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■スプリンターズS・復習

秋のGⅠ開幕戦・スプリンターズSを制したのは、香港馬のウルトラファンタジーだった。
「グリーンバーディーよりも実績面で見劣る」「来日初戦」「同型の日本馬との兼ね合い」などの理由から、10番人気(単勝29.3倍)の低評価に甘んじていたが、終わってみれば“楽な逃走劇”。最後はダッシャーゴーゴー(4着降着)がハナ差まで詰め寄ったものの、「いとも簡単に勝たれてしまった」というのが正直な感想だ。

ウルトラファンタジーの勝因は、難なく先手を取れたことに尽きるだろう。スピードの違いを見せつけるかのようなスタートダッシュで、いきなり2馬身以上の差。ペースダウンの際にはローレルゲレイロに頭ひとつリードを許したが、再びハナを奪い返すとそのまま直線へ。脱落する他の先行馬を尻目にゴールへ向けてさらに加速、そのまま後続を振り切った。
もっとも、ウルトラファンタジーの快足ぶりは評価するとしても、それ以上に残念に思えたのが“日本馬(特に先行馬)の不甲斐なさ”。スタートの速さについていけなかったヘッドライナー、一度は先頭に立ちながら主導権を奪えなかったローレルゲレイロ、好位で勝ち馬をマークしながら何もできずに後退したビービーガルダン。底力の違いがあるのかもしれないが、「みすみす逃がした」といった印象は拭えない。前半3Fの通過が33秒3という緩いペースだっただけになおさらである。

繰り上がりの2着はキンシャサノキセキ。
出遅れもあって外々を回らされる展開。4コーナーでは6番手までポジションを上げてきたが、大外にしか進路を取れず、0.2秒差まで詰め寄るのがやっとだった。着順だけを見れば無難な結果と言えるかもしれないが、春に続いてスプリント王を狙った馬としては物足りない内容だ。
四位騎手は「久々の分、道中で掛かるところがあった」とコメント。『予習』でふれたように、やはり取消の影響があったようだ。最後の伸びが今イチだったのもそのあたりが原因なのだろう。
GⅠ馬として、ぶっつけ本番でも“なんとか格好をつけた”レースかもしれないが、1回使ったことで本来の“鋭さ”が戻るかどうか。内を突いたダッシャーゴーゴー(3歳)、サンカルロ(4歳)の末脚が目立っていた分、7歳というこの馬の年齢が若干気になる走りでもあった。

3着は直線で不利を受けたサンカルロ。
ラチ沿いをロスなく進んで最内を突くという理想的なレース運び。それだけに、追い出しと同時に前をカットされたのは痛かった。スムーズならば際どい勝負になっていただろう。もちろん、体勢を立て直して再び伸びてきた勝負根性は大いに評価できる。
1200m戦はまだ2回目だが、いずれもGⅠで好勝負。脚質的に展開に左右される部分もあるが、GⅢあたりなら一気に突き抜けてもおかしくないキレ味だろう。まだまだ成長が見込める4歳馬。かつてのデュランダルのように、“自分の競馬をすれば勝ち負けできる馬”になれるようならば、この先が楽しみだ。

進路妨害のために4着降着となったダッシャーゴーゴー。
セントウルSのレースぶり(自分から動いて早め先頭)が印象的であり、1枠2番という枠順もあって、好位につける競馬をするかと思っていたが、道中は後方から。直線では内に切れ込んで、メンバー最速の33秒5の上がりでウルトラファンタジーを追い詰めた。正直、それほどキレるというイメージがなかったので、今回の走りは驚きである。
GⅠの常連が軒並み“らしくない走り”をした中での好走だったため、能力で古馬をねじ伏せたという強烈なイメージにはつながりにくいが、それでも3歳にしてこれだけの結果を出したことは大いに評価できるはず。粗削りな部分も多い点についても、「まだまだ奥がありそうな3歳馬」と前向きに考えていいだろう。
今後、この馬がどのようなレースを見せてくれるのか。脚質や勝ちパターンがどのように決定されていくのか。成長過程そのものが楽しみな1頭だ。

5着は4歳牝馬のワンカラット。
道中は5~6番手の位置。「いつ抜け出してくるか」と注目していたが、今回はサマーシリーズで見せてくれたような“一気の加速”はなかった。
藤岡佑騎手は「GⅠで1分7秒台の決着になった時にはもう一段ギアが必要」とコメントしたが、まさにその通りだろう。『予習』の中でも「時計勝負になった場合」を不安材料として指摘したが、時計に対応できるというのは、レースの流れが速くなるのに比例して加速力も上がるということ。今回のワンカラットは、レースの流れに乗ることはできても、そこから加速するまでには至らなかったようだ。
もっとも、GⅠの流れを経験できたことは大きな収穫。これをステップにしてさらなる飛躍を期待したい。

1番人気のグリーンバーディーは7着。
『予習』では「脚質的に中山・芝・1200m向きかどうか」「スタート後のポジションに注目」といった内容を述べたが、懸念していた通り、後方からの競馬になり前を捌けないままレースを終えた。
展開が不向きだった面もあるし、枠順もスムーズに運べる外寄りの方がよかったかもしれない。ただ、今回の1番人気については、競馬ファンがこの馬の強さを買い被り過ぎたようにも思える。セントウルSのレースぶりはたしかに強いものだった。しかし、コースが替わり、メンバーが強化されれば、同じ競馬をしても好走できるとは限らない。「好位につけて前走と同じ脚が使えれば」という条件付きの有力馬だったのではないだろうか。

4番人気のビービーガルダンは10着。
安藤勝騎手は「内に包まれる形になって自分の競馬ができなかった」とコメント。外枠からスムーズに行った方が結果が出ていることは、『予習』の中でもふれたが、それにしても絶好と思えるポジションにいながらズルズルと後退した走りはどうしたものか。インに入ると力を発揮できないのは事実としても、馬自身に漲るものが欠けていたようにも思える。

ビービーガルダンと同じく釈然としない走りを見せたローレルゲレイロ(14着)。
先にも述べたように、一度はウルトラファンタジーより前に出ながら主導権を握ることができなかった。
藤田騎手は「ゲートを出ても前へ行こうとする感じがなかった」とコメント。状態面が万全でなかったとしか思えない発言である。あるいは、『予習』で指摘したように、今年の上半期の使われ方がなんらかの影響をおよぼしていたのかもしれない。

今回の結果を受けて、日本スプリント界のレベルの低さを指摘する声も出ている。たしかに、日本開催のスプリントGⅠで自国の馬がアッサリ負けるのは、正直残念でならない。
もっとも、救いがないわけではない。3歳馬・4歳馬がGⅠの掲示板に名を連ねたことは、今後に向けて明るい兆しと受け止めることもできる。いずれにしても、強いスプリンターの出現を心待ちにしたい。



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■コメント

■Re: スプリンターズS・復習 [ECO]

安東さま、毎度です。
いやはや阪神が最終週で土曜ダートで複勝2着が入ったと思ったら中山がさっぱりでした。
 ほんとビービーは勝ったと思った瞬間、ずるずると。今後も当方振り返ることができやすいので予習の際の予想コメント入れることお許しいただけますか?
あと展開とペースと別々に考えようと思っているんですが、ハイペース、ミドル、スローの区分けはどう考えておられますか。

■スプリンターズS [うに]

安東さん、こんばんは。

さすが電撃戦!
1分7秒あっという間でした。(体感時間30秒くらい)
私が不利とみなした、「中山初、牝馬、3歳馬、外枠」が健闘して、実力とコース実績から固いと考えた昨年のワンツ-が掲示板にも載れず、全て裏目に出てしまいました。
調子が万全でなくても、このメンバーならと思ったんですけどね。実績だけではGⅠを勝つのは難しいと、改めて勉強になりました。
でも、外国馬には負けて欲しくなかったなぁ… 展開なんぞ関係なく突き抜けるところを見たかったです。

話は変わりますが、安東さんは以前、「予想を始めてわからないときは諦める」と仰いましたが(私の初コメント時)、例えばどんなパターンか教えて下さいますか。
安東さんとは理由が全然違うかもしれませんが、私はハンデ戦でサジを投げたくなる時があります。斤量に差をつけただけで本当に馬のレベルが揃うのか、いまいち疑問で予想が余計に難しく感じます。
安東さん程のお方でも、わからないと思われる事、あるんですね。(親近感湧きます、笑)



■Re: スプリンターズS・復習 [いつものへい]

安東先生、お久です。
スプリンターズ、苦しくも当たりましたが何か釈然としないものが残ってしまいました。(^^ゞ
私はサンカルロに◎を打ちましたが、前週のトウショウシロッコの吉田豊騎手のコース取りを見て決めました。
また今回は1番人気が外国馬だったので、人気馬の取捨選択を十分にやったのが良かったと自画自賛しています。ww
ただ、G1だけに色んな方面から圧力が掛かったりするのかな?等と穿った見方をしてしまう自分も居てますが・・・。
いよいよ楽しみな秋シーズンが始まりました。
今まで以上に、予習・復習をしっかり勉強させて頂きたいと思いますので、寒暖の差が大きいですが体調など崩されません様に。

■ECOさんへ [安東 裕章]

毎度です!
まずは、阪神ダート戦(シリウスSですか?)の的中、おめでとうございます。

ビービーガルダンは“勝てるポジション”でレースをしていたのに、案外な結果でしたね。
安藤勝騎手は内に包まれたのが敗因だとコメントしていますが、それだけが原因なのでしょうか?
これまでの実績やレースぶりからは、そんなに脆い馬のようには思えないのですが・・・。
この先、ガルダンが外枠に入るレースがあったら、今回との走りの違いをチェックする必要があるかもしれません。

ペースについてですが・・・、
実際のところ、かなりアバウトに考えているので、参考にはならないと思います(笑)。
逃げ・先行馬が揃った場合は基本的にハイペース、勝ち負けの可能性のある馬が単騎ならばスロー、単騎でも玉砕的な(行けるところまで行こうというような)逃げ馬ならばハイペース・・・といった感じで考えています。
あとは、開幕週の芝のレースは逃げ・先行馬が残ろうとするのでスローになりやすいような気がします。
他にも、コースや枠順をもとに検討することもあります。
例えば、逃げ馬が外枠に入った場合は、強引にポジションを取りにいくためにペースが速くなるのでは?と考えたりします。
ただ、なかなか予想通りにはなりませんね(笑)。
今回のスプリンターズも、外寄りのヘッドライナーが何が何でもハナを主張するだろうと思って“ハイペース”と読んだのですが、見事に外れました・・・。

予想のコメントを載せていただけるのは、大歓迎です!
これからもぜひ続けてください。

■うにさんへ [安東 裕章]

こんばんは。

実績を考えれば、昨年の1・2着馬、ローレルゲレイロとビービーガルダンで堅いと思われるのは当然ですよね。
ただ、スプリント路線のレベルの低さを考えると、GⅠ実績があっても、例えばウオッカのような“抜けた存在(越えられない山)”ではなかったのだと思います。
結果的には、近走勢いのある昇り調子の馬(香港馬を除いて)が上位に来ましたから。
やはり、この路線を引っ張っていくような強い馬が出てきてほしいです。

予想がわからない場合についてですが・・・、
あたりまえのことですけど、買い目を絞り切れないレースです。
どの馬にもチャンスがありそうだったり、どの馬も不安材料を抱えていたり、中心視できる馬がいない時は迷いますね。
特に苦手なレースというのはありませんが、休み明けの馬が多く出走してくるレースはあまり好きではないかも(状態面が読めないので)。
まあ、競馬の予想は、基本的に“わからないもの”ですよ。
それを解読していくのが面白いのであって、「このレースは絶対にこうなる!」って自信を持てるレースなんかありませんよね!(笑)




■いつものへいさんへ [安東 裕章]

お久しぶりです!
的中、おめでとうございます!
HPも拝見させていただきましたが、お見事ですね~♪
もっと自画自賛してください!(笑)

いよいよ本格的な秋のGⅠシーズンですね。
大いに悩んで、大いに楽しみたいと思います!
コメント、ありがとうございました!

■お返事ありがとうございます! [うに]

競馬って、わからなくて難しいのに、どうしてかハマってしまうんですよね。
学校の勉強も、これぐらい熱中していれば…(笑)

秋のGⅠが始まると、年末まで早いですよね。
まずは、ひとつひとつ丁寧に予想を頑張ろうと思います。

菊花賞もうすぐですね!

■完敗。しかし… [電気羊]

日本馬のレベルが云々されるスプリント戦ではありますが、前走内容から1番人気グリーンバーディーの中山好走は大いに疑問と判断。この時点で香港の両馬は消してしまいました。外国馬は往々にして人気薄の方が来るもの。しかしローテーション等からはウルトラファンタジーには敷居が高いと思いましたが……。
キンシャサノキセキも臨戦過程から消しており、馬券的には完敗です。

ただ、サンカルロとダッシャーゴーゴーの好走は想定通りでした。
今回血統面でマークしたのはミスプロ、セントサイモン、ノーザンテースト、ボールドルーラーなど。サンカルロは脚質的に難しいと思いましたが、前週準オープンの勝ち馬(7番人気!)の父もロベルト系ということで大きく評価を上げました。ダッシャーゴーゴーも血統面や近走から十分狙えると考えました。

むろん馬券は当たってなんぼではありますが、多少なりとも手応えを感じられたことはせめてもの救いでしょうか。

■電気羊さんへ [安東 裕章]

こんばんは。
コメント、ありがとうございます。

ウルトラファンタジーのスタートの速さには驚かされました。
超スローに持ち込んでグリーンバーディーに勝った戦績から、ハナは奪えないだろうと軽視していたのですが・・・先入観でモノを見るのは禁物ですね。
単純に「一番内側の枠の逃げ馬」という扱いをしていればもっと積極的にマークできたかもしれません。

サンカルロとダッシャーゴーゴーは、私も選んでいましたが、血統面でも裏付けがあったんですね。
なるほど。勉強になります。

電気羊さんのおっしゃる通り、自分なりに手応えがあると、次につながると思います。
これからもがんばって(&楽しんで)いきましょう!

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プロフィール

安東裕章

Author:安東裕章
東京都出身。2007年11月に書籍『競馬のツボ』、2008年7月に『競馬のツボ2』、2009年7月に『競馬のツボ3』を発表(いずれも総和社刊)。

このたび、拙著『競馬のツボ』を刊行していただいた出版社・総和社様の勧めもあって、ブログを始めることにしました。
競馬における一番の楽しみは、レースについて考えること。つまり予想です。
このブログを書くことで、自分でも週末のレースに向けてイメージを膨らませる訓練になるかと思います。
競馬について考えることが好きな皆様。レース予想に疲れて気分転換をしたい時など、よろしければフラッと遊びに来てください。

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