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■有馬記念・予習

出走13頭中、GⅠ馬が9頭。今年の有馬記念は1年の締めくくりにふさわしい超豪華なメンバーが顔を揃えた。

単勝人気は“最強牝馬 vs 3冠馬”の2強対決の様相。しかし、決戦の舞台が“トリッキーな中山2500m”であるだけに、人気通り(あるいは能力通り)の決着になるとは限らない。コーナーを6回通過する小回りコースで、最も力を発揮できるのはどの馬か。GⅠタイトルを獲れる能力の高い馬たちだからこそ、ほんの僅かな“向き・不向き”の差が結果に影響するかもしれない。

ポイントは“自分から動く競馬”ができるかどうか。中山巧者と呼ばれた馬の大半は、3コーナー過ぎからマクって直線で後続を突きはなす走りを得意としていた。マツリダゴッホ。ドリームジャーニー。そして、あのディープインパクトも引退レースの有馬記念で同じような走りを見せた。
言い換えれば、それは、中山コースの勝ち方でもある。したがって、どのジョッキーも同じように仕掛けようとする。そして馬群全体が動く。単に自分だけが動くのではなく、馬群全体が動く中で他馬よりもどれだけいい脚を使えるか。そのあたりの“向き・不向き”が、一番の検討材料になるかもしれない。

今回が引退レースとなるブエナビスタ
国内のレースで馬券から外れたのは前々走の秋天のみ。複勝率は9割を超え、数字的には最も安定感がある。4着に敗れた秋天にしても、完調手前の状態であり、直線では行き場をなくす競馬。それでいて最後は追い込んで0.3秒差なのだから、逆にポテンシャルの高さを示したという見方もできる。いずれにしても、GⅠ6勝(降着となった昨年のJCを除く)の実績は、名馬の証明であることは間違いなく、メンバー1の高い能力の持ち主と評価しても差し支えないはずだ。
ただし、中山の2500m戦が、ブエナビスタにとって最適のレース条件であるとは言えないだろう。
〈4.2.0.1〉の実績が示すように、この馬は直線の長い東京コースでこそ際立った強さを発揮する。ひとことで言えば、追えば追うほど加速する末脚。それゆえ、直線の短いコースでは差して届かずの結果になることがある。トップスピードに達する前にゴール板を過ぎてしまうからだ。昨年の有馬も今年の宝塚も、先に抜け出した勝ち馬にあとわずか及ばなかった。
今回のレースでは、最内枠に入ったことも検討材料になる。中山芝2500mは、スタート後すぐに3コーナーになるため、内枠の方がポジションを取りやすい。仮にブエナビスタが先行策をとるのならば、この枠順は大きなメリットになる。しかし、前目でレースをした場合、この馬の持ち味がフルに活かされるとは思えない。横山典騎手が乗った2年前の有馬と昨年の宝塚は、ともに前で競馬をしたものの直線で差されて負けている。
直線の短い小回りコースと最内枠という条件で、岩田騎手がどのような乗り方をするか。内々でじっくり脚を溜めて、直線インを突いて抜け出してくる場面が最もイメージしやすいが、はたしてうまく前が開くがどうか。最悪、秋天と同じように行き場をなくすケースも考えられる(まして、中山は東京よりもゴチャつきやすい)。ブエナビスタがその能力を発揮するためには、展開に左右されるリスクを伴う一戦かもしれない。

3歳クラシックで3冠の偉業を成し遂げたオルフェーヴル
特に菊花賞は、距離が不安視される中、予想以上の強さで完璧な勝ち方を見せてくれた。1頭だけ次元の違う走りだったと言っても決して大袈裟ではないだろう。
オルフェーヴルが菊花賞で見せた“自分から動いて直線で後続を突きはなす競馬”は、有馬記念を考える上で、高く評価できる材料であることは間違いない。中山コースに対応できる脚質と判断できるからだ。
問題は、同じ競馬ができるかどうか。
菊花賞では道中外々を回って3コーナーから動いての圧勝だったが、見方を変えれば、他馬と関係なく“1頭だけで競馬をしたようなもの”だった。道中で包まれることもなく、当面のライバルだったウインバリアシオンが最後方からの競馬に徹したこともあって、厳しいマークを受けたわけではない。さらに、3~4コーナーで馬群全体が加速した時も、動けた馬の方がわずかなレースだった。
今回の相手は古馬のトップクラス。道中の流れも違うし、同世代の馬たちとは仕掛けてからの反応も違ってくる。あるいは厳しいマークを受ける立場になるかもしれない。それでなくても、広い京都に比べて小回りの中山は窮屈になりやすく、紛れが生じやすい。
ある意味、今回は、オルフェーヴルのレースへの対応力が試される一戦とも言えるだろう。未知の展開や不確定要素が生じた場合でも、自分の走りができるかどうか。そうした課題をクリアできれば、3冠+グランプリ制覇も現実味を帯びてくるはずだ。

春のドバイWCを制したヴィクトワールピサ
昨年の有馬の勝ち馬でもあり、最強世代と呼ばれる現4歳馬ではトップの実績を誇っている。
前走のジャパンカップは、海外遠征帰りの休み明けということもあって大敗。スタートしても走る気迫を見せず、最後方から追走しただけのレースのように見えた。
ジャパンカップ当初も言われていたが、目標は1走叩いた今回の有馬という指摘も多い。〈4.0.0.0〉と最も得意とする中山戦だけに、その見方は正解だろう。ロスなく走れる内枠に入ったことも加味すれば、この馬が勝てる条件は揃ったとも考えられる。
不安材料は状態面。
追い切りに関して「復調に手間取っている」という評価を下す競馬記者も少なくないが、何より気になるのは、「有馬の結果次第でドバイか引退かを判断する」という角居調教師のコメント。調教後には「馬に走る気が戻ってきた」という言い方に変わりはしたものの、少なくとも週明けの時点ではかなり良くない状態にあったことがうかがえる。
昨年の秋から今年の春までの間に2度の海外遠征。しかも、その間に国内でも結果を残す激走を続けてきた。衰えではなく“燃え尽きた部分”があっても不思議ではない。この馬に関しては、直前のチェックが必要になるだろう。

天皇賞・秋を制し、ジャパンカップでも2着に入ったトーセンジョーダン
まったく性質の異なる2つのレースで好走したことは高く評価できる。ハイペースの秋天では後方から、スローのJCでは先行というように、流れに対応できる脚質を備えていることは大きなアドバンテージと考えていいだろう。もともとクラシック候補を呼ばれていた逸材だが、故障を乗り越え、ここにきて充実期を迎えた印象も強い。
中山実績は〈3.0.0.1〉。札幌記念を勝っていることからも、小回りコースを苦にしないタイプと判断できる。自分から動くタイプというよりも、好位から抜け出して突きはなすのが持ち味だが、適性と近走の内容を考えれば、グランプリホースの座に輝く可能性も十分あるだろう。
あとは、ここ2走の反動があるかどうか。8月の札幌記念を使っているだけに、秋のGⅠ連戦の疲労度が気になる。追い切りに関しても、前2走が同厩のトゥザグローリーと併せたのに対し、今回は500万の格下馬相手に軽めの調整とのこと。ヴィクトワールピサ同様、直前の気配を確認した方がいいかもしれない。

宝塚記念を制したアーネストリー
前走の秋天は14着と大敗。大外枠からハイペースで逃げるシルポートを追い掛けて序盤で脚を使ったことが敗因だが、負けた理由が明確である分、巻き返しも期待できる。宝塚記念勝ちの時点では「完成期に入った」と言われた馬だけに、軽視はできないはずだ。
グランプリの春秋連続制覇は、グラスワンダー、ドリームジャーニーなど、過去にも例がある。ともに内回りコースという共通項があるため、同じ勝ち方ができるのだろう。中山実績は〈1.0.0.1〉と数字が少ないが、2走前のオールカマーでは強い勝ち方を見せてくれた。
もっとも、今回は気になる材料が2つある。
ひとつは枠順。
先にも述べたように、中山2500mはスタート後すぐに3コーナーになる。ポジションを取るためには内が絶対有利。7枠12番に入ったアーネストリーが得意の先行策に持ち込むためには、序盤で外々を回って脚を使わなければならない。秋天の敗因と同じリスクがあるわけだ。実際、2008年の有馬では、“中山の鬼”と言われた2番人気のマツリダゴッホが10番枠から外々を回らされて最後は失速している。
もうひとつは、確固たる逃げ馬が不在なこと。
逃げ馬をマークして直線で先頭に立つのが、近走のこの馬の勝ちパターン。宝塚記念ではナムラクレセントに行かせ、オーツカマーではシャドウゲイトを先に立たせた。
今回はどの馬に行かせるのか。あるいは、自らハナを切るのか。自分の形になれば強い馬だけに、そのあたりの展開面が大きなカギになるかもしれない。

天皇賞・春を制したヒルノダムール
その後、海外で2レースを戦い、帰国後は満を持してここまで休養に充てたが、実力馬といえども休み明けでいきなりGⅠというのは、やはり割引材料と判断するべきかもしれない。
もっとも、展開次第では、この馬は怖い存在になるとも思える。
春天の勝ち方に象徴されるように、この馬の持ち味は最後の最後まで動かず脚を溜めて抜け出してくること。内枠に入った今回、おそらくインをロスなく回って同じような競馬をするだろう。逃げ馬不在で予想以上に流れが落ち着けば、各ジョッキーが中山の小回りコースを意識して早目に動き出すケースも考えられる。そうなれば、春天同様、出入りの激しい競馬になり、この馬にチャンスが訪れる可能性もある。

前走の鳴尾記念で古馬との対戦を制した3歳馬のレッドデイヴィス
シンザン記念でオルフェーヴルに勝っているという実績は、まったく舞台の違う今回のレースでは参考にはならないが、未知の魅力という点では面白い存在かもしれない。
ただし、初の関東遠征や初距離など、課題が多いのも事実。跳びが大きいので小回り向きとは思えない部分もある。“消し”とは言い切れないが、不安を補えるだけの強調材料が見つけにくい。

今回の有馬記念の予想にあたっては、「ジャパンカップで敗退した組をどのように評価するか」ということもポイントになるかもしれない。
休み明けのヴィクトワールピサはともかく、エイシンフラッシュ、ローズキングダム、トゥザグローリー、ペルーサ(取消)といった、JCが目標と思われた“最強世代の4歳馬”がすべて凡走に終った。これについては、「レコード決着となった秋天の反動」「成長力のない早熟な世代」など様々な意見が出ているようだが、実力そのものに懐疑的なものが多く、それもあってか今回は上位人気の支持を得ていない。
それでは、これら4歳馬に有馬で巻き返しの可能性はないのだろうか。

個人的に見直してみたいのは、エイシンフラッシュ
スローの瞬発力勝負が得意という印象が強かったが、ここ2走の走りを見ると、一瞬のキレ味で勝負するタイプのようにも思える。前走で騎乗した池添騎手も「直線入口では手応え十分だったが追ってからが案外」とコメントしている。
秋天は先行してハイペースに巻き込まれたレース。JCはスローなのに後ろから行き過ぎたレース。そう考えれば、この2走は負けるべくして負けたとも判断できる。好位から一瞬のキレ味で抜け出してくるレースをイメージするならば、前2走の条件よりも有馬向きかもしれない。枠も好枠。2度目の騎乗となるルメール騎手の乗り方に注目してみたい。

ローズキングダムについては、秋4戦目というのが減点(ただし、手の合う後藤騎手が思い切った逃げを打つようなことがあると怖いが・・・)。トゥザグローリーは、先行しながら失速したJCの走りから、復調途上のようにも思える。


はじめに書いたように、超豪華メンバーの揃った有馬記念。
我々競馬ファンの気持ちを裏切らない熱いレースを期待したい。


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■コメント

■もう、「負けて強し」の慰めは要らない! [うに]

こんばんは。久しぶりの『予習』、じっくり読ませていただきました。

強い馬が勝つとは限らないコース形態なんですよね。それは分かっているんですけど、それでも、ブエナビスタにラストランをカッコよく決めて欲しい!(ドラマチックに弱いなあ~)

オルフェーヴルには、来年頑張ってもらいましょう。
(消しはしませんよ)

春天の勝ち馬のヒルノダムールが、あんまり人気ないですね。これは拾っておかなくては。

あとは、『有馬は好きな馬を買え』の格言から、エイシンフラッシュを。
ルメール騎手が怖いです。

うーん、予想と言うか、希望ですね(笑)。

さて、何が逃げるのかな~
面白そうですね♪

■難しいです [電気羊]

血統的にはSS系が人気の有無に関わらず強いですが、絞り切るだけの特徴、偏りは見受けられず。
どう買いましょうかねぇ……。
調教の時計を見るかぎり、トゥザグローリー、エイシンフラッシュには期待したいですが。
今年最後の競馬は阪神競馬場で観戦してきます。
さっぶいやろなぁ~(笑)

■寒いです。 [ねこ]

予想ありがとうございます。参考になります。
今は中山競馬場にいますが、寒くて寒くてしょうがないです。良い席取れればいいのですが•••。

今年の有馬は荒れるのかどうなのか?見ものです(^^)

■WIN5 [うに]

今日もめげずに予想してみました。

阪神9R ハードダダンダン
中山9R マイネルオベリスク
小倉10R モエレジュンキン
阪神10R ハスラー
中山10R ブエナビスタ

1点勝負!

■ [うに]

こんばんは。
せっかくエイシンフラッシュが入ったのにぃ~(泣)。
やはり有馬は、本気で好きな馬から入るべきですね。(軸はブエナとオルフェ)
でも、安東さんの見解のおかげで、自信を持って買う事ができて良かったです。安東さん、さすがですね!

ブエナは残念でしたが、相変わらず健気に頑張っていましたね(涙)。


安東さんの好きな馬は、どうでしたか?
応援しようにも、そういえば知らなかったなあ…(笑)。

『復習』楽しみにしてます!

■電気羊さんへ [安東 裕章]

こんばんは。
コメントありがとうございます!

難しいと言いながらも、人気薄で馬券に絡んだトゥザグローリーとエイシンフラッシュをマークされてるではありませんか!
素晴らしい!!

SS系がこのレースに強いことは、私も新聞からの知識として持っていましたが、たしかに絞るとなると難しいですね。
となると、どうしても近走の内容から判断してしまう・・・うーん、トゥザグローリーが選べませんでした(泣)。

阪神競馬場での観戦はいかがでしたか?
馬券が的中してフトコロから暖かくなった・・・だといいですね!

■ねこさんへ [安東 裕章]

こんばんは。
コメント、ありがとうございました!

中山へいらしてたのですね!
コメントの時間を見ると、朝6時ちょっと前!
おつかれさまでした。
いい席は取れましたか?

最終的には11万人の入場者があったとのことですが、すごい熱気だったと思います。
ブエナの引退式もドラマチックな雰囲気に見えました(あくまでテレビ観戦でしたが)。

今回の『予習』ブログは、トゥザグローリーを評価できていれば、ほぼ完璧だったんですけど・・・(笑)。
まだまだ勉強が必要ですね!

■うにさんへ [安東 裕章]

こんばんは。
コメント、ありがとうございます!

今回の有馬は、どうしてもブエナを応援したくなる雰囲気がありましたよね。
ただ、『短評』にも書きましたけど、オルフェーヴルが勝ったことで、一層「ブエナビスタストーリー」が感動的に締めくくられたようにも思えます。

エイシンフラッシュは予想通りの好走!(笑)
うにさんの好きな馬でしたよね。
ヒルノダムールは私も気になって買い目に入れましたが、思った以上にスローペースになったことと、藤田騎手がブエナビスタをマークしていたため、抜け出しがワンテンポ遅れてしまったように見えました。

ちなみに、私の馬券ですが・・・(滅多に公表しませんが・笑)
3連単2点買いでした!

9→5→1と9→5→3。

いやあ、福永騎手にやられたなあ~(笑)

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プロフィール

安東裕章

Author:安東裕章
東京都出身。2007年11月に書籍『競馬のツボ』、2008年7月に『競馬のツボ2』、2009年7月に『競馬のツボ3』を発表(いずれも総和社刊)。

このたび、拙著『競馬のツボ』を刊行していただいた出版社・総和社様の勧めもあって、ブログを始めることにしました。
競馬における一番の楽しみは、レースについて考えること。つまり予想です。
このブログを書くことで、自分でも週末のレースに向けてイメージを膨らませる訓練になるかと思います。
競馬について考えることが好きな皆様。レース予想に疲れて気分転換をしたい時など、よろしければフラッと遊びに来てください。

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