■2012年10月

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■天皇賞(秋)・復習

天皇賞・秋を制したのは5番人気のエイシンフラッシュ。2010年のダービー以来となる実に2年5ヶ月ぶりの勝利で、GⅠタイトルを手にした。

レースは予想通りシルポートが引っ張り1000m通過が57秒3。大きく離れてカレンブラックヒルとダイワファルコンが並走。さらにそこから離れたところにフェノーメノという隊列になった。
勝ったエイシンフラッシュは向正面で中団のインをキープ。4コーナーから直線を向くと最内から一気に伸びて、外のフェノーメノに半馬身差をつけてゴール板を駆け抜けた。
『予習』には「デムーロ騎手には要注意」と書いたが、それにしても、素晴らしい騎乗だった。インを突いた大胆さに目を奪われがちだが、何より評価したいのは“一瞬のキレ味を最大限に生かす乗り方”だったこと。道中、内に潜り込み、最短距離を通って溜められるだけ脚を溜めたことが勝利につながったように思える(そういえば、昨年の有馬記念2着の時も、ルメール騎手が内々で脚を溜める競馬をしていた)。
陣営のコメントによれば、今後はJCから有馬記念という王道ローテを使いたいとのこと。これまでは“ダービー馬らしからぬ凡走”も目立っていた馬だが、今回のレースで「タメが利けば末脚はキレる」「乗り方次第で力を発揮できる」ことが証明されたとも言えるだろう。大舞台での復活を祝福するとともに、今後の活躍に期待したい。

2着は3歳馬のフェノーメノ。
見事なスタートを決め4番手を追走。最後の最後にエイシンフラッシュの内からの急襲に屈したが、この馬自身も非の打ちどころのない完璧な競馬を見せてくれたと思う。古馬との初対戦だったGⅠの舞台で、これだけのレースができたことは高く評価すべきだろう。
今後の課題をあげるならば、集中力の持続だろうか。抜け出して1頭だけになった時に、わずかながら気を抜くような走りになる。前走のセントライト記念の時も、スカイディグニティに迫られていた。
ともあれ、まだまだ成長が見込める3歳馬。現時点でもかなりの完成度を見せてくれているが、どれだけ強くなるのかという楽しみを感じさせてくれる一戦だった。

3着は大外から追い込んだルーラーシップ。
出遅れ気味のスタートで後方の位置取りに。そのため、外々を回って直線勝負に賭けるしかなかったようだ。
最後はメンバー最速タイの33秒1の上がりをマークし、能力の片鱗を見せてくれたものの、ゴール前の勝ち負けに加われなかったことは、やはり“不完全燃焼”の感がある。結果として、この馬はゲートが課題ということを露呈した一戦だったかもしれない。
もっとも、今回は休み明けでプラス18キロの馬体重。スタートのもたつきはその影響があったという声もある。ベストの条件と思われた東京2000mを取りこぼしたのは痛いだろうが、次走予定のJCでは“1走使った上積み”を期待したい。

4着はダークシャドウ。
こちらも“東京芝2000mでこその馬”だったが、馬券に絡むこともできなかった。福永騎手いわく「状態はすごく良かった」。ならば、力負けなのだろうか。
『予習』の中で「札幌記念の時は覇気がなかった」と書いたが、個人的には、今回も今ひとつピリッとしていない印象があった(一部の競馬評論家からも「ベストの状態ではなかったのでは?」という意見が出ている)。あるいは、多くの前例があるように、この馬も海外遠征で調子を崩して手間取っているのかもしれない。今後のローテーションには注意する必要があるだろう。

デビュー以来負けなしだったカレンブラックヒルは5着。
この馬の敗因については「距離」という見方が多いようだ。外枠から好位をキープするために使った脚も含めて考えれば、たしかにそうかもしれない。ラスト100mで力尽きたという印象だった。
加えて、道中は常にダイワファルコンと並走。『予習』の中で「至近距離に馬がいる状況を嫌がるタイプではないか?」という問題提起をしたが、もしかしたらこの馬にとっては厳しい展開だったかもしれない。
平田調教師も敗因は距離との判断を下しているらしく、今後はマイル戦線に向かうプランが濃厚だという。揉まれる競馬になった時はどうなのか。瞬発力勝負になった時はどうなのか。“強いマイラー”としての成長を期待しながら、今後はそのあたりに注目していきたい。

最後に今回の反省点。
『予習』では「シルポートの作るハイペースに対応できるかどうか」をレースの大きなポイントとして考えたのだが、実際はシルポートが大逃げを打っても後続のペースは速くならなかった。番手にいたカレンブラックヒルにしても、1000m通過は59秒台だっただろう。
後続の馬群のペースが上がらなかった一番の要因は、各ジョッキーに「逃げ馬・シルポートには2000mは長過ぎる」という判断があったからだと思われる。だから深追いはしない。レース自体はハイペースと記録されても、後続のペースはスローだったということだ。
1着のエイシンフラッシュも2着のフェノーメノも、『予習』の中では「ペースが合うのか?」と懸念した馬。「シルポートがどんなに逃げようが後続は自分のペースで進む」と判断できていれば、そうした懸念は必要なかっただろう。このあたりは大いに反省しなければならない。


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■天皇賞(秋)・予習

GⅠ馬6頭を含むフルゲート18頭。オルフェーヴルの名前こそないが、今年の秋天には豪華なメンバーが顔を揃えた。
週中のスポーツ紙で目立っていたのは「3歳馬vs古馬」という見出し。はたして、勢いのある3歳馬が、GⅠの大舞台で一線級古馬の牙城を崩すことができるのか。非常に興味深い一戦になった。

デビューから5連勝、いまだ無傷の3歳馬・カレンブラックヒル
前走、古馬との初対戦となった毎日王冠を快勝。初距離、初の休養明けといった課題も見事にクリアし、潜在能力の高さを印象づけた。今回はさらに1Fの距離延長になるが、初距離が不安視された前走でも自身最速の上がりをマーク。道中、脚を溜める競馬ができたからこその数字であり、折り合い面での不安はなさそうだ。陣営もその点を見越した上で、早くから「秋天目標」を表明していたのだろう。
もっとも、毎日王冠に関しては、展開が味方した部分もあるかもしれない。離れた3番手にポツンと1頭だけという流れは、この馬の持ち味である“先行抜け出しからの押し切り”には絶好のポジションだった。
それゆえ、今回の課題は、前走と同じような正攻法のレースができるかどうかだろう。気掛かりな材料もある。
まず、8枠16番という枠順。ゲートの速い馬ではあるが、スタート直後にコーナーのある“外枠不利”な条件で、スムーズに好位をキープできるかどうか。デビューからすべて内枠からの発走だったこの馬にとって、外目から無理なく(=必要以上に序盤で脚を使うことなく)ポジションを取れるかどうかが、ひとつのカギになるかもしれない。
さらに、道中揉まれる展開になった場合はどうか。
2走前のNHKマイルCは単騎の逃げ、前走は離れた3番手。この馬は競り合いやゴチャつく競馬をそれほど経験していない。NZTにしても、インに閉じ込められたようにも見えるが、馬群が密集していたわけではない。
そのあたりに関して、気になるシーンが2つある。ひとつは、前走、直線で内からダノンシャークが追い上げてきた時に、一瞬反対側にヨレた場面。もうひとつは、NZTのスタート後に両側の馬に挟まれて首を上げる仕草を見せた場面だ。あくまで推測ではあるが、至近距離に馬がいる状況を嫌がるタイプという見方もできる。
「東京芝2000mはスピードとスタミナの両方を求められる」と言われるように、天皇賞・秋は激流のようなレースが目立つ。カレンブラックヒルが好走するためには、この激流に乗れるかどうか、そして、激流に呑まれても沈まずにいられるかどうかがカギになりそうだ。

前走、セントライト記念を快勝したフェノーメノ
菊花賞の権利を獲りながらも秋天に矛先を向けてきたのは、陣営が条件的に向いていると判断したからに違いない(元々はダービー直後から秋天参戦を示唆していたが)。東京芝実績は〈3.1.0.0〉。唯一の2着はディープブリランテにハナ差及ばなかったダービー。長い直線を生かすかように最後まで伸びる息の長い末脚は、この馬の“勝ち負けに持ち込める武器”と言えるだろう。GⅠの舞台での古馬との初対戦は、たしかに厳しい条件だが、3歳中長距離路線のトップレベルである以上、好勝負への期待も高まる。
この馬の課題はペースに対応できるかどうか。
前走のセントライト記念では、好位から直線先頭に立ち後続を振り切る“自分でレースを作る”競馬を見せたが、1000m通過60秒2という落ち着いた流れだったために自在に動けたという見方もできる。レコード決着となった昨年のこのレースは、シルポートが飛ばして1000m通過は56秒5。おそらく今年も同じような逃げ方になるのでは? となれば、これまで前半3Fを36秒台で走っていたフェノーメノにとって、おそらく経験したことのないハイペースになるはずだ。極端に置かれることはないにしても、セントライト記念のような好位から自分でレースを作る競馬をすることは難しくなるだろう。
青葉賞やダービーでの末脚のキレを見ると、流れが速くなった方が有利とも思えるが、実際にはどちらのレースも4コーナーでは7~8番手に付けている。必ずしも後方から一気というタイプではないということ。東京芝2000mは2戦2勝の結果を残しているが、いずれもスローを先行して押し切ったレースであり、秋天の流れとは大きく異なる。
これまでと同じような末脚勝負を挑むならば、流れに乗りながらもどれだけ脚を温存できるかがポイントになりそうだ。直線を向いた時にどのようなポジションにいるか。そのあたりに注目したい。

前走、毎日王冠2着のジャスタウェイ
54キロの斤量に恵まれたところもあったかもしれないが、陣営のコメントの通り「夏を越して馬が大きく成長した」こともたしかだろう。溜めればキレる走りは新潟2歳Sで実証済みだったが、古馬との初対戦で自分の持ち味を発揮できたことは評価に値する。今回は2キロの斤量増になるが、昨年のような差し馬向きのハイペースになれば、前走同様の追い込みが期待できるかもしれない。
不安材料を上げるならば、中2週で再度関東遠征となるローテーション。
というのも、この馬の場合、カレンブラックヒルやフェノーメノと違って、早い段階から秋天を目標にしていたとは思えないからだ。毎日王冠の結果を受けて、ここに駒を進めてきた感もある。1走叩いた上積みは見込めるだろうが、秋天を目標に逆算した仕上げ方をしていないのならば、休み明け激走の反動も気掛かりだ。状態面をキープできているかどうかのチェックは必要だろう。
もっとも、今回鞍上に内田騎手を配してきたのは、勝負気配の表れという見方も。
須貝厩舎と内田騎手といえば、ゴールドシップやアスカクリチャンで結果を残している好相性のライン。エイシンフラッシュがデムーロ騎手に乗り替わったこととの兼ね合いもあるのかもしれないが、いずれにしても、末脚勝負の馬に追えるジョッキーが乗る以上、一概に軽視はできない存在とも思える。

前走、宝塚記念でオルフェーヴルの2着に入ったルーラーシップ
2走前にはQエリザベスⅡ世Cを制し、念願のGⅠタイトルを手に入れた。デビュー当時から良血馬として注目されてきた逸材だが、ここに来ていよいよ本格化の印象もある。
古馬の場合、秋のGⅠ戦線ではJCや有馬記念を目標にする馬も少なくない(賞金的な理由も大きいようだが)。しかし、ルーラーシップに関しては〈4.1.0.0〉の2000mが適距離。先々よりもまずこのレースが大目標と考えても差し支えないだろう。休み明けでも乗り込みは順調とのこと。実績から言っても有力候補であること間違いない。
問題は、ダービー以来の東京参戦という点。
ストライドが大きく跳びがきれいな走りをするため、この馬は早くから“東京向き”と言われてきた。実際、プリンシパルSは2着馬に4馬身差をつける圧勝だった。しかし、近走の走りは、いずれも大外をマクりながら差してくる“小回りコース向き”(Qエリザベスでは内を突いて伸びてきたが)。今回のレースでの好走をイメージするには、3歳時の春にまで遡らなければならないわけで、そのあたりの判断が難しい。額面通り“東京向き”の強い走りができるのかどうか。
さらに加えるならば、この馬はこれまで国内で15戦走っているが、ハイペースの経験は前走の宝塚記念のみ。全7勝のうち5勝がスローペースだった。もちろん、ペースに関係なく、能力の違いを見せつけることも、十分考えられるのだが・・・。

昨年の秋天をレコードタイムで制したトーセンジョーダン
〈3.2.0.0〉の東京実績に加え、先行・差しのどちらでも結果を出せる脚質の自在性など、強調材料が目立っている。
ただし、今回に関しては、順調に使われていない点がやはり不安材料だろう。
春天2着の後、宝塚記念・札幌記念を続けて回避。結果的に6ヶ月の休み明けでの“ぶっつけ”になってしまった。過去10年、前走春天からの“ぶっつけ”で馬券に絡んだのは、昨年3着のペルーサ1頭のみ。しかも、ペルーサの場合は成長期にある4歳馬。6歳馬のトーセンジョーダンに休み明けからピークの状態を期待するのは難しいかもしれない。陣営も「1、2回使えば、去年の秋の状態になる」とコメントしている。
鞍上のスミヨン騎手は、池江調教師が身元引受人になり12月31日までの免許を取得。ある意味、JC→有馬記念を視野に入れた起用ともとれるだろう。適条件には違いないが、狙いはここを使ってからかもしれない。

昨年の秋天で2着に入ったダークシャドウ
東京実績〈5.1.0.0〉、2000m〈3.3.0.0〉。適性は破格の数字を残している(東京芝2000mに条件を絞っても〈3.1.0.0〉)。
昨年は賞金加算の必要があったため、毎日王冠(1着)を使ったが、今年は春に海外遠征を行ったこともあり、中間に札幌記念を挟む余裕のローテーションを組んだ。陣営いわく「万全の状態で臨める」とのこと。“東京芝2000mでこその馬”である以上、このレースが目標に違いない。念願のGⅠを奪取する可能性も見えている。
この馬の場合、前走・札幌記念の走りをどう評価するかだろう。
元来、前に壁を作って道中脚を溜め、直線で抜け出す競馬がこの馬の“強さ”につながっていた。しかし、札幌記念で見せた走りは、番手から直線先頭というこれまでとは違うイメージ。「折り合い面に成長が見られ、脚質も広がった」という見方が多いようだが、この馬の持ち味である“馬群の中で我慢をさせた後に突き抜けてくる凄み”を見れなかった分、物足りなさを感じたのも確かだ。
札幌記念はあくまで叩き台であり、本番ではこの馬の走りに戻るのかもしれない。しかし、激流が予想される秋天を前に、折り合いを重視する競馬を試す必要があったのだろうか。どことなく覇気のない印象が残った点が若干気になるところだ。

前走、新潟記念を制し、サマーシリーズチャンピオンの座に輝いたトランスワープ
馬場条件とペースが異なる函館と新潟で連勝したことは大いに評価できるだろう。7歳馬ではあるが、休養期間が長かったこともあって、馬自身は今がピーク。馬場の荒れた前走の新潟では2000mの自己時計を更新している。
もっとも、GⅢ連勝の勢いはあるとはいえ、このメンバーに入ると格下感は否めない。さらに、猛暑の夏場を使ったことによる消耗度も気になる材料だ。
強調できる点をあげるならば、ハイペースを得意としていること(〈3.1.1.2〉)。シルポートの逃げが緩みのない消耗戦を演出すれば、あるいは、馬券圏内に突っ込んでくる可能性もあるかもしれない。

前走の毎日王冠で2番人気に支持されながら9着に敗れたエイシンフラッシュ
この馬に関しては、当ブログで再三指摘しているように、長くいい脚を使えないところが弱点だろう。瞬発力勝負向きであり、ペースはスローが合っている。事実、スローペースでは〈4.3.0.3〉という数字を残しているのに対して、平均ペースとハイペースは共に〈0.0.2.2〉。叩き2走目の上積みはあるだろうが、秋天を好走できるイメージにはつながりにくい。
ただし、鞍上にデムーロ騎手については、要注意という見方も。先入観を持たない外人ジョッキーは、流れに合わせた競馬をする場合がある。馬がその指示に応えることができるという前提になるが、これまでとは違った走りを見せてくれるかもしれない。

前走、オールカマーを勝ったナカヤマナイト
オルフェーヴル1頭が抜けた存在で全体としての評価が低い4歳世代だが、この馬自身は共同通信杯勝ちをはじめ、皐月賞・ダービーで掲示板を確保するなど、そこそこの結果は残している。3歳秋には海外遠征へ。その経験の結実が期待されていた馬だけに、前走の強い勝ち方を本格化と見る意見も少なくない。たしかに、以前と比べると、どっしりとした安定感のようなものが漂っていた。
GⅠ、GⅡでは“一枚落ちる”印象が強かったが、競走馬にとって「もっとも旬な時期」と言われる4歳秋を迎えたことで、心身ともにスケールアップが見込めるようならば、ここでの好勝負も期待できるかもしれない。
1枠1番の枠順もロスなく脚を溜められる点では好材料。ハイペースに対応できるかどうかが課題だが、内をこじ開けるように差し切った共同通信杯のようなレースがイメージできる。
もっとも、オールカマー勝ちに関しては、それほど高い評価は与えられないのでは?
重賞初挑戦のルルーシュが1番人気に支持されたほどの手薄なメンバーが相手ならば、GⅠ出走経験があり抜群の中山適性を持つこの馬にとっては“順当勝ち”だったはずだ。
いずれにしても、この馬にとって今回のレースは重要な一戦だろう。古馬中長距離戦線での活躍を期待できるだけの成長度を見せてくれるかどうか、注目したい。

今回出走するもう1頭の4歳馬、サダムパテック
3歳時は常に上位人気に支持されていた馬で、弥生賞を勝ち、東京開催となった皐月賞ではオルフェーヴルの2着という結果を残している。今年に入ってからはマイル戦線に照準を定め、京王杯SCを制し、安田記念では1番人気に支持された(結果は9着)。
この馬については、距離適性を検討する必要があるだろう。
当ブログでは一貫して“マイラーとしての資質”を疑問視してきたので、今回2000mの距離を使うことは、プラスに働く可能性もあるように思える。マイル戦の速い流れを経験したことを生かせば、ハイペースでも無理なく追走できるかもしれない。長中距離→マイル→長中距離という距離変更で思い出すのは、エアシェイディの成功例。エアシェイディはマイルを走ることで折り合いを学んだが、サダムパテックもマイル経験が何らかの糧になっていれば、激走の可能性もゼロとは言えないだろう。
陣営は「休み明けの方が動けるタイプなので、あえて“ぶっつけ本番”を狙った」とコメント。時計勝負になった場合の不安も大きいが、個人的には“大駆け”の魅力を感じる1頭だ。

昨年の宝塚記念を制したGⅠ馬・アーネストリー
近走を見る限りでは残念ながらピークを過ぎた感がある。強調材料をあげるとすれば、シルポートが飛ばす展開になれば、自分の形に持ち込みやすいことだろうか。もっとも、近走はスタートで素早く前に取り付けなくなっていることが気掛かりだ。
一昨年の天皇賞・春を勝ったGⅠ馬・ジャガーメイル
東京実績もあり昨年のJCでは3着に入る激走も見せている。今年に入ってからの2戦も掲示板を確保し、味のあるベテランぶりを発揮しているが、骨折休養明けとなる今回はさすがに厳しいのでは? 距離適性を考えても、1走使った後のJCの方がベストだろう。
鞍上に岩田騎手を迎えたトゥザグローリー
GⅠでも好勝負できる素材かもしれないが、戦績が示す通り安定感に乏しい。折り合いに難がある馬だけに、今回の大外枠はマイナスだろう。元来、寒くなるほど好走するタイプ。陣営のトーンも低く、休み明けの今回は叩き台という見方が妥当かもしれない。


■少しだけ・・・菊花賞展望

「競馬のツボ<ブログ版>」にお越しいただき、ありがとうございます。
残念ながら、急な出張が決まったため、今週のブログはお休みさせていただきます。
申しわけありません。(時間があればなあ・・・泣)

と言いつつ、例によってGⅠ・菊花賞の展望・・・というか考え方を少しだけ。

ディープブリランテの出走回避で“ゴールドシップ1強”のムードが濃くなった一戦ですが、仮に「相手探し」のレースであったとしても、能力の優劣を判断しにくいメンバー構成のため、相手の絞り方が非常に難しい一戦だと思います。

ゴールドシップに関しても、不安材料がまったくないわけではありません。長くいい脚を使って追えば追うほど加速するタイプですが、エンジンの掛かりが遅いという弱点も。3000mという未知の距離を走る今回は、仕掛けのタイミングがカギになると思います。スタートが速い馬ではないので、最内枠に入ったことでインに閉じ込められるリスクもあるでしょう(スタートから最初のコーナーまでが短い京都外回り3000mでは外から次々に被せられるケースも考えられます)。内田騎手がどこで外に持ち出し、どのタイミングで追い出しにかかるか注目です。

他の馬については、経験値と成長度をそれぞれどのように評価するかがポイントかもしれません。
春のクラシックを経験している馬は、巻き返せる条件があるかどうか。連勝中の上がり馬は、これまでと同じ競馬ができるかどうか。そのあたりは基本として検討すべき項目だと思います。
例えば、前走の神戸新聞杯で10着に敗れたベールドインパクトは、調教パターンを元に戻したり、前に馬を置きやすい内枠に入ったことをプラスと考えることができるかもしれません。
近2走は後方からの競馬をしているエタンダールは、今回の枠ならば好位から粘り込むようなレースをしてくる可能性もあります。

今年のトライアルは、神戸新聞杯もセントライト記念も後半に速いラップが連続するレースでした。そこでどのような競馬をしたかという分析も必要でしょう。
先行勢の中で唯一掲示板に載ったユウキソルジャーの力をどう評価するか。スカイディグニティとダノンジェラートとでは、どちらが正攻法の競馬をしたか。
当然、菊花賞がどのような展開になるかを推測した上で、「前走はああいう走りだったから・・・」といった検討を行うべきかと思います。

はじめに書いたように、予想が難解な一戦。
皆様のご健闘をお祈りいたします。


安東 裕章


■秋華賞・復習

GⅠ・秋華賞は圧倒的な1番人気(単勝1.3倍)に支持されたジェンティルドンナが勝利を飾り、史上4頭目の牝馬3冠を達成した。

レースはヴィルシーナがペースを握り、向正面でチェリーメドゥーサが最後方から大マクリを見せる展開で、1000m通過が62秒2のスローペース。
ジェンティルドンナは中団の外目を追走。4コーナー手前では岩田騎手がムチを入れるほどの反応の鈍さを見せたが、直線でエンジンがかかると一気の加速を見せ、先に抜け出したヴィルシーナとの叩き合いの末、わずか7cm差で栄冠を手に入れた。
終わってみれば順当な結果とはいえ、“余裕の勝利”を予想したファンにとっては、肝を冷やすような“辛勝”。もっともこれは、ジェンティルドンナの走り云々ではなく、“完璧な競馬”を見せてくれたヴィルシーナを讃えるべきだろう。それゆえ、最後のハナ差は、ジェンティルドンナの底力の評価にもつながる。
ラスト3F地点でチェリーメドゥーサからヴィルシーナまでが6~7馬身。そこからジェンティルドンナまで4馬身。それがゴールの瞬間には後続に1馬身半差をつけるハナ差の競り合い。3冠すべてで1・2着となったジェンティルドンナとヴィルシーナだが、改めてこの2頭の力が抜けていることを実感させるレースだった。「時計的には平凡」という辛口の意見もあるようだが、最後の直線はともに全力を出し切る攻防。やはり、名勝負だったと言えるだろう。
今後の予定として、ジェンティルドンナはエリザベス女王杯とジャパンカップの両方を視野に入れているとのこと。JC出走となれば、場合によってはオルフェーヴルとの“3冠馬対決”の可能性もある。いずれにしても、ウオッカ、ブエナビスタに続く“名牝”として、牡馬混合のGⅠ戦線での活躍を期待したい。

2着はヴィルシーナ。
最内枠を生かしてハナへ。内田騎手は「ヨーイドンの競馬にはしたくなかったので、自分でペースを作ろうと思った」とコメントしているが、ジェンティルドンナの末脚を封じ込める作戦としては正解だっただろう。『予習』でもふれたことだが、ローズSで見せた後方からのマークは、2頭のキレ味の違い(=どれくらい前にいれば相手の差し脚を凌げるか)を測るための“試走”だったに違いない。
それにしても、今回のヴィルシーナは最高の走りを見せてくれた。自らハナを切ってペースを作ったこともそうだが、随所に内田騎手の“巧さ”が光っていた。
中でも、チェリーメドゥーサが大マクリから後続を一気に離した時に深追いしなかったことと、馬群を抜け出してから外目に持ち出したことは、好走のポイントだったと思われる。
特に、直線で外に持ち出したのは、後ろから来るジェンティルドンナに馬体を併せることを計算した緻密な作戦。『予習』にも書いたように、「併せる形になった方がいい」という馬の持ち味を十分に考慮した上での騎乗だった。実際、ゴール直前では、一旦引き離されそうになりながらも差し返すシーンも。最後は相手の“勝ち切れる底力”に屈した形だが、ヴィルシーナが前にいたからこそジェンティルドンナは能力を発揮することができたという見方もできるだろう。
これで4戦連続でジェンティルドンナの2着。今後もライバル関係が続き、名勝負を繰り広げていくことを期待したいが、一方で、ジェンティルドンナ不在のレースでこの馬の“正攻法から突き抜ける競馬”を見てみたい気もする。

3着には6番人気のアロマティコ。
道中はじっくりと脚を溜めて、直線で追い上げる競馬を見せてくれた。古馬混合の準オープンで揉まれた経験があったとはいえ、ここまでのキャリアを考えれば上々の結果。内枠の差し馬としてはベストの内容だったのではないだろうか。
ジェンティルドンナと同じ上がりをマークしながら着差を付けられたのは、現状での瞬発力の差に違いないが、『予習』でも書いたように「じっくりと馬を育てることで定評のある“佐々木晶厩舎=佐藤哲騎手”のコンビ」であることを踏まえれば、まだまだ今後の成長を期待できそうだ。
4着のブリッジクライム(11番人気)もなかなかの走り。アロマティコとの差はアイムユアーズを挟んで内に切れ込んだ分かもしれない。若干窮屈になったようにも見えた。
この2頭に関しては、差し馬に不向きのスローの団子状態になりながらも、しっかりと折り合って馬群を抜け出し、最後に脚を使えた点を評価したい。個人的に期待していた「昨年のキョウワジャンヌのような走り」を見せてくれたと思う。

大マクリから向正面で一気にハナを奪ったチェリーメドゥーサが5着。
掛かり気味の暴走のようにも見えたが、実際はスローペースを判断した上での小牧騎手の仕掛け。スポーツ紙等でも「レースにメリハリを与えたジョッキーの好判断」といった記事が目立ったいた。たしかに、この馬が動かなければ、1000m通過はおそらく63~64秒。ヴィルシーナの内田騎手が3コーナーからスパートをかけたかもしれないが、GⅠレースとして見た場合、物足りない内容になっていただろう。
さすがに最後は脚が上がったが、見せ場十分の走りは堪能できた。『予習』の中で先行馬について「外回りコースでよく見られる“大逃げ”をした方が展開的にも面白い」と書いたが、その役割を果たしてくれたようにも思える。

3番人気のアイムユアーズは6着。
1コーナーまでに好位につけ、直線でもいい位置にいたが、最後は伸びあぐねた印象。スタートから無理に脚を使ったようには見えなかったので、あるいは、距離的な問題もあるかもしれない。2400mのオークスでも4着に健闘したが、やはりベストは1400~1600mではないだろうか。立ち回りの巧さが持ち味の馬だけに、瞬発力勝負になった展開も不向きだった。
ただし、馬体そのものはかなり成長したようにも思える。ひとまずクラシック終了を区切りに考え、マイル路線中心という使い方にしていけば、今後の活躍を期待できるだろう。

その他の馬に関しては・・・。
ミッドサマーフェア(5番人気11着)とハナズゴール(8番人気11着)は、何よりも状態面を戻すことが先決。どちらも春に能力の片鱗を見せてくれた馬なので、復活を期待したい。
今後、楽しみに思えたのは、サンシャイン(7着)とラスヴェンチュラス(10着)。
サンシャインはオークス以来のレースだったが、春に減り続けた馬体をしっかりと戻してきた。そつなくレースを運べるタイプのようなので、経験を積んで“勝てる武器”を身につければ伸びてきそうだ。
ラスヴェンチュラスは4コーナー最後方からメンバー最速の上がり(32秒9)をマーク。今回は外に持ち出せずに内を突く形になったが、展開がハマれば大外一気で差し切れる末脚の持ち主だろう。馬体の回復(今回もマイナス2キロ)がカギだが、馬場状態が味方するようなレースに出走して場合に“狙って面白いタイプ”かもしれない。


■秋華賞・予習

牝馬クラシック最終戦、GⅠ・秋華賞。
注目はやはり「ジェンティルドンナの牝馬3冠達成なるか!?」だろう。
大多数の専門紙・スポーツ紙が「3冠確実」の見出しを掲げているが、馬券的には「逆転候補」と「相手候補」のどちらに重点を置くかがポイントになりそうだ。

春の2冠を制したジェンティルドンナ
レース運びの巧さと持ち前のキレ味を発揮した桜花賞もさることながら、従来の記録を1秒7も更新するレースレコードで2着に5馬身差をつけたオークスの勝ち方はまさに“圧巻”。この世代では“能力が違う抜けた存在”であることを強く印象づけた。
秋初戦の前走・ローズSでは、先行2番手から抜け出す競馬で快勝。本番の京都内回りコースを意識した上での作戦だろうが、脚質に柔軟性のあるところを見せてくれた。ある意味、風格にも似た安定感のある走り。この中間の調整も順調ということであれば、3冠達成に向けて死角らしきものは見つけにくい。
あえて不安材料をあげるならば、道中、必要以上に外々を回らされた場合だろうか。
前走、先行する競馬で結果を出したことで、「京都内回りコースへの対策も万全」という意見も多い。しかし、序盤から番手のポジションをキープできたのは、レースが10頭立ての少頭数だったことも大きな要因のはず。今回はフルゲートの18頭立て。7枠14番という枠順と1コーナーまでの距離を考えると、前目のポジションに付けるのは簡単とは思えない。
今回の枠順ならば、外目から先行勢を見ながらレースを進める形の方が妥当だろう。無理に好位を取りにいけば、序盤から脚を使わなければならないからだ。つまり、ローズSで見せた競馬とは違うものになるということ。「ローズSと同じ走りができれば京都内回りコースに対応できる」という見方は成り立たなくなる。昨年の秋華賞、外を回ったホエールキャプチャは“枠順の差でアヴェンチュラに負けた”とも言われたが、ジェンティルドンナにも同じリスクが生じると考えてもいいいかもしれない。
もっとも、能力の絶対値が違えば、枠順や展開など関係なく、結果はついてくるもの。直線の短い京都内回りコースは、たしかに外差しには不利かもしれないが、スティルインラブもアパパネも外枠から外を回っての差し切り勝ちで3冠を達成している。3コーナー手前から動いていけるかどうか(スティルインラブもアパパネもポジションを上げていった)といった課題はあるものの、「どれだけ強い勝ち方を見せてくれるか」という期待が高まる一戦であることは間違いない。

桜花賞、オークス、そしてローズSと、3戦連続でジェンティルドンナの2着のヴィルシーナ
すでにジェンティルドンナとの“勝負付け”は済んだという見方もあるようだが、春の時点で「逆転があるとすれば秋華賞」と言われていただけに、一矢報いる可能性も捨て難い。
興味深いのは、前走のローズSでジェンティルドンナを後ろからマークする走りを見せたこと。これについては、内田騎手がジェンティルドンナとのキレ味の差を測るための作戦だったという見解も出ている。いずれにしても、本来とは逆の隊列だったことは確か。ジェンティルドンナも本番を意識した先行策だったこともあり、ローズSの着順は“探り合いの結果”と見ることもできるだろう。
今回、最内枠に入ったことから、ヴィルシーナの方が前に行くだろうというのが大方の予想。好位のインで流れに乗り、直線で先に抜け出す競馬がイメージできる。ならば、その時点でジェンティルドンナにどれだけの差をつけているかが勝敗のカギになりそうだ。
ただし、この馬の場合、早目先頭から後続を引き離すタイプ(=正攻法で勝ち切れるタイプ)かというと、必ずしもそうではない。「馬体を併せる形になった方がいい」という陣営のコメントの通り、競り合いになった方が根性を発揮する。実際、桜花賞では、一度は後退しながらも差し返す走りを見せてくれた。
となれば、課題は「凌ぎ切れるかどうか」だろう。直線の加速力は後ろから来る方が上。ダイワスカーレットのように一気に押し切れる脚があれば、それに越したことはないのだが・・・。ジェンティルドンナに勝つためには、最後までセフティリードを保てるくらいの、“直線でのもうひと伸び”が欲しいところだ。

前走、古馬混合の牝馬GⅢ・クイーンSを勝ったアイムユアーズ
デビュー以来、馬券圏内を外したのはわずか1回。その1回=オークスも僅差の4着で、距離不安があったことを考えれば十分評価できる内容。とにかく、堅実な走りを見せてくれる馬で、立ち回りの巧さが際立っている。
前走は52キロの軽量に恵まれたところもあるが、古馬相手に結果を出せたことは大きい。プラス24キロでの激走による反動がどうかとも思われたが、追い切りでは坂路4F49秒4の時計をマーク。状態面は上り調子という意見が多い。
もっとも、好位から流れに乗る競馬が持ち味のこの馬にとって、今回の枠順は外過ぎる感も否めない。1コーナーまでにどのようなポジション(ベストは好位のイン)をキープできるかが一番の課題かもしれない。
さらに気になる要素をあげるならば、この馬自身の成長度。というのも、春の一連の好走は、他馬と比べての“完成度の高さ”が大きな要因だったと思えるからだ。馬体ではなく、競馬の巧さという意味での“完成度の高さ”である。
春の段階では“完成度”が大きなアドバンテージになっていたが、夏を越して各馬がそれぞれ成長を遂げていれば、その差は自然と縮まることになる。つまり、単純な言い方をするならば、アイムユアーズは「追いつかれたのではないか」ということ。この馬自身のポテンシャルを低く評価するわけではないが、立ち回りの巧さを上回るだけの“勝ち切れるだけの決め手”がある馬かというと、そこまでは言い切れない。できれば、これまでのイメージを払拭するような“他馬を圧倒する強い走り”を期待したいのだが・・・。

今回のメンバーの中で唯一ジェンティルドンナに先着したことのあるハナズゴール
この馬に関しては、順調さを欠くところがマイナス材料だろう。
札幌記念では古馬相手に0.3秒差の4着と健闘し、その後の期待感を抱かせてくれたが、予定していたローズSを感冒のために回避。腹痛と発熱で1週間運動ができず、筋肉が落ちてしまったという。2ヶ月近くの間隔が空きながら、中間の時計が2本というのも物足りなく思える。
ただし、ハマった時の破壊力を考えると、一概に軽視はできない。長くいい脚を使うのではなく、一瞬のキレ味で勝負するタイプ。内回りコース向きの差し馬と言えるだろう。もとより、当初は札幌記念から秋華賞直行のプランもあった馬。ローズS回避そのものの影響は、ローテーション的にはそれほどでもないかもしれない(もちろん感冒のダメージは大きいだろうが)。いずれにしても、状態の回復具合がカギ。展開としては、ジェンティルドンナと併せる形で追い込んでくるのが理想のイメージになるだろう。

前走、ローズSで3着に入り優先出走権を獲得したラスヴェンチュラス
マイナス10キロでの出走だったローズSはギリギリの馬体。夏の新潟で頭角を現わしてきた馬の格上挑戦だっただけに、権利獲りのためのピークの仕上げだったという見方もできる。
最後はそれなりに伸びてきていたが、ジェンティルドンナ、ヴィルシーナと比べると、実力の差は歴然という印象も残った。新潟では32秒台の上がりを連続でマークしたが、京都の内回りは究極の上がり勝負にはなりにくい。条件的にも厳しいのではないだろうか。

オークスでは1番人気に支持されたミッドサマーフェア
結果、13着に大敗したが、年明けから5戦という使い詰めに加えて調教での激走(坂路4F・48秒8)が敗因と考えられる。春の実績(フローラSの圧勝)を踏まえれば、巻き返しがあっても不思議はない。
ただし、それには「立て直しがきちんとできていれば」という条件が付く。となれば、気になるのは、前走・クイーンSの馬体重=マイナス10キロ。夏を休ませて函館に滞在しながらこの数字。レースでは3着に入ったものの、状態面に不安を残したようにも思える。
今回、調教後の計量では前走比プラス10キロだが、美浦から関西への長距離輸送でどうなるか。輸送そのものは4走前の君子蘭賞で経験済みだが、その時は馬自身が万全の状態だった。陣営は前走の馬体減について「函館から札幌への輸送によるもの」とコメントしているが、以前は輸送を克服できた馬がそうなったことは、現時点での体調に対しての懸念にもつながる。いずれにしても、直前の気配に関してのチェックが必要な1頭だろう。

前走、ローズS5着のトーセンベニザクラ
年明けのフェアリーSを制した重賞勝ち馬だが、その後の戦績が今ひとつ。クラシック2戦に出走し、夏場を休養してトライアルで復帰という“王道のローテーション”を使われてはいるが、上位馬との力の差が見えている印象もある。
この馬が圏内に浮上するとすれば、ゴール前がゴチャつくような混戦になった場合。トリッキーな中山コースでそれなりのパフォーマンスを見せている馬だけに、立ち回りの巧さが生きるかもしれない。

京都内回りコースの形態から「先行馬有利」という意見もある。
これには、オークス3着のアイスフォーリスと忘れな草賞を押し切ったキャトルフィーユが該当する。
もっとも、「差し馬に不利な直線の短いコースは逃げ・先行馬の粘り込みに注意」というのは、理にかなったセオリーではあるものの、実際にその通りの結果になることはそれほど多くない。むしろ、直線の短さを意識して、各馬が早目に動き出すため、逃げ・先行馬が馬群に吸収されるケースも目立つ。
逃げ馬が残るとすれば、後続をどれくらい離せるかがポイントだろう。スローペースで上がり勝負に持ち込もうとすれば、4コーナー手前で追い付かれる可能性が高いのでは? むしろ、外回りコースでよく見られる“大逃げ”をした方が、展開的にも面白いように思えるのだが・・・。

伏兵陣で注目したいのは、これまで有力馬と対戦していない未知の魅力を持った馬だろう。

500万、1000万を連勝してGⅠに挑むハワイアンウインドは、近2走のレース内容が秀逸。小倉でレコード勝ちをおさめたように、時計勝負に対応できる強味もある。
前走、古馬混合の準オープンで3着に入ったアロマティコも興味深い1頭。連続してメンバー最速の上がりをマークしているように、確実に脚を使ってくる印象がある。じっくりと馬を育てることで定評のある“佐々木晶厩舎=佐藤哲騎手”のコンビだけに、本格化するのはまだ先かもしれないが、どんな走りを見せてくれるか注目したい。
トライアルの紫苑Sで2着に入ったブリッジクライムも面白い。内枠で馬群に揉まれながらも前が開いた後に伸びてきた前走の脚には見所があったし、福島のレースでポジションを上げながら結果を出した内容から、自分から動ける立ち回りの巧さも感じられる。
この3頭、今回はいずれも内枠に入ったが、末脚のキレを生かすタイプだけに、馬群を捌けるかどうかがカギになりそうだ。昨年のキョウワジャンヌ(2着)のような、脚を溜めてインから伸びてくるような競馬ができれば、馬券圏内の可能性もあるかもしれない。


■毎日王冠・復習

GⅡ・毎日王冠は1番人気の3歳馬・カレンブラックヒルが快勝。デビューから無傷の5連勝を飾った。

レースはシルポートが逃げて、1000m通過57秒8の緩みない流れ。道中、離れた3番手をキープしたカレンブラックヒルは、直線で抜け出すとそのまま後続を振り切る理想的な競馬を見せてくれた。
秋山騎手のコメントにもあるように、休み明けのせいもあって直線に向いてからの反応が今ひとつだったが、結果的には正攻法で押し切る見事な内容。初距離、初の休養明け、初の古馬一線級との対戦といった課題をたった一戦でクリアしたところに潜在能力の高さがうかがえる。中でも、スタートの速さ(ポジション取りの速さ)と折り合いの良さはかなりのもの。次走の秋天ではさらに1F距離が延長されるが、条件面での不安材料は気にしなくてもよさそうだ。
課題はスローペースから一瞬のキレ味勝負になった場合だが、NHKマイルCの時のようにハナに立って自分でペースを作れる強味がある。今後、どのような進化を見せてくれるのか。活躍に期待したい。

2着は12番人気の伏兵・3歳馬のジャスタウェイ。
クラシックを経験してはいるものの目立った戦績もなく、脚質的にも開幕週に不向きな差し・追込型であることから人気にならなかったが、最後はメンバー最速の上がりをマークして勝ち馬にクビ差まで迫った。
展開的にハマった部分もあるだろうが、古馬混合のGⅡでの2着は評価に値するもの。2歳時には注目を集めていた馬だけに、夏場の成長を推測し54キロの軽量をプラス材料と判断すれば、軽視できない存在だったかもしれない。この点は反省したい。
まだまだ未完成な印象もあるが、ものおじしない走りが目立っていたことも確か。今後、経験を積んでいけば、伸びていく素材かもしれない。まずは、この馬自身の個性を確立することだろう。強くなれる資質を感じさせる一戦だった。

3着には9番人気のタッチミーノット。
他馬との比較という視点で見れば、順調に使われている強味が結果につながったとも考えられるが、一番の好走要因は横山典騎手のペース判断だったのではないだろうか。
元来、好位からの競馬を得意とする馬だが、向正面では5番手いながら3~4コーナーでポジションを下げた。おそらく、速い流れを読んでの位置取りだろう。直線最後に見せた伸びは、前を深追いせず道中で脚を溜めたからこそのものだろう。
有力な差し馬が外へ持ち出すのを待つように、空いた内を突っ込んできたのも印象的。2着のジャスタウェイ=柴田善騎手も同様のコース取りを見せてくれたが、このあたりはベテランジョッキーの巧さと言えるかもしれない。

結果を出せなかった人気馬に関しては、『予習』で懸念した通りだったように思われる。
2番人気のエイシンフラッシュ(9着)は、今回のような緩みのないペースでは持ち味を発揮できないタイプ。宝塚記念(阪神内回り)や有馬記念(中山)の好走からもわかるように、一瞬のキレ味を生かせる条件の方が向いているのだろう。
3番人気のトーセンレーヴ(11着)は、調教の評価こそ高かったが、レースに行くとまだまだ力不足の印象。大外枠の影響もあったかもしれないが、気分良く走れないとモロいところがそのままレースに出たようにも見えた。『予習』では「安定感に欠ける」と書いたが、現状ではムラ馬の部類に入るようだ。
4番人気のフェデラリストはシンガリ負け。蛯名騎手のコメントにもあるように、状態面が万全ではなかったようだ。使い詰めの蓄積疲労が原因だとすれば、立ち直るまでに少しばかり時間がかかるかもしれない。

休み明けのマイラーが目立った今回のレースだが、いずれの馬も「次走に期待」といったところだろうか。
リアルインパクトの粘りとダノンシャークの差し脚には見所があったものの、今回の結果から目に見える能力差は判断できなかった。どうやらマイルCSは混戦になりそうだ。


■毎日王冠・予習

今週は東京と京都で3日間開催。日曜の東京ではGⅡ・毎日王冠が行われる。
GⅠ馬6頭を含め、なかなかの好メンバーが揃った印象。今後を占う意味でも興味深い一戦になりそうだ。

土曜日午後の時点で、前売り単勝1番人気に支持されているのは、3歳馬のカレンブラックヒル
デビューから4連勝でGⅠ・NHKマイルC勝ち。「一体どれだけの能力の持ち主なのか?」。今回、競馬ファンの注目を最も集めている馬と言っていいだろう。
4連勝の内容はいずれも逃げ・先行からの押し切り(特に、NHKマイルCの2着馬に3馬身半差をつけた逃げ切り勝ちは圧巻だった)。開幕週の馬場向きの脚質で、道中は逃げるシルポートをマークする形をとり、直線で抜け出す競馬がイメージできる。内々を進める2枠4番の枠順も好材料だ。
もっとも、今回はクリアしなければならない課題も少なくない。初距離、初の休養明け、初の古馬一線級との対戦など、未知数の要素が揃っている。
一昨年はアリゼオ、エイシンアポロンのワンツー、昨年はリアルインパクトが2着と、3歳馬が良績を残しているレースではあるものの、アリゼオとエイシンアポロンには距離経験、リアルインパクトには古馬混合GⅠ(安田記念)勝ち=すなわち実戦経験があった。このあたり、カレンブラックヒルのキャリアの“薄さ”が気になる。
さらに、予想以上にペースが落ち着き、極端な上がり勝負になった場合には、これまで33秒台の末脚をマークしたことがないこの馬にとってはキレ負けする不安も(NHKマイルCの34秒6が最速)。
陣営はすでに秋天を視野に入れているとのことだが、まずはこのレースでどれだけ課題をクリアできるかだろう。いずれにしても、その走りには注目したい。

一昨年のダービー馬で、昨年は春天と有馬記念で2着の結果を残しているエイシンフラッシュ
格と実績を基準にすれば、GⅠ戦線で好勝負をくりかえしているこの馬は、有力候補の1頭であることは間違いない。
前走の宝塚記念は1.6秒差の6着に大敗したが、海外遠征帰りの休み明けのせいもあってテンションが高く、序盤から掛かり過ぎて消耗したことが敗因と見られている。状態面が万全ならば、本来の力を発揮できてもおかしくないはずだ。57キロの斤量もGⅠの常連にとってはプラスと判断してもいいだろう。
問題は久々の1800m戦で持ち味を発揮できるかどうか。
1800mの距離を走るのは、2歳秋の萩S以来およそ3年ぶり。近走、どちらかと言えば長距離で結果を残しているこの馬には、少なからずイメージが合わないようにも思える。
ダービーはスローペースで究極の上がり勝負(32秒7)。春天と有馬もスロー。流れの速かった昨年の秋天での負け方を見ると、緩みのない展開に対応できるかという不安も浮かぶのだが・・・。実際、前走・宝塚記念の『予習』でも書いたように、この馬はスローペースでは〈4.3.0.3〉の数字を残しているが、平均ペースとハイペースではいまだに連対実績がない。
もっとも、翌日の京都大賞典ではなく、あえてこのレースに参戦してきたということは、陣営に思惑もしくは勝算があるからなのだろう。折り合い面に若干不安のある馬だけに、距離短縮がすべて良い方向に向かえば、これまで以上の走りを見せてくれるかもしれない。

前走、GⅠ・安田記念を制したストロングリターン
昨年の同レース2着の雪辱を果たす見事なレコード勝ちだった。〈5.3.1.4〉の実績を持つ東京巧者。目標は春秋マイルGⅠ制覇だろうが、そのためにはここでそれなりの結果を出しておきたいところだろう。
ただし、今回のレースは、条件的にこの馬向きとは思えない部分も大きい。
先行有利な開幕週。1F長い距離。休み明けの成績も今ひとつのところがある。
特に、この馬の得意とする展開になるかどうかは大きなポイント。今回も安田記念で3F33秒8のハイペースを作ったシルポートが出走するとはいえ、1800m戦で前半33~34秒台の逃げを打つとは考えにくい。ここ数戦、いずれも4コーナー通過が10番手以降からの直線勝負に徹していたこの馬に、はたしてペースが味方するかどうか。ちなみに、ここ数年の毎日王冠の前半3Fの通過は、平均して35~36秒。開幕週を意識して、先行勢が“自分も残る競馬”をするようだと、厳しい展開になるかもしれない。

前走、安田記念でストロングリターンと叩き合いを演じて2着に入ったグランプリボス
GⅠ2勝馬がその実力を発揮できた一戦だったが、こちらに関しても今回は条件が厳しくなりそうだ。
距離や休み明けにも不安はあるが、苦手の外枠に入ったこともマイナス材料だろう(前走後、陣営は「待望の内枠」を勝因にあげていた)。

前走、エプソムC勝ちのトーセンレーヴ
デビュー当時から注目されていた良血馬だが、前走の初重賞制覇で、その実力が開花したという評価もあるようだ。たしかに、血統的にも大きな可能性を期待できる1頭。4歳秋という“旬”を迎えて、どれだけの成長を見せてくれるかに注目だろう。東京実績〈3.0.1.1〉、距離実績〈3.0.1.0〉は、数字的には強調できる。
もっとも、格と実績という視点で見れば、現段階では見劣りも否めない。
今年に入ってからのAJCC(5着)とマイラーズC(8着)は、まだまだ力の差を感じさせる内容だったようにも思えるし、前走のエプソムCにしても、極端な馬場状態だったこともあって、相手を力でねじ伏せたという印象には遠い。むしろ、鞍上(ウィリアムズ騎手)の積極的な好判断が光ったレースだった。
馬柱表を見ればわかる通り、ここまでは脚質にも成績にも安定感がない。それゆえ、逆に本格化への期待感が増すわけだが、はたして今回、成長した姿を見せてくれるかどうか。

前走、エプソムC2着のダノンシャーク
差し・追込馬が外を回された上、脚をとられて伸びを欠いた馬場を考えれば、早目先頭のトーセンレーヴをクビ差まで追い詰めた走りは評価できるだろう。実際、トーセンレーヴよりも強い競馬をしたという声もある。
戦績に関しても、出遅れが響いた東京新聞杯は別として、近走は常に上位の着順。単勝人気ではトーセンレーヴに差をつけられているが、安定感ではこちらが上と見ることもできるかもしれない。東京では結果が出ていないものの、距離実績は〈3.2.0.0〉。侮れない存在だ。
課題は位置取りだろう。
エプソムCでは好位をキープできたが、近走は後方からの競馬が目立っている。速い上がりを使える馬ではあるが、前が止まらないケースを考えると、好位中団あたりで流れに乗りたいところ。そのあたり、テン乗りの浜中騎手の作戦に注目したい。

前走、宝塚記念10着のフェデラリスト
年明けから重賞2連勝を飾り、続く大阪杯でも2着。宝塚記念はGⅠでどれくらいの勝負ができるか注目された一戦だったが、休養明けの上に夏負け気味だったとのことで力を発揮できなかった。鞍上の蛯名騎手によれば「馬場の緩いところを気にしていて戦意を喪失していた」。ここは仕切り直しのレースだろう。
カギになると思われるのは状態面。
宝塚記念前の3ヶ月の休みは中央転厩後初めての長期休養だったが、理由はともかく結果は凡走。そして今回、3ヶ月半の休養。使い詰めで4連勝をマークした経歴を踏まえると、あるいは、叩けば叩くほど良化するタイプなのかもしれない。となれば、使い出しの今回はどうなのか。いきなり春先と同じような走りを期待できるのかどうか。調教内容に辛口の採点をする記者もいるので、そのあたりが不安材料かもしれない。

連覇を狙った前走の安田記念では6着に敗れたリアルインパクト
昨年の毎日王冠では2着に入ったが、それ以降、特に今年の春は不本意な結果が続いている。これについて陣営は「調子落ち」とコメント。夏場の休養で立て直しができていれば、好走も可能だろう。
能力そのものは決して低いとは思えない。前走の安田記念にしても、ハイペースの中、シルポートを追走しながらも、0.6秒差の6着に残った点は評価できるはず。東京実績〈2.2.1.1〉の数字と先行できる脚質は、今回のレースでは強調できる材料に違いない。毎日王冠3連覇を狙う2頭出しの堀厩舎だが、陣営も「ストロングリターンよりもリアルに期待」とのこと。
あとは、かつての速い上がりを駆使できる脚を使えるかどうか(ここ数戦は35~36秒台しかマークしていない)。いずれにしても、能力を発揮できる状態かどうかがポイントだろう。

昨年のマイルCSを制したエイシンアポロン
そのきっかけになったのが、約1年ぶりのレースとなった昨年の毎日王冠(4着)だった。
この馬に関しても、状態面がひとつのポイント。春は海外遠征回避や筋肉痛の影響で精彩を欠いていたが、元来涼しくなってからの方が成績が上がる馬なので、今年の秋緒戦も注目だろう(一昨年は5ヶ月の休み明けで2着に入っている)。
ただし、たとえ万全の状態であったとしても、良馬場の高速決着になると、この馬には分が悪い。
どちらかといえば、パワーを必要とするレースを得意とするタイプ。マイルCSにしても、1分33秒9の勝ち時計はGⅠでは強調できないタイムであり、その前走の富士Sは道悪、一昨年の毎日王冠2着も稍重だった。この点、開幕週の馬場がどうか。仕上がりそのものに関しても、「まだ太い」というトラックマンの意見もあり、今回に関してはマイルCSへの叩き台(昨年の優勝馬だけに)という意味合いが強いかもしれない。

前走、レコード決着の中山・京成杯AHで2着に入ったスマイルジャック
7歳馬ではあるが、1分30秒9の走破タイムで自己の持ち時計を更新。その走りに「古豪復活」という声も飛び交った。
もっとも、前走については、開幕週の馬場で最内枠に入ったメリットも大きい。ハンデ戦で57.5キロを背負っての好走だけに、馬自身の力を認めないわけにはいかないが、インをロスなく進んで直線で内を突いた田辺騎手の好騎乗が一番の好走要因だったとも思える。
それ以前の成績を考えると、たとえ前走を評価できたとしても、連続好走を期待できるかどうか。むしろ、夏場も走った上での前走の激走ということで、消耗度の方が気になるのだが・・・。

伏兵陣からは3頭。
まず、開幕週の馬場ということで、逃げ残りの可能性もあるシルポート
前走の安田記念は明らかに飛ばし過ぎだったが、マイペースで行ければこの馬の持ち味を発揮できるかもしれない。ただし、陣営が「年齢的なもの」と懸念するように、以前ほどのスピードがなくなってきたことも事実。休養前の連対にしても、悪い馬場を味方につけて押し切った感もある。マイル戦に比べれば、1800mでは後続が無理に突っつくことは少なくなるとは思うが、どこまで渋太く粘れるかがカギになりそうだ。
前走、新潟記念で2着に入ったタッチミーノット
実績では格下感は否めないが、立ち回りの巧い好位からの競馬はなかなかのもの。スムーズなレース運びができれば、圏内確保の可能性もゼロとは言えないだろう。あとは、ベストの2000m(実績〈3.2.2.6〉)より1F短い距離がどうか。
最後に、展開に左右されるもの、末脚のキレが怖いダノンヨーヨー
2走前の安田記念(4着)で見せた追い込みが印象的だが、出遅れ癖があるためにどうしても後方からの競馬になってしまうのが弱点。今回、距離が1F長くなることで、道中の追走が楽になれば、スタートの悪さを挽回できるかもしれない。主戦の北村友騎手は外々を回す競馬が多かったが、今回の三浦騎手への乗り替わりによって内を突くような走りができれば、さらに面白いかもしれない。




■スプリンターズS・復習

1分6秒7のレコード決着!
GⅠ・スプリンターズSは2番人気のロードカナロアが制した。

レースは前半3F通過が32秒7のハイペース。GⅠレベルならば乗り切れない流れではないものの、4~5頭横並びとなった先行集団にとっては厳しい展開だったと言えるだろう。
勝ったロードカナロアは今回も抜群のスタートを決め、ハナに並ぶ勢い。しかし、そこから一旦ポジションを下げ、3コーナー手前ではカレンチャンを外からマークする絶好の位置をキープした。
『予習』の中で「位置取りがポイント」「岩田騎手の手綱さばきに注目」と書いたが、流れとマークする相手を読み切った完璧なポジショニングを見せてくれた。ゴール板手前でエピセアロームに差されたセントウルSの経験を踏まえてか、今回は後続を引き離してからの仕掛け。最後は2着・カレンチャンに3分の2馬身差をつける素晴らしいレース内容だった。
もちろん、岩田騎手の好騎乗にこたえた、ロードカナロア自身の走りも賞賛に値するもの。『予習』にも書いたように、セントウルSではさらに力をつけたという印象が残ったが、今回はそれに加えて“強さ”を感じさせてくれた。春先に比べて大きく成長したことは間違いないだろう。
次走は12月の香港スプリントGⅠを予定しているとのこと。今回見せてくれたスピードとキレ味を存分に発揮できるレースを期待したい。

2着は1番人気のカレンチャン。
国内スプリントGⅠ3連勝は逃したものの、この馬のベストの走りは見せてくれた。馬体重はマイナス12キロ。不安要素があるかとも思われた状態面もキッチリと良化。GⅠ馬の貫禄さえ感じられた。
敗因をあげるならば、勢いの差かもしれない。成長を続ける4歳のロードカナロアに対して、この馬は5歳牝馬。直線半ばで先頭に立つ正攻法の“強い競馬”を見せてくれたが、相手はそれを上回る力を発揮したということだろう。完璧な内容、それで負けたのなら仕方がない。年内で引退とのことだが、この1年スプリント戦線の中心として活躍してくれたこの馬に、惜しみない拍手を送りたい。

3着は馬群を割って伸びてきたドリームバレンチノ。
道中はインで脚を溜めて直線で差してくるこの馬ならではの競馬。直線、巧く馬群を捌けるかどうかに注目していたが、狭いところを割って最後はカレンチャンを首差まで追い詰める根性を見せてくれた。
前走の大敗で人気を落としていたが、この夏の上昇度を考えれば驚けない走り。主戦の松山騎手に戻り、本番に向けて状態を上げてきたことも好走要因に違いないだろう。

4着には大外から追い込んだエピセアローム。
3歳のキャリアを考えると、GⅠを1分7秒0の時計で走破したことは評価できる。ただし、厳しい言い方をするならば、“枠なりの競馬(=外々を回っての追い込み)”しかできなかったようにも思える。自分でレースを作ったり、自在にポジションをキープできるようになるには、まだまだ経験が必要だろう。
まだまだ成長の余地を残している3歳馬。今後、どのように走りの幅を広げていくか、注目したい。

3番人気のパドトロアは8着。
安藤勝騎手は「返し馬から少し硬かった」とコメントしているが、あるいは、『予習』でもふれたように、夏場の消耗が影響していたのかもしれない。
マジンプロスパー(12着)は最内枠に入ったことで先行策を取らざるを得なかったようだが、もう少しポジションを下げる作戦もあったのではないだろうか。ダッシャーゴーゴー(16着)も同様。長く脚を使えない馬なのだから先行して押し切るのは無理があったように思える。
展開のアヤかもしれないが、この3頭については、ムキになって先を争っているようにも見えた。

ともあれ、今年のスプリンターズSは期待通り、いやそれ以上の熱戦だった。
馬の強さと騎手の技術を堪能できた一戦と言えるのではないだろうか。


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プロフィール

安東裕章

Author:安東裕章
東京都出身。2007年11月に書籍『競馬のツボ』、2008年7月に『競馬のツボ2』、2009年7月に『競馬のツボ3』を発表(いずれも総和社刊)。

このたび、拙著『競馬のツボ』を刊行していただいた出版社・総和社様の勧めもあって、ブログを始めることにしました。
競馬における一番の楽しみは、レースについて考えること。つまり予想です。
このブログを書くことで、自分でも週末のレースに向けてイメージを膨らませる訓練になるかと思います。
競馬について考えることが好きな皆様。レース予想に疲れて気分転換をしたい時など、よろしければフラッと遊びに来てください。

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