を見せてくれる馬だと思います。
前走の皐月賞にしても、1・2着馬が内外の極端なレースをしたのに対して、この馬はそれまで通りの“正攻法”の走り。差し有利の展開で最後まで粘った点は評価できると思います。
課題は、やはり折り合い。騎乗停止中の岩田騎手が付きっきりでケアしていたということなので、そのあたりの効果に期待かもしれません。
あとは、一度は先頭に立ちながら最後は差し馬に屈する負け方を改善できるかどうか。予想の視点に立てば、「今回も最後は後ろから差されるだろう」と考えるか、あるいは「ここ3走すべて同じ負け方なのだから今回は何か策を講じてくるだろう」と推測するかということ。岩田ジョッキーの騎乗に注目です。

皐月賞4着のコスモオオゾラ
この馬の一番の持ち味は、スッと好位をキープできるスタートセンスの良さでしょう。弥生賞のレースぶりを見ると、立ち回りの巧さが光っていたように思えます。
反面、共同通信杯(5着)のようなキレ味勝負は不得手。『皐月賞短評ブログ』にも書きましたが、現時点では「パワーを要する小回りコースがベスト」という印象です。
台頭する余地があるとすれば、平均ペースの消耗戦になった場合。道中、好位のインでロスなく運んで、他馬がバテてきたところを内から伸びてくるような競馬が理想的かもしれません。

皐月賞5着のグランデッツァ
1番人気に支持されましたが、「道中滑りながら走っていたし、大外枠で外々を回らされた分伸び切れなかった」(デムーロ騎手)とのこと。とはいえ、少なからず負け過ぎの感もあります。
この馬に関しては『皐月賞展望ブログ』の中で、1800mと2000mの戦績(1800mに良績集中)を比較した上でロスを強いられる大外枠をマイナス材料と判断しましたが、今回(8枠17番)も同様の見方ができるでしょう。スタート後に好位のインに潜り込めればベストですが、前走と同じように外々を回らされると厳しいレースになるかもしれません。
良馬場で見直すという声もありますが、逆に高速決着になった場合はどうなのか。札幌の重い芝や道悪のスプリングSで結果を出しているように、これまでの戦績を見る限りでは、時計がかかる条件の方が向いているようにも思えます。
デビュー以来、小回りや内回りしか走っていない馬なので、一概には結論付けられませんが、直線が長く広いコースへの条件変更がどれだけプラスに作用するかは不明瞭のような気がします。

トライアルの青葉賞を2着馬(エタンダール)に2馬身半差をつけて勝ったフェノーメノ
勝ち時計の2分25秒7は一応評価できるタイム(昨年のウインバリアシオンの勝ち時計は2分28秒8)。東京コースも〈3.0.0.0〉と相性が良く、レースレベルの経験値では皐月賞組に見劣るものの、好勝負を期待できる要素はあるかもしれません。
ただし、2走前の弥生賞と前走・青葉賞を見る限りでは、外へ出して差してくるタイプという印象。仮に、今回も同じような末脚勝負を挑んだとして、はたしてワールドエースやヒストリカルといった“より以上のキレ味”が持ち味の馬たちに勝てるかどうか。元々は先行策から結果を出してきた馬なので、前目での競馬を試みるかもしれませんが、いずれにしても決め手という部分で一枚落ちるように思います。

前走、プリンシパルSを制したスピルバーグ
共同通信杯(3着)、毎日杯(3着)への出走歴があり、一線級と対戦した経験という点では、フェノーメノより上と見ることもできます。東京実績は〈2.1.1.0〉。力量的にはワンランク下のイメージですが、ノーマークは危険かもしれません。
カギになると思われるのは、1枠1番の枠順。
ロスなくインを回って脚を溜め、直線でラチ沿いから伸びてくるような競馬をできるかどうか。言い換えれば、最内枠をどれだけ生かせるかということ。このあたりは横山典騎手の乗り方に注目です。

西のトライアル・京都新聞杯をレコード勝ちしたトーセンホマレボシ
全般的に時計の速い京都開催だったとはいえ、2200m・2分10秒0のタイムは驚異的(しかも後で落鉄が判明)。しかも、2番手追走からの押し切りですから、スピードの持続力に関しては高く評価できると思います。2400mの経験があり、2200mでは2戦2勝という距離実績もプラス材料と見なせるでしょう。
問題は、やはり中2週のローテーション。中2週では2戦2連対の実績があるとはいえ、レコード勝ちの反動の有無は気掛かりな材料です。
万全な状態で前走と同じような流れを作れるかどうか。緩みのない平均ペースになれば、後方から追い込みをかける馬にとっては厳しい展開になるはずです。ディープブリランテ(こちらが主導権をとれば共同通信杯のようにスローになるかも?)との兼ね合いも含めて、今回のレースのカギを握っている1頭と言えるでしょう。

前走、毎日杯を制したヒストリカル
道悪の上、直線入口ではとても届きそうもない位置から豪快な差し切り勝ち。2走前のきさらぎ賞では、勝ち馬・ワールドエースを上回る32秒8の上がり。東京コースの末脚勝負という前提で考えれば、侮れない存在と言えるでしょう。
毎日杯の後、皐月賞をパスしてダービーに備えたローテーションも好材料。結果的に“道悪・ハイペース”のダメージを回避できたわけですから、その意味でも正解だったと思います。
もっとも、クリアしなければならない課題もあります。
初距離・初コース・初輸送。特に、距離に関しては、2000mよりも1800mでのパフォーマンスが際立っていることもあり、血統的には問題なしという意見が多いとはいえ、2400mでこれまでと同じ脚を使えるかという懸念も生まれます。
ワールドエースと同じく、この馬向きの展開になるかどうかも大きなポイント。好走には「確実に末脚を使えれば」という条件が付くように思えます。

今回、評価が難しいのは、前走NHKマイルC組。
ここ10年で3頭の勝ち馬(タニノギムレット、キングカメハメハ、ディープスカイ)を輩出しているステップですが、カレンブラックヒルに楽逃げを許した今年のレースレベル(時計面も含めて)を考えると、強調材料に乏しい印象も受けます。
2着のアルフレードは、2歳王者の実績は認めるものの、NHKマイルCではゴール前で余力がなくなっていた感もあり、距離延長がプラスとは思えない部分も。まして今回は大外枠。外々を回る距離ロスが加われば、さらに厳しいレースになるかもしれません。
3着のクラレントについては、差し馬に不向きな展開の中で伸びてきた点は評価できますが、この1走だけで復調と判断できるかどうか。加えて、新馬戦で1400mを使って2走目でデイリー杯勝ちという使われ方は、“目標・ダービー”のイメージにはそぐわないようにも思えます(陣営は「胸を張ってダービーに臨める」とコメントしていますが)。
6着のジャスタウェイは、NZT回避で状態が万全でなかったことを考えれば、今回は上積みが期待できそうです。ただし、東スポ杯、きさらぎ賞を使っていながらNHKマイルCを目標にしたのは、陣営が適距離をマイルと判断したからかもしれません。
NHKマイルC組にはまったくチャンスがないとまでは言いませんが、2000m(あるいはそれ以上)でも強力な決め手を使えるメンバーたちと比較した場合、それを上回るものがあるかどうか。少なからず評価が厳しくなるように思います。

最後に展開面。
オークスのように速いペースになるか、スローの瞬発力勝負になるか。先行馬が後ろを封じ込めるレースになるか、一気の外差しが決まる競馬になるか。見極めは難しいですが、ある程度の検討は必要でしょう。
Cコースへの変更となった今回、本番までの芝のレースから傾向を確認することも重要。高速か、時計のかかる馬場か。それによって、どの馬が能力を発揮できるかの判断にもつながると思います。



■オークス・短評

圧巻の2冠達成!
牝馬クラシック第2弾・オークスを制したのは、桜花賞馬のジェンティルドンナ。
勝ち時計の2分23秒6は従来の記録を1秒7も更新するレースレコードで、2着のヴィルシーナにつけた着差はなんと5馬身。まさに“ぶっちぎり”の勝ち方でした。

レースはマイネエポナが引っ張り1000m通過が59秒1。2400mの距離を考えれば、明らかに速い流れでした。
勝ったジェンティルドンナは他の有力馬を見る形で後方からスムーズに折り合った走り。直線入口で外に持ち出すと、例によって一瞬左右にヨレたものの、あとはごぼう抜き。メンバー最速の34秒2(ラストは11秒8)の上がりで瞬く間に後続を突きはなしました。追えば追うほど加速する素晴らしい末脚のキレ。この馬の持ち味が存分に発揮できたレースだったと言えるでしょう。
懸念されていた長距離輸送もクリアしプラス4キロでの出走。馬体もひと回り大きくなった印象を受けました。今後、さらにどのような成長を見せてくれるのか。3冠に挑戦する秋の走りが今から楽しみです。

桜花賞に続いて2着に入ったヴィルシーナ。
内田博騎手は速いペースを読んで意識的に中団に下げる競馬。“馬込みで揉まれる”というこれまでに経験のない展開だったこともあり、3コーナー手前から手応えが怪しくなりましたが、最後まで渋太く持ちこたえたのは、やはりこの馬の底力として評価できると思います。
結果的に、自分の形とは違う厳しいレースを強いられたわけですが、馬群に揉まれる経験をしたことは先々を考えればプラスになるはずです。

3着はゴール前で最内から伸びたアイスフォーリス。
無理に前を追いかけず、道中はインで脚を溜める作戦。ヴィルシーナ(内田博騎手)にも言えることですが、本来得意とする先行策にこだわっていたらどのような結果になっていたか。このあたりは松岡騎手の好判断が光ったと思います。
『展望ブログ』にも書いたように、先に抜け出してからの詰めの甘さ(2着4回)が目立った馬でしたが、今回のような“溜めの利く競馬”ができたことは、今後にとって収穫だったと言えるでしょう。

ハナ差の4着はアイムユアーズ。
ウィリアムズ騎手は「この馬には距離が長かった」とコメントしていますが、それを考えれば立派な内容。立ち回りが巧く完成度の高い馬という印象がより強まった感もあります。「ベストの条件ならばGⅠを獲れる馬」(同騎手)。今後、陣営がどのようなローテーションを選択してくるか注目です(秋華賞→マイルCSという使い方もアリかもしれません)。

最終的に1番人気に支持されたミッドサマーフェアは13着に大敗。
蛯名騎手は「敗因がよくわからない」といったニュアンスのコメントを残していますが、考えられるのはやはり“使い詰め”であった点。それに加えて、調教の速い時計でさらに負荷がかかり、オーバーワークになってしまったのかもしれません。まだまだ成長の余地がある馬だと思うので、今後の巻き返しを期待したいと思います。

今年のオークスを総括すると、一番のポイントは“速いペース”であったことは間違いないでしょう。
10RのフリーウェイS(1600万)でレコードを更新したように、当日の馬場コンディションは“超高速馬場”。軽い芝で前が簡単には止まらないため、流れは速くなりがちです。
先にも述べたように、逃げたマイネエポナの1000m通過は59秒1。桜花賞の1000m通過が59秒3ですから、ほぼ同じと見なせます。今回の1600m通過が1分35秒7。レースの上がりが35秒3(ジェンティルドンナの上がりは34秒3)だった桜花賞の勝ち時計・1分34秒6と比較しても約1秒しか差はありません。
ちなみに、2011年の場合は、桜花賞の1000m通過は58秒5で、オークスは60秒7。桜花賞の勝ちタイムは1分33秒9で、オークスの1600m通過が1分37秒9。レースのラップはまったく異なっています。

つまり、極端に言えば、今回のオークスは「桜花賞プラス800m」のレースだったという見方ができます。スローで折り合いに専念する長距離戦にありがちな展開ではなく、「桜花賞と同じように1600mを走ったあと、未知の800mに挑む」という形だったとも言えるでしょう。
そう考えれば、3頭の叩き合いになり4着以下に差をつけた、桜花賞の1~3着馬がここでも上位にきたことは納得できると思います。「時計が速すぎて誤魔化しの利かない競馬になった」という武豊騎手のコメントの通り、底力が試されるレースだったということ。そして、桜花賞と同じような流れだったからこそ、桜花賞での力の差がそのまま今回の結果につながったと思います。

一方で、トライアル・別路線組にとっては厳しいレース。
フローラSの1000m通過は61秒7、忘れな草賞にいたっては64秒8。前走、緩いペースで先行できたダイワデッセーやキャトルフィーユは好位のポジションをキープすることさえできませんでした。かと言って、無理に押して先団に付ければ、最後まで脚がもたない流れであったことも確かです。それゆえ、スローが得意な先行タイプでありながら、中団で巧く脚を溜めて結果を出したアイスフォーリスの走りは評価できると思うのですが・・・。

今後に期待をもたせてくれた馬をあげるならば2頭。
まず、馬群に揉まれて窮屈な競馬になりながら、直線外に出すといい脚を見せたダイワズーム(6着)。
使い詰めの不安があったことを考えれば、大健闘と言えるでしょう。大崩れしない確実な馬という印象が強まりました。
もう1頭は、ハナズゴール(7着)。
GⅠから中1週のローテーションという条件でしたが気配は前走以上。坂上で止まったのは、やはり距離が原因でしょう。それでも、一瞬ながら伸びかけた脚は「おっ?」と思わせるもの。距離短縮で見直したいと思います。

最後に、次週のダービーを見据えた上で、ディープ産駒について。
1・2着独占ということで、この距離でも走れるという見方がされているようです。
ただし、ここまで述べてきたように、今回のオークスは「マイルの流れプラス延長距離」という展開。特異なレースであったことは確かです。仮に、折り合い重視のスローな上がり勝負になった場合はどうなのか。そのあたりを考える必要があるでしょう。
もしオークスがスローな展開だったら、ジェンティルドンナはあれだけの脚を使えたかどうか・・・。あるいは、ヴィルシーナはもっと前に付けて早目先頭から押し切れたのではないか・・・。ダービーに出走するディープ産駒もそれぞれタイプが違うだけに、今回の結果だけで「距離が伸びても末脚はキレる」「後方からでも外に出せば届く」といった先入観を持つのは危険だと思います。



■オークス・展望

牝馬クラシック第2弾、GⅠ・オークス。
過去10年のデータでは「前走・桜花賞組が優勢」。その理由はやはり“経験値の差”でしょう。
GⅠの厳しい流れや本番へ向けての目イチの仕上げを経験することは、成長期にある3歳牝馬にとって大きな糧となるはず。それに対して、トライアル・別路線組のほとんどは、このレースが“一線級との初対戦”。トップクラス同士で頂点を競い合った経験がアドバンテージになっていることは間違いありません。
今年に関しても、中心視されているのは桜花賞上位組。となれば、やはり“1600mから2400mへの距離延長”が大きなポイントになると思います。もちろん、トライアル・別路線組の食い込みについても検討が必要。ここ2年、3着以内に入った6頭のうち4頭はトライアル・別路線組という傾向もあり、一概に軽視はできないでしょう。
東京芝2400mという条件で能力を発揮できるのはどの馬か。一部では“3強(桜花賞1・2着馬+フローラS勝ち馬)の争い”とも言われているようですが、そう簡単に結論を出せるかどうか。未知の条件であるだけに、各馬の分析・比較は難しくなりそうです。

前走、桜花賞を制してクラシック1冠に輝いたジェンティルドンナ
トライアルのチューリップ賞では熱発明けの影響もあって4着に敗れたものの、本番では見事な巻き返し(メンバー最速の上がりで差し切り勝ち)。牡馬混合のシンザン記念を勝った潜在能力の高さを証明した形になりました。状態が万全ならば順当に力を発揮できるタイプとも言えるでしょう。
この馬については、距離延長がプラスに働くかどうかを考える必要があると思います。言い換えれば、桜花賞よりも条件が好転する要素があるかということ。
デビュー以来、出走したすべてのレースがマイル戦。ゆえに、当初から桜花賞が目標であったことは容易に推測できます。同様の使われ方をしていたのが、昨年の桜花賞馬・マルセリーナ(オークスは4着)。はじめからオークスを視野に入れていたわけではなく、“桜花賞馬として2冠目の目標”として臨むところが2頭の共通項のようにも思えます。
当然、今回は距離延長がカギになるでしょう。前走を見る限り、折り合いに関しての不安は感じませんでした。むしろ気になったのは“仕掛けた後に左右にモタれる走り”。ゴール前でジョワドヴィーヴルに迫ったチューリップ賞でも加速までワンテンポ遅れるなど、スムーズにギアが入らない一面があるのかもしれません。
もし仮に、ジェンティルドンナがエンジンのかかりが遅いタイプだとすれば、追い出しのタイミングが難しくなるはず。特に、各馬が折り合いに専念してスローの上がり勝負になった場合、スピードが乗るまでに手間取るようだと、いかに直線の長いコースとはいえ“差して届かず”のケースも考えられます。
さらにこの馬には、初距離・初コース・初輸送と、クリアしなければならない課題があることも事実。能力の高さは認めるものの、東京芝2400mという条件で全幅の信頼を置けるかどうか。少なからず不安要素が目につきます。

桜花賞2着のヴィルシーナ
ジェンティルドンナとは対照的に、この馬はデビュー当時からオークスを視野に入れた使い方をされてきました。距離は1800→1800→2000mで、いずれも牡馬混合戦。意識的にタフなレースを経験させたことがわかります。
“長くいい脚を使える走り”が持ち味で、桜花賞出走にあたっては、多くの評論家の意見が「桜花賞よりもオークス向き」というものでした。それだけに、2着という結果は距離やスピードへの対応力という部分で、さらに評価が高まったとも言えるでしょう。
3走前は2000m戦で勝利(エリカ賞)。2走前は東京コースで勝利(クイーンC)。マイル以上の距離と関東への輸送を経験している点が、ジェンティルドンナに対してのアドバンテージと考えられます。「今回は逆転する」という声が多いのもそのためでしょう。
ただし、桜花賞より条件が好転するとはいえ、気掛かりな材料がないとは言い切れません。
この馬の場合、地元の関西圏ということで中3週で出走した3走前のエリカ賞以外は、2ヶ月からそれ以上のゆったりとした間隔で使われてきました。今回は輸送競馬で中5週。しかも、前走の桜花賞は“長い距離の方がいいと評価されていた馬がマイル戦で激走”という見方もできるレース。反動も含めて、状態面が万全かどうかが気になるところです。
「クイーンCは東京コースと輸送を経験させるために出走したレース。結果が出なければ桜花賞を回避するつもりだった」
これは友道調教師のコメントですが、穿った見方をすれば、クイーンC勝ちから桜花賞への出走は“予定外”(もしくは“嬉しい誤算”)だったのかもしれません。一貫して「オークスが最大目標」と言い続けてきた同調教師。しかし、ここ2戦はマイルでの好走。GⅠを経験したことはプラス材料とは思いますが、実際には当初のローテーションが狂ったのではないか。あるいは、マイル戦の連続好走が馬自身の走りに影響を及ぼさないか。そのあたりに若干の懸念が生まれます。

桜花賞3着のアイムユアーズ
デビュー以来ここまで7戦して〈3.2.2.0〉。馬券圏内を外したことのない抜群の安定感は“買い”の材料と言えるでしょう。しかも、新馬と未勝利以外の5戦はすべて重賞ですから、実績と経験値についても高く評価できると思います。
問題は距離。
『桜花賞・短評ブログ』にも書いたように、この馬のパフォーマンスは1600mよりも1400mがベストの印象。さらに距離が延びる今回の2400mでこれまで通りの堅実な走りができるかどうかが大きな課題になると思います。これまでの走りで見せた“高い完成度”。これを「完成度の高い馬だから距離が延びても大丈夫」と考えるか、あるいは「1400、1600で完成された馬だから距離延長にはリスクが伴う」と判断するか。予想においては、そのあたりの見極めが重要になるかもしれません。
陣営は「桜花賞の敗因はキレ味の差」と判断し、今回の調教では3頭併せの最後方から末脚の伸びに重点を置く走りを課しました。となれば、道中いかに流れに乗って脚を溜められるかがポイントになりそうです。その意味ではロスなく回れる最内枠はプラス。あとは、名手・ウィリアムズ騎手がどのような手綱捌きを見せてくれるかでしょう。

桜花賞5着のメイショウスザンナ
重賞勝ちはないものの、2走前のフラワーCでは2着。東京コースでは3走前のセントポーリア賞を勝っています。
この馬の持ち味は脚質の自在性。逃げも打てれば後方からの追い込みも。言わば、出たなりの競馬ができる強味があります。桜花賞は長距離輸送のフラワーCから中2週での出走。それと比較すれば、じっくりと調整できた点もプラスと判断できるでしょう。
ただし、勝ち切るまではどうか。
これまでの2勝はアタマ差とハナ差。他を圧倒する凄みには欠けているように思えます。最終的には相手関係がどうかということになるでしょうが、“桜花賞負け組”の伏兵の中では最も強調材料を備えた1頭とも思えるので、一応のマークは必要かもしれません。

フラワーCを勝ったオメガハートランドも要注意の1頭。
桜花賞では12着に敗れましたが、フラワーCから中2週での直前輸送もあり、マイナス10キロの馬体減。万全の状態ではなかったように思います。
メイショウスザンナと同じく、レース間隔という点では条件好転。年明けのフェアリーSでは1番人気、続くクイーンCでは3番人気と、重賞でも上位に支持されるほどの能力評価をされていた馬だけに、大駆けの可能性も無視できません(今回、初ブリンカーというのも興味ある材料です)。
もっとも、近走のレースぶりを見ると、後方からの競馬になりすぎの感も。マイルのクイーンCでさえ掛かり気味の走りを見せていたので、スローペースでは距離的なリスク(折り合えず道中で消耗する)が生じるかもしれません。ある程度流れて先行勢が苦しくなるような展開の方が、持ち味を発揮できそうです。あと、欲を言えば、もう少し馬体が成長してくれればいいのですが・・・。

東京コース向きということで、トーセンベニザクラ(桜花賞8着)を伏兵に推す声もあります。
たしかに、赤松賞の上がり33秒2のキレ味は強いインパクトを残しましたが、これまでの実績を見るとマイル向きの印象も。調教の動きも良く陣営も強気なので、気になる存在ではありますが、「折り合って距離がもてば」という条件がつくと思います。
同様に、サンシャイン(桜花賞10着)、エピセアローム(同15着)についても、これまで使われてきたレースや距離を考えると“目標は桜花賞”というタイプ。距離延長がプラスに働くかという点では疑問です。

むしろ怖いのは、逃げ宣言をしているマイネエポナ
桜花賞では13着に敗れましたが、陣営はこの結果について「不良馬場のアネモネSの疲れが抜けず調整不足だった」とコメント。同じアネモネS組のパルルサルー(今回回避)のような大きな馬体減こそなかったものの、万全の状態とは言えなかったのでしょう。
東京コースは〈0.0.0.2〉と結果が出ていませんが、その時点での脚質は中団から差し。枠順をいかしてハナを奪いマイペースで運べるようならば、見せ場以上の走りを期待できるかもしれません。

トライアル組の有力候補としては、フローラSを制したミッドサマーフェア
開幕週でスローペースという内の先行馬が有利な条件でありながら、中団から見事な差し脚(メンバー最速の33秒4)を見せてくれました。以前の掛かり癖が影を潜めたのも強調材料だと思います。
東京実績は〈2.1.0.1〉。唯一の着外は4走前のクイーンCですが、この時も先行有利の流れで33秒4の上がりをマーク。最後は確実にいい脚を使ってくる馬という評価もできるでしょう。
調教では坂路4F・48秒8という驚異的な時計をマーク。レースではまだまだ粗削りな面があるようにも思えますが、能力を発揮できれば桜花賞組相手に好勝負が期待できるかもしれません。

3連勝でトライアル・スイートピーSを勝ったダイワズーム
ミッドサマーフェアのような圧巻のキレ味はないものの、追ってから渋太い脚を使える印象。前走でも、先に抜け出したココロチラリ(2着)を交わすのにかなり手間取りましたが、抜けてからはキッチリ差をつける走りでした。競馬が上手というイメージもあり、あるいは、ゴール前の混戦に強いタイプかもしれません。
2000mは〈0.1.1.0〉。東京コースは〈1.2.1.1〉。経験値が豊富なことも見逃せない材料でしょう。

ただし、ミッドサマーフェアもダイワズームも、上がり目という点ではどうか。
2頭とも今年に入ってすでに5戦を消化。天候の悪かった3月に道悪を走っていることも加味すれば、蓄積された疲労や消耗が懸念されます。ちなみに、データを参考にすると、過去10年で年明け5戦以上使った馬の成績は3着が1回のみ。あくまでデータとしての数字ですが、不安材料として捉えることもできるでしょう。

フローラS2着のアイスフォーリス、同じく3着のダイワデッセーについては、内の先行馬が有利な展開が味方したという意見が大多数。実績・経験という点でもここでは見劣りするように思います。
もっとも、枠順に関しては、共に内目の絶好枠。前走と同じように、インで巧く立ち回った馬が有利なレース展開になれば、浮上の余地があるかもしれません。
詰めの甘さ(2着4回)はあるものの、1800~2000mに良績が集中しているアイスフォーリス。休み明けの前走からの上積みが見込め、唯一2400mを経験しているダイワデッセー。相手関係はともかく、それなりに強調できる点もあると思います。
スイートピーS2着のココロチラリは3月デビューでキャリア3戦の馬。よほどの大物ならば話は別ですが、この先経験を積んでからというのが妥当な見方でしょう。

別路線組からは、忘れな草賞を勝ったキャトルフィーユ
レースは逃げ馬を番手でマークして直線で交わすとそのまま後続を突きはなす強い勝ち方。3走前のアルメリア賞でも牡馬相手に2着に逃げ粘る好走を見せています。
もっとも、自分の形にならないと脆い面も。2走前のフラワーCでは後方から流れに乗れないまま5着。全成績を見ても道中3番手以降に下がると着外という結果。今回も自分で流れを作れる位置をキープできるかどうかがカギになるかもしれません。その意味では、8枠16番という枠順はプラスとは言えないでしょう。
昨年の忘れな草賞馬・エリンコートがオークスを制したこともあって、注目されるところもあるようですが、今年の勝ち時計は昨年よりも3秒近く遅いタイム。伏兵として面白い存在とは言えるものの、「忘れな草賞を勝ったから」という理由だけでは狙い目にならないと思います。

取捨選択が難しいと思われるのがハナズゴール
チューリップ賞でジェンティルドンナやジョワドヴィーヴルを退けたように、決め手に関しては世代でもトップクラス。順調度を欠いた前走の牡馬混合GⅠ・NHKマイルCでも、差し馬に不向きの展開でありながら、最後は差を詰めて7着。能力的には上位という評価を与えられるでしょう。
ただし、今回はGⅠから中1週のローテーション。さらに、過去6戦のうちマイル5戦・1400m1戦という距離実績も強調しづらい材料。
とはいえ、NHKマイルCを使ってオークスというローテーションは、桜花賞を回避した時点で決定していたとのこと。過去に例を見ないからといって、無謀とは決めつけられない部分もあります。
もし仮に桜花賞に出走して結果を残していたら、今回はかなりの上位人気に支持されていたはず。そう考えると、厳しいローテーションとはいえ、態面が万全であれば好勝負できる可能性(距離を克服できるという前提ですが)もあるかもしれません。

最後に、今回のレースで注目したいのは、「ディープ産駒が2400mでどのような走りをするか」という点。
ディープ産駒のGⅠ制覇がマイル戦に限られ、昨年のオークスでも6頭出走して1頭も馬券に絡めなかったという結果から、距離適性に関してさまざまな意見が述べられています。
もちろん、初年度と2年度の違いや牡馬・牝馬の差もあるので、ひと括りで考えるのは危険ですが、ディープ産駒の有力馬が出走する来週のダービーを見据える上でも参考になるのではないでしょうか。




■ヴィクトリアマイル・短評

GⅠ・ヴィクトリアマイルを制したのは、4番人気のホエールキャプチャ。GⅠ挑戦6度目にして悲願のタイトルを手にしました。

レースは予想通りクィーンズバーンがハナを奪い、前半3F通過が34秒4の緩やかな流れ。勝ったホエールキャプチャは好スタートから3番手のポジションをキープ。インのポケットで流れに乗ると、直線半ばまで追い出しを我慢し残り300mでスパート。そのまま後続を振り切りました。
ひとことで言えば、まったく危なげのないレース。この馬の能力をフルに発揮できた“完璧な内容”だったと思います。
横山典騎手の騎乗も見事でした。緩いペースを読み切ったポジション取り。抜け出すとフワフワする馬の習性を熟知した上での追い出しのタイミング。すべてが理想的に見えました。レース後、勝利の“デットーリ・ジャンプ”までやって見せた横山典騎手。自身にとっても“会心の騎乗”だったということでしょう。
人気では「実績のアパパネ」「勢いのオールザットジャズ」に及ばなかったものの、能力と安定感に関しては、すべて馬券に絡んだクラシック3冠と差のない4着だった古馬混合のエリザベス女王杯で立証済み。前走の内容がいかにも叩き台だったことを踏まえれば、今回最も軸馬にふさわしい1頭だったように思えます。

2着は7番人気のドナウブルー。
前走は輸送で大きく馬体を減らしたことが大敗につながりましたが、今回はプラス12キロで出走。陣営が最も懸念していた課題はクリアできていました。
好スタートから2番手へ。外枠でも押して上がってきたのは、前目のポジションが有利と考えたウィリアムズ騎手の好判断と言えるでしょう(元々、前で競馬をする馬であったことも確かです)。最後の直線では右に大きくヨレてしまいましたが、ジョッキーいわく「1度でも左回りを経験していれば違ったはず」。重賞経験をはじめとするレースキャリアを考えれば、大健闘といえる内容だったと思います。
最後の脚色を見ると「これ以上距離が長くなると厳しいかな?」という印象も。秋の目標を考えた場合、エリザベス女王杯よりもマイルCSではないかと思います。長距離輸送の馬体減を2度目でクリアできたことは、学習能力の高い馬と評価してもいいでしょう。この先経験を積んでどのように成長するか、楽しみにしたいと思います。

3着はメンバー最速・33秒5の上がりを見せたマルセリーナ。
若干出負け気味のスタートで後方から。最後は前をこじ開けるように追い込んできましたが、すでに前2頭で大勢が決した後でした。
もっとも、外を回らずに済んだとはいえ、先行勢に有利なレース展開で3着という結果は、評価に値するでしょう。『展望ブログ』では「桜花賞馬の復活は半信半疑」といった内容を書きましたが、今回のレースを見ると「キレる脚を確実に使えるようになった」という印象が強く残りました。特に、馬込みを苦にしないところは、今後この馬の大きな武器になるかもしれません。
ゲートをはじめ、まだまだ粗削りな部分も目につきますが、ドナウブルーと同じく今後の成長(経験を重ねることによって)が期待できそうです。

ハナ差の4着にはキョウワジャンヌ。
前走で出遅れ癖を見せたので、そのあたりを懸念していましたが、今回はスムーズに好位中団のインでの競馬。秋華賞でも見せた“内枠に入った時の立ち回りの巧さ”を披露してくれました。
柴田善騎手は「もっと距離があった方がいい」とコメント。ジョッキーならではの判断かもしれませんが、元々はマイル以下の距離で勝ち上がってきた馬なので、今回のように団子になる展開ではなく縦長に馬群が流れた方が力を出せるという意味にも解釈できるかもしれません。今後の陣営の使い方に注目でしょう。

1番人気のアパパネは5着。
「女王復活なるか」が焦点でしたが、残念ながら、以前のような走りを見ることはできませんでした。
道中は馬込みの中団で我慢する形でしたが、直線で前が開いた時には絶好の位置。「絶好調時ならば一気に抜け出して勝てたのではないか」「悪くても3着争いはモノにできたはず」・・・。そんな印象が残りました。
蛯名騎手は「道中でモマれてスムーズな競馬ができなかった」とコメントしていますが、それは多かれ少なかれ他の馬にもあてはまること。直線でまったく弾けなかった走りは、やはりこの馬自身の状態面が原因ではないでしょうか。
ファンにとっては、次走の取捨選択がさらに難しくなった感も。「阪神牝馬Sに比べれば良くなった。次はもっと良化が見込めるはず」という意見もありますが、個人的には「阪神牝馬Sよりもはるかに好走できる条件であり展開だった」と思います。
次走に向けて陣営がどのような対策を講じてくるか。まずはその点に注意が必要でしょう。

今回、外を回った差し・追込馬はいずれも大敗を喫しました。
2番人気のオールザットジャズ(16着)は終始外々を回らされて14着。
『展望ブログ』では「マイルへの対応が課題」と書きましたが、結果的には、最後まで流れに乗れないまま終わってしまったようです。藤岡佑騎手は「テンのスピードについて行けなかった」とコメント。ブログで指摘したように、1800m戦からの中2週では戸惑いがあったのかもしれません。
5番人気のフミノイマージン(15着)も同様。
ただし、この馬の場合は、前に行こうとするたびに外からオールザットジャズに被さられる形になる不運も。とはいえ、自分から動ける競馬ができれば、多少なりとも違った結果になったのでは。直線勝負が身上の馬の脆さが出てしまったように思います。

今回のレースは“展開の向き・不向き”が結果につながったと言われています。となれば、この展開を事前に予想できたかどうかの検証も必要でしょう。
『展望ブログ』には「レースのカギを握るのはクィーンズバーン」と書きました。クィーンズバーンが逃げれば、これまでのレースぶりから、前半3F34~35秒という緩めのペースになることも予想できたと思います。
緩めのペースでは、逃げ馬自身も含めて“どの馬も脚が温存されている状態”になります。したがって、番手につけたジョッキーは、自分の馬の手応えがよければ無理に逃げ馬を潰しに行くことはないはずです。楽なペースでギリギリまで脚を溜めた方が最後の伸び脚も違いますし、下手にペースアップすれば後方にいる差し・追込馬に有利になることもわかっているからです。
まして、今回の2・3番手は“巧さに定評のある”ウィリアムズ騎手と横山典騎手。そのあたりはしっかり計算できていたでしょう。(偶然にもこの2人は、『展望ブログ』の中で「仕掛けどころ・手綱さばきに注目」と名前をあげた騎手でした)
あくまで結果論ですが、クィーンズバーンが自分の逃げ方をすることを前提に考えれば、「番手・好位に付けられるのはどの馬か」「その馬に騎乗するジョッキーはペースを読めるか」というポイントから、今回のレース展開を推測できたかもしれません。


■ヴィクトリアマイル・展望

春のマイル女王を決めるGⅠ・ヴィクトリアマイル。
このレース、近年はウオッカ、ブエナビスタという、牡馬混合のGⅠでも結果を出せる“レースの中心的存在”がいたため、馬券的にも組み立てやすい部分もありました。
ところが、今年は一転して混戦模様。「連覇を狙うアパパネ vs 勢いのある4歳馬」が基本的な構図と言われているようですが、複勝圏内まで範囲を広げれば、どの馬が来てもおかしくないメンバー構成といった印象もあります。

土曜午後1時の時点で単勝1番人気に支持されているのは、昨年の勝ち馬・アパパネ
牝馬限定とはいえGⅠ5勝の実績。東京芝マイルは〈3.0.0.1〉。格と条件に関しては、文句なしの数字と言えるでしょう。
4ヶ月ぶりの前走・阪神牝馬Sでは7着に敗れましたが、久々を走らないのはいつものこと。これまで3ヶ月以上の休養明けでは〈1.1.0.3〉。それに対して、叩き2戦目は〈4.0.1.0〉。レースを使ってガラリと変わるタイプという見方ができます。
問題は「本当に今回も一変できるのか?」という点。
例えば、昨年と今年の叩き台のレースにおける走りを比較してみると、昨年のマイラーズCでは直線入口で行き場を失いながらも最後は差を詰めてきたのに対し、今年の阪神牝馬Sでは外目からスムーズに直線に入っても弾けることなくなだれ込むような競馬。初の1400m戦で追走に手一杯だった、あるいは過去最高となる馬体重の影響があったのかもしれませんが、それにしても覇気のなさが気になりました。
さらに、昨年の場合は、前年のエリザベス女王杯の後にゆっくり休養を取っての復帰戦でしたが、今年は暮れに香港遠征を挟んだ臨戦過程。香港マイルが13着(14頭中)の大敗だったことを加味すれば、心身両面におけるダメージの有無も懸念されます。
陣営は2週連続で従来の坂路ではなく左回りCコースでの追い切りを敢行。本番を見据えたハードな調教は、ある意味“陣営の焦り”とも受け取れます。1走使ったことによって、そして、調教の効果によって、“ブエナビスタを正攻法で敗った強いアパパネ”が復活するか否か。いずれにしても、この馬の取捨選択は予想におけるひとつのポイントになると思います。

前走、福島牝馬Sを制したオールザットジャズ
1000万・1600万を連勝して挑んだ2走前の中山牝馬Sでも2着に入り、近走の勢いと充実ぶりに関してはメンバー1と評価できるでしょう。
3走前は京都の坂を利用してマクリ気味に進出。中山牝馬Sはスタートで後手を踏みながらも直線で強烈な追い込み。そして、前走は好位から抜け出し後続を突きはなす競馬。このように、状況に応じて自在なレース運びができるところが、最大の持ち味だと思います。
課題は、久々のマイル戦に対応できるかどうか。
〈4.2.0.0〉という数字が示すように、この馬の良績は1800mに集中(1600mは〈0.0.0.2〉)。さらに、初の東京コースも試練になるかもしれません。近2走がコーナー4回の小回りコースだっただけに、流れに乗れるかどうかがカギになりそうです。
角居調教師は「マイルを想定した調教を行った」とコメントしていますが、中2週の詰まった間隔で“異なる条件”へ出走するわけですから、馬が戸惑う危険性も。脚質の向き・不向きではなく、道中でうまく息を入れられるかどうかが不安要素と言えるかもしれません。

昨年の桜花賞馬・マルセリーナ
それ以降の5戦は馬券に絡むこともできませんでしたが、前走の阪神牝馬Sではクビ差の2着。「復活の兆しが見えた」という声も上がっています。
もっとも、前走の結果だけでこの馬に高い評価を与えられるかどうか。
桜花賞で見せた末脚のインパクトが強かったため、潜在能力が過大に評価されているようにも思えます。前走にしても、4コーナーで外に膨らむなどまだまだ粗削りな面があり、成長途上という印象も。さらに加えれば、馬場状態の差があるとはいえ、2走前の阪神Cと同じ条件を走りながらタイムは1秒も遅かったのですから、「ここにきて格段に良くなった」とは言えない部分もあります。
今回、最内枠に入りましたが、これについても判断が難しいところ。インで脚を溜められるのはプラス材料ですが、一方で前が詰まったり包まれたりするリスクも生じます。全3勝すべてがマイル戦ということから、条件的には合っているのでしょうが、信頼性という点ではもうひとつのような気がします。

昨年の桜花賞2着馬・ホエールキャプチャ(土曜日の午前中はこの馬が1番人気に支持されていました)。
オークスと秋華賞でも3着に入り、クラシック戦線ではマルセリーナ以上の結果を残しました。出走レースすべて(12戦)で掲示板に載る堅実派。安定感という点では大きな強調材料になると思います。
マイル実績は〈2.2.0.0〉。東京マイルはクイーンC勝ちの舞台。条件についてはプラスと考えて差し支えないでしょう。
前走の中山牝馬Sは5着に敗れましたが、最終追い切りでは動かず、いかにも“使い出し”と思えるプラス14キロでの出走。レースも3コーナー手前まで掛かり気味。斤量(55.5キロ)の影響もあったかもしれません。
陣営は「いいガス抜きができた」とコメント。叩き2走目の今回は順当に上積みが見込めそうです。
ただし、この馬については、“勝ち切れない”という印象も。
1番人気に支持された昨年の秋華賞で、内を突いたアヴェンチュラとキョウワジャンヌに先着を許したように、外からまとめて交わすといった強烈な決め手には欠けるように思います(言い換えれば、好位抜け出しの正攻法の競馬が持ち味ということ)。追い比べの上がりの競馬では若干分が悪いので、横山典騎手の仕掛けのタイミングがカギになりそうです。

これまで牝馬限定重賞で3勝をあげているフミノイマージン
いずれも1800~2000mのローカル重賞なので、一見すると、東京マイルでは持ち味が発揮できないようにも思えます。
ただし、ヴィクトリアマイルを目標に定めた陣営の馬の使い方は要注目。
京都牝馬Sではなく本番を想定して東京新聞杯に出走。得意距離の中山牝馬S・福島牝馬Sではなくマイルの速い流れを想定して1400mの阪神牝馬Sに出走。今回のレースを目標にシフトチェンジしてきたことが明確です。この点は、得意の1800mを使ってきたオールザットジャズとは対照的と言えるでしょう。
東京新聞杯は、牡馬相手に56キロの斤量を背負いながら、最後は中を割るようにメンバー最速の脚を使って4着。阪神牝馬Sは外に膨らんだマルセリーナを避ける不利がありながらも追い込んで3着。前哨戦としては、どちらも及第点を与えられると思います。
あとは、展開が向くかどうか。
3走前の小倉・愛知杯では器用なマクリの脚を見せましたが、基本的には4コーナー10番手以降からの追い込みがこの馬の身上。こうした脚質には常に“差して届かず”の危険性があります。この馬の取捨に関しては、簡単に「府中向きの差し脚」と考えるのではなく、レースの流れ(差し馬向きのペースになるかどうか)を想定して検討する必要があるでしょう。

前走、阪神牝馬Sを逃げ切ったクィーンズバーン
3走前の京都牝馬Sでも逃げて5着に粘っていますが、どちらのレースも外から差してきた馬が上位を占めていることから、展開に恵まれただけとは言い切れないと思います。
特に、阪神牝馬Sは道中カトルズリップスに終始マークされる形になりながら、最後は後続を突きはなす強い勝ち方。今回もすんなりハナを奪えるようであれば、鞍上が内田博騎手ということもあり、侮れない存在になりそうです。
この馬の逃げ方は、前半3F34~35秒という緩めのペース。先週のNHKマイルCを勝ったカレンブラックヒルと似たようなラップを刻みます。したがって、直線半ば過ぎまでペースを握られた場合は、差し・追込馬の末脚が不発に終わる可能性もあるでしょう。もしくは、好位グループが脱落して中団後ろあたりの馬が上位に食い込むという展開も考えられます。
一方で、NHKマイルCが逃げ切り決着だったことから、他馬のジョッキーのマークがきつくなることも予想できます。その場合、早めに馬群が動いてペースが乱れることも考えられ、後方で脚を溜めていた馬には有利な流れになる可能性もあります。
ある意味、このレースのカギを握る馬。クィーンズバーン自身が馬券圏内に逃げ粘るパターンも含めて、何通りものイメージを想定した方がいいかもしれません。

昨年、このレースで3着に入ったレディアルバローザ
2走前の中山牝馬Sではマイペースの逃げ切り勝ちを収めたましたが、前走の阪神牝馬では10着と大敗。馬柱表の戦績欄からもわかるように、結果にムラがあるため、狙い方が難しい印象を受けます。
昨年は中山牝馬Sで重賞初制覇を遂げた後、勢いに乗っての参戦でしたが、今回は1走挟んでの出走。このあたりのローテーションに関しても、理由を見つけるのが難しく思われます(中山牝馬Sが時計がかかる逃げ切りだったので、スピード競馬に慣れさせる目的で使ったのかもしれません)。
もっとも、今回のメンバーならば、能力的に見劣りはしないはず。器用で立ち回りの巧い馬なので、内枠もプラスに働きそうです。鞍上も相性のいい福永騎手。追い比べになるともうひとつキレない脚ですが、昨年のように好位のインから抜け出す競馬ができれば、結果につながるもしれません。

東京芝1600mには〈3.1.0.1〉の実績があるアプリコットフィズ
この馬の強調材料は、昨年秋の牡馬混合重賞での好走でしょう。京成杯AH2着、富士S2着。2つのレースの勝ち馬はマイルCSの1・2着馬ですから、実績として評価できると思います(続くキャピタルSでは、東京新聞杯を制したガルボを退けての1着)。
あとは、状態面。
今年に入ってからの2戦は結果が出ず、走りの内容もチグハグな印象。行くでもなく控えるでもなく、力んでリズムを崩しているようにも見えました。どんなにコース実績が高くても能力を出せなければ勝負になりません。直前の気配にはチェックが必要でしょう。

直前のチェックについては、ドナウブルーも同様。
2走前に格上挑戦ながらも京都牝馬Sを勝ちましたが、前走の中山牝馬Sは大敗(11着)。陣営は「輸送による馬体減(マイナス16キロ)が敗因」と分析し、今回に関しても「馬体重がカギ」とコメントしています。そのあたり、取捨選択の判断材料になりそうです。
デビュー当時(新馬戦を2馬身差の圧勝)から評判の高かった馬なので、潜在能力が開花すれば活躍が期待できそうですが、現時点ではまだまだ経験不足なのでは。とはいうものの、鞍上にウィリアムズ騎手の手綱さばきには注目したいと思います。

伏兵陣の食い込みも要注意。

末脚勝負になった場合は、昨年のローズSで強烈な印象を残したキョウワジャンヌマイネイサベルにもチャンスがあるかもしれません。
どちらも道中インで巧く脚を溜めることが条件。特に、マイネイサベルに関しては、松岡騎手が「近2走は気持ち良く前に行き過ぎた」と反省しているので、じっくり構えてくると思います。

近走、差のない競馬を続けているアスカトップレディは、できれば好位で立ち回りたい馬なので、大外枠がどう影響するか。序盤の位置取りがポイントになりそうです。

昨年のこのレースで4着に健闘したグランプリエンゼル。スプリント戦で結果を出していますが、今イチ詰めが甘い(差して届かない)ところがあるので、マイルへの距離延長がプラスに働くかもしれません。もっとも、本来ならば前走が引退レースだったとのこと。間隔が空いたとはいえ、目イチで仕上げた後の1走は馬にとって厳しいかもしれません。

大穴候補ならばアニメイトバイオ
今年に入ってからの休養明け2戦は結果が出ていませんが、2走前の中山牝馬Sはプラス28キロの余裕残し。18キロ減で臨んだ前走・福島牝馬Sは前が窮屈になる展開で最内を突きましたが、結果的に外差しの馬に屈する形になりました。とはいえ、まったく動けなかった中山牝馬Sに比べれば明らかに良化と思える内容。3歳時はアパパネの好敵手として活躍した潜在能力のある馬だけに、もしかしたら大駆けがあるかもしれません。インの中団あたりに位置して直線で抜け出してくる競馬ができれば面白いと思います。


■NHKマイルC・短評

3歳のマイルGⅠ・NHKマイルCを制したのは、1番人気のカレンブラックヒル。
好スタートからハナを奪い、そのまま逃げ切り勝ち。終わってみれば、2着馬に3馬身半差の完勝でした。
1番の勝因は、自分でレースを作れたこと。
先行しながらも最後にもうひと伸びできる脚があることは、前走のNZTで証明済みでしたが、今回は自分のペースで行けた分、さらに後続を突きはなす脚を使うことができたように思います(それにしてもラスト2Fからの加速は見事でした)。
もっとも、鮮やかな逃げ切りだった反面、「ずいぶん楽に勝たれたなあ」という印象も。確固たる逃げ馬、特にスプリンター系のハイペースで飛ばすタイプが不在だったため、カレンブラックヒルの注文通りのレースになったとも言えるでしょう。前半3F通過が35秒1、勝ち時計は1分34秒5。タイム的に強調できないということは、ペース配分の巧さがあったとはいえ、楽な展開だったことは確か。個人的には、好位から突き抜けてくるような正攻法の強い競馬を期待していただけに、若干の物足りなさを感じた部分もあります。
とはいえ、デビューから4連勝でのGⅠ制覇は高く評価すべきでしょう。悲願のGⅠタイトルを手にした秋山騎手の“真摯な騎乗”にも拍手を送りたいと思います。
今後の課題をあげるならば、常に自分の走りができるかどうかという点。古馬混合重賞で厳しい流れになった時でもスッと好ポジションをキープできるならば、マイラーのトップクラスとしての活躍を期待できるかもしれません。

2着は2歳王者のアルフレード。
朝日杯の勝因のひとつが「インをロスなく通ったレース運び」だったので、今回の外枠は不安材料でしたが、外々を回りながらも最後までよく踏ん張りました。このあたりはウィリアムズ騎手の“馬をもたせる腕”が光ったとも言えるでしょう。内々で脚を溜めてカレンブラックヒルを目標にできる展開だったならば、もっと際どい勝負になっていたかもしれません。
ともあれ、GⅠ馬の面目は保ったと言えるレース。ゴール前ではオツリがなくなっていたようにも見えたので、皐月賞をパスしてマイル戦を目標にしたローテーションも正解だったと思います。
あとは、馬がどこまで成長できるかどうか。カレンブラックヒルのように“先行しながらゴール前でもう1段ギアが入る走り”ができるようになれば、今後への期待も高まると思います。

3着は15番人気のクラレント。
デイリー杯の勝ち馬だけに、終わってみれば低評価すぎたという気もします。朝日杯で2番人気に支持されたということは、潜在能力の高さは認められていたわけで、皐月賞トライアル(弥生賞)大敗からの巻き返しはアルフレードと同じパターン。十分マークできた1頭だったと思います。
次走はダービーを予定しているとのこと。「今まで競馬をしていなかったが、やっとこの馬の力を出せた」という小牧騎手のコメントの通り、今回が復調の走りであるならば侮れない存在かもしれません。差し馬には不向きな展開の中で2着と差のない3着という結果は評価できると思います。

不向きな展開の中での好走という点では、5着のセイクレットレーヴも評価の対象。4コーナー・後方15番手から食い込んできた走りには、末脚の精度の高さを感じます。
現時点では「まだ芯が入っていない」という印象があるので、この先経験を積んでいけば“キレる馬”になる可能性も。カレンブラックヒルとは脚質的に逆のタイプの馬だけに、今後の2頭の戦いには興味が湧きます。

次走の巻き返しを期待できそうなのは牝馬のハナズゴール。
桜花賞回避で順調さを欠いた(陣営も「急仕上げだった」とコメント)とはいえ、牡馬混合GⅠでそれなりの走りを見せてくれたと思います。大外から差し切ったチューリップ賞とは違って、馬込みの中で伸びてきたことも収穫でしょう。今後にとって貴重な経験になったと思います。



■今週はGW休暇です

『競馬のツボ<ブログ版>』にお越しいただき、ありがとうございます。
今週は都合によりお休みさせていただきます。
人並みにGW休暇が取れた(何年ぶりだろう?)のでリフレッシュしてきます。すみません。

NHKマイルCは、好メンバーが揃い激戦模様。予想も一筋縄ではいかないように思います。

●デビューから3連勝。ハイペースのNZTを好位から押し切ったカレンブラックヒルの走りは、東京コースに向いているかどうか。
●2歳王者のアルフレードは前走があまりに負け過ぎ。府中のマイルで見直せるかどうか。
●前走のアーリントンCで鋭い末脚を発揮したジャスタウェイに“NZT回避”の影響はないのか。
●牝馬のハナズゴールは桜花賞を回避したローテーションがどうか。
●大物感に溢れるディープ産駒のマウントシャスタは関東への輸送をクリアできるかどうか。
●セイクレットレーヴ、レオアクティブ、オリービンなど東京コースを経験している馬たちのアドバンテージをどう評価するか。

他にも、重賞勝ちのあるモンストールとブライトライン。皐月賞戦線では馬場に泣いたマイネルロブスト。格下感はあるものの底を見せていないガンジス。さらに穴候補としては、朝日杯で2番人気に支持されたクラレントなど、検討対象もさまざま。熱戦を期待したいと思います。

それでは、皆様のご健闘をお祈り申し上げます。


安東 裕章


■天皇賞(春)・短評

GⅠ・天皇賞(春)を制したのは、14番人気のビートブラック。断然の1番人気に支持されたオルフェーヴルはまったく見せ場もなく11着に敗れました。

レースは1000m通過が60秒0の緩みない平均ペース。ゴールデンハインドとビートブラックの2頭が先行し、離れた3番手にポツンとナムラクレセント。さらに離れて後続馬群という隊列で進みました。
ビートブラックは2周目の3コーナー手前から果敢にスパート。ゴールデンハインドを交わすと、そのままセーフティーリードを保ち、2着馬に4馬身差をつける押し切り勝ち。展開に恵まれたスローペースの前残りではなく、レコードに0.4秒差の好時計(3分13秒8)での圧勝ですから、賞賛に値する走りだったと思います。
一番の勝因は、石橋脩騎手の思い切った騎乗でしょう。時計が速くなる馬場状態を読んで、早め早めの仕掛け。「バテたら謝ろうと思った」というジョッキーコメントもありましたが、結果的には、菊花賞(3着)や京都大賞典(2着)で見せた“スタミナと持続力”(=この馬の持ち味)を発揮できる形になったと思います。完璧な内容だったと言えるでしょう。

2着はトーセンジョーダン、3着にはメンバー最速の上がりをマークしたウインバリアシオン。
複勝圏内という括りで考えれば、人気馬として一応の体裁は保ったようにも思えます。
「もっと早く動いていれば・・・」という声もありますが、スローペースでない以上、前を捕まえに行くには余計な脚を使うリスクが生じますし、後方にいるオルフェーヴルの存在を意識すれば、なおさら早めに仕掛けるのは難しかったのかもしれません。

今後への期待という意味で目を引いたのは5着のギュスターヴクライ。
個人的には、正直、「GⅠの舞台はまだ敷居が高いかな?」と思っていたのですが、大崩れすることもなく掲示板を確保。しかも、3コーナー過ぎに下がってくる馬を避ける不利があり、蹄鉄が外れかけていた状態だったということですから、スムーズならばさらに上位へ食い込んでいたかもしれません。
センスが良くソツのないレースができる馬。他を圧倒して勝つような“強さ”や“凄み”が出てくれば、今後のGⅠ戦線での活躍が期待できるかと思います。

オルフェーヴルは惨敗・・・。
大外枠からのスタートが懸念されていましたが、1周目の3コーナーまでにうまく内目に入ってヒルノダムールの後ろに付けました。もしかしたら、この時点で“オルフェーヴルの勝利”を確信したファンも多かったのではないでしょうか。正面スタンド前を過ぎ、1コーナーから2コーナー。「あとはどこから動き出すか」。注目が集まりました。
ところが、3コーナーにさしかかっても加速する気配はなく、直線を向いた時には絶望的な位置。大外から次元の違う末脚を見せることもなく、伸びを欠いたまま11着に敗れました。

『展望ブログ』では「馬自身の状態面はどうなのか?」といった内容にふれましたが、あるいは敗因はそのあたりなのかもしれません。実際、陣営サイドのコメントには「調教再審査で2週連続ダートコースに入った影響もあるのか・・・」といった言葉もありました。
もっとも、今回のオルフェーヴルの覇気のない走りを見ると、メンタルな部分の影響が大きいようにも思えます。メンタルな部分とは、すでに競馬評論家からも指摘されていることですが、折り合いにナーバスになりすぎたために走りに集中できなかったということ。調教再審査で着用したメンコを付け、道中はひたすら後方で我慢。あまりに折り合いを強要されたために、オルフェーヴルは持ち前の闘争本能にスイッチが入らないままレースを終えてしまった・・・。極端な言い方をすれば、イヤイヤ仕方なく走っている・・・そのような印象も受けました。
馬は一度大敗して歯車が狂うと、リズムを取り戻すまでに大変な苦労があるといいます。敗因は断定できないにしても、今回のダメージは相当なものでしょう。今後、陣営がどのように立て直していくか。現役最強馬の復活を期待しながら注目したいと思います。

最後に今回のレース全体について。
イングランディーレが逃げ切った2004年の春天やクィーンスプマンテが勝った2009年のエリザベス女王杯など、後続が仕掛けのタイミングを逸したために逃げ・先行馬に押し切られたレースを、我々ファンは何度も目の当たりにしています。前例がありながら再三同じことが繰り返されるのは、それだけ仕掛けのタイミング・判断が難しいからなのでしょう。
“激戦”や“手に汗を握る攻防”を期待した側にとっては、「もう少しどうにかならなかったのか」というのが正直な気持ちですが、同時に、長距離戦では常にこういう展開になることを頭に置いておくべきだったとも思います。
専門紙もスポーツ紙も、そして我々競馬ファンも、「オルフェーヴルはまともに走るか?」という1点だけにとらわれ過ぎた感のある今年の春天。テーマが過熱しすぎている時こそ、意識的に俯瞰の立ち位置からレースを検討する必要があると思います。今回の反省点です。




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プロフィール

安東裕章

Author:安東裕章
東京都出身。2007年11月に書籍『競馬のツボ』、2008年7月に『競馬のツボ2』、2009年7月に『競馬のツボ3』を発表(いずれも総和社刊)。

このたび、拙著『競馬のツボ』を刊行していただいた出版社・総和社様の勧めもあって、ブログを始めることにしました。
競馬における一番の楽しみは、レースについて考えること。つまり予想です。
このブログを書くことで、自分でも週末のレースに向けてイメージを膨らませる訓練になるかと思います。
競馬について考えることが好きな皆様。レース予想に疲れて気分転換をしたい時など、よろしければフラッと遊びに来てください。

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