■2012年06月

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■CBC賞・予習

サマースプリントシリーズ第2戦となるGⅢ・CBC賞。
実績馬が休み明けの上、斤量差最大11キロのハンデ戦。予想は一筋縄ではいかないようにも思える。
加えて、開幕週の馬場の見極めも難しい。
GⅠ・高松宮記念の勝ち時計=1分10秒3が示すように、前開催の新装中京競馬場は“パワーと持続力を必要とする時計がかかる馬場”が特徴だった。ところが、土曜の5Rに行われた芝1400mの新馬戦の勝ち時計は、前開催の基準タイムより1秒1速く、9Rの500万(同じく芝1400m)では、さらに2秒以上タイムが更新されている(1分20秒0)。10Rの芝1600m戦(1000万)では1分32秒8の好時計がマークされ、これまでの“時計のかかる馬場”とはかなり様相が変わってきているようだ。
ちなみに、土曜の5R、6Rは逃げ切り勝ちで、9Rを勝ったのは2番手の馬。「内が伸びて前が止まらない」「馬場状態が良く時計が出やすい」という一般的な“開幕週の馬場”と考えられなくもないが・・・。いずれにしても、当日の芝レースの傾向については、できればチェックしておきたい。

トップハンデ59キロを背負うダッシャーゴーゴー
昨年のスプリンターズSでは11着と大敗し、2走前のオーシャンSでも結果を出せなかったが、前走のGⅠ・高松宮記念では0.1秒差の4着。スプリンターとしての健在ぶりを示した。
夏場の調子を上げてくる馬で、このレースでは一昨年2着、昨年は58.5キロのハンデながら1着と、連続連対を果たしている。重賞3勝の実績と昨年のハンデを考えれば、この斤量は仕方がないかもしれない。
今回は3ヶ月の休み明け。早くからこのレースを復帰戦に予定していただけあって、調整は順調という見方が多い。となれば、あとは他馬との斤量差がどう影響するかだろう。陣営は「軽量馬の大駆けが怖い」とコメントしているが・・・。
 
斤量57.5キロのマジンプロスパー
初のGⅠ挑戦となった前走の高松宮記念では0.3秒差の5着。今回トップハンデのダッシャーゴーゴーとは0.2秒差だったことから、斤量差で逆転の可能性もあるとして、この馬を本命に推す競馬記者も少なくない。
この馬に関しては、スプリンターの資質をどう評価するかが予想のポイントになるかもしれない。
高松宮記念については、先行して見せ場十分だった内容にも及第点を与えられるだろう。ただし、好位から後続を突きはなして完勝した2走前の阪急杯(1400m)と比べると、1200m戦は若干忙しい印象もある。実際、1400mでは〈4.0.2.2〉の実績があるのに対して、1200mは〈1.0.0.2〉。距離経験そのものが少ないために、スプリンターとしての“強さ”“適性”が今ひとつ測りにくい。
そういう意味では、今回のレースはこの馬にとっての試金石とも言えるだろう。3ヶ月の休み明けと57.5キロの条件で、1200mを専門としている距離経験が豊富な軽ハンデ馬たちを圧倒することができるかどうか。

高松宮記念6着のグランプリエンゼル
内の馬場が良く先行有利な展開に泣いた感もあり、後方から追い込んで届かずの競馬。勝ち馬から0.3秒差だっただけに、位置取り次第ではもっと上位に食い込めたとも思えた。
前走はヴィクトリアマイル17着。マイル戦は長過ぎる印象で、今回、得意距離の1200mに戻るのは好材料と言えるだろう。実際、全芝4勝はすべて1200mによるものだ。
もっとも、道悪で時計のかかる馬場を得意としている馬だけに、土曜の芝レースの傾向にあるような“速い時計での決着”になるとどうだろうか。陣営はこのレースに向けて「時計のかかる中京は合っている」とコメントしているが、馬場の読み違いをしている部分があるかもしれない。今回の最内枠に関しても、馬場の良いところをロスなく走れる点では有利だが、近走は序盤でやや置かれ気味になるのも目立っているため、ポジションをキープできるかという懸念もある。
さらに不安点をあげるならば、GⅠを2走続けて走った消耗度も気になるところ。特に、前走は他馬とぶつかるアクシデントもあった。『ヴィクトリアマイル・展望』のブログでも書いたように、元々は高松宮記念での引退を予定していた馬。状態面についてはチェックが必要かもしれない。

高松宮記念では17着に敗れたエーシンダックマン
陣営のコメントによれば、「疲れがたまっていて体調が今ひとつだった」とのこと。加えて、この馬をマークしてきた相手がカレンチャン、ロードカナロアといった強力馬であったことから、かなりのプレッシャーがかけられていたようにも思える。メンバー的には今回の方が楽逃げを期待できそうだ。
言うまでもなく、この馬の持ち味はテンから飛ばして押し切る速い逃げ。それゆえ、前が残れる馬場かどうかが重要なカギになる。4走前の淀短距離Sを勝った時のような高速決着(1分07秒5で2着馬に0.6秒差)が見込めるようならば、逃げ切りの可能性もあるだろう。
あとは、陣営も若干気にしている直線の坂がどうか。阪神コースでは2戦2勝の数字を残してはいるものの、中京はコースと坂の形態がまったく異なる。坂を登り切った後にどれだけ余力を残しているかがカギになりそうだ。

連勝で重賞に挑むエーシンヒットマン
前走の水無月Sは勝って同条件の降級戦だっただけに、クラスの壁を突破してきたわけではないが、それでも近5走はいずれも馬券圏内の結果を残しており、この馬の充実ぶりがうかがえる。
サマースプリントシリーズでは毎年“新勢力”と呼ばれる馬が台頭してくる。今年の場合も、函館SSを勝ったドリームバレンチノがすでに頭角を現わしてきているが、この時期、勢いのある馬は侮れない。
芝1200mは〈5.2.2.2〉。4歳にして、9歳のサンダルフォン、6歳のグランプリエンゼルに次ぐ勝ち数を上げている。あるいは、スプリント戦線でさらに上を狙える素質の持ち主かもしれない。
不安点をあげるならば、初の左回りコースと大外枠。
慣れない走りを強いられた上に、外々を回らされる展開になると厳しいかもしれない。下級条件ではあったものの、前開催では外枠の馬が4コーナーで膨らむシーンも多く見られた。序盤で好位をキープして流れに乗れるかどうかが課題になるだろう。

52キロの軽量で挑む3歳馬のシゲルスダチ
今回トップハンデのダッシャーゴーゴーも3歳時には同じ52キロで2着に入っている。それゆえ、実績面での比較はできなくても、軽量3歳馬には一応のマークは必要かもしれない。
この馬を管理する西園厩舎は、このレースで3年連続連対中。1200~1600mで優秀な成績をあげている厩舎だけに、馬の作り方という点では軽視できないだろう。
前走のNHKマイルCは直線で落馬。その影響が懸念されるところだが、中間の状態を見る限りでは問題ないという意見が多い。
課題は、高速決着になった場合の対応。3走前~2走前の連勝は、いずれもパワーを必要とする阪神の馬場だった(実際、この馬に重い印を打った競馬記者も「阪神での連勝を見ると力のいる中京向き」を理由としている)。時計勝負に関しては未知数と考えた方がいいかもしれない。

同じく3歳で牝馬のファインチョイス
前走のバーデンバーデンCは今回と同じ50キロで出走して7着(0.8秒差)。追走に手一杯のようにも見え、古馬の壁は高いという印象が残った。洋芝の函館で新馬戦と2歳Sを連勝したように、時計がかかり上がりの遅いレースが向いているようにも思える。

3走前の阪急杯で2着に入ったスプリングサンダー
前走のヴィクトリアマイルは13着。キレの鋭い差し脚が持ち味なだけに、前が残る流れに泣かされたレースだった。1200m戦は〈1.0.0.5〉。〈0.0.0.6〉のマイル戦よりは競馬はしやすいかもしれないが、やはりベストは〈4.3.1.4〉の実績がある1400mとも思える。
脚質的に展開に左右される面があるため、前が止まらない場合はどうか。勝ち切るだけの“武器(=末脚)”があるだけに、ノーマークにはできないところもあるが・・・。

バーデンバーデンC4着のオウケンサクラ
初の1200m戦となった前走は、外から速い馬に被せられたこともあって中団後方からの競馬。追走に戸惑ったようにも見えたが、最後の直線では見せ場十分の脚を使っていた。慣れが見込める今回は、前走よりも流れに乗れるかもしれない。陣営いわく「距離を短くしてから集中して走るようになった」。2走前の1400mでは1分20秒0(マジンプロスパーに次ぐメンバー2位の持ち時計)で走っており、高速決着に対応できる可能性もうかがえる。
もっとも、この馬の場合、左回りコースは〈0.0.0.7〉。使われていた距離が長かったとはいえ、少なからず気になる材料ではある。距離短縮で苦手な部分を克服できるかどうか。

人気薄で気になるのは2頭(かなり無理があるとは思うが・・・)。
まず、ドラゴンファング
2回の長期休養があり続けて使えなかった馬が中1週で参戦。常識的にはかなり厳しい条件であっても、予想以上の変わり身を見せてくれるかもしれない。1200mの時計勝負は不向きとも思えるが、本来は先行タイプなので、エーシンダックマンをマークする形で流れに乗れれば面白いかもしれない。
もう1頭は、イセノスバル
前が残る馬場状態を前提とすれば、内枠の先行馬という条件は無視できない。準オープンクラスの格下馬だが、前走より5キロ減の斤量は魅力。ドラゴンファング同様、逃げるエーシンダックマンをマークしながら後続との差を広げるような競馬ができれば、軽量の粘り込みがあるかもしれない。


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■宝塚記念・復習

現役最強馬の復活!
GⅠ・宝塚記念を制したのは、1番人気のオルフェーヴル。状態面が不安視される中での出走だったが、終わってみれば2着のルーラーシップに2馬身差をつける完勝だった。

レースは大方の予想通りネコパンチがペースを握り、1000m通過が58秒4の速い流れ。オルフェーヴルは中団後方でしっかりと折り合い、直線手前では馬群のバラけた内へ。手応え十分のまま先に抜け出したマウントシャスタを捉えると、そこから一気に加速して後続を振り切った。
陣営のコメントは「70%の出来」。たしかに、直前の気配からは昨年秋以降に見せていた“凄み”や“闘争心”は感じられなかったし、道中の走りも妙に落ち着きすぎているように見えた。それでも、直線で使った脚は明らかに他馬とは違う伸び方。特に、ゴール前100mからの加速力は、以前の“強さ”を彷佛させるものだった。状態面が完全ではなくてもこれだけの走り。この馬の潜在的な能力の高さを認めざるを得ないだろう。

もっとも、今回の結果を受けて「オルフェーヴルの完全復活」と手放しで喜べるかというと、意見が分かれるかもしれない。折り合いを気にせずに済んだ速い流れ。直線できれいに進路が開いた馬群の隊列。こうした展開がオルフェーヴルの好走を後押しした感もあるからだ。仮にペースがスローだったら、あるいは、前が詰まっていたら・・・。そう考えた時に、「それでもオルフェーヴルが突き抜けていた」と言い切れるかどうか。少なくとも、菊花賞や有馬記念の時のような“次元の違う走り”を期待していたファンにとっては、違和感を覚える内容だったのではないだろうか。

もちろん、オルフェーヴルの勝利を「展開に恵まれたもの」と言うわけではない。「一皮むけて大人の競馬ができるようになった」という意見もあるように、“強さの形”“強さの見え方”が変わったという解釈もできる。その意味でも、今後の走りには注目する必要があるだろう。「70%の出来」が「100%の出来」に戻った時、我々の前に姿を見せるのは“以前のようなオルフェーヴル”なのか。あるいは、凄みや闘争心を内に秘めて黙々とレースをする“以前とは違うオルフェーヴル”なのか。そして、それが本当に“強さの進化形”と呼べるものなのかどうか。秋へ向けての期待が高まったと同時に、我々競馬ファンにとって「今後のオルフェーヴルの走りと強さを見極める」という課題が生まれた一戦だったと言えるかもしれない。

2着は2番人気のルーラーシップ。
スタートで後手を踏んだものの、道中は徐々に前へ進出。直線では大外に持ち出して先頭に立ちかけたが、最後はオルフェーヴルの脚に内をすくわれた。
角居調教師は「上手にレースをしたし、力を出せた」とコメント。出遅れは痛かったかもしれないが、この馬の競馬ができたと評価していいだろう。残念に思えたのは、跳びが大きいがゆえに、大外をマクる形になってしまったこと。4コーナーで膨らみすぎた昨年(5着)と比べれば格段の進歩・成長を見せてくれたが、少なからずスピードを持て余している印象を受けてしまう。広くて直線の長いコース向きと思うのは、そのためかもしれない。
とはいえ、海外GⅠを勝ち取っただけの能力を見せてくれたのも事実。今後のローテーションは凱旋門賞の出否次第で変わってくるだろうが、個人的には秋天かJCの舞台でオルフェーヴルとの再戦を見てみたい。

3着は6番人気のショウナンマイティ。
最後方から進んで直線勝負。自分の競馬に徹して持ち味を発揮できた内容と言えるだろう。オルフェーヴルをマークするようにバラけた内を突いたのは浜中騎手のファインプレイ。全体的に荒れていた馬場状態を考えれば、コースロスをなくしてインを突く作戦は正解だったと思える。これまでとは違う速い流れに対応できたのも収穫だし、近走の充実ぶりが本物だったことを証明できたレースだった。
もっとも、この馬の末脚がより生きるのは、近2走のような瞬発力勝負の方かもしれない。陣営はすでに「目標は秋天」とコメントしているが、となれば、どれだけ長くいい脚を使えるかが課題になるだろう。持ち前のキレ味を持続する走りを身につけられるかどうか。4歳馬の成長に期待したい。

4着はウインバリアシオン。
『予習』の中で「岩田騎手の乗り方に注目」と書いたが、3コーナー手前から内目を進出する“自分から動く走り”を見せてくれた。ところが、直線で外に持ち出してからの伸びが案外。岩田騎手も「手応えは十分だったがもうひとつ反応してくれなかった」とコメントしている。
これについては、あくまで個人的な見方になるが、加速のポイントが“道中の進出”と“直線の追い出し”の2回に分かれたことで、馬自身の集中力が途切れたのではないかとも思える。オルフェーヴルを外から追い詰めたダービーの走りをこの馬本来の姿と考えるならば、仕掛けてからゴールまで一気に加速する形がベストなのだろう。言い換えれば、現時点ではまだまだ立ち回りに難があるということ。掲示板を外さない安定感はあるものの、条件に左右される面を解消することが今後の課題になりそうだ。

5着は3歳馬のマウントシャスタ。
斤量差があったとはいえ、これまでのキャリアを考えれば、大健闘と言っていいだろう。馬自身にとっても、貴重な経験になったに違いない。
内容も好位から直線で先頭に立つ正攻法。今回のような走りがこの先この馬の持ち味になるかどうかは定かではないが、大成すればトーセンジョーダンやアーネストリーのようなタイプになるかもしれない。池江厩舎がどのように育てていくか、注目したい。

4番人気のエイシンフラッシュは6着。5番人気のトゥザグローリーは12着。
エイシンフラッシュについては、休み明けのせいもあってか、テンションが高すぎたようだ。最初の直線から口を割って掛かりっぱなし。あるいは、仕上がり過ぎていた影響もあったかもしれない。もっとも、敗因がある程度はっきりしているだけに、順調な過程を経て参戦してくれば、マークが必要になるだろう。
一方、トゥザグローリーの評価は難しい。福永騎手は「湿度の高い天候がこたえたか」とコメントしているが・・・。『予習』には「多頭数の競馬では気性の悪さが出るタイプかもしれない」と書いたが、雰囲気自体は決して悪くはないように見えた。今後のことを考えると、狙いどころをどう判断すればいいか。『予習』の中でもふれた「ムラ馬」の部分がよりクローズアップされたようにも思える。

オルフェーヴルの状態面が不安視されたこともあって、波乱含みとも思われた今年の宝塚記念だが、終わってみれば“順当な結果”。勢い(=近走の内容)も加味して“能力上位馬”の決着だったと言えるだろう。
秋のGⅠ戦線を見据えた場合、掲示板に載った5頭のうち3頭が4歳馬、1頭が3歳馬という結果は興味深い。夏を越してさらに成長が期待できるからだ。と同時に、“最強世代”と呼ばれた現5歳馬たちにもリベンジの可能性も無視できない。
思えば、阪神大賞典の逸走、春天の大敗、そして宝塚での復活と、オルフェーヴル1頭に“振り回された”感のある今年の上半期。良くも悪くも「オルフェーヴルはスターホース」という余韻が残る春のGⅠだった。



■宝塚記念・予習

2012年上半期を締めくくるGⅠ・宝塚記念。
春のグランプリにふさわしい、なかなかの好メンバーが揃った。

レースをイメージする上で、ポイントをひとつ挙げるとすれば、序盤からペースが上がりやすくなること。
過去5年における前半3Fの通過タイムは、33秒5(稍重)、35秒5(重)、34秒7(良)、34秒8(稍重)、33秒6(良)。レコード決着となった昨年は、1000m通過が57秒5のハイペースだった。
したがって、レースで要求されるものは、“スピードの持続力を伴ったスタミナ”と考えていいだろう。今年の場合も、“大逃げ宣言”をしているネコパンチの出走によって、ある程度速い流れが見込まれている。各馬の位置取りや脚の使い方が、そうした展開に向くかどうかの判断が、予想におけるひとつのカギになりそうだ。
さらに、内回りコースという条件では、立ち回りの巧さも必要になるだろう。3年前のディープスカイや昨年のブエナビスタのように、能力的には上と見なされていても、“差して届かず”というケースが生まれる。それぞれの馬について、自分から動く競馬ができるかどうか、あるいは、直線を向いた時にどれだけ脚力を残しているかといった点も、検討材料として考えるべきかもしれない。

今回、取捨選択という部分で、我々競馬ファンを悩ませているのがオルフェーヴル
実績に裏付けられた能力については“断然”と言えても、問題は「本来の走りができるかどうか」という根本的なもの。追い切りの動きは及第点という評価も多いが、陣営のコメントは「70%の出来」。1週前の時点で出否を先送りにした経緯も踏まえれば、不安が一掃されたとは思えない。
春天の大敗(11着)は、おそらくメンタル面が原因。調教再審査と同じくメンコを着用しての出走は、ルール上やむを得ないとしても、陣営が馬に対してナーバスになり過ぎたことが、結果としてオルフェーヴルの闘争本能に蓋をした形になったように思える。
不本意な走りを強いられた上に大敗によって受けたダメージ。展開や不利を受けての負けではなかっただけに、より深刻という捉え方もできる。はたして、前走から2ヶ月足らずの期間で、狂った歯車を修正できるだろうか。ファン投票1位という結果には、復活への期待が込められていることは間違いないし、能力を発揮できれば昨年の有馬のような“完勝”があってもおかしくないのだが・・・。

前走、香港のクイーンエリザベス2世Cを圧勝し、海外GⅠ制覇を成し遂げたルーラーシップ
デビュー当初から、血統面も含めてその素質を高く評価されていた馬だが、前走勝ちによって「いよいよ本格化」という声が高まっている。
跳びが大きく豪快な走りをするため不器用なイメージもあるが、昨年の金鯱賞や2走前の日経賞で見せたようなマクリも得意とする馬。昨年の宝塚では5着に敗れてはいるものの、内回りコースがマイナスという判断にはつながらない。
クイーンエリザベス2世Cで、それまでとは違う先行抜け出しの脚を使えたことも好材料。馬自身が位置取りにこだわらないのであれば、名手・ウィリアムズ騎手の“レースの流れに合わせた騎乗”がより生かされるはずだ。
不安点を挙げるならば、やはり状態面。
「帰国後の調教が軽い」という専門家の意見も多く、最終追い切りも芝コースで馬なり。若干物足りない印象もある。デビュー以来、一度も連勝したことのない馬なので、あるいは、レースで勝った後に反動が出るタイプなのかもしれない(実際、そういう見解を述べる競馬記者もいる)。
さらに、気になる点を付け加えるならば、昨年の日経新春杯以来、良馬場では馬券に絡んでいないこと。一瞬のキレ味よりもロングスパートから押し切るのが持ち味の馬なので、昨年のような高速決着になると分が悪くなることも考えられる。当日は馬自身の直前の気配と馬場の傾向を吟味する必要がありそうだ。

前走、鳴尾記念を勝ったトゥザグローリー
1000m通過が62秒3のスローな流れを、2番手から直線で抜け出す鮮やかな競馬を見せてくれた。以前は折り合いに不安があると言われていた馬だが、その点に関しては成長がうかがえたレース。休み明けで完調手前だったことを思えば、1走叩いた今回に期待をもたせる内容だったと言えるだろう。
昨年のこのレースは13着。敗因は夏負けとされている。良績が寒い時期に集中している馬なので、“暑さ対策”が課題になるが、例年より涼しいことも幸いして「夏負けの兆候はない」(陣営談)とのこと。ローテーションに関しても、あくまで春天が目標だった昨年と比べると、今年は状態面での上積みも見込めそうだ。
もっとも、この馬については、ムラ馬の印象を拭えない部分もある。好走と凡走の振り幅が大きいからだ。そして、好走と凡走の分岐点とも思えるのが「出走頭数」である。
トゥザグローリーの場合、出走頭数が12頭以下では〈6.0.0.1〉。対して、13頭以上では〈2.2.2.7〉。この数字は、他の出走メンバーと比べると、かなり際立っている。数字に偏りがない馬か、13頭以上の方に良績がある馬がほとんどだからだ。しかも、13頭以上〈2.2.2.7〉の連対はすべて3歳時のもので、古馬になってから馬券に絡んだのは、昨年の有馬記念の13頭立て・3着のみ。
今回は16頭立て。しかも、前に壁を作りにくい外枠の15番。前走では折り合いに進境を見せたといっても、多頭数を嫌う気性(=テンションが上がりやすい)ならば、必要以上に行きたがるケースも考えられる。出走頭数云々はあくまでデータに過ぎないが、不安要素につながる傾向として頭に入れておいた方がいいかもしれない。

前走、天皇賞3着のウインバリアシオン
同世代にオルフェーヴルがいるため、“強さ”という点では印象が薄れがちだが、それでもGⅠ実績は〈0.2.1.1〉。安定して力を出せるタイプと評価してもいいだろう。
最後方から直線勝負のイメージが強いものの、2走前の日経賞では道中でポジションを上げる競馬を見せ、前走では中団後ろからレースを進めている。とはいえ、阪神内回り2200mという条件を考えた場合、もっと積極的に“自分から勝ちに行く走り”が必要になるかもしれない。
そこで注目したいのが、今回鞍上を任された岩田騎手の乗り方。
この馬の持ち味である長い末脚を生かしつつ、内回りコースに対応できる立ち回りをこなせるかどうか。ディープブリランテで制したダービーの時と同じように、2週前から調教に騎乗して馬とのコミュニケーションを深めているとのことだが、あるいは、これまで見ることができなかったウインバリアシオンの走りを引き出してくれるかもしれない。
あとは、枠順。
馬場の内が良ければ、最内枠はロスなく運べる点で有利だが、先週のマーメイドSの時のような馬場になると、道中で脚元に負担がかかるため最後の伸びに影響が出る。このあたりは、当日の馬場状態を確認する必要があるだろう。いずれにしても、岩田騎手がこの馬をどのように操るかがポイントとなるに違いない。

ドバイWC(6着)以来、3ヶ月の休み明けとなるエイシンフラッシュ
昨年の宝塚で3着、有馬で2着と、内回りのグランプリレースではしっかりと馬券に絡んでいる。超スローのダービーを上がり32秒7の脚で制していることから、瞬発力勝負が最も向いていると思えるが、昨年の宝塚・有馬の走りを見ると、好位中団で流れに乗って直線で抜け出すレースも決して不得手ではないようだ。
帰国後の調整に関しては、スポーツ紙を見る限り不安はないようで、調教の動きについても高い評価が並んでいる。力を出せる状態ならば、当然、有力候補の1頭と見なせるだろう。
もっとも、勝ち切るとなるとどうか。
この馬の場合、ペースに左右されるところがあり、スローでは〈4.3.0.3〉の数字だが、平均ペースとハイペースでは共に〈0.0.2.1〉。溜めれば溜めるほどキレるという走りで、ある意味、脚の使いどころが難しいタイプとも考えられる。善戦はするものの、3歳時のダービー以降勝ち鞍がないのも、そのためだろう。
冒頭にも述べたように、今回はある程度速い流れが予想されるレース。内田騎手もその点を考えて騎乗するに違いないが、この馬の過去の傾向に基づけば、どちらかと言えば不向きの展開になるかもしれない。

前走、鳴尾記念2着のショウナンマイティ
開幕週でスローペースという前が有利な条件でありながら、上がり32秒9の脚で驚異的な追い込みを見せてくれた。近4走はいずれもメンバー最速の上がりをマーク。末脚のキレに関しては高く評価できるだろう。
しかも、2走前の大阪杯(1着)と前走の鳴尾記念は共に内回りコース。直線一気が不発に終わるリスクがあるとはいえ、侮れない存在であることは間違いない。
問題はペースが上がった時に同じ脚を使えるかどうか。
流れが速くなればなるほど、末脚のキレが増すと考えがちだが、実際には、道中の追走で脚を使う分だけキレが鈍ることもある。前述のエイシンフラッシュはもしかしたらその典型かもしれない。
ショウナンマイティに関しても、エイシンフラッシュほどのペースによる数字のバラつきはないものの、不安要素と思える材料がある。それは、2000mを超えるレースでは一度も馬券に絡んでいないこと。たとえプラス200mであっても、実績のない距離をペースを上げながら追走した時、最後の直線でどれだけの脚が残っているか。近走の充実ぶりからすれば、簡単にクリアできる課題かもしれないが、最後は確実に追い込んでくるとまでは言い切れない部分もある。

昨年の勝ち馬・アーネストリー
逃げ馬を番手からマークして直線で抜け出すのが、この馬本来の持ち味なのだが、休み明けの2戦に限ってはその走りができていない。前走の鳴尾記念にいたっては、向正面で一旦最後方まで下がってしまっていた。
陣営のコメントによれば、昨年暮れの有馬記念でハナに立つ競馬をして失速したため、あえて控える競馬を試みたとのこと。たしかに、大阪杯も鳴尾記念も強引にハナを主張する馬がいなかったし、自らが目標とされるレースを嫌う(=馬自身にマイナスになると考える)のであれば、控える作戦にも一理ある。
ネコパンチ、ビートブラックといった逃げ・先行馬が出走する今回、陣営は「いつも通りの先行策をとる」とコメント。しかし、こうしたレースを続けた後で、一転して以前と同じような走りに戻れるのだろうか。
6歳でGⅠタイトルを奪取した昨年の宝塚から1年、年齢的には衰えが見えてきてもおかしくない。「いつも通りの先行策」で臨むならば、当然、好位をキープするためのスタートの速さも必要になる。たとえ意識的であっても、近2走でそのスタートの速さが影を潜めたことは、不安要素という見方につながるかもしれない。

前走、天皇賞・春を14番人気で勝ったビートブラック
この馬については、春天の結果をどう分析するかが取捨選択のカギになるだろう。後続の有力馬を力でねじ伏せたと考えるか、展開を味方につけた勝利だったと考えるか。そして、今回も同じ競馬ができるかどうか。
前走、石橋脩騎手が仕掛けた“残り1000mからのロングスパート”は、下り坂のある京都3200mだからできた作戦であることは間違いない。そして、3番手を追走していたナムラクレセントが動かなかった(後で故障が判明)ことと、後方にオルフェーヴルがいたことで、後続の馬たちが動くに動けなかったことも確かだろう。となれば、展開に恵まれた部分が大きかったと判断すべきかもしれない。
ただし、「春天の再現はない」と決めつけてかかるのは危険だろう。
高速馬場であったとはいえ、前走の勝ちタイムはレコードに0.4秒差の好時計。少なくとも、スピードの持続力は証明されている。内が止まらない馬場が理想には違いないが、“先行→粘り込み”というシーンも想定しておいた方がいいかもしれない。

昨年秋から4連勝を飾り、前走の大阪杯では2着に入ったフェデラリスト
今回、初のGⅠ挑戦となるため、相手関係は一気に強化されるが、この馬自身も底を見せていない印象がある。
レース序盤からスピードに乗り、好位をキープできるセンスの良さが持ち味。中山実績〈4.0.0.0〉が示すように、立ち回りの巧さにも秀でている。
気掛かりな点を挙げるならば、今回が3ヶ月の休養明けであること。というのも、この馬にとっては、昨年6月の中央転厩以来初となる長い休養だったからだ。
使い詰めの後の放牧休養によって馬はリフレッシュされているだろうが、はたして実戦に向けてどれだけ状態面が上がってきているか。これまでに経験のない休養期間だっただけに、そのあたりに若干の懸念が生まれる。
ちなみに、中間の時計は3本で最終追い切りは芝コース。同じく3ヶ月の休養明けとなるエイシンフラッシュが中間に7本の時計をマークしているのと比較すると、物足りないようにも思えるのだが・・・。

前走、ヴィクトリアマイルを制したホエールキャプチャ
先行有利の流れが味方したとはいえ、好位抜け出しからの鮮やかな勝ちっぷり。複勝圏率.846という高い数字(オルフェーヴルと並んでメンバー1位)が示す通り、大崩れしない安定感も“買い”の材料だろう。
問題は相手関係。
過去10年、宝塚記念で馬券に絡んだ牝馬は、ブエナビスタとスイープトウショウの2頭だが、ブエナビスタ(4歳時)にはそれ以前に有馬記念2着の実績があり、スイープトウショウは前走の安田記念で2着に入っていた。つまり、牡馬混合のGⅠにおける実績があったということ。
ホエールキャプチャの場合、今回が初の牡馬混合GⅠ(というよりも初の牡馬混合重賞)。経験値という視点で考えるとどうだろうか。
同様に3歳馬のマウントシャスタも、53キロの斤量は魅力とはいえ、デビューから4戦のキャリアでの古馬混合GⅠは敷居が高いようにも思える。

人気薄で気になる馬を挙げるならば、まず、ナカヤマナイト
2走前の大阪杯と前走・鳴尾記念はスローペースに泣かされた感があり、ある程度流れが速くなりそうな今回は折り合いを気にせずにノビノビとレースができるかもしれない。
昨年春のクラシックでもそこそこ人気になったように、潜在能力はすでに評価されていた馬。海外のタフなレースで培った経験値も軽視はできないだろう。

メンバー唯一の連勝馬・ヒットザターゲット
前走の新潟大賞典で初の重賞勝ちをおさめたが、メンバー手薄のハンデGⅢであるがゆえ、ここでの格下感は否めない。とはいえ、近2走で見せた立ち回りの巧さはなかなかのもの。未勝利勝ちに5戦もかかった馬がここにきて連勝というのも、成長を伴った勢いと考えれば侮れない。阪神実績〈0.1.1.0〉も加味すれば、複勝圏内へ食い込んでくる可能性もゼロとは言えないだろう。

さらに大穴ならば、スマイルジャック
ダービー2着の実績は今さら参考にならないにしても、マイル戦で追走に手いっぱいという現状を見ると、距離延長がプラスに転じる可能性もある。レコード決着となった前走の安田記念の上がりは、メンバー最速の33秒7。7歳の衰えを感じさせない伸び脚だった。常識的に考えれば厳しいレースになるだろうが、最も大きな変身を遂げるとすればこの馬かもしれない。

最後に、馬場状態。
先週のマーメイドSでは外差しが決まりやすくなっていたが、週中の雨を挟んでどのように変化したかの確認は重要だろう。ちなみに、土曜の阪神6R(芝2200m)は逃げ切り勝ちの結果だった。
もっとも、芝の傾向が見えたからといって、脚質だけで買い目は決められない。今回のように、逃げ・先行馬と差し・追込馬を見分けやすいメンバー構成の場合は、どうしても「前が残る」「後ろが届く」という考え方に偏りやすいので、その点は十分に注意したい。



■今週と来週はお休みです!

いつも『競馬のツボ<ブログ版>』にお越しいただき、
ありがとうございます。
仕事の都合(長期出向)により、今週と来週の更新は
休ませていただきます。
ずみません!

宝塚記念で復帰の予定です。

皆様のご健闘をお祈り申しあげます。


安東 裕章


■安田記念・短評

1分31秒3のレコード決着!
混戦の安田記念は、昨年の2着馬・ストロングリターンが雪辱を果たし、晴れてGⅠ馬の栄誉に輝きました。

レースは予想通りシルポートが逃げて、3F通過33秒8、1000m通過56秒3。これは昨年以上のハイペース。先行馬には厳しい流れになり、残り200mで形勢は一転。中団馬群の後方にいた1・2着馬が、馬体を併せながらまとめて差し切る結果になりました。
勝ったストロングリターンは、福永騎手のコメントにもあるように「完璧な競馬」。道中は後方で脚を溜め、直線ではスムーズに外へ。ゴール前では食い下がるグランプリボスをねじ伏せるような走り。内よりも外目が伸びやすい馬場や差し馬向きのペースといった展開の利があったとはいえ、非の打ちどころのない“強い競馬”を見せてくれたと思います。
『展望ブログ』では状態面に関連して、「骨折のダメージを受けた馬が前走馬群で揉まれる競馬をしなかった点が不安」と書きましたが、ハイペースによって馬群は縦長にバラける形に。内枠に入ったものの、手間取ることなく外へ持ち出せたことが大きな勝因になったと考えられます。いずれにしても、この馬の持ち味を存分に発揮できたレース。完勝と言っていいでしょう。

2着は13番人気のグランプリボス。
『展望ブログ』では「マイルGⅠ2勝の潜在能力は見限れない」と書きましたが、久々に闘争心あふれる走りを見せてくれました。
道中は勝ち馬とほぼ同じ位置。ただし、完璧に折り合っていたストロングリターンに比べると、この馬は若干掛かり気味(向正面では内田博騎手が手綱を引っ張って抑えていました)。あるいは、序盤で力んだ分だけ最後の追い比べで伸びを欠いたのかもしれません。本当に惜しい“クビ差”だったと思います。
結果としては、陣営がこのレースに向けてハードなメニューを課したことが成功したと言えるでしょう。4歳馬だけにまだまだ伸びしろがあるでしょうし、今回の経験も大きな糧となったはず。連続好走ができるか、枠順に走りが左右されないか、といった課題もありますが、今後のマイル戦線での活躍を期待できる内容に思えました。

3着は15番人気のコスモセンサー。
好スタートを決め一旦はハナに。シルポートに先頭を譲ったあとは、控えてインの4~5番手。結果的に、ここで前を深追いしなかったことが、最後の粘りにつながったと思います。そのあたりは巧みにペースを読んだ松岡騎手のファインプレイと言えるでしょう。
最後は前に2馬身差を付けられたとはいえ、差し馬向きのハイペースを前々で追走しての3着は立派。近走も堅実な走りを見せていましたが、今回も“崩れない走り”。ここに来て本当に力を付けたという印象です。強烈な決め手には欠ける馬ですが、立ち回りの巧さはピカ一。今後もマークが必要な1頭だと思います。

4着はダノンヨーヨー(17番人気)。
すでに大勢が決まった後に追い込んで来た形なので、今後へ向けての強調材料にはなりませんが、“ハマればいい脚を使う”という要素は今だ健在。かつては「マイル界の新星」と呼ばれていた馬なので、もうひと花咲かせてほしいという期待もあるのですが・・・。現状ではスタートの悪さと自分から動けない点が課題でしょう。

5着は5番人気のガルボ。
暑い時期が苦手の馬でしたが、今回は状態をキープできていたようです。コスモセンサーの後ろで脚を溜める競馬をして仕掛けのタイミングを測っていましたが、残念だったのは、直線で前がふさがった時に外に出せず最内を突くしかできなかったこと。石橋脩騎手も「できれば馬場の伸びる外へ出したかった」とコメント。アンラッキーな部分もあったように見えました。典型的な差し馬ではないので、今回のハイペースは必ずしもプラス材料ではなかったでしょう。それを考えると、及第点を与えてもいいレースだった思います。

最終的に1番人気の支持を得たサダムパテックは9着。
直線では1・2着馬の前にいながら、仕掛けても反応が鈍く、2頭にアッサリ交わされました。ウィリアムズ騎手は「(敗因が)まったくわからない」とコメント。道中の折り合いも決して悪くなく、不利があったわけでもないとなれば、前走の反動(2走ボケ)という見方もできるかもしれません。
ただし、個人的な見解を言わせてもらうならば、完全な力負け。『展望ブログ』でもふれたように、前走の結果だけで“強いマイラー”と判断するのは早計だったと思います。
オルフェーヴルと互角以上の能力評価を受けていたのは、あくまで昨年春のクラシックでの話。今回のレースで好走する裏付けにはならなかったはずです。

逃げたシルポート(6番人気)は12着。
道中は終始リアルインパクトに突っつかれる展開。単騎逃げが見込めるメンバーでありながら、シルポート自身のペースに持ち込めなかったのは、番手にあおられ通しの流れになったからでしょう。しかも、スタートで若干後手を踏んだため、コスモセンサーの前に出るまでに加速しなければならなかったことも、誤算だったかもしれません。

レコード決着の今回はスピードと持続力を要求されるレースでした。
香港馬2頭には時計が速すぎましたし(グロリアスデイズは3コーナー手前から追い通し)、ヴィクトリアマイルから中2週の牝馬には底力という点で敷居が高かった感があります。
復活が期待されたアパパネ(4番人気)も、まったく見る影なし。蛯名騎手は「走りがバラバラ」とコメントしていますが、一からの立て直しが必要のように見えました。
ローズキングダムとペルーサは追走で手一杯。「マイル戦線は手薄なので別路線の馬でもチャンスがある」という見方もありましたが、実際には“マイラーの資質”が問われたレース。言い方は悪いですが、付け焼き刃では無理だったということでしょう。

今年の安田記念は、非常に見応えのあるレースだったと思います。馬券の収支はともかく、内容的に満足した競馬ファンも多かったのはないでしょうか。
ただし、今回の結果がそのまま秋につながるかというと、簡単にはいかないかもしれません。
リアルインパクトとエイシンアポロンの両GⅠ馬は、ハイペースで最後は失速したものの、走りっぷり自体は前走とは雲泥の差。展開が異なればまだまだ好勝負できる、そんな期待を抱かせる内容に見えました。
秋のマイルCSについては、3歳馬の台頭も含めて、混戦模様が続くように思います。


■安田記念・展望

春のマイル王決定戦、GⅠ・安田記念。
ウオッカが連覇を成し遂げた2009年こそ1・2番人気の堅い決着でしたが、それ以降は馬連万馬券・3連単30万馬券の波乱が続いているこのレース。確固たる中心馬が不在のマイル戦線は、今年もその傾向が変わらず、土曜午後1時の時点での前売り単勝1番人気(サダムパテック)のオッズはなんと7.4倍! 春のGⅠで最も難解な一戦と言ってもいいでしょう。

東の前哨戦・京王杯SCを制したサダムパテック
昨年春のクラシック戦線では3冠馬オルフェーヴルと互角以上の能力評価を受けていた馬ですが、人気になりながらも結果を残せず、前走が約1年2ヶ月ぶりの勝利。それゆえ、「素質馬がようやく復調」という見方もされているようです。
東京芝は〈2.1.0.2〉の実績。中でも、2歳時の東スポ杯2歳Sは、直線抜け出しから後続に3馬身半差をつける圧勝。このレースでは、長くいい脚と瞬発力を兼ね備えた非凡な走りを見せてくれました。前走の京王杯SC勝ちについては「東スポ杯を彷佛させる内容だった」という声もありますが、はたしてその評価を額面通りに受け止められるかどうか・・・。
そもそも京王杯SCの上位馬はいずれも後方にいた差し馬。好位のインにいた有力馬(サンカルロ・ジョーカプチーノ)が止まり、昇級戦の人気薄が外から伸びてきたレースでした。力関係を物差しにすれば、“外差しが決まる馬場”が結果に大きく影響したことは明白で、当然、出遅れて外目追走を余儀なくされたサダムパテックも、馬場の恩恵を受けた1頭という見方ができると思います。言い換えれば、必ずしも力で相手をねじ伏せたレース(=他の有力馬も力を発揮できたレース)ではなかったということです。
マイル実績は〈1.1.0.3〉ですが、2連対は新馬戦と未勝利戦でのもの。京都金杯と東京新聞杯の走りを見る限りでは、マイル適性が高いようには思えませんでした。もちろん、レースをひとつ勝つことは、馬自身が“本来の走り”や“強さ”を取り戻すきっかけになる場合もあります。サダムパテックについてもその可能性がないとは言えません。ただし、マイルGⅠで好走できるだけの下地が十分備わっているかというと、正直、半信半疑のように思います。

京王杯SC4着のストロングリターン
6ヶ月の休み明けで0.3秒差ならば、急仕上げの叩き台としては及第点を与えてもいいでしょう。昨年の安田記念2着馬で東京芝は〈4.3.1.4〉(うち東京芝マイルは〈2.2.1.2〉)。実績と適性を踏まえれば、有力候補と見なして差し支えないと思います。連対率・556は日本馬の中では最も高い数字。あるいは、このあたりもひとつの強調材料になるかもしれません。
問題は状態面。
昨年は準オープンと京王杯SCを連勝して本番に挑むという、言うなれば“上昇度がピーク”の時点での出走でした。それに対して、今年は4着からの叩き2走目。6ヶ月の休養が骨折放牧だったため、前走では無理ができなかったと考えれば、どれだけの良化が見込めるかという判断も難しくなりそうです。中2週とはいえ、馬なり調教で追い切り後の馬体重がプラス14キロ。大レースを間近にしながら、それほど負荷をかけていない点も気になる材料です。
さらに付け加えれば、前走の走りに関しても少なからず不満が残る内容。
この馬の持ち味は、昨年の京王杯SCや安田記念で見せた、馬込みを苦にせず馬群を割って伸びてくる“凄みのある走り”。ところが、前走は外目を回って差してくるだけの競馬でした(馬場を考えれば結果的にそれが正解だったのですが)。骨折のダメージを受けた馬が、それまでと同じように馬群で揉まれる競馬に耐えられるかどうか。今回、内枠に入ったこともあり、前走でその点をクリアできなかった点に、若干の不安要素を感じます。

京王杯SC7着のグランプリボス
世代限定とはいえ、朝日杯とNHKマイルCのマイルGⅠ2勝の実績。近走は成績にムラがあるため、狙いづらい一面もありますが、潜在能力についてはまだまだ見限れないと思います。
前走は外枠に入ったこともあり、外々を回らされる形での敗戦。上がり33秒2(サダムパテックより0.1秒速くストロングリターンと同じ)の脚を使ったとはいえ、あまりにも位置取りが後ろ過ぎました。
本来は中団より前のポジションから抜け出す競馬が身上。今回、陣営の希望通りの内枠に入ったことは、好位をキープする作戦をとるならば、プラス材料と言えるでしょう。
あとは、どれくらいレースに集中できるか。
それなりの脚を使っているとはいえ、ここ2走は覇気に欠ける印象。矢作調教師も「不振の原因のひとつは精神面」とコメントしています。マイラーズCから京王杯SCというハードなローテーションに加え、これまでにない速い時計の調教。陣営が馬に気合を入れていることが窺えます。必要以上の消耗というリスクもありますが、プラスに作用すれば一変の可能性があるかもしれません。

西の前哨戦・マイラーズCを逃げ切ったシルポート
マイラーズCは京王杯SCとは反対に前と内が有利な稍重馬場。もっとも、そうした条件を味方につけたとはいえ、淀みのない流れで押し切った内容は評価できると思います。
昨年の安田記念は前半3Fを33秒9(1000m通過・57秒0)のハイペースで飛ばして最後は失速。ゆえに、自分のペースでレースを作れるかどうかがポイントになるでしょう。
興味深いのは前走の前半3F通過タイム。2010年暮れのファイナルS以降、この馬はマイル戦で4勝をあげていますが、前走の34秒3はその中で最も速い通過タイムでした。安田記念というレースが“前傾型のラップ”になりやすいことを考えれば、これまでになく前半を飛ばしながら最後まで粘れたことは、強調材料と見ることもできそうです。東京マイルを逃げ切るのは至難のワザに違いありませんが、当日の馬場状態・傾向を味方にできるようならば、見せ場以上の走りも期待できるかもしれません。

マイラーズC3着のコスモセンサー
近4走のマイル戦ではいずれも馬券圏内で充実度を感じさせる走り。ペースに関わらず、先行好位をキープできるようになったことが一因と考えられるます。少なくとも、昨年(16着)よりは安定感が増してきたのは確かでしょう。
東京コースは〈0.1.1.5〉と数字的には見劣りますが、2走前の東京新聞杯(2着)でのガルボとの叩き合いは見事な内容。必ずしも不向きのコースとは言えないと思います。
問題は同厩舎のシルポートの存在。
逃げても良し・番手マークでも良しの脚質でありながら、前走のように同厩舎のシルポートが出走すると、“アシスト役”に徹している感があります。今回もこのあたりの兼ね合いがどうなのか。もう1頭の同厩馬・サダムパテックも含めて、西園厩舎がどういう作戦を練ってくるかというのも、このレースのひとつの見所かもしれません。

昨年秋のマイルCSを制したエイシンアポロン
過去には朝日杯2着の実績。加えてヴィクトワールピサと好勝負の経験もあり、マイルCS勝ちに関しての“実力開花”という評価もうなづけるものでした。
前走のマイラーズCは14着でしたが、休み明けでプラス10キロの余裕残し。さらに、内が有利な馬場で外枠に入った不利も敗因と見られています。
1走叩いた今回は当然上積みが見込めますが、問題はどこまで状態面が戻っているか。
この馬は昨年の毎日王冠で復帰するまでに、筋肉痛が原因で11ヶ月の休養を取っています。その後3戦目でマイルCSを勝ち、再び筋肉痛で休養。今回は5ヶ月での復帰ですが、当初予定していた中山記念は回避しています。
単純な考え方になりますが、筋肉痛の症状に差があるとはいえ、前回状態面が整うまでに11ヶ月を要した馬が半分以下の5ヶ月で立て直せるのかどうか。過去の休み明けでは、弥生賞2着、毎日王冠は2年連続で2着・4着とそれなりの結果を出しているだけに、前走の大敗が少なからず気になります。

昨年の安田記念を制したリアルインパクト
1番人気に支持された前走のマイラーズCはまさかのシンガリ負け。岩田騎手のコメントは「流れには乗れていたけど・・・京都の坂が苦手なのかなあ」という釈然としないもの。いずれのしても、予想できない凡走であったことは確かでしょう。
もっとも、この馬は、関東圏での競馬が〈2.3.2.0〉であるのに対し、関西圏では〈0.0.0.4〉とまったく結果を出せないタイプ。輸送が苦手とも思われ、舞台が東京(実績は〈2.2.1.0〉)に変わる今回は一変するという意見もあります。
ただし、本当に変わるのかどうか。たしかに、過去には2ケタ着順から巻き返した実績はありますが、さすがに前走は負け過ぎの感も。実際、陣営がこの中間からチークピーシズを使用したことについても、言い方は悪いですが「馬具に頼らざるを得ない状態」という見方ができます。適性を考えれば軽視できない1頭であることは間違いありませんが・・・。

前走、中山のダービー卿CTをトップハンデの57.5キロで勝ったガルボ
このレースでは外からの差し切りでしたが、3走前の東京新聞杯は先行策からの勝利。流れや展開に合わせて自在に脚を使えるようになったあたりは、充実期を迎えたという評価ができると思います。今年に入ってマイル重賞を2勝しているのは、メンバー中この馬だけ。GⅠ出走は3歳秋のマイルCS以来ですが、近走の勢いを考えれば、格下扱いはできないでしょう。
あとは、力を出し切れるかどうか。
スポーツ紙などでも指摘されているように、この馬は暑さを苦手としています。良績が寒い時期に集中している“典型的な冬馬”なだけに、この季節の競馬がどうなのかというのは不安点と言えるでしょう。
もっとも、陣営もそのことは重々承知のはず。ダービー卿を勝って出走可能な賞金に達した後、本番までじっくり間隔を開けたことも、暑さ対策を念頭に置いた調整の一環であったことは推測できます。個人的には、万全な状態での好勝負を期待したい1頭です。

前走、GⅠ・ヴィクトリアマイルを戦った牝馬も3頭出走。
中でも注目は、昨年のこのレースで1番人気に支持されたアパパネでしょう。
GⅠ5勝の実績、東京マイル3勝の適性。数字的には申し分ないものの、抜けた人気にならないのは、やはり近走のレースぶりが今ひとつだからです。「女王復活」の期待がかかった前走にしても、絶好の位置で前が開いたにもかかわらず、伸びずに5着。叩き3走目で今回は変わってくるという声もありますが、前走で“復調の兆し”を感じさせるものがあったかといえば、難しいように思います。
ヴィクトリアマイル2・3着のドナウブルーマルセリーナは、4歳馬ということもあって、牡馬混合戦の経験値が足りない印象も。もとより、本来の目標はヴィクトリアマイルだったはずですから、昨年のアパパネと同様、中2週でどれだけ余力が残っているかが懸念されます。
ちなみに、2008・2009年のウオッカは、ヴィクトリアマイルから安田記念というローテーションで連覇を成し遂げましたが、この馬の場合は常に牡馬混合GⅠが目標でした。ヴィクトリアマイルを叩き台と考えられるくらいの“大物”でなければ、この使い方は難しいかもしれません。(もっとも、マイル戦線の層の薄さを考えると、牝馬の食い込みがあってもおかしくないようにも思えますが・・・)

別路線からは、ローズキングダムペルーサが参戦。
ローズキングダムは朝日杯でマイルGⅠを勝った実績があり、管理する橋口厩舎も2004年の安田記念で中長距離馬のツルマルボーイを勝たせた経験があります。ペルーサも初のマイル戦とはいえ、厳しい流れの秋天での好走歴を持つ馬。どちらについても、距離短縮で一変する可能性は無視できないでしょう。
ただし、今回は2頭とも8枠。マイルの流れを追走する手間も考えに入れると、後方から外に回す作戦に限定されるかもしれません。となれば、馬場状態(外が伸びるかどうか)が大きなカギ。好勝負をするためには、「展開が向けば」という条件付きになるように思います。

香港馬2頭も要注意。
大雑把な分け方をすれば、実績のラッキーナイン、勢いのグロリアスデイズと見なされているようです。
ラッキーナインは、昨年のセントウルSで59キロを背負って2着、スプリンターズSでは不利を受けながら5着。秋の阪神・中山と春の東京という芝の違いがあるとはいえ、すでに日本の馬場と輸送を経験しているのは強味と言えるでしょう。基本的には先行タイプなので、今回の3枠5番は陣営も歓迎。あとは出走数の少ないマイル戦でどれだけの走りができるか。特に高速決着になると仮定した場合、持ち時計がない点がマイナス材料かもしれません。
グロリアスデイズはデビュー以来一度も連対を外していない戦績が不気味。2008年に2着に入ったアルマダを管理していた陣営だけに、この馬にとって初の日本遠征でもそれなりの対策を講じてくるように思います。あとは、多頭数の競馬がどうか。香港はフルゲートでも14頭のため、差し脚質のこの馬の場合、あるいはポジション取りに苦労するかもしれません。

最後に。
今回もここ2週と同じく、馬場状態と傾向の見極めが重要かと思います。前哨戦の京王杯SCとマイラーズCが“対照的な馬場”で行われていたこともあり、条件によっては前走・負け組が巻き返す可能性もあるでしょう。さらに、当日は雨予報も。馬場の悪化も展開を大きく左右しそうです。
冒頭にも述べたように、非常に難解なレース。買い目の決定は直前までかかる・・・かもしれません。




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プロフィール

安東裕章

Author:安東裕章
東京都出身。2007年11月に書籍『競馬のツボ』、2008年7月に『競馬のツボ2』、2009年7月に『競馬のツボ3』を発表(いずれも総和社刊)。

このたび、拙著『競馬のツボ』を刊行していただいた出版社・総和社様の勧めもあって、ブログを始めることにしました。
競馬における一番の楽しみは、レースについて考えること。つまり予想です。
このブログを書くことで、自分でも週末のレースに向けてイメージを膨らませる訓練になるかと思います。
競馬について考えることが好きな皆様。レース予想に疲れて気分転換をしたい時など、よろしければフラッと遊びに来てください。

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